三十七話 機械竜メタリカ登場!
「俺、は………」
アマツカはダメージを負いながらも何かに追い立てられるように立ち上がる。
ズン、ズン。鈍い音が地面から聞こえてくる。
「なに、地震?!」
「馬鹿な、ここは地震が多い地域なんて聞いてないぞ!」
悠が叫ぶ。
「いえ、違いますマスター!なにか来ます!」
レオパルドが言う。来るって、誰か大きい人が歩く時の足音ってこと?
「なにかって、なんだよ」
「おっきい、なにか………」
「おっきいなにかってなんだよ!なにかって!でかいのは足音に決まってんだろ、俺が聞いてんのは足音の正体が誰かってことだよ!」
豊太郎がヴァミラのあやふやな言葉に突っ込みを入れる。
「あれを見てください!」
エミリアが指を差す方向にマシンワイバーンの新たな部隊と共にその正体が現れた。
「なに、あれ…………」
僕はその姿に言葉を失った。その身体は周囲の建物を優に超える大きさを持ち、身体の全てが機械で出来ていた。マシンワイバーンみたいに身体の一部だけが機械になってるのとは違う竜が、そこにいた。言うならば全身機械のマシンドラゴン!
「我、ハ、機械竜、メタリカ、悪魔、ヲ、殲滅、セシ、者、ナリ」
機械竜が口を開いた。その声は機械質で、合成された男だが女だが分からない鈍い声をしていた。
「ほう、面白いな。新手か」
アマツカはその姿に恐れもせず、笑みを浮かべた。笑ってる場合じゃないんだけどな、サイズ的に。
「我ガ、兵ヨ、侵攻ヲ、開始、セヨ」
『オォォォー!』
機械竜の号令でマシンワイバーン達が雄叫びを上げ街を攻め始める。
「目標変更だ!レオパルド達はマシンワイバーンを殲滅しろ!」
『おお!』
悠が命令を出してレオパルド達をマシンワイバーンに向かわせた。
「あの数相手だと俺達がいても足手まといだ、隠れるぞ」
悠が続ける。
「うん」
「分かった」
僕達は建物の影に移動した。
「どうすんだよ、あんなの倒しきれんのか?」
僕達は聞こえないと思っていた声がして目を見開いた。
「お前達、逃げたんじゃないのか」
悠が言う。そこにいたのは狐耳の子供たちだ。
「逃げてなんかわよ、隠れてちょっと様子見てただけよ」
レナが言う。
「ていうかみんな天使が恐いっていうけどあの黒いのはほんとこえーよな、あっという間にワイバーン倒しちまった上に勇者も苦戦してるんだぜ?」
元太くんが言う。
「そうだな」
悠がマカイターミナルを取り出して操作すると画面が五つに別れた。レオパルド、ヴァミラ、ガルム、アンジュリアンさん、アマツカをそれぞれ映していた。
レオパルドが背中に積んだバルカン砲でマシンワイバーン達を一気に仕留めていく。ガルムも同様に背中のビーム砲でワイバーン達を仕留める。
ヴァミラは口から放った広い範囲に及ぶ火炎放射でマシンワイバーン達にダメージを与える。その広さからは逃げきれず、それを受けたワイバーンは灼熱の温度に苦しんだ。
アンジュリアンは槍を使って何体のもワイバーンを連続で仕留めていく。
アマツカだけはマシンワイバーンではなく機械竜に向かって飛んでいく。
「ちょっとアマツカ!」
僕はその無謀さに叫んだ。サイズ的に無理なのにほんとに向かってくなんて。
「ぐあっ!」
やっぱりあの大きさの機械竜にはパワーで勝てず、強靭な腕に弾きとばされてしまう。
「ぐうぅっ」
一時は倒れたのに痛みを堪えながらもまた機械竜に挑みかかる。
「がっ!」
また倒れるアマツカ。
「ぐ………」
僕はその光景に歯ぎしりすると建物の影から出た。
「おい、どこへ行く」
悠が僕を引き止める。
「あんなアマツカ、もう見てらんないよ!」
そう叫ぶと戦場のまっただ中にも関わらずそこへ向かった。
狙いを定めてくるワイバーンのミサイル。
「とっ!」
僕はとっさに建物の影に移動する。発射される前に姿を消したからか目標を失ったミサイルが地面に激突する。その爆発は道に敷かれたレンガを粉々にして穴を空けた。
「ひいぃ…………」
僕はその恐ろしさに血の気が引く感じがした。それでも僕は建物の影から出ると再びアマツカの元へ向かった。不思議なことに僕を狙うワイバーンはレオパルド達の攻撃を受けて僕に攻撃をすることはなかった。
「汝、ソノ挑戦、無謀、ナリ」
「ぐ、あああ…………」
機械竜がその爪でアマツカを圧迫していた。
「ぐっ!」
また地面に倒されるアマツカを僕は受け止めた。その勢いと重さにちょっとだけ顔をしかめた。
アマツカが黒から元の白い姿に戻った。
「ふうー」
良かったぁ、一時はどうなるかと思ったよ。なぜか分かんなけどこれなら安心だね。
アマツカは僕から離れるとまた機械竜に向かおうとする。
「ちょっと、まだやる気?」
「あれを倒さなきゃ、この街の悪魔に認めてもらえないだろ。あれを倒さなきゃ、俺は悪魔に恐れられたままだ。だから、ここにいる敵を全部倒してやつらを認めさせないと…………」
アマツカが今にも泣きそうな顔で言う。そうか、やっぱり自分の姿がこの街の悪魔に受け入れられてないってこと気にしてたんだね。
「それはないよ、それはない」
「え?」
「君が勝手に変身?でいいのかな、変身した時に僕が背負ってたおじいちゃんいたじゃん?」
「ああ」
「あの人、君のこと応援してるってさ」
「あ…………」
その言葉にアマツカが少しだけ表情が柔らかくなった。
「あの人だけじゃない、僕もアマツカを応援してる。ヴァミラやレオパルド、豊太郎達も君を応援してる。だから、大丈夫だよ」
「司………」
アマツカが安心したような表情を見せる。
「というわけで、君は少し休んでてね」
「お、おい」
僕はMギアのスイッチを押してアマツカをその中に仕舞った。アマツカの都合なんて関係ない、あれだけたくさんのマシンワイバーンを倒したんだからこれ以上無理はしない方がいいからね。
『どうするつもりだ司』
Mギアから悠の声がした。
「暗黒ジャグラーズがいるところは通信が出来ないはずじゃ…………」
『が、マカイターミナルを使ったら出来た。範囲はあまり広くなさそうだがな。それよりも、アマツカを仕舞ってどうするつもりだ』
「決まってるよ。こっからは、僕のターンだ!」
僕は魔法天使の変身アイテムを使った。
「さあ、こっちだ!」
僕は機械竜に弓矢を撃って注意を向ける。
「敵ワナヌト知リ、ナオ、挑ムカ」
機械竜が胸のハッチを開いてビームが飛んでくる。
「バルカンじゃない!」
ワイバーンはバルカンだったのに。
僕がビームを回避すると後ろにいるワイバーンにビームが当たった。それを繰り返すことでワイバーンが次々と撃墜されていく。
『やるな、攻撃せずして敵を減らすとは』
Mギアを通して悠が言う。
「貴様ァ、ヨクモ、我ノ軍ヲ」
機械竜が悔しそうに僕を睨む。
「いやいや、君が勝手にやったんでしょ。ちゃんと狙いなよ!」
「ダァマレェ」
機械竜は唸るように言うと背中の大砲をこっちに向けてきた。
「げ」
やばい、あれは今までのとシャレにならないくらい強そうだ。
ドォンドォン!凄まじい音と共にビームが発射される。
「わわっ!」
僕は慌てて避けるけど弾数が多くて避けるのが大変だ。
「うわっ!」
一発まともに受けて地面に足にをついてしまう。魔法天使の衣装がプスプス焦げて悲鳴を上げてる。
『大丈夫か司!』
アマツカが言う。
「な、なんとかね…………」
『それ以上は危険だ、一旦戻れ』
悠が通信で言うけど目の前の機械竜が真っ直ぐこっちを睨んでる。
「戻れると思う?」
『あまり相手を挑発するものではなかったな』
「うるさいよ馬鹿」
こっちだって分かってるんだ、わざわざ言わないで欲しいな。
「そこまでだ!」
ガガガガガガ!バキュンバキュン!レオパルドのバルカンとガルムのビームが機械竜に目掛け飛んでいく。攻撃の当たった機械竜の身体がシューシューと音を立てる。
「目障リダッ!」
機械竜が背中のビーム砲で二体を追い立てていく。
「ガアッ!」
「クッ」
何度かかわすけどビームを受けてしまう二体。その後二体から金色の武装が消えてしまう。
「なにぃっ!」
突然飛行能力を無くして戸惑うもなんとか着地する二体。よく見るとヴァミラとアンジュリアンさんからも金色のアーマーがなくなっている。
「悠、これはいったい…………」
僕は通信で悠に話しかけた。
『まさか、ギアーズアクトには時間制限があったのか?』
「どういうこと?」
『おそらく、あのシステムは元々イービルクイーンを封印するのに使った力だ。イービルクイーンを封印出来てしまえば後の力はあまり必要とならない。つまり…………』
「つまり?」
『今回のように多数の敵を長時間相手にするのには出来ていない』
「なにそれ、ダメじゃん」
『大方、暗黒ジャグラーズのような連中が出ることは想定してなかったんだろうな』
「いや、呑気に解析してる場合?まだ大ボス残ってるんだけど、大丈…………ぶ?」
僕は途中で通信の声を止めた。
『司?』
通信の向こうで悠が怪訝な顔をした。
「またロックオンされちゃいました」
親友相手に思わずで敬語で言う勢いだった。さっきから機械竜が僕に背中のビーム砲を構えてるんだ。
「モウ、終ワリ、カ。ナラ、オマエ、カラダ」
機械竜が言う。
『さっさと隠れないからだこの馬鹿!』
「ほんとごめん、重ね重ねごめん」
流石にこれは謝るしかできなかった。
『おいエミリア!』
その声がすると僕の目の前にエミリアが立ち塞がった。
「なにやってんのエミリア、ここは危ないから下がった方がいいよ」
僕はエミリアに言う。
「嫌です!下がりません!確かにわたしは勇者様と違って強くありません。けど、ここでわたしが下がったら司さんが死んでしまいます!」
「いや、でもあの攻撃当たったらエミリアのが先に死ぬんじゃ…………」
「たとえ司さんでも、長くは持ちませんよね?」
「まあ、確かに…………」
僕の衣装に焦げてるところがあるのがその証拠だ。
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