四十一話 アンダーグラウンドと遥香とメタリカとの再戦
「あんなにたくさんいたワイバーンを倒しちゃうなんてびっくり、アンダーグラウンドってこんなすごい人もいるんだ」
「ここはあなたのいた世界とは違うわ、これくらい起きても不思議じゃないわよ」
「ふーん、流石異世界ってところかな」
クイーンサキュバスさんと遥香ちゃんが反対側の入口から現れた。
「新しい、獲物かしら?」
二人を見てデモリアさんが舌なめずりする。
「待て、あれは俺の獲物だ。攻撃は待ってくれ」
悠がデモリアさんを制する。
「どういうことです?」
デモリアさんが地上に降りる。
「いやー、助かったよお兄ちゃん、あの人あたしごと倒しそうな顔してたもん」
遥香ちゃんが笑って言う。
「あの、以前も五十嵐さんのことをお兄ちゃんと呼んでいましたが、あなたは?」
エミリアが言う。
「あっれー、お兄ちゃんちゃんと言ってなかったのー?」
遥香ちゃんがからかうように言う。
「ふっ、あの時はそれどころじゃなかったろ。それに、あれから聞かれなかったからな。言わなかった理由はそれだけだ」
悠が吐き捨てるように言う。
「それで、彼女は………」
「妹だよ、悠の」
僕が口を開いた。
『妹?!』
エミリアと一緒に元太くんやデモリアさんが口を揃える。
「この世界に来る少し前にピエロの怪人に誘拐されたんだ。エミリアはもう見てるよね?」
「確か、ピエロッサクラウンと名乗った方がいましたが……」
「そう、それ」
「それからあたしはお兄ちゃんや幼なじみの司お兄ちゃんが幸せになれる理想郷を作るために奔走してるってわけ」
遥香ちゃんが言う。
「奔走なんて難しい言葉よく知ってるね」
「まあね」
ニヤリと自慢するように笑う遥香ちゃん。
「理想郷、とは?」
「ああ、それはこいつが勝手に言ってるだけだ。気にするな」
「ひどいなもう!」
悠の言葉に涙目になる遥香ちゃん。相変わらず遥香ちゃんの扱いが酷いな、悠は。こんなんでよく遥香ちゃんも悠のために理想郷なんて作ろうって思うよね。
「で、用向きなんだ?俺達を仕留めるならもっと早く出てきてもいいはずだ」
「さっすがお兄ちゃん!話が早くて助かるー」
キャピって音がしそうなポーズで言う遥香ちゃん。 すると遥香ちゃんは頭をあまり動かさずに左上の方に目を向けた。
僕もそっちに目を向けてみる。
「監視カメラ?」
壁の角のところに直方体の監視カメラが下げられていた。
「監視カメラってなんだよ」
元太くんが聞いてくる。
「悪い人が出た時に何が起きたかとか、誰がやったかとか分かるようにするために記録するものだよ」
「へー、すごいなこの工場。って、もしかして俺達の顔見られてる?」
「見られてるけど警報鳴ってワイバーンがたくさん出てきたから今さら気にする必要ないけどね」
「でもなんであいつ監視カメラとか気にすんだよ?味方だろ?」
「味方に秘密の何かをするため」
豊太郎とさなえが言う。
「秘密ってなんだよ?」
「分からない、分からないけどあれは何かを企んでる目」
遥香ちゃんがこっちに来る。
「あ、サキュバスさんは来なくていいよ」
「遥香?」
「大丈夫だって、危ないことはしないから。ちょっとお耳を拝借」
遥香ちゃんは悠に耳打ちする。ゴニョ、ゴニョニョ。駄目だ、読唇術とかないからよく分かんないよ。しかめっ面をする悠だけど何やら納得した様子。
悠が遥香ちゃんから離れて今度は僕に耳打ちしてくる。
「暗黒ジャグラーズには皇帝と呼ばれるトップがいるらしいがその皇帝にアンダーグラウンドに行くと報告をしたところ、その時の皇帝の様子がおかしかったらしい。そこで遥香は俺達に機械竜と戦って様子を見て欲しいと言っている」
うんうん、よく分かんないけど分かった。僕は悠に親指を立てると豊太郎に耳打ちする。
「暗黒ジャグラーズには皇帝ペンギンがいてね、遥香ちゃんが僕達に会いに行くって言ったら皇帝ペンギンの様子がおかしいから機械竜に会って調べてくれだって」
「お、おう、分かった」
難しいけど分かったって顔だねこれは。豊太郎はさなえに、さなえはエミリアにとどんどん耳打ちしていく。
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暗黒ジャグラーズ本拠地、皇帝の間。そこで皇帝は侵入者の現れたアンダーグラウンドのファクトリーの監視カメラからの映像を見ていた。
「皇帝陛下!遥香とクイーンサキュバスがアンダーグラウンドに向かったのとのログがありました!僭越ながら、わたしも向かわせていただきたいのですが………」
ピエロッサクラウンが現れて言う。
皇帝は監視カメラの映像を見ていて訪問者がいることに気づかない。映像では遥香がなにやら敵方の勇者に耳打ちしている。勇者は遥香から離れると仲間に耳打ちしていく。
どういうことだろうか、遥香は暗黒ジャグラーズのはず。なのになぜ敵である勇者に耳打ちする必要があるのだろうか。あの女、何を企んでいる?皇帝は眉を潜め思い悩む。
謀反ならば早めに手を打つべきだがそのつもりなら勇者など手を組まずにこちらの幹部を誘惑した方が早いはずだ、なのになぜ…………。
「皇帝陛下!」
ピエロッサクラウンが声を上げ、皇帝はようやくそこに彼がいると気づいた。
「なんだ君か。ちょうど良かった、アンダーグラウンドに向かってくれないかい?」
「は?な、なにゆえそのようなことを?」
皇帝が自ら具体的な命令を下すことは少ない。幹部達は状況に応じて自ら指針を考え、皇帝に許可を取り実行に移すのだ。
「ちょっと気になることがあってね、調べてきてくれないか?」
「はっ、皇帝陛下の仰せのままに」
皇帝に忠実な彼は深く聞くということはしなかった。だが部屋を出る時思った。そういえばアンダーグラウンドはあのメタリカの支配領域でしたね、彼の身に何か起きたのでしょうか?いえ、違います。メタリカが傷を受けたなら真っ先に戦闘支援を要請するはずです、なのに陛下は調査を命じられた。何か別の理由があるのでしょうか。ま、なんにせよ私は命令に従うだけですが。
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「というわけで、メタリカちゃんのお部屋にごあんなーい」
『いえーい!』
というわけで僕達は遥香ちゃんの案内で機械竜のいる部屋に行くことになった。なぜか遥香ちゃんの手にはツアーとかでガイドさんが持ってそうな旗があった。
この部屋で全て倒してしまったのかここを出るとワイバーンが出ることはなく楽に進めた。
「ここがメタリカちゃんのお部屋になりまーす」
また一段と広い部屋に出た、どうやらここが目的みたいだ。
「人間、ナゼ勇者達ヲ、連ツレテキタ。ヤツラハ
ファクトリーヲ汚ス侵入者ノハズダ」
機械竜が鋭い目付きで遥香ちゃんを睨む。
「や、やだなぁ、メタリカちゃんのとこに連れてきた方が勇者も早く倒せるじゃーん」
それを遥香ちゃんが笑って受け流す。
「ソウイウコトカ」
「というわけであとよろしくー」
僕達から距離を置く遥香ちゃん。
「ちょっと遥香ちゃん?!」
僕は扱いの酷さに声を上げた。
「いやー、元からそのつもりだったしいいからさっさと倒されてよ」
なんかむかつく言い方だなー。
「構うな、俺達は俺達の役目に集中しろ」
悠が言う。
「へーい」
僕達はMギアを取り出す。
「エミリア、お前のMギアには俺達がギアーズアクトの力を得た時と同じ金色の部分がある。だからお前もギアーズアクトが使えるはずだ」
悠が言う。
「なるほど、やってみます」
そして僕達は叫んだ。
『ギアーズアクト!』
「はあっ」
「グオオォッ!」
「グルゥアッ!」
「ウオォォッ!」
「はっ!」
「ブルル………」
すると金色のアーマーと武器をまとったモンスター達が現れた。
「ワイバーン達ヲ全テ倒ソウト、何度来ヨウト、貴様ラデハ我ニハ勝テン」
機械竜が言う。
「どうかな、いっけーアマツカ!」
「おお!」
アマツカ達が飛び立ち、機械竜に襲いかかる。
「はあっ!」
ガキィィン!
アマツカの剣、聖剣エクスカリバーが振るわれ、迎撃してきた機械竜の爪に当たる。エクスカリバーは機械竜の爪の表面を引き裂いた。
「やった!」
アマツカの一撃が決まって僕はガッツポーズを取る。
「何ッ!我ノ、身体ヲッ!?」
自分の身体が破損したことに驚いた機械竜が声を上げる。
「くらえー!」
ゴアッ!
ヴァミラが金色の炎を発射して機械竜の全身を炎に包ませた。
「グ、身体ガ燃エル、コレ以上ハ部品がモタン!」
それは単純に痛いというより身体が壊れるということへの悲鳴だった。全身機械だから流石に痛みとかなさそう。
ブスン、プシュンプシュン。機械竜の身体が高温により悲鳴を上げて煙を出す。
「今度はこっちの番だ!」
ガガガガガ!
炎が止むとレオパルドがバルカン砲を発射する。弾丸が機械竜の装甲に当たって表面から削っていく。
「キエロ!」
機械竜が背中のビーム砲を展開するとレオパルドはすぐに離脱する。代わりにガルムが出てきてビーム砲を発射した。
ズガンズガン!
機械竜のビーム砲にガルムのビームが当たる。
「はぁっ!」
アンジュリアンさんが槍を機械竜のビーム砲に突き刺すとバチバチと火花を立ててビーム砲が爆発した。
「ウインディーシュート!」
ズキャンズキャンズキャン!
ペガサスの羽からビームがいくつも発射される。何本のもビームを受けて機械竜が怯む。
「我ノ身体ヲココマデ傷ツケルトハ、ヨクモヤッタナァ…………ギャオンオオン!」
『うわぁぁぁぁ!』
機械竜の近くにいたアマツカ達が悲鳴を上げる。
「あ、頭が痛い………」
僕は機械竜の雄叫びに耳を抱えた。頭がガンガン叩きつけられる感じだ。
「音波か?いや、金属音の類か!」
悠が言う。
「こうなったら、一気に仕留めるぞ」
「分かった!」
僕達はMギアを構えて叫ぶ。
『ギアーズアクト・レボリューション!』
「ぎ、ギアーズアクト・レボリューション」
エミリアが後から続けて言う。
するとアマツカの剣、アンジュリアンさんの槍、ガルム、レオパルド、ヴァミラ、ペガサスの口からエネルギーが発射されて七色の光になった。
キュアァァァァ、ボンボンボンボン!
「グアァァァァ!」
光を全身に受けた機械竜の身体が所々爆発していく。
「やったー!」
「しゃっ、決まったぜ!」
「これでやつも終わったな」
僕達はガッツポーズを取ったり声を上げたりして勝利を喜んだ。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
皇帝は監視カメラを通してファクトリーでの戦闘を見て驚いた。
「ギアーズアクト!?馬鹿な、やつらが既にあの力を持っていたなんて………………確かに勇者の数は五人だ、いや、一人増えている。だがあれは世界を闇に陥れる女王を倒すための切り札だったはず、それがどうして…………」
皇帝は狼狽する、そこに映っているものが存在が信じられないと言うように。
「メタリカっ!」
ギアーズアクトの武装をしたアマツカ達に蹂躙されるメタリカを見て皇帝はさらに狼狽する。
「僕の、僕のメタリカがっ!」
その声はもう悲鳴に近いものだった。だが悪夢はそれだけでは終わらない。彼らの必殺技を受け、メタリカの身体はさらにボロボロになっていく。
このままではメタリカがやられる、そう思った皇帝は魔力で出来たキーボードを操作する。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
一方、機械竜とアマツカ達の戦いが始まった頃の近く。
「やっほー、ピエロちゃん。ピエロちゃんも来てたんだ」
遥香はピエロッサクラウンを見つけ手を振る。
「その呼び方、やめてもらいます?子供じゃないんですから」
ピエロッサクラウンは嫌そうな顔をする。
「あたしまだ子供だけど?」
遥香は意にかえさない。
「あなたも勇者達に会いに?」
クイーンサキュバスが聞く。
「いえ、皇帝陛下直々に命令を受けました。ここを調査しろとね」
「ふーん、皇帝さんも変わったことするね」
アマツカ達がメタリカを苦しめていく。
「で、これどう見る?」
「メタリカ殿の劣勢、でしょうね。勇者達は以前にもあの力を使おうとしましたがあの時やられていたら私もひとたまりもなかったでしょうね」
メタリカがアマツカ達の必殺技を受けて身体が爆発していく。
「あちゃちゃー、こりゃ派手にやられたねー」
遥香が手を額にかざしてメタリカの惨状を眺める。
「天下の暗黒ジャグラーズも等々三体目の幹部がやられましたか」
ピエロッサクラウンが落胆する。
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