五十八話 妖精の森は迷いの森
元の空間に戻るとアンジュリアンさんが言った。
「ここからは、わたしが案内します。外の者がこの森に入ると結界で迷いますので」
けど…………。
「あの、この木……前も見ませんでした?」
エミリアに言われてその木を見てみる。
「ほん、とだ」
「間違いない、この木さっきも見たぞ」
それは特徴的な枝の形と木の実だったからすぐに気づいた。
「てことは………」
「迷っちゃった」
「迷っちゃった、じゃねえですよ!どうするんですかこれ!アンジュリアンさんが案内してくれるんじゃなかったんですか!?」
アリエルちゃんが抗議する。
「すいません、妖精のわたしなら問題ないと思ったのですが…………」
アンジュリアンさんが頭を下げる。
「この結界から敵と認識されたか」
「敵?仲間じゃないってこと?」
いまいち分かってないヴァミラが言う。
「聞いてなかったのか、アンジュリアンは以前この島から追い出されたと言われてただろう」
ガルムが教えてあげた。
「そっか、じゃあ、敵?」
「そう、なりますね………」
暗い顔で答えるアンジュリアンさん。
「ちょっとヴァミラー、アンジュちゃん気にしてるんだからやめてよもー」
絵里香ちゃんがアンジュリアンさんを庇って言う。
「ごめんごめん」
あんまり悪く思ってないヴァミラ。豊太郎が豊太郎ならヴァミラもヴァミラだよね。
「しかしどうやって正しい道を探す気だ」
「うーん、困った困った………」
「ふっ、ここはわたしの出番ですね」
エミリアが片手で顔を覆って身体を斜めにするという奇妙なポーズで言う。
「なんだいそれは?」
「なんのポーズです?」
「ここは!わたしの術の!でっ、ばんですね!」
なんかアクセントが変な言い方のエミリア。
「術?あ、そういえば……」
つい先日エルフの国で道に迷った時エミリアが道しるべの術を使った時あったっけ。
「あの時のか!」
「なるほどな、道しるべの術ならここが迷いの森でも正しい道を選択出来る」
豊太郎と悠も気づいたみたいだ。
「そうです、あの術です!」
エミリアのポーズは変なので固定されたままだ。
「じゃあ早速」
「御意。 我、みーちに迷いしもーのなり、道しるべの神よー、我をー、妖精達の元へー導きたまえみーちみちみち道しるべのー神よー我の杖へ現れたまえー」
エミリアが杖を振って呪文を呟く。相変わらず長いなこの呪文。
呪文が終わりカッと杖の先が光る。そして目的地の方向に倒れ…………倒れ…………倒れない?
「ねえ、この杖壊れてんじゃない?」
「そんなことはありませんよ!至ってまともなはずです、むしろ高級品ですよ!」
エミリアが主張する。王女様の武器だもの、そりゃ高級品だよね。
「あ、ちょっと」
悠が杖を取るとコンコンと杖を叩く。
「強度もかなりある、簡単に壊れる代物とは思えんな」
「でしょー?そんな壊れたりしませんってー」
「じゃあ、壊れてんのはお前の魔法の方か?」
「失敬な!王族のわたしが魔法を使えないなんてありませんよ!」
豊太郎の言葉を否定するエミリア。
「杖も正常、魔法も正常、となると…………」
悠が森を見る。
「もしかして………道しるべの術も結界の影響受けちゃってる?」
「それ以外ないな」
「そんなー、わたしの魔法がー、わたしの出番がー!」
エミリアが頭を抱える。
「なあ、エミリアの魔法が効かないってことは結局魔法が駄目ってことじゃね?」
「あああー!わたしの魔法がー!わたしの唯一のアイデンティティが形無しにー!」
豊太郎の言葉でさらにダメージが入るエミリア。頭を抱える身体がぐわんぐわん動く。
「どんまい、エミリア」
アリエルちゃんがエミリアの肩に手を置く。
「デリカシーない」
「いいじゃんほんとなんだしさー」
さなえに肘打ちされながら突っ込まれるけど豊太郎は意に返さない。
「魔法が使えないってことは、あたし達、ずっと迷ったままなのかな」
絵里香ちゃんが不安そうに言う。
「なわけねえだろ、俺達は勇者だ、こんなんで諦めきれるかよ!」
豊太郎が拳を握り締めて言う。
「諦めないからと解決すると思ったら大間違いだ、諦めなくとも打開策が見つからなかったら意味がない」
「うぐ……」
けど悠の容赦ない指摘に言葉を失った。
「でも、諦めければきっと打開策の一つくらい………」
「黙れ、今それを考えてる」
「あ、はい………」
切り替えの速い豊太郎、けど悠のが動きが速かった。
何かないかな、僕も考えてみる。
「あ、」
声を上げたのは絵里香ちゃんだ。
「どうした?」
「いや、ハナマジンの力って花だよね」
「うん」
「それでお花さんとお話して妖精達の場所分かんないかなーって」
『それだ!』
僕達は声を揃えて言った。
「そうだよ、魔法に聞いて分かんないなら地元の人?花に聞けばいいんだよ!」
「お前天才だなー、流石委員長と呼ばれるだけあるだぜ!」
「ナイス絵里香」
「えへへ………」
僕達に褒められ絵里香ちゃんが恥ずかしそうに頬を染める。
「いや、さっぱり分からん」
悠が腕を組んで混乱していた。
「ちょっとー、それ空気読めないからやめよー。冗談だよね?それ冗談だよね?」
「いや、花はそもそも意志を持たんだろ、なのになぜ道が分かるんだ?」
「そっか、君は前からそういうやつだったね」
ハナマジンの試練の時も愛情がなにか分かってなかったし、深く気にしたら負けかな。
「とにかく、やってみるよ。ハナマジンの力!」
絵里香ちゃんがMギアを手に力を発動させる。
「花さん花さん、わたし達、妖精さん達のところに行きたいんだけどー、案内してくれるかなー?」
絵里香ちゃんがヒーローショーの司会のお姉さんみたく言うと花どころか木々がザザッと反応して枝が一つの方向を指した。
「あっちだよ!」
『おおっ!』
絵里香ちゃんに案内されて歩いていく。




