六十話 Mギアブレイバーアマツカ対機神竜メタリカ
ロックゴーレムが倒された直後、暗黒ジャグラーズの本拠地にてゴーレム軍団リーダーであるゴルドゴーレムは自分の部屋でその戦いを見ていた。
『ふふ、情けないな、あれほど大口叩いてその様か。だらしがないにもほどあるぞ?』
同じく自室で戦いを見ていたもう一人の幹部が通信を介してあざけるように言う。
「これはまだ小手調べ、奴らの実力は分かった。次こそは全勢力を投入し、奴らを粉砕する!」
ゴルドゴーレムが干からびたような声で言う。拳を握り締め、力を鼓舞した。
『ま、しばらくお手並み拝見と行こうか』
「ゴーレムさーん、メタリカちゃん準備出来たってー!」
部屋の入口に遥香が現れて言う。
「了解した、今行こう」
『なっ、君、メタリカに応援を頼んでいたのか?皇帝陛下の了承は取ったのか!?』
もう一人の幹部が驚く。幹部同士の連携とまでなるとかなりの勢力だ、そこまで行くと上司である皇帝の了承がいる。
「問題ない、陛下直々の指示だ。手加減はしない、使えるものは使う。それが我のやり方よ!」
『参ったよ、君には。どうぞ、容赦なく勇者達を倒してきたまえ』
「ハッハッハ、戦果を期待していたまえ」
豪快に笑ってゴルドゴーレムは部屋を後にした。
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暗黒ジャグラーズは次元の穴を自在に使えるためそれを使いワープすることで短時間で目的地につける。
そしてフェアリーアイランド海岸、ゴーレム達が森に入ろうとするとクイーンサキュバスが止めた。
「その森、行かない方がいいわよ?」
「なぜだ?たかが妖精の森、ゴーレムには効かぬだろう」
ゴルドゴーレムが聞く。
「分かってないわねえ。妖精は魔力が大きいからゴーレムなんてすぐ結界の餌食になっちゃうわよ?パクっと丸呑みされちゃってもいいのかしら?」
「丸呑み?この森は我々を食うのか」
「例えよ例え。具体的に言うと迷子になって目的地までつけないようになってるわ」
「すごーい!サキュバスさんそんなことも分かるんだ!」
遥香がクイーンサキュバスの分析に驚く。
「婬魔も長く生きてると色々見れるようになるのよー」
クイーンサキュバスが手で丸を作って目で覗く。
「じゃあ、結界の解除も出来るの?」
「それは難しいかしら、ここの結界すごーく複雑に出来てるから魔力で干渉しようにも弾くのよー」
「えー、じゃあどうするのー?」
「ココハ、オ前ノ出番ダナ」
メタリカが遥香を見て言う。
「え、あたし?」
突然の指名で遥香は驚く。
「マカイターミナルヲ使イ結界ヲ解除シロ、我ニプログラムニ干渉シタヨウニナ」
「あの時は出来たけどうーん、やってみる」
遥香はマカイターミナルを取り出しキーボードを操作する。
カチャカチャカチャ、キーボードの音が響く。
十分が経過する。
「まだか?」
ゴルドゴーレムが聞く。
「ごめん、まだ駄目」
ハッキングで結界を破ろうにもクイーンサキュバスの言った通り複雑な構造をしており、破るのは困難だ。
二十分経過。
「まだかしらー?」
クイーンサキュバスが聞く。
「まーだ」
遥香の顔も難しくなる。
ハッキングから結界を守るファイアウォールは何層にも連なっており、時間がかかるのも必死だった。
三十分経過。
「まだですかねえ」
ピエロッサクラウンが聞く。
「まだって言ってるでしょ!」
遥香の顔にストレスが見え始める。
突破しても突破しても残るファイアウォール、突破自体は楽だがその物量と解析に必要な労力は尋常ではなかった。
一時間経過。
「マダカ、皇帝ナラ既ニ終ワッテイルゾ」
メタリカが言う。
「それ、一番嫌な台詞なんだけど。家でもお兄ちゃんはあんなすごいのにあなたはーとか言われてイライラしかしないからやめてくれる?」
遥香は不機嫌な声で言う。最早喋れば喋るほどこの声しか出ないほど苛立ちが上がっている。
「スマナイ」
それから三時間経つがファイアウォールの完全突破には叶わなかった。
「はあ、はあ…………」
遥香の顔には苛立ちよりも疲れのが目立っていた。
「うーん、これじゃあ結界の突破は難しいわねぇ」
遥香の様子を見てクイーンサキュバスが唸る。
「サキュバスさん、あたしは大丈夫だから。まだ、行ける、やらせて………」
「でも大分疲れてるようだしー少し休んだら?」
「大丈夫、あたし暗黒ジャグラーズの幹部だよ?こんなので疲れるわけないじゃん」
遥香は強がりを言うがその声色にも疲れが見えていた。
マカイターミナルの画面からファイアウォールを示すものが消えていく。
「え、え?ええ?!」
遥香は画面の変化に驚き声を上げる。
「どうしたの?」
「いや、ファイアウォールが………」
「ファイアウォール?」
クイーンサキュバスにはファイアウォールがどういう意味か分からなかった。
エアディスプレイが現れ皇帝が映った。
『終わったぞ、突入したまえ』
皇帝が口を開くが現場にいるモンスター達は何が起きたか分からず呆けてしまった。
『分からないのか、結界を解いたと言ったんだ。分かったならさっさと突入したまえ』
『ははっ!』
次の言葉でモンスター達は敬礼をし森の中に入って行った。
「なんだ皇帝さんがやったんだ、あはは………」
遥香は結界が解けたことに安心して地面に背中をつけた。その安心感足るや、深い眠りにつきそうなほどである。
『いや、三分の一はお前の仕事だ。既に解除されてる二十層の残り、四十層ほどを解除して突破したにすぎない』
「二十と四十てことは全部で六十層。なにそれ、意味わかんなぁい」
遥香は結界の頑丈さに頭を回した。
『ご苦労、お前はもう戻っていい。クイーンサキュバスもだ』
「皇帝陛下!?わたしはまだ動けます!命令を下さればゴーレム達と共に妖精を根絶やしにしましょう!」
サキュバスは戦いに向かうことを願い出る。
『なにか勘違いしてないかい?君は本来遥香の護衛だ、護衛対象の遥香が戻る以上君も本拠地に戻りたまえ』
「あ………」
サキュバスはそこでようやく自分の役目に気づく。
『そうだ、ゲートは開けておく。好きな時に戻りたまえ』
「ははっ、御足労痛みいります!」
サキュバスが敬礼をし近くに次元の穴が開く。
「さて、わたしは行ってきます。どうかご武運を」
ピエロッサクラウンがサキュバスに言う。
「誰に向かって言ってるのかしら?」
「ほんの挨拶ですよ、挨拶。では」
「いってらっしゃーい」
ピエロッサクラウンが飛び立ち遥香が手を振る。
「喉乾いたでしょう、ジュース飲む?」
サキュバスがどこから出したのか水筒を差し出す。
「ありがと」
遥香はそれを受け取り中身を口に入れる。口の中にピーチジュースの透き通った潤いが広がった。
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司side
僕達が森を進むとゴーレム軍団とがいた。援軍やリーダーと思しきやつも一緒だ。
「まさか君もいたなんて意外だなぁ、すっかり壊れちゃったかと思ったよ」
僕は機神竜に言う。
「我ハ不死身、容易ニハ壊レン」
機神竜が淡々と壊れる。
「相変わらず愛想のない返事だぜ」
豊太郎がつまらなそうに言う。
「司、アマツカ、そいつの相手を頼めるか」
悠が言ってくる。
「りょーかい」
「任せろ」
「ではわたしはあの金色のをやります」
「いや、エミリアはアリエルと共に雑魚掃除を頼む」
リーダーっぽい金色のゴーレムの退治を名乗り出たエミリアを悠が止めた。
「なんでですか!わたしが力不足だって言うんですか!」
「そうですよ!わたし達気合い十分なのに雑魚掃除とか不遇です、不服申立てします!」
雑魚掃除を頼まれた二人が抗議します。
「そんなんじゃない。さっきの戦いで雷鳥とペガサスは高い攻撃範囲を見せていた、数の多い雑魚を任せるにはちょうどいいだけだ」
「わかりました!」
「そういうことならお任せ下さい!」
二人が了承して雷鳥とペガサスを召喚、ゴーレム退治に向かった。
「で、俺達は?」
「オレも戦いたい!」
豊太郎とヴァミラが出る。
「後の連中は俺と来い!」
『おー!』
みんなが手を上に出す。
「じゃ、僕達も行くから」
「やつを追い払ってくれる」
「ああ、頼む」
僕とアマツカはみんなと別れて機神竜の元に向かった。
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「作戦ハ決マッタヨウダナ」
機神竜が言う。
「決まったっていうか僕達が君の相手をするってだけだけどね」
「この姿で戦うのは互いに初めてだが負けるつもりはない」
ギアーズアクト形態になったアマツカが言う。
「ソレコチラモ同ジダァッ!」
機神竜がガトリング砲を構えてくる。
ガガガガ!飛んで来るバルカンを二手に別れて避けて弓矢と斬撃を飛ばす。
ドーン!こっちの攻撃が当たって煙が出る。ザッと相手がよろける音が聞こえた。けどすぐにカチャっというガトリング砲を構えたような音がして身構えた。
アマツカの方に弾丸が飛んでいく。
「アマツカ!」
「俺のことはいい、お前は攻撃を続けろ!」
「う、うん!」
僕は心配だけどアマツカに言われて弓矢を連続で飛ばす。ドンドーン!二方向への対応は出来ないみたいでこの攻撃が当たる。
「はぁー!」
その隙にアマツカがエクスカリバーという金色の剣を振るう。さっきの攻撃で出来た煙で見えないけど声がしたから多分そうだ。
「なにっ!?」
けど金属が当たる音はしない、空振りみたいだ。カシャンカシャン、代わりにハッチが開くような音がした。中にはミサイルが入ってる。
「アマツカ!」
僕が叫ぶけどドンドンドン!と音を立ててミサイルが発射されていう。
「ぐあー!」
ミサイルを受けて吹っ飛ぶアマツカ。
「大丈夫?アマツカ」
僕はアマツカに駆け寄る。
「ぐ、う………」
アマツカは苦しそうな声を上げていて立ち上がるのも辛そうだ。
「タダ二人ガカリデヤルノデワナク二方向ニ別レテノ攻撃、確カニ強イガ我ノ反応速度ハソノ上ダ」
機神竜が言う。
「じゃあ、こっちが君が反応できないくらい速く動けばいいんだよね」
「無駄ダ、今ノオ前ハソコニ足手マトイヲ抱エテイル」
「司、俺に構うな。俺に構わずやつを倒せ………」
アマツカが立ち上がった。
「みたいだね」
「司、なにを言ってるんだ!俺は………」
僕はアマツカの口に人差し指を立てて言った。
「あいつは君なしで倒せるほど弱くないと思うよ。君と僕、二人の力を合わせなきゃ」
「あいにく俺はもう無理だ、さっきのダメージが残ってるからな」
「間違えた。二人で、じゃなくて二人の心と身体を合わせてやらないと」
「使い方分かるのか」
僕の意図を察してアマツカが言う。
「二人で戦うって思ってれば多分大丈夫じゃないかな」
「なるほどな」
「ナニヲスルツモリダ」
機神竜は僕達のやろうとしてることが分からない。
「まあ見てなって」
僕はMギアを構える。
「ヒカリマジンの力、Mギアブレイバー召喚!」
そう叫ぶと僕とアマツカの身体が光に包まれて重なる、そして溶け合うように一つになっていく。脚も、腕も、胴体も、すぐ近くにアマツカを感じるようになった。
「ドラグナート同ジ?ダガチガウ………」
僕の姿を見て機神竜が言う。ドラグナーは合体して全く違う姿になってるけど僕の格好はアマツカの服になるだけだからね。
「これは、あの時の………」
アマツカが感覚を確かめるように口を動かす。
「違うから、ちゃんとすぐ分離出来るから。混ざりっぱーじゃないからね」
僕もこれを使うのは二度目だから感覚を確かめるようにポーズを取る。
「やめろ気持ち悪い、俺の身体で喋るな」
「僕達の、だよ。あと顔は僕のらしいよ」
「なにぃ!?」
身体が慌てたようなわたわたと動かされる。鏡ならない。
「なっ、お前の考えがダイレクトに、気持ちわるっ」
えー。少し前まで似たような状態になー、急に言われてもー。
「ナンダコレハ、ドラグナートハ全然違ウ、違イスギル!オ前達ハナンナンダ!勇者カ!使ワレル方カ!」
機神竜が僕達の動きに混乱する。
「両方さ!」
僕は額に手をやって顔を上に向けたポーズを取った。やめろ恥ずかしい気持ち悪いていうアマツカの考えが伝わってくるけど些細なことだ。
「気持ガ悪イ、シネェ!」
機神竜がガトリング砲を飛ばした。
「そんな理由で!?」
僕は木の裏に隠れてやり過ごそうとしたけど弾丸がものすごい速さで木に当たって木に穴が空いた。
「うわぁっ!」
そのまま後ろの僕にまで弾丸が当たってきた。
「くっ」
木の裏に隠れるのは無理と判断して逃げ回る。いや、逃げ回るだけじゃない。弾丸の隙を縫って機神竜に接近する。
「っと」
しようとした足を踏ん張って止める。
「おい司、なんのつもりだ」
別に口に出す必要はないけどアマツカが僕に言う。
「あのさ、このまま近づいたらさっきの二の舞にっとっ、ならないかな………」
僕は敵の攻撃を避けながら言った。
「ならどうする気だ、やつより速く動くんじゃなかったのか」
「いや、言葉通り動いたらバレるでしょ」
「お前はやつより速く動くと言った、なら俺もやつより速く動く!」
あ、ちょっと!と考えるも虚しくアマツカは身体を前に動かした。そのまま攻撃をかわしつつ剣を構える。
「無駄ダ!」
ガガガガ!
「ぐあっ!」
剣を振るうまでも行かず弾丸を食らった。痛い、すごく、痛い。だから言ったのに、しかも人数減ってる分相手に隙が全然ないよ。
「ならどうしろって言うんだ!お前が速く動くって言ったから動いたんだぞ!」
アマツカが怒って言う。うわー、めんどくせー、やめようって言ったのにやめる前に言ったことそのまま実行するなんて。
「お前、馬鹿にしてるのか」
アマツカが自分の腕をつねった。いたいいたいいたい痛いって!
僕はもう片方の腕を動かしてアマツカを止める。
「これ僕の身体でもあるんだけど?」
「だからどうした、これがお前の身体でもあるなら俺を痛めつければお前も痛めつけられるからな」
嫌なやつ。
「気持チ悪イ上ニ動キモバラバラ、貰ッタ!」
ガトリング砲が飛んできてそれを避ける。
「ねえ、また気持ち悪いって言われてるけど?」
「それは不服だな」
「なら、」
「ああ」
揉めてる場合じゃない!
『ハナマジンの力!』
Mギアを出して力を発動、土を操作した。
「ナニッ!?」
すると機神竜の足元の土が動いてその脚にまとわりついた。
「ウゴケナイ………」
「流石の機神竜も、土に脚を捕まれちゃあ終わりみたいね」
「砂ノ拘束具ノヨウナモノカ、コンナモノ!」
機神竜は脚を動かそうとするけど全く動かない。
「はあっ!」
「ガァッ!」
僕は隙だらけの機神竜の胴体を斬りつける。ギャインギャインと金属が削れる音がする。
「貴様ァッ!」
機神竜が大型クローを振るってきた。
「くっ」
咄嗟に剣でクローを防ぐ。するとお腹にガトリング砲がつきつけられた。
「フッ」
機神竜が勝ち誇って至近距離からガトリング砲を飛ばしてきた。ものすごい爆発、こここまでやられちゃあ流石の僕もおしまいだ。僕はその場に倒れて動けなくなる。
「フハハハ!勇者モ所詮一人デハ弱イモノダナ、ハハハハ!」
機神竜が高らかに笑う。初対面の時より大分感情豊かだね。
けど、それが仇になったよ。そもそもそこにいるのは僕じゃない、シノビマジンの力で作った偽物だ!
「ンン、人形?グアァッ!」
背中を向けた機神竜をジャンプして一気に斬りつける。目立った傷はないけど衝撃は大きいはずだ。
「グッウッ、今ノワ細カイネジガイクラ飛ンダカ……」
脚を縛る土ごと斬りつけたから機神竜がよろめいた。
「じゃあ今度は、おっきいネジも飛んでらもらおうかな」
今度はフウマジンの力で剣に風をまとわせた。
ヒュオォォォ、ヒュオォォォ、剣の周りを風がいななく。
『フウマジントルネード!』
凄まじい風が起こって前ある木々を、機神竜を、少し遠くにいたゴーレム達を巻き込む。
ガガガガガガガガ!風が機神竜のガトリング砲のような鈍い音で暴れる!バキッバキバキッ!木々が根っこごと抜けて吹っ飛ぶ!
目標の機神竜はゴーレム達と空の向こうに飛んで行った。
「ネジどころか周りのゴーレムごと飛んで行ったね」
思わずポーズを取って風の威力に酔ってしまう。ここに生えてた木も吹っ飛ばしたがなというアマツカの心の声が聞こえる。
そこはまあ、ハナマジンの力でどうにかなるかな、一応土属性ぽいし。一応とはなんだ、本当に大丈夫か?という声も聞こえる。大丈夫だって、アマツカは本当に心配性だなぁ。




