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第33話 完食! 激辛海軍カレー

 

「ごぢぞゔ――――さまでじた......」


 最後の一口を食べ終え、わたしはテーブルに突っ伏した。

 死ぬ! 胃も喉も焼きただれるんじゃないのこれ!? っていうか考えた人バカなんじゃないの!?

 そう叫んでやりたいほどの辛さで、もう全身が熱い。


「演習で2個機甲連隊を相手した時よりキツかったッス......、まさに怪物級でしたね」


 わたしと同じく激烈な艦砲射撃を胃にくらったセリカも、46センチカレーをなんとか完食していた。

 辛い物好きにも限度はあるらしい。


「う〜ん、もう少しマイルドにした方が良さそうだね。普通の13歳の舌には合わなかったか......」

「店長、そういうのは食べる前に教えてあげては?」


 ミーシャが横から店長を小突く。


「まかないで君がペロリと平らげていたから全然足りないと思ってね、今回スパイスを増強したんだが――――どうも比較基準を間違えたようだ」


 炎属性魔法を使うだけあって、ミーシャはこれをアッサリ完食していたらしい。

 なるほど、それでここまで過剰に香辛料を......。


「クロエ、あんたは大丈夫?」

「だいじょ......ケフッ、ぶだよ」


 どうやら相当無理したらしい。ここまで弱ったクロエはなかなか見れないだろう。

 彼女のノースリーブや短パンは汗でビショビショになっており、いかに苦戦していたかがよくわかる。


「満身創痍ね、シャーベットとか無料だけど持ってこよっか?」

「おねがいします.......」


 テクテクと厨房へアイスを取りに行くミーシャ。

 もう当分辛いものはいいや。


 そんな中運ばれてきたバニラアイスはキンキンに冷えていて、口に含むと回復魔法に等しい甘みが広がった。


「んむぅ〜ッ......!!」


 さっきまで死に体だったクロエが復活し、目を輝かせながらかき込んだ。

 わたしたちが夢中でアイスにがっついていると、思い出したように店長が口を開く。


「そういえば、王国軍は近いうちに【駐屯地祭】なるものを行うらしいね」

「駐屯地祭......?」


 聞き慣れない単語にオウム返ししてしまう。


「アルマのやつから聞いてないのか? なんでも今回初の試みらしいが」

「それわたしも聞きました! アクエリアス事件で王国軍の支持率が上がったので、アルテマ駐屯地で国民のさらなる理解を目的としたお祭りを計画してるみたいッスよ」


 報告やら何やらで忙しくて、全然知らなかった。

 内容も気になるけど目的も知りたい。


「さらなる理解ってことは、まだ周知が進んでないってことよね?」

「はい、王国軍への志願者層はそのほとんどが冒険者ギルドに取られちゃってるらしくて、昔から冒険者ギルドとは苛烈な広報戦をしてると聞くッス」


 まあ軍かギルド、どちらに親しみを感じるかと聞かれればほぼ『ギルド』と答えるだろう。

 それだけわたしたち王国軍は、国民にとって堅い組織なのだ。


「いっそのこと冒険者ギルドと仲良くなっちゃえば、そんな苦労せずに済むのにね」


 なるほど、確かに人気のギルドとタッグを組めれば王国軍わたしたちはより身近な存在になる。

 長期的に見れば志願者は増えるだろう。


「クロエにしては珍しく良いこと言うわね」

「ホント!? イェーイ!! ティナに褒められたー」


 諸手を挙げるクロエ。

 この雰囲気......、なんだかよく言い表せないけどとても好きだ。

 皆でご飯を食べて談笑する、ずっと続いてほしい平和な時間に思えた。


「っと、そろそろピークが来るぞ。ミーシャ、用意は良いな?」

「了解店長」


 でも、楽しい時間ほど無情なまでに早く終わる。

 それまで暇そうにしていた店長とミーシャが、慌ただしく動き出したのだ。


「この店は正午になるとお客様で溢れるの、これから激辛マニアたちが行列を作るわよ」

「へー、じゃあそろそろお会計にしましょ」

「オッケー、ごちそうさまでした」


 あんまり居座っては回転率に支障をきたすだろう、各々が半額券と一緒に500円を出し、早くも人の殺到し始める激辛料理店を後にした。



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