五十話 元勇者の昔話
ドラグナーだった二人も加えてアルレイド先生の家に戻ってきた。ドラゴンの方はヴァミラ達みたいに小型サイズになってる。
「ふう、」
日本人の彼が紅茶を飲んで一息。
「俺は八神大地、見ての通り日本人で歳は114だ」
彼が自己紹介するけど僕達は首を傾げた。
「見ての通り?」
「日本人なのは分かるけど歳は見た通りじゃなくね?」
「ざっと見積もって24くらいだと思うが」
「いえ、ざっと240程度ですね。人間の常識は存じませんが悪魔から見たら240歳くらいに見えますよ」
デモリアさんが言った。
「えっと、それは悪魔の寿命が長いという意味で?」
「でもそれだと彼の年齢は中途半端になってしまいますね」
「あいにく大地は悪魔じゃない、人間だ」
ドラゴンが言う。
「おっとこいつはドラグーン、俺の相棒だ。詳しく説明は後にするとして、実際俺は114歳で間違いない。200年は流石に生きてねえからな」
八神さんが言う。
「でも、日本人なのに100年も生きて悪魔みたいに見た目が変わらないって変ですよね?普通ならヨボヨボのおじいちゃんになってますよ?」
「そう思うだろ?それが違うんだなぁ」
八神さんが僕達に指を向けた後腕を組んで言った。
「違うってどう違うんだよ」
「どうやら向こうの世界とこっちとじゃ時間の流れが違うみたいなんだ。俺を見れば分かるけど100年経っても人間つうか人間ぽいもの?あんま歳取らねえんだよ。植物とか動物は人間界と同じスピードらしいんだけどな」
「はー」
駄目だ、聞いてもさっぱり分かんない、とにかくこの世界来ると寿命が伸びるてのは分かった。あれ、そういえば……………
「自分天界は何度か行ったことあるんですけどあそこで一日くらい過ごしても人間界戻ったらちょっとしか経ってなかったんですよね、時間の進み方が違うってことありません?他の動植物は少しの時間でも成長するよう進化したとか」
「なるほど、そういう考えもあるな。だが俺に聞くな、俺は人間界に戻ったことなど一度もない!」
「えぇ………」
「マカイターミナルにはその手の機能もあるはずだがあんたは持ってないのか?」
悠が言う。
「マジかよ、そんな機能あんの!?」
すごい食いつき、多分知らなかったみたい。
「こう、してだな………」
悠がマカイターミナルとMギアを使って次元の穴を開いて見せる。
「すげえな、今どきの勇者はこんなことも出来るのか」
八神さんは腕を組んで関心する。
「あんたのは違うのか」
「いや、俺のはMギアを使ってもただの地図のままだ。次元の穴を開く機能はない」
「ちょっと待ってください、となるとアルレイド先生はどうやってあっちとこっちを行き来してるんです?マカイターミナル単体じゃ次元の穴開けないんですよね?」
マカイターミナル単体で次元の穴開けるならマカイターミナルを持ってるエルフなら自由に異世界を行き来出来てもおかしくはないけど。
「実はこの近くには人間界に繋がる次元の穴がある祠があってな、あそこから出入りしてたんだ」
「なるほど」
「となると、その機能はマカイターミナルじゃなくてパワーアップしたMギアの機能ってわけか。やっば新しい勇者はすげえな」
八神さんが自分のMギアを転がす。
「それで、八神さんはどういう経緯で勇者になったんですか?」
「俺か?俺はな…………」
八神さんが昔話を始める。
「俺はあの時、中学生だった。幼なじみ五人でキャンプに来てたんだ、しかも男女混合でな。中学にもなったら部活や学校行事以外で男と女が複数集まって遊ぶなんてことねえだろ?」
「わたし豊太郎や司と幼なじみだけど今も遊んでます」
さなえが言う。
「マジかよ。じゃあどっちかのことが好きとかあんの?」
「ない」
「あ、嘘だろ。だって今一瞬間があったし」
「え、さなえ僕か豊太郎のこと好きなの?」
知らなかった、今までそんなことなかったのに。
「俺か?俺が好きなんたろ?」
豊太郎が自分を指差して主張する。
「ないったらない」
「なんだよ、違うのかよ」
「だよね、だったらとっくに告白してるよね」
ちょっと期待してたけどさなえに限ってそんなことないか。
「いや絶対あるだろ、どっちが好きなんたよ?」
八神さんがさらに聞く。
「だからないって言ってるでしょ!いいから続き話して!」
「わりいわりい、ちょっとからかっただけだって」
さなえに怒鳴られて八神さんが軽く謝る。珍しくさなえが怒ったな、もしかして本当に好きな人がいるとか?
「で、夜に星でも見てたんだがその時に空にでっかい次元の穴が開いてな、吸い込まれてこっちの世界に来てたんだ。そしたらいつの間にかMギアを持ってて目の前にドラグーン達が小さい時の姿でいたんだ。」
「しかもこいつら、待ってたとか悪いやつをやっつけるために俺達の力が必要とか急に言ってきてわけ分かんねえんだよ」
「ごめん、僕もあの時はそれしか言えなかったからね」
ドラグーンが言う。
「あーそれ、ヴァミラ達も言ってたなー。勇者の使うモンスターて最初からやることが頭に叩き込まれてるよな」
豊太郎が同意する。
「しかもどこから来たか分からないと来た、謎だらけなモンスターだよ」
「アマツカとかライチョウみたいに元々勇者のモンスターじゃないけど後からMギアを貰うこともあるけどそれはどう思います?」
「それは初めて聞いたな。俺達は最初から五人と五体だし増えることもなかったが」
「恐らく、あんたの時は最初から最後まで五人で十分だから例外的にMギアとモンスターが現れることはなかった。だが俺達の場合は状況に応じて魔界がMギアとモンスターを追加せざるを得ないかもしれないな」
悠が推測する。
「ふーん、じゃあ元々Mギア使いのモンスターになるやつはどっから来たんだ?」
「ペガサスのように物心ついた時に自分が何をしていたか分からないやつもいることから、やつらは最初から完成されたモンスターとして存在していることが分かる」
「最初から?」
「野生じゃない、つまり養殖、いや人工的に作られたというべきか」
「誰がそんなことを」
「もしヴァミラ達を作ったやつがいるならお前達は創造主の顔を見ているはずだ、だがそんなことは一言も発していない。誰もそんなやつはいないということになる」
「なに言ってんの悠」
「等々頭が壊れたか」
「天才だから頭使いすぎておかしくなったのかな」
「またそれか!俺は断じて壊れてなどない!」
悠が声を荒らげる。
「誰もいないというのは誰かと呼べるような存在じゃないということだ!」
「いや、分かんないし。分かるように言ってよ」
「つまり、この世界が、世界の意志がヴァミラ達を作った、といのが正解だ」
「世界の意志、そういえばアルレイド先生がそんなこと言ってたっけ」
「ああ、この世界は危機になるとそれを止めるために抑止力として異世界から勇者を呼んでモンスターを使わせると言われている」
アルレイド先生が言う。
「ま、世界が特定のモンスターを意図的に作るなんて話、その伝説がなければただの戯言だがな」
「あ、与太話てのは分かってるんだ」
「一言余計だ馬鹿」
「いてっ」
悠に頭を叩かれた。
「で、いきなりバケモノが出たからとにかく自分の身を守るためにドラグーン達に倒してもらったってわけさ。Mギアの使い方は頭の中に流れて来たからやるのは簡単だったさ。ただその後が大変でな」
「なにが大変なんだよ」
「道が分からん、どう進めば悪いやつがいるのか分からん、飯を探すのも一苦労、野宿なんてザラ、テントと食材と調理具があるキャンプ場なんかと偉い違いだぜ」
「うわ、めんどくせー」
豊太郎が嫌そうな顔をする。
「僕達は行く先々で暗黒ジャグラーズに会ったからね、八神さん達に比べたら目標がある分楽だよ」
「しかも悪いやつが文字通りの化け物とも限らねえ」
「どういうことです?」
「竜人とか獣人とか人っぽいやつを懲らしめる時もあるってことさ。人間、つうかヒト?にもいいやつも悪いやつもいるからな。いやーな役人とか闇金貸しとか女を食い物にするやつとか、色々いるってわけさ」
「本当の悪は人の心にしか存在しないってわけですか」
「そういうこった、漫画の読みすぎじゃなくてリアルにな。中にはやり過ぎて殺しちまった相手もいる」
「殺しちまったってえ?」
「じょう、だんだろ?」
僕達は言葉を失った。モンスターならともかく自分と似た姿を持つ人に限りなく近いものを殺すなんて。
「笑えねえだろ?俺達はそういうことを繰り返して来たのさ、大抵は殺して周りのやつからチヤホヤされたさ。けど、人殺しは人殺しだ。自分達がやらなくても捕まえた村人が調子に乗ってそいつを殺すこともある。そんなことを繰り返せば………」
それを聞く僕達はとても辛い顔をしていただろう。
「ま、当然おかしくなるわな。最後まで戦えたのがおかしいくらいだぜ。で、イービルクイーンつうラスボスを封印するとこまでなんとかやったんだがな、そっからが問題だ」
「こっから?」
「さっきのも大分やばいのにまだあんのかよ」
「まあ聞け、戦いが終わった後俺達は試練の遺跡とかいうとこに飛ばされて元の世界に帰してくれるって言われたけど俺ともう一人、石戸賢治てやつは残ることにしたんだ。なんでも、この世界は弱いやつが虐げられる気にいらない世界だから作り変えるんだと」
「もしかして、旅の中であったことを気にして?」
「そういうこった」
「あんたもそういうことで残ったのか」
「いや、俺は単にこの世界が面白そうだから残っただけだ。賢治みたいに大層なことは考えちゃいねえよ。で、その賢治が暗黒ジャグラーズの皇帝でメタリカが賢治のパワーアップした相棒ってことさ」
「えっと、この世界が弱い人が虐げられる悪い世界だから自分が全部支配して作り変えるってことですか?」
「そういうこと」
「でも暗黒ジャグラーズが攻めてくるのに100年ぐらい経ってね?準備にしては時間かかり過ぎだろ」
「お前達がいなければ国一つ余裕で壊せるくらいの軍がいくつもあるくらいの規模だからな、それなりに時間はかかるさ」
「だとしてもおかしいですよ、侵略なんてちょっとやり過ぎです!乱暴ですよ!」
絵里香ちゃんが怒って言う。
「それは俺も聞いたがあいつも強情で聞き耳持たないからな。本人から聞いたけどあいつも大分苦労してるみたいだぜ、だから気持ちは分からんでもないっていうか………」
「親父さんからよく殴られてたんだってさ、それでおふくろさんが親父さんを殺しちまったんだよ。それで残ったあいつは親戚に預けられたらしい」
「それって…………」
「そ、いわゆる虐待ってやつ?だから勇者になったこの世界で自分の理想郷を作ることにしたんだろうな」
「理想郷、確か遥香もそんなこと言ってたな。ま、原因は大体分かってるが」
悠が悩ましい顔をする。
「やめて、その原因僕だから!絶対あの時死にかけた僕だから!」
「俺だってああしたのは緊急事態だからだぞ!」
僕とアマツカは耳を塞いで悶えた。詳細は省くけど僕は昔のアマツカの怪物退治の余波で死にかけて記憶喪失になって幼なじみの悠と遥香ちゃんに会わなくなったから遥香ちゃんはそれを気にして暗黒ジャグラーズに誘われたって遥香ちゃん本人が言ってたんだ。
「先輩は悪くありません!悪いのはイービルクイーンです!」
「大丈夫、司が気に病む必要はない」
アリエルちゃんとさなえが言う。
「そっか、そうだな。ありがとうアリエル」
「そんな先輩、ありがとうだなんて、もー感激ですー!」
アリエルちゃんが頬に手を当てて身体をくねらせた。
「バカップル二人はほっとこう」
「そんなバカップルだなんて」
「く………」
アリエルちゃんは身体をくねらせ続けアマツカは何も言わず顔を赤くするだけだった。
「お二方は過去に何か悪いことをしたのでしょうか?」
僕はエミリアに事情を簡単に説明した。
「それは………大変でしたね」
「でしょー!大変だったんだよ僕ら」
「つうかさ、イービルクイーンて復活したんだな。しかも人間界で」
八神さんが言う。
「復活したけど倒しましたよ」
「封印に変わる新しい力でな」
「マジかよ、やっば新しい勇者すげえな。てかなんでイービルクイーンは人間界にいたんだよ、新しい力ってなんだよ」
「魔界に封印されてたのを盗んで開封して人間界で利用した二人組がいてその二人ごと暴れてた」
「最悪だな、暴れるなら人間界じゃなくて魔界でやれよ」
「で、新しい力ってのがギアーズアクト。使うと金ピカのアーマーがついてパワーアップすんだぜ」
「こっちだって賢治と二人でいた時に出たやばいモンスターと戦う時にドラグナーになれるようになったりメタリカがパワーアップしたりしたんだぞ」
なぜか豊太郎と八神さんが張り合っていた。
「ドラグナーはともかくメタリカは賢治さんのパートナーですよね?」
「俺の仲間だから俺の力と言っても過言じゃねえだろ」
「ジャイアンか!」
「賢治と二人の時、とはまるでイービルクイーン以外にかなり強力なモンスターがいたようだな」
悠が言う。
「ああ、ゴジラとかウルトラ怪獣並にデカかった。あんなのこの世界じゃありえねえだろてくらいのデカさだったよ、結局ただ暴れ回っただけで何がしたかったか分かんねえけどな」
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