四十七話 リッカとメタリカと遥香
リッカは翌朝、再びメタリカの元に現れた。
「また君か、今度は何の用だ」
メタリカがうざったそうに言う。
「ねえメタリカちゃん、メタリカちゃんはどこから来たの?」
リッカが言う。
「そんなこと聞いてどうするんだ」
「どうもしないよ。ただ、メタリカちゃんてどこから来たのかなって」
「君の思うようなところではない、こことは遠くにある場所だ」
「遠くって?」
「竜人の国でも、獣人の国でもない、もっと遠くの場所だ」
「じゃあ、悪魔とか天使の国?」
「いや、国ですらないよ。あれはどこかの遺跡だったかもしれない、そこにいたのは分かるけどどこの遺跡かは分からない。けど、そこは確かに遺跡だった」
「それで、その後は?」
「気がついたら森にいて目の前に人間がいた」
「人間て耳も尖ってなくて魔法もろくに使えないっていうあの人間?」
リッカは自分の家に滞在している遥香を思い浮かべながら言った。
「ああ、あの人間だ。その時から僕の頭には悪いやつを倒せって命令があった、だからそのために目の前にいる人間と手を組んだ。旅をしながらいくつもの邪悪を倒した。やがて旅も終わり、役目も終わった。終わったんだ」
メタリカは自嘲気味に言った。
「終わった?じゃあ、今は?」
「邪悪を倒すための兵器からただ破壊するだけの兵器になった。ただそれだけの存在だ、昔も今も変わらない」
「ふーん。で、兵器ってなに?」
予想だにしなかった返答にメタリカは瞬きする。いや、メタリカのそれは通常のものとは違う。目の光が一瞬なくなるという形式だ。
「戦うための道具だ」
「戦う、戦う戦う……………戦争ってこと?」
リッカは結論を出すのに時間がかかった。戦争というものにあまり縁がないのだ。
「そうだ」
「なんかつまんない」
「つまらない?」
「なんかつまんないよ、戦うだけの道具だなんて。メタリカちゃんのやりたいことってなに?あなたはそれで幸せなの?」
「ああ、僕はあの時一緒に旅した人間と今も一緒だった、からな」
「だった?」
「僕は兵器だ。けど戦いで傷つき、本来の役目を果たせなくなってしまった。だから共に旅した人間の元には戻れない」
そう呟くメタリカの胸にはどこか孤独感に近いものがあった。
「なら、あたしが一緒にいてあげる。一緒にいれなくなった人間さんの代わりがメタリカちゃんと一緒にいる」
「必要ない、帰れ」
「いやだ、今日は帰らない」
「帰れ」
「帰らない」
メタリカはリッカを睨むが腕を振って弾くという力技には至らなかった。傷が悪化するからではない、少しばかり心を許しているのだ。
「よい、っしょっと」
リッカはメタリカの背中を登り始める。
「おい、何をしてる」
メタリカは擬似感覚があり、リッカが自分の背中にいるのが分かる。
やがてリッカはメタリカの背中にあるビーム砲に跨った。
「怪我しても知らないぞ」
メタリカは内心ヒヤヒヤしていた。
「大丈夫だって、これくらいへい…………あっ」
「おい!」
案の定リッカはメタリカから落下し、地面に落ちてしまう。
「あいたた…………」
リッカが痛みに尻をさする。
「全く、そんな無茶するからだ」
「もう、助けてくれたっていいんじゃない?」
「無理だ、お前は僕の後ろに落ちた。助けるのは不可能な位置だ」
「知ってる、ちょっとからかっただけ」
リッカはメタリカの足に近づき寄りかかった。
「今度はなんだ?」
「なんにもないよ、ただ一緒にいるだけ」
「おい」
少ししてメタリカは話しかけるが返事はない、どうやらリッカは寝てしまったようだ。
そんな状況がずっと続いたがメタリカは飽きなかった、むしろいつまでも続けばいいのにと思うほどだった。
「あっれー、メタリカちゃーん、こんなとこにいてどうしたの?ひょっとして、帰れなくなっちゃった?」
そこへ遥香がピエロッサクラウンとクイーンサキュバスを連れて現れた。
「何ノ用ダ」
メタリカが鬱陶しそうに言う。
「探したのよー、あなたがファクトリーから急に出て次元の穴に入っちゃうからー。外に出た途端空飛んでどこか行っちゃったから探すのも一苦労よー」
クイーンサキュバスが言う。
「フン、余計ナオ世話ダ」
メタリカはそっけなく答える。
「おやおや?おやおやおや?」
ピエロッサクラウンはメタリカの側で眠るリッカに目をつける。
「リッカちゃん!?なんでこんなところに?ていうかその鉄板なに?」
遥香もリッカの姿に驚き、メタリカに貼られた鉄板に目をつける。
「知リ合イカ」
「知り合いっていうか、あたし達がお世話になってるお家の娘さんだね」
「ホウ」
「ニーフィスちゃんがこの子が鉄板持ってったって言ってたけどそういうことだったのね」
サキュバスが言う。
「それにしても、この少女可愛いですねー。痛みを与えたらさぞいい悲鳴を上げそうですよ」
ピエロッサクラウンが指を曲げる動作をしながらリッカに近づく。
「ソノ女ニ手ヲ出シテミロ、貴様ヲ躊躇ナク破壊スル」
「ひ、ひいー!」
メタリカに睨まれピエロッサクラウンは逃げるように立ち去った。
「破壊なんて無理なくせに」
遥香が言う。
「ナニ?」
「かーらだ、ボロボロじゃない。ちょっとでも動いたらもっと壊れるんじゃない?ってことで今のはハッタリー」
遥香はメタリカの装甲をコンコン、と叩いた後両手鉄砲のようなポーズを作る。
「フン、クダラン」
「茶番はさておき、帰るよ。メタリカちゃんが飛べなくても皇帝さんにお迎え来てもらえばいいし」
「ヤメテオケ」
遥香が端末を取り通信を試みるがメタリカはそれを止める。
「どうして?」
「元ヨリ、皇帝ハ敗者ナドニ興味ハナイ。ボーンキングヤ、アンデッドバーサーカーガ死ンダ時モ、同ジダッタハズダ」
「ふふーん」
遥香は当時のことを思い出し難しい顔をする。
「あなたは勇者達に負けた、だから自分もその二人と同じ敗者と思っているのね」
クイーンサキュバスが悲しげな瞳で言った。
「だったら、あたしがその皇帝になってあげる。あたしが皇帝になって、魔界を支配すれば好き放題出来るでしょ?そしたら敗けた人も見捨てられるなんてこと、ないでしょ?」
「ふっ、ふふふ………」
「ハハハハハハ!」
それを聞いてクイーンサキュバスとメタリカが派手に笑い出した。
「ちょっと、何がおかしいのー?」
遥香はむっつりした顔になる。
「変わってるな、この女と同じほどに変わっている」
「全くね、昨日だって父親相手に啖呵切ってたし。女の子は家の道具じゃない、だったかしら」
二人はリッカを指して言った。リッカは父親と日頃から喧嘩しており、昨晩もリッカの帰宅時には激しく口論になった。
「おかしいわよねー、女ってのは文明社会じゃ男にいいように扱われるだけだっていうのに」
「そんな未発展文明の女の話はしないでくれる?今は江戸だの明治だのとは違うの、平成、だよ?言っても分かんないか。とにかく、あたしは世界を取るの!」
遥香は手を振りながら力説する。
「大きく出たわねー、わたし、一応あなたのお目付け役なんだけど」
クイーンサキュバスがそう言った時、付近に新たな来客が現れる。
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