表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/91

第76話 要塞都市ロンドニア防衛戦

 

「対空戦闘―――ッ!!!!」


 ――――王国陸軍 第6旅団 第30高射大隊は、もはや旧式と呼ばれて長い76ミリ砲を上空へ突きつけた。


 照準を任される若い2等騎士は、その照準器に真っ黒な群れを捉える――――


「ワイバーン群接近! 数30! 北西方向よりまっすぐ突っ込んでくる!!」

「仰角よし! 装填よし! 対空戦闘用意よし!!」


 城壁上に並べられた魔導機関砲。

 土嚢にかこまれ陣地化された大通りの高射砲。

 さらには大口径の要塞砲も一斉に照準を合わせる。


「2型榴散弾! 攻撃始めぇッ!!!」


 3基の30.5センチ連装要塞砲が、今――――――咆哮を上げた。

 高空を飛行していたワイバーン群に炸裂したそれは、対空用に開発された砲弾。


「弾着――――――今ッ!!!」


 炸裂――――――花火のように美しく咲いた榴散弾は、灼熱の火球を無数にばら撒きながら一瞬で数体のワイバーンを撃墜した。


「旧式のくせにやるじゃねえか!! 王国軍ここにありと知らしめてやれッ!!」


 街中から一斉に対空砲火が上がり始める。

 1体――――また1体と、街へ近づく前に10近いワイバーンを叩き落とした守備隊は、訓練通り分厚い弾幕を作り上げていた。


 それでも、高速で飛行するワイバーン相手ではまだ不足だったのだろう。

 街の上空へ到達したワイバーンは体をひねらせると、一気に急降下を開始。


 牙を見せる口から矢継ぎ早に火球が発射された。


「ブレス降ってくるぞぉ――――ッ!!」

「退避! 退避――――!!」


 城壁が吹っ飛び、市街地から次々に火柱が昇る。


「大丈夫か新米!」


 火のくすぶる瓦礫を蹴った軍曹が、対空砲に座った2等騎士へ叫ぶ。


「自分は問題ありません! ただ向こうの対空砲がやられたようです! 医療班を掩護します!!」

「頼もしいな、だがくれぐれも無理はするな! ヤバくなったら地下壕へ逃げろと司令部から達しがあるからな!」

「了解であります!!」


 ロンドニア駐屯軍の目的は、あくまでも時間稼ぎ。

 街には宗教戦争時代の名残りからか、信者を逃がすための地下通路があちこちに造られているので、戦闘続行不能となった部隊から順に逃げ込んでいた。


「仰角40度ーッ!!!」


 ワイバーンは低空飛行で爆撃を繰り返し、公園や大通りの高射砲を狙う。

 幾多の部隊が猛爆に晒され、その弾幕も必然薄くなっていった。


「「「落ちろ――――――――――ッ!!!!」」」


 ロンドニア駐屯軍の大半は、この地域の出身で固められている。

 なんとしても守り抜く、石にかじりついてでも戦うという意思は、爆撃を受けてなお弱まらない抵抗となって現れていた。


「1体撃墜であります!!」

「っしゃあ! ざまあみろトカゲ共!!」

「――――――いや待て! 3時方向から影! 真っ直ぐ突っ込んでくる!!」


 だが、それらはどうしようもない存在によって次第に押し潰されていく......。


「仰角よし! 2型榴散弾――――ぇッ!!!」


 装填を終えた要塞砲が、向かってくる1つの影に向かって斉射。

 再び死の花が咲き乱れ、その影は消滅しただろうと2等騎士は確信した。


 ............瞬間だった。


『敵影健在ッ! 繰り返す! 敵影健在!! アレは......ワイバーンなんかじゃない......!』


 装甲飛行船すら落とす要塞砲の直撃に耐えた飛行生物は、ロンドニア駐屯軍が最も恐れていた存在――――


「ドラゴン出現!! ロンドニア直上に侵入ッ!!」

「ヤツが......!!」


 E、D、C、B、Aと、危険度が高い順に付けられていく王国危険指定ランク。

 通常なら【A】止まりだが、エンシェント・ドラゴンの危険指定ランクは【S】という特別枠に区分されていた。


 エンシェント・ドラゴンのあごが3つに割れ、太陽のように口部が輝き出す。

 かつて国家を3つ滅ぼしたといわれる一撃が、ロンドニアに落とされんとしていた。


「総員退避ッ! 地下通路へ退避だ!!」

「ですが軍曹ッ.........!」

「命あっての抵抗だ! 退路はまだある、今ここで死ねば国民は守れんぞッ!!!」


 必死に叫ぶ。

 その声を聞き、実質的に現場を仕切っていた小隊長も突き動かされた――――


「命令だッ! 総員地下通路へ退避!! 装備は放棄して構わん!」


 士官学校を上がりたてだった彼は、自分よりも経験の豊富な軍曹の意見を命令として反映。

 途端、部隊は一斉に地下通路への階段を下る。


 ドラゴンからは遠い城壁上、軍曹は確かな危機感を感じていたが、その懸念は杞憂に終わらなかった......。


「ガアアァァァァァァッッッ!!!!!!」


 要塞砲が照準を向けるより早く、ドラゴンの口からそれは放たれた――――――


 極太のレーザー砲がロンドニア市街地をなぞり、家々をえぐる。

 旅団司令部のある古城は消し飛び、要塞砲が次々とぶった斬られ爆散した。


 この攻撃で、第30高射大隊が保有する装備の"9割"が消滅。

 市街地の3分の2以上が壊滅するという、凄惨なものだった......。


 それでも......、王国軍は生き延びていた。

 地下へ退避することによって、彼らの人的損害は究極にまで軽減されていたのだ。


「全員無事だな!? 危なかった......、素早い判断に感謝します少尉殿」


 軍曹がヘルメットを脱ぎながら、命令を下した小隊長にお礼を言う。


「あの場で自分ができる最善だっただけですよ、こちらこそ軍曹のおかげで部隊を生き延びさせられました」

「しかしあいつ......、"後ろの足が片方無かった"気がするが」

「そうでしたか? とにかく、このまま旅団司令部を目指しましょう。地下通路はアリの巣みたいに繫がってるはずですからね」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ