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第12話 任務を終えて無事帰還です

 

 ――――ストラトスフィア王国陸軍・アルテマ駐屯地。


 紆余曲折うよきょくせつを経てオーガを討伐し、無事に初任務をこなしたわたしたちは、一晩超えた次の日に王都へ帰還した。


「よくぞオーガを倒してくれた我が部下よー! これで亜人保護区は守られ、即応部隊の評価もうなぎのぼりじゃーい!」


 報告に訪れた執務室で、アルマ・フォルティシア中佐がご機嫌な様子で迎えてくれる。

 なんでも、わたしたちの属する即応部隊はまだ試験的意味合いが強く、フォルティシア中佐はとにかく結果を欲しがってたらしい。


「中佐〜、任務は成功したんだし休暇とかくれないの? 触手に絡まれたり海に落ちたりでわたしもさすがに疲れたんだけど」


 クロエは相変わらずタメ口ね......。まあ確かに色々とギリギリで疲れたのは否めない。

 でもそんな彼女に、中佐は差し込む日差しに負けないくらいの笑顔で労ってくれる。


「そんな焦らずとも休暇は逃げやせん、の勇者一行もパーティーの疲労には気を遣ってたらしいでの、要請が無い限りはしばし休むとよい。ひとまずお疲れ様じゃ」


 大天使......! そう叫びたいくらいの優しさに、わたしはこの方を上司として持った人事うんめいに深く感謝する。

 自分もこんな懐の深い大人になりたい、そういう意味で、フォルティシア中佐はわたしの思い描く理想の大人像に近かった。


「ありがとうございます中佐、では、後日報告を正式な書類にまとめてお渡しします」

「うむ、では頼んだぞ」


 簡単なやり取りと敬礼を交わし、クロエを連れて部屋を出ようとドアノブに触れた時、中佐がふと「思い出したんじゃが」と呟いた。


「こないだ街中で暴れた闇ギルドの魔導士を覚えておるか? おぬしらが取り押さえた者共じゃ」


 闇ギルド......おそらくそれは、かつてわたしの仲間だったヴィザード職冒険者のことだろう。


「はい......シルカという魔導士ですよね、もちろん覚えていますが」

「なら話は早い、そのシルカというヤツの取り巻きだった連中が今病院で入院してての、お主に会いたいと言っておるんじゃ」

「わたしにですか?」

「うむ、闇ギルドの件はちーとばかし気になるでの、おぬしが嫌でなければ、会って話だけでも聞いてやってくれんか?」


 シルカに盾にされたあの2人の女性魔導士のこと......かな、彼女たちと昔の自分は境遇が重なっていたこともあり、次の瞬間には首を縦に振っていた。


 ◇◇


「報告お疲れ様ッス! この後はどこか行くんですか?」


 執務室を出てすぐ、中庭に面した通路でセリカと出くわした。

 どうやら、彼女も休暇にありつけたようで少し機嫌が良い。


「こないだ闇ギルドが街で暴れたでしょ? その件でちょっと寄る所があって」

「へー、それはまたお疲れ様ッス。そういえばティナさんとクロエさんはあれ知ってますか?」

「「あれ?」」


 2人して歩きながらセリカに聞きよった。


「ほら、毎年やってる"水上都市コロシアム"ッスよ。北西の水上都市【アクエリアス】で行なわれる、腕自慢が集まる催しじゃないですか!」


 言われて思い出す。

 王都に次ぐ都市で名高いその場所は、1つの島の上に造られた巨大な街で、水上に浮かんで見える様から水上都市と名がついた。

 海の上なので、主に水上列車や船、飛行船などの交通手段で行けるらしい。


「うーん......わたしたちには関係ないし、多分行かないかな」

「そうですか、まあわたしも戦車の点検で行けないから同じなので、感想をと思ったんですが」

「機甲科も大変ね、ジュース奢ろっか?」

「えーっ! 良いな〜、わたしも飲みたいー」


 ぴょんぴょん跳ねながらおねだりするクロエ。


「はいはい、クロエもお疲れ様。じゃあ売店で買って一息ついてから行こっか」


「賛成!」と諸手もろてを挙げるクロエとセリカを連れ、財布を取り出しながら一路売店へと向かった。



【駐屯地】

固定施設(滑走路や港)がある基地とは違い、戦力がとりあえずそこに留まっている場所を言う。

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