三十九話 教会への帰還とアンダーグラウンドに向かう遥香
「あ、そういえば…………」
「どうした?」
悠が僕の方を向く。
「アマツカの正体バレちゃったから教会戻れないね」
「そういえばそうだったな………」
悠が苦い顔をする。
「悪魔の人たち、天使のこと嫌いみたいなことよく言ってたわね」
教会に居候してる狐耳の獣人のレナが言う。
「どうすんだよ、俺達今日野宿じゃねえかー!」
豊太郎が頭を抱える。
「お風呂、入れない………」
さなえもこの世の終わりのような顔をする。
『すまない、俺のせいで』
アマツカが謝る。
「いいよもう、アマツカのおかげで助かった命もあるんだし」
『本当に、すまん………』
「俺、先行ってみんなを説得してくる!」
「元太?」
「おい元太ぁ」
他の獣人の子達が止めるのも待たずに元太くんは走り出してしまった。
しばらく歩くと戻ってきた。
「大丈夫だって、中入れるよ」
「ほんと?」
「ああ。ちょっと苦戦したけどアマツカに助けられたって爺さんがいてその人が他の教会にいる人達を説得してくれたんだ」
『爺さんてまさか』
アマツカが口を開く。
「ああ、君が助けたお爺さんだよ」
『そうか……………、俺は悪魔達に嫌われてなかったんだな』
アマツカが心底安心したような顔をする。
「良かったね、アマツカ」
「ああ」
教会に近づくと青いツインテールのシスターがいた。
「お待ちしておりました。わたしはこの教会の司祭、デモリアと申します。勇者の方々ですね、この度は街の人々を助けていただきありがとうございます」
「え、あなたが?!」
思わず声を上げた。若い女の人にしか見えないのに司祭?司祭って教会で一番偉い人だよね?女の人まではいいとして、若くない?
「なにか?」
眉を釣り上げるデモリアさん。
「あ、いえ………」
「司、失礼だぞ」
「ごめん」
悠に怒られちゃった。
「みなさん、戦いでお疲れでしょう。どうぞこちらへ」
デモリアさんが表情を変えずに言った。
デモリアさんに案内され、教会の入り口に向かう僕達。
「ごめんなさい、僕達………」
僕は悲痛な面持ちで口を開いた。今の僕達は完全に敗戦兵だ。街の人は助けられた、死んだ人や怪我した人もいたかもしれないけど何人のも人を避難させられた。けど、僕達は敵のボスである機械竜を倒せなかった。
「あなた方の表情を見れば分かります。あれに簡単に敵うとは思いませんから。どうやらそれは勇者様も例外ではないようですね」
デモリアさんは全て分かってるという風に言った。
「まるでやつらを知ってるような口振りだな」
悠が言う。
「わたしもあれとは戦ったことがありますから」
「町外れの教会の司祭ともあろう人間が、わざわざご苦労なことだな」
悠が皮肉に言う。さっき僕にデモリアさんをジロジロ見たのを失礼って言った君が言う言葉かな。
「たまたま買い物に行った時に会っただけです。あんな怪物、わざわざ会いに行こうだなんて思いませんよ」
「おー、戻ったか天使殿。さっきは助かったよ、君は命の恩人だ、ありがとう」
入り口でアマツカが助けたお爺さんが待っていて、アマツカの手を握った。
「爺さん………」
「さっきと見た目違うのに分かるんですか?」
僕はお爺さんに聞いた。
「ああ、分かるよ。面影がピッタリだ、あんたは間違いなくさっきの天使殿だよ。辛かったろう、みんなに恐い目で見られて。でも大丈夫だ、わしはちゃんとあんたのことを見てるからな」
お爺さんがアマツカの表情から気持ちを察して言う。
「爺さん、俺………」
アマツカはお爺さんに抱きつき、咳を切ったように泣き始めた。
「う、うっ、うっ、爺さん、俺………」
「辛かったな、辛かったろう………」
お爺さんはアマツカの背中を撫で始めた。
気づかなかった、アマツカがこんなに辛い気持ちになってたなんて。僕、アマツカのパートナー失格だ。
「フ……」
誰かが息を漏らす声が聞こえた。
「笑った?」
さなえがデモリアさんに言う。さっきのはデモリアさんのだったのか、鼻を鳴らして笑ったのかな。
「いえ、気のせいです」
デモリアさんはむっつりした顔で言った。
「でもさっき…………」
「気のせいです」
さっきより強めの声でデモリアさんが言う。
「わ、分かった」
お爺さんと一緒に中に入ると最初来た時とは明らかに中の人数が増えていた。みんな一様に角と小さい羽根が生えていて僕達を見ている。
「やっぱりみんなアマツカのこと気にしてるのかな」
勇者の凱旋というよりは変な劇団がやってきたみたいな調子だ。
「気にするな、というのが無理な話だ。というかアンジュリアンは今も天使の羽根を生やしてるぞ」
悠が言う。
「ご心配なく、わたしは悪魔の街の妖精です。悪魔に天使のささやきをし、彼らを聖なる道に引きずりこみます」
アンジュリアンさんが言った。
「ある意味悪魔だな、堕天じゃなくて昇天するんじゃないか」
「こちらです」
僕達は食堂に案内された。
「なんで食堂?」
「カトリーヌからあなた方は朝食を食べてすぐ出かけたと聞きました。お腹が空いたでしょう、今昼食を作って参ります」
そう言ってデモリアさんが食堂を出ていく。
「カトリーヌって?」
僕は悠に聞いた。
「最初に俺達を出迎えたシスターだろ。少し考えれば分かるだろう」
すると馬鹿にしたのうな返事が来た。
「はぁ………」
ふいに息が漏れた。
「どうした司」
アマツカが声をかけてきた。本人に言われるとかなり辛い。
「僕、ずっとアマツカと一緒にいるのにアマツカのことちゃんと見てなかったなって………」
それに対しアマツカは?という表情で僕を見る。
「だから、さっきの戦いの、悪魔の人達に恐がられたのを気にしてて辛い思いをしてたのに気づかなくて…………」
どうも上手く言えない、やっぱりこういうのを告白するのって大変だな。
「そんなことか。気にするな、お前は十分俺のパートナーとしてやっている、だから………大丈夫だ」
「ごめん、ほんとごめんアマツカ…………」
アマツカは謝って欲しいわけじゃないんだけど僕には謝ることしか出来なかった。
「ていうかどうするよ。どうやってあの機械野郎を倒すんだよ、ヤミマジンはアマツカにしか力くれなかった上に暴走すんだろ?ここじゃパワーアップのしようがないだろ」
豊太郎が言う。
「大丈夫、ギアーズアクトがあるよ!」
絵里香ちゃんが力強く言う。
「でも、あれは途中で変身が解けてしまいました………」
「ぐ………」
けどエミリアに言われてる煮え湯を飲むことになった。
「実際あれってどんな感じなんです?」
アリエルちゃんがレオパルド達に聞いた。
「変身が解けた直後はなんともなかったが今となっては大分体力を消耗している」
レオパルドが言う。
「後から疲れが来ると言ったところだな」
ガルムが言う。
「アマツカは最初こっちの世界来た時すぐに変身出来たよね?」
「確かに、こいつらが貧弱なだけじゃないか?」
アマツカが言う。
「貴様、俺達に喧嘩を売ってるのか」
「いや、それは違うな」
吠えるレオパルドを悠が制する。
「違うってなにが?」
ヴァミラが首をかしげる。
「レオパルドもこちらに来てすぐ巨大化出来た、お前もそうだろう?」
「う、うん」
ヴァミラが頷く。
「つまり、ギアーズアクトの解除は単純な時間制限や長時間の使用によるものではない。恐らく、エネルギーの消耗が激しくお前達の身体が耐えられないのだろう」
「やはりこいつらが貧弱なだけか」
「おい」
悠の言葉で再び睨み合うアマツカとレオパルド。
「はいはい喧嘩はそこまで、もうすぐお昼出来るからそれまで大人しくしててね」
絵里香ちゃんがパンと手を叩いて言った。
するとちょうどお昼のシチューが運ばれてきた。
「わーい、ご飯だご飯だー!」
ヴァミラが両手を上げて喜ぶ。
僕達の前にシチューが運ばれてくるのを見て安心してきた。今日は朝から戦い通しだったからな。グゥー、あ、鳴っちゃった。その音を聞いてみんなが僕を見る。
「ごめん、シチュー見たらお腹空いてきちゃった」
『あはははは!』
間の抜けた僕の声にみんなが大笑いした。はは、なんか緊張感が抜けてく…………。
シチューを食べてるとカトリーヌさんが言った。
「あの、わたし達に出来ることはありませんか?わたしも勇者様の力になりたいんです」
「って、言われてもなぁ………」
騎士とか戦闘訓練受けてる人ならともかくシスターに言われてもちょっとなぁ。
「やめなさいカトリーヌ、あなたの力ではあの機械竜はおろかワイバーン達にも太刀打ちできません」
デモリアさんが諌めるように言う。
「でもっ!」
けどカトリーヌさんは引き下がらない。
「ちょうどいい機会です、わたしが教会を代表して勇者様の力になりまりしょう」
「へ?」
「は?」
「マジで?」
デモリアさんの言葉には僕達も驚いた。
「いや待ってください、デモリアさんも一応教会の人ですよね?なのに機械竜と戦うとか無茶ですよ?!アマツカ達でも敵わなかったんですよ?!」
僕はデモリアさんに言った。
「聖職者というのは基本的に魔力や祝詞の扱いに長けています、司祭ともなればかなりものにます。どうです?機械竜を相手取る、とまでは言いませんがワイバーンの駆逐程度なら力になれますよ」
デモリアさんがニヤリとして言う。笑顔は笑顔なんだけどちょっぴり恐い笑顔たった。
「あんたの力を借りるのを計算しても機械竜を倒すにはこちらのパワーが足りない上に敵の数が多すぎる、打開策はない」
悠が苦い顔で言う。
「でも、機械竜はギアーズアクトの必殺技で倒せるんじゃね?」
豊太郎が言う。
「ギアーズアクト・レボリューションだな、確かにそれなら行けるかもしれない」
必殺技の名前覚えてるんだ、あの長いやつ。
「だが敵の数が多いのはどうしようもできないな。今回戦った敵はアンデッドマシーンよりも強い上に数もかなりのものだ。当然次出る時もかなりの数で来るだろうな」
「あたし達、勝てないのかな」
「八方塞がり」
絵里香ちゃんとさなえが言う。
「そんなことで諦めるなんて、君たち勇者は意外と腰抜けなのかい?」
「ペガサス?」
「世界を救う勇者と聞いたからもっと強いかと思ったけど、残念だよ」
「誰が諦めるって言ったの?僕は行くよ、ね?アマツカ」
「ああ。確かに俺は悪魔達に恐れられた、だが戦うのをやめるわけには行かない。いや、ここに戻ってきてなおさら戦う気が湧いてきた」
アマツカが力強く言う。
「先輩が行くならあたしも行きます!」
アリエルちゃんが言う。
「俺もだぜ、これでビビる俺達じゃねえ。だろ?」
「おー!」
豊太郎とヴァミラが言う。
「わたしも行く」
「右におなーじく!」
さなえと絵里香ちゃんが言う。
「それでこそさなえだ」
「ええ」
ガルムとアンジュリアンさんが言う。
「わたしも勇者になって間もなくですがどんな敵が来ようと逃げません」
エミリアが言う。
「どうする、悠?後はお前だけだぞ」
レオパルドが言う。
「チッ、分かったよ、行けばいいんだろ、行けば」
やけくそ気味に悠が言った。
「だったら、工場に行こうぜ」
元太くんが言った。
「なんでまた工場?工場が機械竜と関係してるの?」
「ああ、前に来た時こっそり後付けてみたら町外れの工場に帰って行ったたんだ」
「ちょっと元太くん!今日だけじゃなくてその前もそんな危ないところに行ってたの?!」
カトリーヌさんが元太くんを責める。
「いいじゃん怪我してないんだからさぁ」
聞きたくないという元太くんの返事。
「いつものことよ、馬鹿はほっときましょ」
呆れたようなデモリアさんの言葉。いつもなんだ。
「だがこれで行き先が決まったな。元太、案内頼めるか?」
悠が言う。
「おう、任せろ!」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
暗黒ジャグラーズ本拠地、皇帝の間。皇帝の前に機械竜メタリカの影が現れる。
「君か」
皇帝が反応する、その声は以前見せた威厳のあるものではなく若い男のものだった。
『ドラグナーが現れた』
機械竜の声も司達に見せたのと違い流暢なものだった。
「またあいつか」
皇帝の眉が釣り上がる。その名は何度も機械竜から聞いた忌々しい名だ。
『心配ない、僕は君のパートナーだ。君がいる限り僕は負けない』
その言葉に皇帝は自然と笑みが零れた。
「そうだな。君は無敵だ、ドラグナーなんかには負けないさ」
『任せろ』
機械竜の影が消える。
「あのー、ちょっといいですか?」
突如、部屋に遥香が現れ皇帝はいすまいを正した。
「なんだ?」
皇帝は今のやり取りを聞かれてないかと不安になりながらも威厳のある声を出す。
「アンダーグラウンドに勇者達がいるって情報掴んだんだけど行ってもいいかな?」
恐る恐る遥香が聞く。
「アンダーグラウンド?そうか、必要がなかったから言わなかったのか」
皇帝の言葉に遥香は疑問を浮かべる。必要がないとはどういうことだろうか。
「構わん、行きたまえ。私のお墨付きをやろう」
「ははっ、ありがたき幸せ」
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