七話 さなえの異世界来訪はずぶ濡れ
異世界転移が安全な場所に飛ばされるとは限らないていう話
「そういえば、さなえはどうして向こうにいた時と違う服着てるの?」
王女様がいない間ずっと気になっていた話を聞くことにした。服が変わった経緯よりも変わった服そのものの方が気になっちゃってたけど。
「聞きたい?」
「うん、まあ…………」
「ここに来た時、わたし達は噴水の中にいた」
『噴水?!』
僕とアマツカは驚いて声を上げた。
「正確には噴水の真上だな」
とガルムが言う。
「それでそのまま下にばっしゃーん、ずぶ濡れーてわけ」
さなえは身振りや擬音を入れながら説明していて可愛かった。
「あたしは噴水で朝の水汲みをしようと行ったんだけどそこにさなえちゃんがバッシャーンてしたわけなの」
センカさんがさなえの説明を引き継ぐ。さなえがバッシャーンて言うとひらがなに見えて可愛いけどセンカさんが言うとなんか色っぽいな。
「朝…………………」
センカさんの朝、という表現に違和感を覚えた。次元の穴じゃ乱気流でバラバラになったからこっちへの到着時刻もバラバラなのかな…………。
「司、この人の言う朝は十時とか十一時ぐらいだから当てにしない方がいい」
僕が悩んでるとさなえが言った。
「さいですか………」
ファンタジー世界にも夜更かしの概念があるのかな。油ランプの明かりで本呼んだりどんちゃん騒ぎしたりして。
「あたしも色々忙しいのよー。みんなあたしのこと神様か何かと勘違いしてるのか朝から夜中まで引っ張りだこでもう大変」
センカさんが手をぶんぶん振りながら日頃の苦労を吐露する。
「センカさんてなんの仕事してるんですか」
忙しい上にみんな頼られるという表現をする仕事というのは限られる気がする。職場で頼りにされるというより街の人に頼りされてるように聞こえた。
「占いよ、あたしの占いは当たるの」
「へー、占い」
センカさんの返事に思わずほうけた声を出してしまう。
「あら、その顔は信じてないって顔ね」
表情が出ていたのかセンカさんが言う。
「いえ、そんなことは………」
僕はこう言ったけど占いとか僕の世界じゃ胡散臭い詐欺っぽいものとしてあるからね……………。女の子はそういうの信じるけど血液型占いや星座占いもうそっぱちだってのは考えればすぐ分かる。風水ってのを信じる人もいるし、あれはおまじないみたいなものかな。
「じゃあちょっと当てて見ようかしら」
そう言ってセンカさんが服を触ったり胸の中をまさぐったりした。まさか胸の中に何かしまってるていうの?さ、流石巨乳は一味違う…………。
だめだ、美人が自分の巨乳の中に手を突っ込むて時点で興奮してきた。もうこの人から目がはなせな…………。
「いったー!」
いきなりさなえに足を踏まれて思わず飛び上がった。すごい目でさなえがこっち睨んでるけど痛みでそれどころじゃない。
「ないわねぇ。ねえ、さなえちゃん、そのローブの中に水晶とかないかしら?」
「水晶ですか?」
センカさんに言われてさなえがローブの袖を探る。
「あった、なんか重いと思ったらこれだったんですね」
丸いガラス製と思われる水晶が出てくる。いや、袖の中にそんなおっきいもの入ってたら気づくでしょ………。
「じゃあやるわよー」
センカさんがさなえから受け取った水晶を片手で持ち空いてる手をかざす。
ブゥンという鈍い音と共にマゼンタのような光が水晶に浮かぶ。
「見えたわ!」
センカさんの名前がカッと見開く。
「で、何が見えたんです?」
「あなたは今不安を抱えている」
「な、なぜそれを!て、そうやって占いを信じこませようとしてるんでしょー、引っかかりませんよー」
僕は一瞬動揺したがなんとか持ち直した。
「まあ話は最後まで聞きなさい。あなたの不安、それは孤独、いえ孤立から来るものね。今あなたはいえ、あなた達は仲間と離れ離れになって不安を抱えている。違うかしら?」
「ちが………いえ、当たってます」
ついさっき抱いた事実だけに否定しそうになったけどさなえの顔を見てやめた。友達の前でこういうやせ我慢はよくない。
「司、わたし不安だけど不安じゃないよ」
「え?」
さなえが僕を見て笑った。
「わたし、みんなとはぐれたと知ったと分かった時は不安だった。けど、センカさんがお城に連れて行ってくれたおかげで司に会えた。だから、不安じゃないよ」
「さなえ………」
さなえの励ましにちょっとうるって来てしまった。
「泣いてる?」
言われて慌てて涙をふく、泣いてたのか僕。
「泣いてない!いいから、さっさとボーンキング倒して!あの二人と合流するよ!」
僕は恥ずかしさで叫んだ。
「うん、そうだね」
「若いっていいわねー」
センカさんが僕達を見て言った。センカさんて何歳だろう……………。
王女様がメイドさんと一緒に戻って来て僕達はこの世界の普通の服に着替えることになった。
着替えは棒にたくさんの服をかけた移動式のクローゼットでやってきた。これだけあれば選び放題だね。
僕達は服を漁りながら各々の気に入ったものを探す。
「お、パーカーあるじゃん」
僕は上の方が紐でばってんになってるパーカーを取り出した。色は今着てるのと同じ白。
異世界にもパーカーはあるんだね、モンスターとか王国があるけどファッションは向こうの世界と共通するものがあってほっとするね。
「今着てるのと同じようなお召し物ですがよろしいのですか?」
「大丈夫です、僕パーカー好きなので」
メイドさんに言われるけど僕は気にしない。ズボンは今着てるカーゴパンツと同じような作業着みたいなのを見つけた。せっかくだしズボンも着替えようかな。因みに色はカーキ色。
僕は部屋に戻って着替えを始める。着替えを終えて少しするとアマツカが部屋に入って着た。
「どうしたの?」
僕はアマツカに声をかける。
「他のやつらの着替えを待つ間暇だからこっちに来ただけだ」
「君は着替えないの?」
アマツカに聞いた。今のアマツカは天使のトレードマークの輪っかと羽はしまってるけど古いギリシャ人が着そうな白い絹の幅広な衣装のままだ。クローゼットになかったからこの世界でも天界のファッションなのかな。
「俺はこの服が気に入ってるんだよ」
仏頂面のままアマツカが答えた。天使にも色々こだわりがあるんだ、僕も同じような服に着替えてるから似たようなものだけど。
女子の着替えというのは時間がかかるものと誰から聞いた気がする。しばらくここで待っていよう。
カーテンを開け外を見ると城の中庭が見えた。真ん中に噴水があったり木がはえてたり薔薇が咲いてたりして手入れが行き届いていた。
そこでしばらく綺麗な風景にふけってるとドアがノックされた。
「はーい」
返事をするとゴスロリ衣装に見を包んださなえとリボンのついたひらひらのロングドレスとショートジャケットに身を包んだ王女様が入ってくる。
ゴスロリ衣装て目立たないかな、家事とか仕事の邪魔だからお洒落着だよね。王女様の方はさっきの衣装は王女様としての装飾の多い派手な衣装だけどこっちはお洒落な感じのドレスだ。
「こっちは準備終わったよ、そっちは大丈夫?」
「こっちも大丈夫。さあ、行こうか」
僕は言うけどさなえはこっちを見て黙ったままだ。
「なに?」
「司、変わんないね」
「同じようなのがあったからね、こっちのが落ち着くよ」
「いつもと違う司も見てみたかった気がするけど、まあそう言うならしょうがないか」
さなえがちょっと不満そうに言った。
「そっちは随分とお洒落してるね」
「せっかくこういう衣装があるんだし、いいかなって………」
さなえが顔を赤くして答えた。
「良かったですね、さなえ」
さなえの反応を見て王女様が言った。え、なにが良かったの?
「うん」
さなえがはにかみながら頷く。だから何が良かったの?僕にはちんぷんかんぷんだよ。
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