四十三話 リッカとメタリカ
アルレイド先生の家。
「父上ー、母上ー、今帰ったぞ」
「あらリリフィア、おかえりなさい。その人達は?」
四十歳ぐらいの女の人が出迎える。
「勇者様だ、グレーと赤の影を追っていたら会ったんだよ」
「ゆ、勇者様!?なにぬえ勇者様が?」
「暗黒ジャグラーズて知ってます?」
僕はアルレイド先生のお母さんに聞いた。
「暗黒ジャグラーズ。ふむ、占いで出ておったあれですか。なるほど、あなた達はそれを追ってきた。そうですね?」
占い、センカさんもやっているあれか。
「はい」
「いいでしょう、わたしはあなた方を歓迎します」
靴を脱いで中に案内される。どうも表情が固い人だな。
「父上は?」
アルレイド先生がお母さんに聞いた。
「村長会議に出掛けてしばらく帰らないよ」
「そうか、村長も色々大変だな」
「村長、村長…………」
ダメだ、思わず笑ってしまう。偉いのか偉くないのか微妙な人だな。
「笑うなし」
「すいません………」
謝ったのはエミリアだった、王女様ー、あんたも笑ってたのかー。王女様からの村長の娘へのマウンティング、なんて高高度なんだ。
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森の中の湖、メタリカは佇んでいた。ここにいたところで傷が回復するわけではないが体力を休めるにはちょうど良かった。
湖に自分の姿が映る。
「僕も随分ボロボロになったな」
メタリカが流暢な言葉で言う。
「君、大丈夫?」
少女が近づいてくる。亜麻色の髪、青い瞳、尖った耳、メタリカは過去の記憶からそれがエルフ族だと判断する。
「ナンダ、オ前ハ」
メタリカは機械合成したような声で恫喝する。
「あたし、リッカ。あなたは?」
少女は臆せず答える。そのあどけない態度にメタリカは少し呆気に取られるも受け答えに応じる。
「我いや、僕はメタリカ」
機械合成の声は意味がないと認識し流暢に答える。
「そう、メタリカちゃんね」
ちゃん、という接尾語にメタリカは嫌悪感を覚える。この女、遥香というやつに似ている。掴みどころがなく何を考えてるか分からない上に何かを企んでいる。そういう臭いがするのだ。
「あなたってアンドロイドなの?素材は?」
アンドロイド、という呼称も知っている。エルフを模した二足歩行の機械のことだ、エルフが作ったそれは兵器になることもあるという。だが彼らはそんなことは好まず、家事や生活のパートナーとして利用しているに過ぎないらしい。
「マカイメタルだ、簡単に見つかる素材ではない」
「え、高級品のあなた?」
マカイメタルは魔界でも希少でかなりの硬度を持つ金属のことだ。
「同時に兵器でもある」
「へい、き………」
あまり聞かない単語にリッカは言葉を失う。
「だから僕を直す必要はない、仲間が僕を直しに………おい」
メタリカの言葉の途中でリッカは姿を消した。元より自分は兵器だ、エルフの施しなど必要ない。
だがメタリカの予想に反してリッカが戻ってきた。それも鉄板と工具を持って。
「何をする気だ?」
「ちょっと待ってね」
リッカは質問には答えずメタリカの身体に鉄板を打ち始める。
「お、おい………」
呆れるメタリカを他所にリッカは作業を終わらせてしまう。鉄板で出来たハリボテドラゴンの出来上がりだ。
「これで、おしまいと」
汗を拭い一仕事終えるリッカ。
「もう、どうにでもなれ………」
今のメタリカは諦めモードだった。
「じゃああたし、帰るから。元気でね」
「ああ」
リッカは今度は戻ってくることはなかった。
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遥香、クイーンサキュバス、ピエロッサクラウンはエルフの街を歩いていた。
街行くエルフ達が彼女達を見る。
「目立ってるね、あたし達」
「ま、わたし達はここの住人に比べたら異端ですからね」
「しょうがないわね」
遥香は二人の発言に眉を潜めた。
「ていうかさ、君達が目立ちすぎなだけじゃない?だってさ、ピエロにエロエロお姉さんだよ?目立たない方がおかしいじゃん!」
「失敬な!これはわたしの正装ですよ!?簡単に変えられると思ってるんですか!」
「それ言うならわたしのだってサキュバスとしての必要な衣装なんだから脱げないわよー」
二人は遥香に反論する。
「でもこれ目立つからさあ、なんとか隠せない?」
遥香もなんとか食い下がる。
「そこの旅人」
中年の男が三人に話しかける。
「あ、いえ違うんです!あたし達は別に怪しい者じゃなくて…………」
遥香は慌てて弁明する。
「行くところがないなら俺のところにこんか?」
「へ?」
遥香達は男の家に案内される。小屋があり、そのなかに炉や金属板がある。
「おじさん、鍛冶屋だったの?」
遥香が言う。
「まあな、俺っちは街一番の鍛冶屋で有名なんだぜ」
男が腰に手を当てて言う。
「へー、どんなの作ってるの?」
「見たいか?」
「うん」
「あの、遥香?」
「いいの?こんなことして」
ピエロッサクラウンとサキュバスが怪訝になる。
「いいじゃん、まだメタリカちゃん見つかんないんだし。おじさんにお世話になっとこうよー」
「むう、それを言われると耳が痛いですね………」
「ちょっとだけよ」
「ごめん、もうちょっと色っぽい声で言って?」
遥香はサキュバスに言う。
「なんでよ」
「いいから」
「ちょっとだけよ」
サキュバスは咳ばらいするとエコーがかかりそうなほど色っぽい声を出した。
「ズッキューン!」
遥香は衝撃に打たれ、鼻血を出した。
「えっと、遥香?」
サキュバスは遥香の態度にあっけに取られる。
「大丈夫、大丈夫だから……」
遥香は鼻を抑えて言う。
「おー、あったあった。これだよ、よく切れる包丁なんだよ。なんたって断面がギザギザしてないからね」
「じゃあツルッツルなんですか?」
「おうよ」
「すごい!ツルッツルー」
「おう、ツルッツルよ!ただすぐ刃がボロボロになるのが難点なんだけどな」
「駄目じゃないですか」
「いや、研げばまた普通に使えるんだよ?」
「やだめんどくさい」
「ああ、みんなこの包丁買ってくと後でそう言うんだよねー。やだやだ」
「我が主、今帰られたのですね」
奥からメイド服のお姉さんが出てきた。
「うむ、今戻った」
「そちらの方は?」
お姉さんが遥香達を見る。
「ああ、この人達は旅の人だよ。おっと、まだ名前を聞いてなかったな」
男に言われ遥香達が自己紹介する。
「わたくしはメルタ家のメイド、ニーフィスと申します」
「実はこいつ、アンドロイドなんじゃよ。人間に近い機械という感じだな」
男が補足する。
「アンドロイド?!エルフがアンドロイドを作ってるて話は聞いてたけどほんとにアンドロイドなの?!」
遥香が驚いて声を上げる。
「はい、なんなら触ってみます?」
「い、いいんですか?」
「どうぞ」
ニーフィスが腕を差し出す。
「で、では…………」
緊張して遥香が手を伸ばす。ニーフィスの肌に触れると最初は柔らかかったがその奥には鉄やアルミのようなゴツゴツした感触が表れる。
「か、硬い………」
「よく出来てますでしょう?」
「は、はい」
遥香がニーフィスから手を離す。
「ところでリッカお嬢様に何か申し付けたでしょうか?さきほど鉄板を何枚かと工具を持ち出したのですが」
ニーフィスが男に聞いた。
「いや、聞いてないが。あいつはなんて言ってたんだ?」
「いえ、詳しくは。とにかく必要だと仰っていただけで」
「何をする気なんだあいつ。あ、そうだあんた達今日はここに泊まっていかんか?今日はもう遅いだろ?」
男は遥香達に言った。
「いいんですか?」
「ああ、三人くらい大したことないさ」
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