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魔導奏者りりかさん魔界編  作者: 兵郎
四章 エルフエンパイアとメタリカの異変
55/60

五十五話 フェアリーアイランドとアンジュリアンの異変

今回から新天地の話です

魔導奏者りりかさん魔界編55


「で、どうだった?僕とアマツカのか、つ、や、く。これはもう、一騎当千てやつじゃないか、なー」


僕は晩ご飯を食べながらさっきの戦いの話をした。


「パッとくっついてバッて攻撃してチュドーンて感じだよな!」


豊太郎も力強く頷く。


「すごいすごい」


さなえがパチパチ拍手を送る。


「がったーい」


ヴァミラが両手を上げて言う。


「僕達もぜひともやってみたいね」


「そのためにも心身共に鍛えないとですね」


「ああ」


ペガサスとエミリアが言う。


「先輩が、先輩なのに先輩じゃない………」


アリエルちゃんがシクシク涙を流していた。


ダン!とテーブルが叩かれてびっくりした。悠が鬼の形相で僕を見ている。


「いい加減しろ!その話今日で五回目だぞ!馬鹿の一つ覚えみたいに同じ話ばっかするんじゃない!」


「すまん司、五回話されても俺にはさっぱりなんだが………」


アリエルちゃんの隣でアマツカが気まずそうに言った。


「ごめん二人とも流石に五回は言い過ぎた、やめるよこの話」


「ふん」



********



夜、いつの間にか僕の目の前には小さい羽根の生えた人達がいた。人っていうかこれフェアリーとか妖精っていうあれだね。


夜、だったはずだけどその光景は昼だった。


妖精達はなにかから逃げるように飛んでいく。その奥に現れたのは岩のような皮膚持つ怪物、ゴーレムだ。ゴーレムがズシンズシン歩いていき巨大な腕の振り下ろした。その腕が眼前に迫った時、映像が途絶えた。


「あっ、はあ、はあ………」


僕は直前に見た映像にびっくりした。周りを見るとアマツカや悠が寝ている。なんだ、夢か。夢?前にもこんなこと………てことは…………。


「予知夢き………たー」


興奮して一瞬叫ぼうかと思ったけど駄目だ、みんな寝てるもん。まだ暗いし、夜だし、寝よう、二度寝しよう、夜中に起きて寝るのが二度寝っていうのか分かんないけど。



***********



次の朝、朝ごはんの時にみんなに予知夢の話をした。


「あらまあ、内の孫はすごいねえ。見てもない景色が見えるなんて」


お祖母ちゃんが関心する。


「見てもないのは確かだが、司の見ている景色ではない」


悠が言う。


「どういう意味だい?」


「予知夢と司さんは言ってましたがそこにいる何者かが司さんにメッセージを送っているというパターンですね」


「前にも、こういうことありましたよね」


「確か前は、シノビマジンの姿が見えたんだっけ」


「へえ、すごいね。そんなことが出来るんだ」


初めて夢の話を聞いたペガサスが関心する。


「で、今回は妖精とゴーレムがいたんだろ?」


「妖精が、たくさん………」


「ヴァミラ、何か知ってるのかい?」


「ううん、そもそもそんな場所どこにあるのかなって。だって、妖精なんてそもそも滅多に見ないし」


「滅多にっていうか………」


僕達はアンジュリアンさんを見る。


「あの、なぜわたしを見るのでしょう?」


全員の視線が自分に集中して困惑するアンジュリアンさん。


「小さい、人……」


「あと羽根……」


「妖精の特徴にぴったり」


「お前、今まで天使の仲間だと思っていたが実は妖精なんじゃないか?」


ガルムが言う。


「なぜそう思うのです?」


「お前は技も見た目も天使に近いからてっきり天使だと思ってた。だが小型化すると子供どころか妖精と言うほど小さくなっている。どういうことだ?」


「さ、さあ………」


悠が問い詰めるがアンジュリアンさんは惚けるばかりだ。


「アンジュちゃんて、天使じゃなかったの?」


けどパートナーの絵里香ちゃんに問われ気まずい表情に変わった。


しばらくの間の後アンジュリアンさんは答えた。


「妖精です」


「やっぱり」


「で、妖精の街ってどういうことなんだよ?」


豊太郎がテーブルを乗り出して聞く。


「街というか森です、妖精達は森に住んでいます」


「どこの森?」


「精霊の国の近くにある孤島です、そこは妖精だけが住む楽園なんです」


「妖精だけの島、フェアリーアイランドか。次の行き先が決まったな」


「だね」


僕は悠に頷いた。


「しゃあっ、今度は妖精の島でゴーレム退治だぜ!」


『おー!』


豊太郎の言葉にみんなで両手を突き上げた。



**********



朝ごはんを食べ終えて小休憩した僕達はお祖母ちゃんの家を後にする。


「みんな、気をつけて行くんだよ」


お祖母ちゃんが僕達に別れの挨拶をする。


「はい!」


「また来るぜ!」


豊太郎が元気よく言う。


「元気にするんだよ」


「おおよ!」


「じゃ、行ってきます」


「行ってらっしゃい」


玄関を出て真っ直ぐフェアリーアイランド、ではなく庭に移動する。そこでシノビマジンの力で隠れ身の術を発動、周りの人に見られないように姿を消す。これは結界で一定の範囲を他の人から見えないようにする効果だ。自分や仲間も見れなくなったら大変だからね。


そこで悠がマカイターミナルを操作して魔界のマップを出す。


「ここか」


フェアリーアイランドを確認、エンターキーを押して詳細情報を呼び出す。


「な、これは………」


悠が言葉を失う。そこに出ていたのはノイズの画面と詳細不明の文字だった。


「あーあ、駄目だねこれは」


「あっちゃー」


「遅かった」


僕達はマカイターミナルでの転移が不可能となり悲観することになった。


「なんとかならないんですか?」


「ジャミングの解除か、やってみよう」


悠がキーボードの操作し、黒い画面が現れそこに無数の文字が現れる。魔界の文字だから全く読めない。


「前から思っていたけれど、これはなんだい?」


ペガサスがその画面を見て言う。


「プログラムだ、マカイターミナルを操作するためのな」


「プログラム?」


「プログラムって、そもそもなんだっけ」


「そういえばそうだな」


コンピュータ用語としてよく聞くけどその実、よく分かってない。


「そんなことも分からんのか」


「いいから教えて」


「容赦ないな、教えてもらう方だろお前らは……」


さなえの強引な態度に悠が苦い顔をする。


「いいか?命令とか指導書みたいなものだ、ロボット、いやアンドロイドと言った方が分かるやつもいるか。そのアンドロイドに右行けとか左行けとか言うようなものだ、それがなければアンドロイドは自力で動くことはない。アンドロイドの用途はそれだけじゃないから周囲の状況を認識させたりそれによって行動を変える必要があるからもっと複雑な命令が大量に必要だがな」


「へえー、プログラムって大変なんだね。で、これは何のやつなの?」


僕はマカイターミナルの画面を指さした。


「ジャミングを取り除くプログラム、なんだが………」


悠の眉が寄って額にシワが出来る。


「出来ないの?」


「ああ、かなり強力なジャミングだ。」


「ジャミングって言えば暗黒ジャグラーズがいるところだと通信出来なかったよね」


僕はドラグエンパイアの王都や狐流忍者の里でのことを思い出した。


「そういえばそうだな」


「となると例のゴーレムは暗黒ジャグラーズである可能性があるな」


「なら急がないと!こうしてる内にもフェアリーアイランドの人々は暗黒ジャグラーズに襲われているはずです!」


「と、言われてもな……」


エミリアが語気を荒らげるけど悠は難しい顔したままだ。


「アンジュちゃん?」


絵里香ちゃんがアンジュリアンさんに目を向ける。アンジュリアンさんはフェアリーアイランドの人、ていうか住人なのに慌てたり不安な様子がない。それどころか気まずそうだ。


「ごめんなさい、アンジュちゃんの故郷なのに早く助けられなくて」


「いえ、問題ありません。そういう事情なら仕方ないですから」


「アンジュリアンさん、なにかまだ隠してない?」


「いえ、別にそんなことは………」


「だって、故郷が襲われてるのにあんま心配してないっていうか……」


「いえ、そんなことは………」


「ちょっと司くん!アンジュちゃんは自分の故郷が襲われて気が気じゃないんだよ!それなのにそんな言い方………」


「ごめんごめん、言い過ぎたよ」


「マカイターミナルの転移機能は本当に使えないのかい?」


ペガサスが話題を変えるように言う。


「いや、使えることは使える。ただ、フェアリーアイランドに直接降りれないだけだ」


「つまり使えるんだね」


「あ、ああ」


「あ、てことは………直接行かなきゃショートカット出来るってことだよな?」


豊太郎が閃いたように言う。


「まあそうだか………だったらどうするつもりだ」


「だから、直接降りないで、フェアリーアイランドの近くの海に降りるんだよ。それならすぐ行けるだろ?」


「ああー」


悠の目が丸くなった。


「その手があったか!ナイス豊太郎!」


僕は手を豊太郎に向けて上げる。


「イエーイ!」


豊太郎が僕の手に自分の手をパンと重ねる。


「いえーい」


「イエーイ!」


さなえも手を上げて豊太郎はそこに手を合わせる。



*********



次元の穴を通ってフェアリーアイランドの近くの海に到着、空を移動して目の前の島に飛ぶ。


「あれだ!」


島で暴れてるゴーレムを発見した。


「急げヴァミラ!」


「おお!」


「おい豊太郎、一人で………うわー!」


豊太郎の指示でヴァミラが加速する。一緒にヴァミラに乗っていた悠は豊太郎を止めようとしたけどその隙もなく悲鳴を上げることになった。


「ちょっと待ってよ、ヴァミラー」


「俺達も行くぞ!」


僕達もヴァミラを追って加速する。


ゴーレムが妖精に拳を振り下ろすその瞬間が見えた。


「やばい!」


「させるかー!」


豊太郎の叫び声と共にヴァミラがゴーレムに突っ込む。ズガアァァ!衝撃と共にゴーレムが倒れていく。そのゴーレムは他のゴーレムも巻き込んで倒れて行った。


「おいヴァミラ、もう少し優しく体当たりしろ!落ちるぞ!俺が!」


「大丈夫かよお前。ほら、しっかり………」


悲鳴を上げる悠に豊太郎が手を伸ばす。


『あ………』


それも虚しく、悠の身体は落下していく。


「落ちるおち………」


「よっと」


間一髪僕は悠の身体をキャッチする。


「て、ない?」


「なんとか間に合ったみたいだね」


「あ、ああ」


悠はなぜか顔を赤くして僕を見る。


「大丈夫?熱でもある?」


「ない、俺はは大丈夫だ」


変なやつ、まあいいや。


「そっか」


悠を地面に下ろす。


「ど、ドラゴン?」


「天使もいるぞ!」


「うわ、なんか他にもいっぱいいる!」


後ろの方が騒がしい、妖精達が僕達の登場に驚いたんだ。


「大丈夫だよ。僕達は敵じゃない、世界を救う勇者さ」


僕は振り返って言った。


「勇者、ほんとにいたんだ」


「ただの伝説だと思ってたのに」


妖精達を見るとアンジュリアンさんみたいなレオタード風衣装の子がいたりバレエやスケートみたいに裾の短いスカートのついた衣装子がいた。


「ここは俺達に任せて早く逃げろ」


「は、はい!」


アマツカの言葉で逃げていく妖精達。


「オマエタチ、イイトコロデジャマヲ」


ゴーレムが起き上がって言う。


「そっちこそ、よくもジャミングなんかしてくれやがりましたねクソ野郎共!勇者として許さんですよ!」


エミリアがなぜかいつに無く乱暴な口調で啖呵を切った。


「そうだよ、ここはアンジュちゃんの故郷なんだからね!絶対に許さいよ!」


絵里香ちゃんもビシッとゴーレム達に指をつきつける。


「ペガサス!」


「おお!」


エミリアの声に力強く答えるペガサス。


「アンジュちゃん!」


「は、はい」


アンジュリアンさんも絵里香ちゃんの声に力強く、ないな。やっぱりなんかあるなこの人。


「行くよ、アマツカ」


「ああ」


僕達は手分けしてゴーレムに攻撃していく。


「はあっ!」


ギィン!


「グォォォ」


ゴーレムに接近して剣を振るうと鈍い音共にゴーレムが悲鳴を上げる。


「うわ!」


反撃にゴーレムがパンチを食らわしてきた。身体全体に重さが乗っかってくる。


「大丈夫か司」


「なんとか」


アマツカが受け止めてくれて地面に落ちなくて済んだ。


「こいつら、意外と硬いかも」


すぐに反撃出来るってことはあんまダメージ受けてないのかもしんない。流石ゴーレムだよ。


周りを見るとヴァミラ達もゴーレムに反撃されていた。


「どうする、悠?」


僕は悠に何か作戦がないか聞いた。


「ゴーレムの名の通り、並の攻撃をしても効かないだろうな」


「じゃあ、一撃必殺で行く?」


「そんな面倒なことせずとも………」


『はあー!』


悠の答えを聞こうたしたらエミリアと絵里香ちゃんの女子二人にかき消された。


ガキイィィン!


「グウッ…………」


ゴーレムが衝撃で退く。


「フンガッ!」


『きゃー!』


けどゴーレムの反撃で吹っ飛ばされる。


「エミリア!」


「大丈夫ですか絵里香」


ペガサスとアンジュリアンさんが二人に駆け寄る。


「馬鹿か、さっきも同じ目に遭ったばかりだろ」


悠が呆れた目で言う。


「大丈夫じゃないし。アンジュちゃんもっと気合い入れてよ、故郷なんだから」


「は、はあ………」


「さっきから様子が変だよ、どうしたんだい?」


「それは………」


ペガサスに心配されるけどアンジュさんは顔を逸らしたままだ。


「あーもう、やる気ないなら下がってて!」


絵里香ちゃんが怒鳴って言う。


「はい……」


「フウマジンの力よ!」


エミリアの言葉でペガサスの周りに一瞬風が吹く。


「アリエルさん、わたしのペガサスと連携お願いします!」


「分かりました!ライチョウ、ペガサスに合わせてください!」


「クエー!」


エミリアの頼みでアリエルちゃんがライチョウに指示を出す。


ライチョウとペガサスはゴーレムの周りを高速で飛行して竜巻を起こした。ゴーレム達はそれに巻き上げられて竜巻の中でグルグル回ったり電撃を食らったりした。


「ぐ、う……」


「あいつら、見境無しか!」


竜巻の風は僕達の方にも吹き荒れてきて踏ん張らないと飛ばされそうだ。


「しまっ……」


「悠!」


僕は飛ばされそうになった悠の腕を掴んで止める。


「助かった」


「いいよこれくらい」


「あーれー」


ドッ、と僕にさなえがぶつかってきた。


「ちょっとー、ちゃんとガルムに掴まっててよー」


「掴み損ねた。司、足になって」


「ええー」


正直、悠のことも抑えてるしこれ以上負担が増えるのも嫌なんだけど。


「司、負担が強いなら片方は俺が変わろう」


「やだ、司がいい」


「俺も出来れば司で頼む」


アマツカの申し出をさなえは淡々と、悠はなぜか顔を赤らめて断った。


「ええー、ええー」


駄目だ、支えてる人数は変わんないのにさっきよりも心無しか負担が増えた気がしたきた。


「てめえらずりぃぞ!お前らだけ司にくっつきやがって、俺にそっち行かせろ!」


豊太郎がヴァミラのしっぽにしがみつきながら言った。


「馬鹿言わないでよ!こっちはもう定員オーバーだって」


「チクショー!」


僕が断ると豊太郎は身体が浮いた状態で器用に地面に拳を叩きつけてた。



風が止んでゴーレム達が落下する。倒れたゴーレムからは電撃が走っている。


「ゴーレムはまひして動けない」


「ゲーム以外で電撃で麻痺するて初めて見たわ」


「ゴーレムが麻痺、いや、それ以前に………ゴーレムって土属性だよね?」


「見た目から判断するならそうなるな」


「土属性はゲームなら電撃は通用しないんじゃなかったのか?」


「全身が土だけならな、だがあれを見ろ」


僕とアマツカは悠の指す方を見る。


「ん?色が違う?」


その部分は茶色というか銅色に近かった。それがゴーレムの身体のあちこちで光っていた。


「恐らく、あれは銅だ。通常なら岩で出来た身体の強度を補強するため、となりそうだがあれは土を食った時に含まれていた銅が表面に現れただけ、とマカイターミナルにあった」


「銅が光ってるのは綺麗好きでいつも手入れしてるから、だっけ」


「ああ。そのため、表面の金属濃度が濃く、電気を通すやすくなっている」


「で、どうするあれ?処す?処す?」


さなえが急かすように言う。処すとかなんで古い言い方するんだろう。


「処すのは処すがやはり普通にやったらエネルギーを消費するな」


「じゃあどうすんだよ」


「そうだな、ここはやはり………」


悠から作戦を聞き終わるとゴーレムが麻痺から復活しだした。


ゴ、ゴゴゴゴゴ………。


「おそっ、ゴーレムだからって起きるの遅いんだけど。なにあいつ、まだ麻痺してんの?」


「パンチは重さに作用して加速するからな、下から身体全体を動かす時は岩の重さがデメリットとして作用するんだろう」


「ゴーレム、ざんねんないきもの異世界版」


さなえが言った。


ゴーレムが完全に起き上がる僕達はゴーレムに接近、他のゴーレムとの間を動きながら翻弄した。


空振りしたゴーレムのパンチが別のゴーレムに当たる。ドガアァァ!


「ウア、ァァ………」


派手な音と共にゴーレム達の身体が一気に砕けた。胴体も顔もめちゃくちゃ、もうゴーレムの原型を留めていなかった。


他に動けるゴーレムはもういない。


「幹部はいないみたいだな」


悠がゴーレムの残骸を見て言う。


「むう、これはまた敵が攻めてくるということですか」


エミリアが唸る。


「まあ、今回はいない方が良かったんじゃない?」


絵里香ちゃんがアンジュリアンさんを見ながら言う。


「ごめんなさい、わたし………」


「言わなくていいよ、アンジュちゃんにも秘密の一つくらいありそうだし」


「で、どうする?敵のアジトでも探すか?」


「いや、ここでの拠点も兼ねて妖精達を探す方が先だ」


「りょー、かい」


「合点承知」


僕とさなえは悠に敬礼した。

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