九話 魔界での夕食
「どうかしました?」
僕があまりに周りを気にするせいか王女様に心配されてしまった。
「いや、なんかやたら見られるっていうか…………なんか落ち着かないっていうか…………」
「見られる、ですか………」
「ほう」
「へえ」
王女様達はそう言って僕やさなえ、アマツカの頭を見詰めた。
「なんです?僕達の頭になにかあるんですか?」
「逆です、ないんです」
「なにがです?」
「角がですよ!この国の人はみんな角があるのに司さん達にはその角がないんです」
王女様は一瞬大きな声を出したけど周りの目を気にして次の瞬間には小声で言った。
「角って、ええ………」
「そもそも種族が違うんだけど」
僕達は王女様の言葉にあぜんとした。
「そんなに角なしが珍しいか」
アマツカが嫌悪するように言う。
「そもそも竜人以外の種族が王都まで来ることなんてないのよ、来るとしたら外国の使者か旅の人くらいかしら」
センカさんが言った。
僕達自身旅の身とはいえ出歩く度好奇の目に晒されるのは流石に気分が悪いな。
「でしたら城者に頼んで角の方も変装出来るよう手配しますね」
王女様が言った。
「助かります」
昼食の後はお城の部屋に戻って夕食まで待つことにした。カレー屋さんからお城の部屋まで距離があったからそんなに待たずに夕食の時間になった。ただ夜が早いのか夕食の時間そのものが早かったんだ。
夕食はシチューに大きな鶏の揚げ物や野菜サラダ、他にも色んな揚げ物が添えられていた。お城の料理だからもっと格式ばったものだと思ったけど質より量が多かった。
「さあさあ勇者様、どんどん食べてください。遠慮はいりません!」
王様が言うけど僕とさなえはどうも気後れしてしまう。アマツカは空気とか読まずにガツガツ鶏にしゃぶりついてたけど。因みにこの料理にはスプーンも使うけど箸も使う、建物とか服は洋風だけど料理の道具は日本風みたい。箸は黒い漆で塗られたものや茶色や赤褐色の色があった。
「いただきます」
手を合わせて箸を持つとゆっくり鶏に伸ばし……………これ箸で持つやつじゃないし!
「あ、司さんその食べ物は手で持って食べるんですよ」
王女様に言われてしまった。
「わかってます、ちょっと慌てただけです」
うわ、すごい恥ずかしい失敗だ。緊張してたとはいえこれはない。ていうかお城の食べ物なのに手で持って食べるんだ、ナンは食べないらしいけど。
「なんかクリスマスみたい」
さなえが僕を見て言った。
「あはは、みたいだね」
思わず肩を震わせて笑ってしまった。やっぱりクリスマスには〇ンタッキーFCかなー。クリスマスに鶏を食べるて誰が考えたんだろ、まあいいか。
「クリスマスとはなんです?」
女王様が聞いてきた。女王様の髪はピンクで長い髪をアップにまとめていた。王女様の髪はお母さん譲りなのかな。
「そういうお祭りがあるんですよ。12月の24日にはお家で鶏の揚げ物やケーキを食べたりするんです」
「何かの、祝い事ですか?」
「キリストていう宗教の創始者の誕生日らしいです。と言っても僕の国はそういうのは関係なくご馳走食べたりカップルが盛り上がったりする日になってます」
「宗教に関係ないのに宗教の祝い事の日に盛り上がるなんて不思議な国なのですね」
女王様が手を口元に当てて上品に笑いながら言う。この人達に日本のハロウィンの話したら絶対驚きそうだな。
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