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魔導奏者りりかさん魔界編  作者: 兵郎
四章 エルフエンパイアとメタリカの異変
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四十五話 エルフの里でマジンを探せ





朝ごはんを食べた後。


「じゃ、行こっか」


「え、行くの?」


「場所わかんないのに?」


引き気味に言うさなえとアリエルちゃん。そんなに行きたくないか。


「行かないのか?」


悠が不機嫌に言う。


「だってー、場所わかんないのに行ったって疲れるだけじゃーん。ちゃんと行けるかもわかんないし」


「だから行かない」


「マジか」


豊太郎が言う。


「待っておかしい、アリエルちゃんはMギア持ってないからいいけどさなえがマジンから力貰わないとガルムも戦いづらいし戦力増えないんだけど」


僕はさなえを非難するように言う。


「それは困る、わたしだけでも行かせてもらおう」


ガルムが言う。


「え、行くの?」


「足手まといはごめんだからな、嫌なら置いてくぞ」


「うぐ………」


置いていく、その一言でさなえは泣きそうになる。


「行こうぜさなえ、当てもなく歩くのも案外楽しいもんだぜ?」


「共に勇者の努めを果たしましょう」


豊太郎とエミリアがさなえを誘う。


「行くのか、行かないのか、どっちだ」


悠が迫るように言う。


「行く」


さなえがか細い声で言い、ようやく立ち上がる。


「さーて、あたしも行きますか!一人で留守番てのも寂しいですし」


アリエルちゃんが立ち上がりながらアマツカにウインクする。


「あざとい」


「うぁっ………」


けどアマツカにジト目で言われ固まってしまう。この子、最初から留守番する気なかったでしょ、面倒だから行きたくないて意思表示するだけで本当に留守番はする気はなかったでしょ。


これをアマツカに話すと


「こいつは昔からこうだ」


笑って言った。昔からなんだ。


「めんどくさくない?」


「めんどくさいがもう慣れた。なにせ何十年も一緒なんだからな」


「なにそれ、夫婦?」


「なわけないだろう、まだ結婚もしてないんだぞ」


「いやん、夫婦だなんてー、恥ずかしいですー」


アマツカの言葉を他所にアリエルちゃんが顔を赤らめて身体をくねくね捻らせた。


「言ってろ」


アマツカが冷めた目でアリエルちゃんを見る。


玄関に向かうとアルレイド先生が来て言った。


「わたしも行こう」


「アルレイド先生?」


「いいだろう?わたしもマジンとやらを見てみたいからな」


「はあ………」




村を抜け森の中へ進み歩き回る。ヤミマジンは街に出たらしいけどエンマジンとシノビマジンは人里離れた場所にいた、てことはこの辺りのマジンも人の多いところじゃなくて人のいない森の奥にいるはずだって悠が言ってた。


「で、こっからどう探すの?」


「さあな、当てはない」


悠が肩の横で手を広げて言った。


「当てはないって、森に来たのも当てがあったんじゃないのかよ」


豊太郎が言う。


「俺が分かるのはマジンは人里離れた場所にいるということだけだ、あくまで推測だがな」


腕を組んで偉そうに悠が言う。


「かっこつけてるけど、五十嵐くんも分かんないんだよね?」


絵里香ちゃんの言葉に悠は力無く笑うだけだった。


「ならばそれを使ったらどうだ?」


レオパルドがリュックに下がってる金の方位磁針を見る。


「なるほど、これは使えるな」


「なんだそれは」


アルレイド先生が言う。


「狐流忍者の洞窟で拾ったんですけど邪悪なモンスターや強力なモンスターが出た時に反応する勇者のアイテムらしいです」


「ほう、そんなものがあったのか」


「つまり、これがあればマジンの強力な力を探知出来るってことだね」


「ああ」


僕達は金の方位磁針をリュックから外して手に持つ。


「あ、わたしだけ方位磁針があるませんね」


「どういうことだ、エミリアも勇者だろう?」


エミリアとペガサスが言う。


「勇者は勇者でも以前は数に入ってなかったからな、この方位磁針は以前の勇者が使っていたものだからエミリアの分はない」


「あれ、ありました!方位磁針、ありました!」


エミリアが声を上げる。


『はー!?』


エミリアの手元を見ると確かに僕達のと同じ方位磁針があった。


「なんで?!え、なんで!?なんであんの!?」


僕は叫びながらエミリアの方位磁針を指さした。


「まるで必要になったから急遽用意された、としか言いようがない出し方だな………」


悠が辟易しながら言った。


「すげえなこれ、勝手に出てくるとか便利過ぎだろ」


「マジック?ねえ、なにかのマジックなの?!」


豊太郎や絵里香ちゃんも驚きを露わにする。


「とにかく、これでエミリアもモンスターを探知しやすくなったな」




それからしばらくして…………。


「ねえ、まだマジン出てこないのー、あたし疲れたんですけどー」


「わたしも疲れたー」


アリエルちゃんとさなえが悲鳴を上げる。かれこれ一時間ぐらい歩き通しだけどマジンの気配どころか方位磁針にも反応がない。


「わがまま言うな、こっちだって疲れてるんだ。それくらい我慢しろ」


悠が嫌そうな顔で言う。


「あれ、もしかして悠もバテちゃった?」


「なんだその余裕は?」


「いや、こっちの世界来て何日か長い距離歩いてるのに意外とみんな体力ないなって」


「まだ一週間程度だからな、その内否応なしに慣れるさ」


ビーン!方位磁針が急に正面を向いた。


「なになに?なんなの?!」


「馬鹿な、さっきまでまるで反応がなかったのに、どういうことだ?!」


僕と悠は方位磁針の急な変化に混乱する。


「これって………」


「これって前に何かがいるってことだよな!」


「やっと休める」


エミリア達はやっと何かに会えるという歓喜に湧く。


カタカタカタ!方位磁針の向きが斜め上に動いた。


「これ、斜めにも動くの!?」


方位磁針て普通、地面と並行に動くんじゃなかったの?!


ヒュオォォ。


「風?」


上から淡緑の風が吹いて来て僕達に迫ってきた!なんだろう、この既視感。けどその既視感に浸ってる暇はなく、次の瞬間に僕達は別の空間に移動していた。


「集会所?」


元太くんが言う。ここは狐流忍者の里にあった集会所とよく似ている、けど…………。


「確かに似てるかもね、けど集会所っていうより体育館に近いかも」


「言われてみれば確かにな、俺達の世界にある体育館とよく似ている」


「体育館?」


「屋内運動場のことですよ、狐流忍者の里にそのような場所はないのですか?」


エミリアが言う。


「ないよ、運動する時はいつも外でやるし」


「な、なるほど………」


エミリアは国内とはいえは予期せぬカルチャーショックを受ける。日本でも方言とか地方限定の文化とか色々あるしよくあることかな。


「因みにわたしの近所にもありません」


「わたしもよ!なんで竜人だけ地元に屋内運動場とかいう気取ったものがあるんだ!運動なんて外でいくらでも出来るだろ!」


デモリアさんは落ち着いて言うけどアルレイド先生はなぜか怒って言った。


「でも雨になったらスポーツ大会とか中止になって困りますし…………」


「く、これだから都会は…………」


アルレイド先生が拳を握り締めて悔しがる。


「でもいいもん、人間界の学校行けばいくらでも体育館行けるし」


なにその強がり。


「まあアルレイド先生は人間界でも先生ですしね」


「そうだよ、わたしは先生だよ」


なぜかそこでふんぞり返るアルレイド先生。なんかさっきから情緒不安定だな。


「あの、そろそろいいですか?」


恐る恐ると言った声が前からする。あ、忘れてた。そこにいたのはシノビマジンみたいに服を着たような姿じゃなくてエンマジンのように風そのものが四肢を構成していて顔の部分に丸いパーツがあった。もしかして、そこが目?あいつモノアイなの?の割に女の人みたいな声だったけど。


「あ、どうぞ」


「おほん、えーわたしはマジンに名を連ねるが一柱、フウマジンと言います」


「あんたが………」


「ほう」


「これがマジンですか」


マジンを初めて見た元太くん達が関心する。僕達はもう三人目だから知ってたから流れで分かったけどね。


「で、あんたはどんな試練を寄越すんだ?」


悠が言う。


「あ、はい。わたしはですね、えっと………こちらをですね…………」


フウマジンがおどおどしながら手を横に出すと巨大な何かが現れる。


「こ、これは………扇をくっつけて回すことで風を生み出すというあの、扇風機!」


エミリアがご丁寧にさなえから教わったと思われる知識を元に現れたものを解説する。


「でもこれでかくない?」


「ああ、バラエティとかでたまに見るサイズだ」


「つうかなんで扇風機が異世界にあんだよ!」


「ふ、扇風機ならエルフにも普及しているぞ」


アルレイド先生がドヤ顔で言った。うぜえ、なにこの態度、うぜえ。


「あの、まさかこれに耐えろ、とか言いませんよね?」


恐る恐る聞いてみる。


「はい、そのまさかです」


チーン、まさかのそれか。いやー、まさか暴風に耐えるゲームを僕達をやることになるなんて思わなかったなー、ははは。


「というわけで、始めます」


「へ?」



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