五十六話 竜人と天使の娘に天使の少年と雷鳥が加わるカオス
僕達が後ろの森に来ると周りの景色が庭園のようなものに変わり始めた。
「これって………」
「早速来たようだな」
急に別の場所に飛ばされるとか景色が変わるという現象も三度目、もう慣れた。
「なんだこれ、花?」
「可愛い」
現れたマジンは………花、だった。全身花、花、花、花だらけのマジンだった。花と言ってもバラやチューリップのような花弁が縦になってるものじゃない、ガーベラやタンポポのように横に広がったタイプだ。頭にも花がついててその下に目と顎がある、口っていうか顎、ロボットアニメにあるみたいな角張った顎。
「わたしは、ハナマジン。花を愛でるマジンです」
マジンが名乗る。見れば分かるけどね。
「さあ、わたしと一緒に花を愛でましょう」
「花を」
「愛でる?」
どういう意味だろう?
「つまり、ここでは花を愛でる試練を受けるということか」
悠が分かったように言うけど僕にはさっぱりだ。
「はい。では、共に花を愛でましょう」
ハナマジンが鈴が鳴る可愛い女の子のような声で言うと僕達の前にプランターや種、じょうろが出てきた。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
今から試練が始まろうとした時、エミリアが声を張った。
「試練を受けてる間にゴーレム達がまた攻めてくる可能性があります、マジンの試練は即刻中止すべきです!」
エミリアの声に僕達はしばらく声を失った。
「えっと………多分それは大丈夫だと思うな」
「え………?」
分からないという顔のエミリア、そこに悠がつけ加えた。
「シノビマジンの時に言われたがマジンの作る空間は外と時間の流れが違い、空間から出た場合に空間が出来る前から一秒も経っていないはずだ」
「そ、そうですね………ちょっと慌てたみたいです」
「そういえばエミリアちゃん、さっきもなんかおかしかったよね?心配事でもあるの?」
絵里香ちゃんが言うとエミリアが口を一文字に結んだ。眉も徐々に斜めになっていって拳も固められている。
「だって……」
「え?」
「だってわたし、影が薄いんですもん!」
『は?』
駄目だ、さっぱり分からん。
「せっかく勇者になったのに機械竜は倒せず、リベンジした時は他のみなさんとの合体技、機神竜になった時はあのぽっと出の手羽先が撃退してしまって…………影が、わたしとペガサスの影が薄いんですよー!」
僕達はエミリアの心の叫びになにも言い返さえなかった。いや、一人だけエミリアに異議を唱えた。
「ちょっとちょっとー、うちの雷鳥がぽっと出ってどういう意味でいやがりますかー!アホみたいな顔してアホみたいな声してますけど結構可愛いんですからねー!?」
アリエルちゃんが自分の相方を馬鹿にされた怒りをぶつける。むしろアリエルちゃん自身が雷鳥を貶してる気がするけどね。
「アホーアホー」
雷鳥がアリエルちゃんの言葉を繰り返しながら旋回する。
「自分でアホとか言ってますが………」
「ちょっとあんたー、自分で自分のことアホとか言うやつがいやがりますかー!戻るですよー!戻って利口にしなさい!」
アリエルちゃんが雷鳥の振る舞いに腕を振り上げて怒る。
「コトワルー」
「あ、喋った。てか会話した」
「すげー!あいつ喋れるのかー!」
豊太郎が雷鳥の言語能力に興奮する。
「喋れても言うこと聞かないと駄目ですよ!ほら、戻ってくるですー!」
「ふっ、やはりパートナーがその程度では使い手の精神も推して量るべきですね」
エミリアが蔑むように言う。
「ああ?どういう意味ですかそれはー!」
「頭がお花畑って意味ですよ、いつもアマツカさんとくっついてるあなたに相応しいんじゃないですか?」
「愛しの先輩とくっついてるのがなーにが悪いって言うんですか!恋愛経験のない子供には言われたくねえですよーだ!」
「はあ?大人の何が………」
「異議あり!」
エミリアが反撃しようとした時、アマツカが割って入った。
「アマツカ?」
「アリエルはいつも俺とくっついてるような印象があるが断じて違う!四六時中は一緒にいない!大体、そんなことしたら夫婦みたいじゃないか!」
顔を赤くしてエミリアの言葉を否定するアマツカ。
「え、違うの?」
「司、お前までそんなこと………」
僕にまでアリエルちゃんと夫婦と思われてショックを受けるアマツカ。いや、ショック受ける方がなんで?てなるんだけど。
「クエー!」
「いだだだだ!なにすんだお前!」
雷鳥がいきなりアマツカの頭をつつきだした。
状況を整理しよう。
「まず、エミリアが自分の影が薄いって言い出して、雷鳥のが活躍してるって言ったらアリエルちゃんが怒って、エミリアがアリエルちゃんとアマツカはいつもくっついてるって言ったらアマツカも怒って、そしたら雷鳥がアマツカをつついて………駄目だ、分けわかんない!」
僕はパニックになって頭を抱えた。こんな状況、情報過多だよ。
「いや、俺を見るなよ」
何か分かるかと悠を見たけど拒否された。悠でも分かんないことあんだね。
「ふっ、悠に分からなかったんだせ?俺に分かるかよ」
豊太郎はドヤ顔で言ってきた。
「カオスの中心にいる天使と竜人に天使と鳥が混ざり全てが混沌になる」
さなえは澄ました顔でそれっぽいこと言ってるだけだった。
「あ、みんなを止めないと、でもこれ………」
絵里香ちゃんは喧嘩を止めようとしてるけど混沌とした状況に凍りついていた。
ギャーギャー、状況は益々悪化するばかり…………。
「いい加減にしなさい!」
庭園に怒号が響いた。
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