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魔導奏者りりかさん魔界編  作者: 兵郎
四章 エルフエンパイアとメタリカの異変
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五十九話 フェアリーアイランドの妖精達



「ここは…………」


「なんだこれは」


「すげー」


森を出ると僕達はその光景に見惚れた。ほぼ一面と言っていいくらいの花、花、花ー!足の踏み場どこー?てくらい花があった。と思いきや川とか池とかも遠くに見える。


花の群衆から羽根の生えた小人が現れる、妖精達だ。


「わー、おっきい人ー!」


「お客さんだー」


妖精達が僕達に反応する。


「なあ………」


「待ちなさい!」


豊太郎が妖精達に声をかけようとすると強い声がそれを止めた。


「あなた達何者です?ここは外の森に結界があって入れないはずです」


ピンクの衣装の妖精、レオタードなんだけど服の全体がバラの飾りや花びらのようなフリルがついた派手なドレスになっていた。


「ふ、俺達か?俺達はなぁ、ハナマジンの力を使ってここまで来たんだぜ、魔法は駄目だったけどマジンの力ならここまで来れるってわけだぜ」


「ぐはっ」


豊太郎が言うと魔法の部分でエミリアがダメージを負った。エミリアも気にしてるからやめてあげてよ。偉そうに言ってるけどハナマジンの力を提案したのは絵里香ちゃん。


「ハナマジンの力を、まさかあなた達は………」


「俺達は!」


「勇者、と言えば分かるだろう」


悠が豊太郎の声を遮った。


「ちょ、俺の台詞取んなよー!」


「お前は勿体ぶるな、物事は完結に伝えろ」


「めんどくせえ、お前ぜってー演説とか芝居向いてないだろ」


「黙れ」


「勇者、本当に………」


ピンクの妖精が驚く。


「アンジュリアン?ねえ、アンジュリアンよね?」


「ほんとだ、アンジュリアンじゃなーい、どこ行ってたのよ、心配したんだからね」


紫と黄色の妖精がアンジュリアンさんに気づいて近づく。


「 リズリーナ、 ベルビヨン ………お久しぶりです」


アンジュリアンさんが二人に答える。


「アンジュちゃん、その子達知り合い?」


絵里香ちゃんが二人を見て言う。


「友人です、わたしがこの姿になってもこの二人だけはよくしてくれて…………最後まで、心の支えでした……」


アンジュリアンさんは涙をスウッとこぼしながら言った。


「最後までなんて言わないの!つまんないじゃん!」


「ええ、こうして会えたんだから………」


「二人とも………ありがとうございます」


リズリーナとベルビヨンがアンジュリアンさんに抱きつく。


「で、どっちがリズリーナさんでどっちがベルビヨンさん?」


色だけじゃ区別しづらいから聞いた。


「わたしがリズリーナで」


紫の方が名乗る。


「あたしがベルビヨンだよ!」


黄色の子が名乗った。


よく見るとリズリーナはアンジュリアンみたく露出が高めな衣装を着ていてシャープな形の羽根をしていた。顔もシャープで色っぽい。


ベルビヨンは他の妖精と違ってレオタードじゃなくてスカートとかぼちゃズボンになっていて羽根も丸い形になっている。顔も丸い方、ていうか童顔?


「リズちゃんと、ベルちゃんだね!」


「リズちゃん?」


「ベル?」


絵里香ちゃんに呼ばれて二人が首を傾げる。初対面の人にいきなりあだ名で呼ばれたりしかもちゃん付けなんかされたらそりゃあ驚くよね。


「アンジュリアン?アンジュリアンですって!?なぜあなたがここに、あなたは裏切り者のはず、なぜ戻って来たのです!?」


アンジュリアンさんの存在に気づいてピンクの妖精が激し怒った。


「それは………」


アンジュリアンさんが答えようとするけど恐くて答えられない状態になってる。


「ちょっと待ってよ!アンジュちゃんは天使みたいな格好になっただけだよ!天使に憧れて、天使の姿になっただけなのになんでそんな言い方されなきゃいけないの?おかしいよ!」


今度は絵里香ちゃんがピンクの妖精に怒った。


「勇者というのは妖精のしきたりに疎いのですね。いいでしょう、教えてあげます」


すごい上から目線な言い方だ、前時代的な村の偉い人にいそう。


「わたし達妖精の進化というのは自然界の姿である虫や植物、魚介の力を模すのが通例となっております。そもそもわたし達は自然に生かされているからです」


自然界の姿………って言われてもなあ、みんなレオタードってことしか共通点ないじゃん。あれでなんかの花の真似してるのかなぁ。


「しかし天使というのはこの世ならざるもの、その天使の真似をするなど自然界から逸脱する行為であり認めるわけには行きません!」


ピンクの妖精が言い切る。やっぱり古い村のしきたりみたいだ。


アリエルちゃんが動いてガシッと妖精を掴む。


「えー、天使の真似が自然界から逸脱、ですかぁ。よくもまあそんなことが言えましたねえ、愚かな妖精さん?」


アリエルちゃんがからかうように言う。身体を掴まれた妖精は大きければギチギチと音を立てそうなくらい辛そうな顔をしていた。


バサっとアリエルちゃんの羽根が現れて頭の上に輪っかが出ていた。


「ひいっ、て、天使ー!」


妖精が悲鳴を上げる。


「やだなあ、羽根と輪っかが出たくらいで驚かないでくださいよー」


「驚くだろ、天使なんて天界にいて普段地上に出てこないんだから。いいから解放しろ、話が進まないだろ」


「はーい」


アマツカに言われてアリエルちゃんが妖精を離す。


「ケホッ、ケホッ」


妖精は咳き込んで辛そうだ。


「このパーティエミリアや豊太郎以外も意外と問題児だらけ」


さなえが側で言った。


「だよね」


「そんなの………」


「待て、熱くなるな委員長」


絵里香ちゃんを悠が制する。


「こいつはおまけじゃない、そこにいる勇者の委員長(オカルトマニア(特に妖怪))の、使い魔だ」


悠が()の部分を声に出して言った。


「勇者の!?えっと、委員長(オカルトマニア(特に妖精))様、ですか?」


「いや、かっこの中は言わなくていいから」


妖精の言葉を絵里香ちゃんが訂正する。


「イインチョウですか、変わった名前ですね」


「委員長てのは名前じゃなくて、えーと………なんか恥ずかしいな」


絵里香ちゃんが恥ずかしそうに頬をかく。異世界だと委員長なんて概念ないからあだ名だって気づかないんだね。


「ではなんとお呼びすれば?」


「名前は佐橋絵里香って言うんだけど委員長でいいよ」


「ではそのように。しかしサハシエリカ、やはり変わった名前ですね」


シとエの間に時間がなかった、まるで一つの名前のように言った。


次いで僕達も自己紹介する。


「申し遅れました。わたくしはフェアリーアイランドの女王、エレミアノと申します」


ピンクの妖精が名乗る。


女王だったのか、それならあの偉そうな態度も頷ける。


「女王かぁ………」


僕はエレミアノさんをじっと見る。


「見えないな」


「失敬ですね、これでもアンチエイジングしてるんですよ!」


「あと声も高い」


「やめてください、気にしてるんですからー!」


エレミアノさんが僕の身体をぽこぽこ叩く。


「ぜんっぜん痛くないんだけど、妖精ってみんなこんなんなの?」


思わずみんなの方を見ながら笑ってしまう。


「ふむ、生物学的に研究する価値はありそうだな」


悠もエレミアノさんに近づく。


「ひいっ、な、なにをつもりです?」


エレミアノさんがなぜか顔を赤くして言う。


「とりあえず………」


悠はマカイターミナルを取り出して人のシルエットが青く描かれたアイコンをクリックする。すると目の前の光景が写った。


風景にある物体の一つ一つに印がついてそこから伸びた線の向こうに物体の種類の名前がある。


「確かこれって、映像の中にあるものが何か分析するやつだよね」


「ああ」


「えっと、わたし、なにをされてるのでしょう?」


エレミアノさんがなにをされてるのか分かんなくてもじもじする。


「肉体体積における魔力割合90、身長23.5mm………」


僕はエレミアノさんの側に表示されたデータを読み上げる。衣装は食べた花の成分で出来てるみたい。


「やめてください、恥ずかしい!」


エレミアノさんが顔を手で覆う。


「勇者って、恐いね」


「ええ………」


それを見てリズリーナとベルビヨンが言う。


「で、何がわかったんだよ?」


豊太郎が後ろから覗き込んできた。


「全身魔力だらけだな、血液や水分、酸素ではなく魔力でほとんど動いていると言ってもいい」


悠が解説する。


「すげえな」


「しかも自分で摂取した成分を衣装に変換する能力を有している」


「じゃあこの子達、ご飯を自分の服にしてるってこと?」


絵里香ちゃんがアンジュリアンやリズリーナ、ベルビヨンを見た。


「や、やめてください絵里香。流石にそういうのは………軽蔑します」


アンジュリアンさんの顔はパートナーの絵里香ちゃん相手にもかなり嫌そうな顔だ。他の二人もかなりの拒否感を示している。


「そ、そう。じゃあ、聞かなかったことにしようかな」


「そこのあなた方も、でないと………」


気がつくとアンジュリアンさんの指が悠の首元についたいた。


「痛い目を見ますよ?」


背は小さくてもその声には背筋が凍るものがあった。


「わ、分かった。忘れよう、このことは見なかった、そうしよう」


悠が拳銃を突きつけられたように手を上げる。今まで立ってマカイターミナルを操作していた、当然支えるのは操作していない方の手だ。でも両手が上に行くってことはマカイターミナルは当然下に行く。


「ああっ!」


僕は手を伸ばす。か、間一髪、マカイターミナルをキャッチした。


「おおー!」


豊太郎が拍手する。


パソコンとは違うけど壊れなくて良かったー。マカイターミナルも落ちたら壊れるのかな。



「今のは………」


エレミアノさんの様子がなにかに驚いたように変わった。


「どうしたの?」


「森の結界が、破られました」


「結界と言うと、迷いの森ですね」


エミリアが前に出る。


「ええ、本来なら外の者や邪悪な者が入れないようトリックを仕掛けてあるのですがその結界ごと、破られたようです」


エミリアの魔法すら効かない結界、それなのに破られたんだ。


ガタガタ!リュックに下げられた金の方位磁針が震えた。


「これって………」


僕は悠を見た。


「ああ」


悠が頷く。


「やっこさん、来やがった!」


豊太郎が叫ぶ。


「あの、これはいったい……」


エレミアノさんが僕達の様子に戸惑う。


「あなた達はここにいてください!先ほど攻めてきた敵の援軍です!」


エミリアが妖精達に教える。


「は、はい」


「じゃ、エミリア、今度こそ決めよっか」


アリエルちゃんが呼びかける。


「はい!」






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