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魔導奏者りりかさん魔界編  作者: 兵郎
三章 アンダーグラウンド、悪魔の国
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三十四話 マシンワイバーンの軍隊




夕食のシチューを食べながら豊太郎が子供たちに旅の話をしている。


「俺達はボーンキングの猛攻に苦しんだ!やつは強力な剣を振るい、俺達のモンスターに傷をつけていく!絶体絶命のピンチだ!」


「それでそれで?」


「どうなったの?」


子供たちが続きをせがんだ。


「ねえ、あれ完全に話盛ってるよね。俺達って言ってるけど豊太郎ボーンキングと戦ってないし」


僕は隣にいるアリエルちゃんにささやいた。


「盛ってくれるならそれはそれで好都合です」


「なんで?」


「その分わたしや先輩の種族の名前が出ませんから」


二人の種族って確か天使だよね、僕も半分天使だけど。


「それがどうかしたの?」


「天使は悪魔の間でかなりの嫌われものです」


そう言うアリエルちゃんの言葉で思い出したことがある。人間界に僕と同じように半分だけ悪魔の子がいたんだけどあの子も理由もなく僕のことを嫌っていた。


「でもそもそもなんで天使って、悪魔に嫌われてんの?」


「昔、天使と悪魔が同じ土地に住んでた時、天使と悪魔で戦争が起きて天使が勝ったんですよ。それだけならいいんですが天使側が悪魔を虐殺したり年貢をいっぱい取ったりありもしない罪で捕まえたり拷問とか色々しちゃったらしくて、それが後世まで伝わってるんですよ」


「それはひどい…………」


差別は酷いと思うけどそれ以上に天使が昔やったことが酷すぎた。これは差別されてもおかしくはない。でも僕や仲間の正体がバレて酷い仕打ちに逢うと思うと恐いなぁ。


「だが俺達は諦めなかった!エンマジンという新たな力を得たヴァミラは炎の剣でやつを八つ裂きにしたー!」


『おー!』


豊太郎の熱演に歓声が湧く。今は豊太郎の独断場が続くことを祈るばかりだ。




夕食も食べ終え、大浴場に入る。教会の人が気を使って他の人より先に入れるようにしてくれたんだ。


「どうした司、アマツカ。お前らさっきから元気ねえじゃん」


身体を洗いながら豊太郎が言う。僕はアリエルちゃんに聞いたことを説明した。


「マジか、バレたら大変だな」


「ばらすならお前達だな、ついうっかりなんてことにもなりかねん」


悠が言う。


「はあ?俺がそんなこと言うかよ、そこまで馬鹿じゃねえよ!」


「そうだな、親友を売るような行為をお前がするはずがない。だがヴァミラ、お前はどうだ。ついうっかり司やアマツカが天使だとバラせば二人はまたたく間にここにいられなくなるだろうが、分かるな?」


悠がヴァミラに確認をとる。


「なんで?なんで二人が天使ってみんなに言うとここにいられなくなるの?」


ヴァミラは悠の言葉の意味が分かっていなかった。


「さっき聞いただろう。昔悪魔と天使で戦争があって、天使が勝利しその際に悪魔に非道な行いをした、だから悪魔達は今も天使というものをよく思ってないんだ、分かるか?」


「でも二人は昔の天使とは違うし、ここの悪魔達に酷いこともしてないよ」


「それはそうだが………」


ヴァミラの真っ当な意見に悠は言葉を失っていた。


「心というのはそういう一筋縄ではいくものでも

ない。ましてや、昔と今を別物にして見ることもできない。彼らには先祖から受けた心の傷がまだ残っているかもしれない。人の憎しみや恨みといのは簡単に消えるものではない、それが表にでることもある。だからその恐れがある以上二人のことは隠しておけ」


レオパルドが言う。


「うん、分かった」


「すまない、俺のために」


アマツカがヴァミラに言う。


「いいよ、だってオレ達、友達だもん」




次の朝、朝ごはんを食べた僕達は街へ向かう。


「頑張ってねー」


「いってらっしゃーい」


子供たちが手を降って僕達を見送る。


「見てろよー!暗黒ジャグラーズのやつらをぶっ飛ばしてくるからなー!」


「あーばよー!」


豊太郎とヴァミラが離れた子供たちに声をかける。僕達も彼らに手を振った。




街に着くとその様が分かった。


「なん、だよこれ…………」


「ひどい………」


「住民が避難してるのはこれが原因か!」


豊太郎達が言葉を漏らす。僕達の目の前にあったのは炎に飲まれる家々だった。その中で人々が逃げ惑い、叫んでいた。マシーンアンデッド達がやったような、いや、もっとひどいものが広がっていた。


「大丈夫ですか!」


エミリアが倒れてる人に駆け寄る。他にも倒れてる人が周りにも行って僕達はそれぞれ駆け寄った。


「なにがあったんです」


「暗黒、ジャグラーズの軍が…………」


僕が駆け寄った人が口を開く。


「見ろ!」


アマツカの声で前を見る。


「マシン、ワイバーン…………」


そこには身体の半分が機械のワイバーンがいた。その名もマシンワイバーン、マシーンアンデッドと同じように機械の身体があるけどこっちは縦方向に機械と生身が別れてるはっきりしたものじゃなくて所々が機械の身体になってる形だ。


胸のアーマーはハッチが開いてバルカンが出る仕組みで腕の大きな爪も開くとミサイルが出るんだ。


「あいつがこれをやったのか、許さねえ!」


豊太郎がマシンワイバーンを睨む。


「この人達の避難は任せろ!」


そう言ったのは元太くんだ。


「元太くん?!どうしてここに?!」


元太くんは教会にいるはずなのにどうして街の方にいるんだ。


「あんた達を手伝いに来たの!ほら、行くよ」


レナちゃんが倒れてる人に肩を貸して元来た道を戻っていく。多分教会に避難させるんだ。


見ると他にも教会の子供たちがいて街の人に肩を貸していた。


「行くならさっさと行け。俺達は俺達の戦いをするぞ」


悠がみんなを促しMギアが出てくる。


『召喚!』


かけ声と共にヴァミラ達モンスターが大きくなる。けど僕はアマツカを大きくはしなかった。


「司?なにしてる、俺も戦うんだぞ?」


アマツカが言う。


「いやだって、君が本来の姿になったら街の人に変な目に見られちゃうよ。今日はやめよう、ね?」


「そんなこと言ってる場合か!今、街は襲われてるんだぞ!」


声を荒らげるアマツカ。確かにこれで戦わないのは辛い、でも…………。


「アマツカ、お前は下がっていろ。ここは俺達でカタをつける」


レオパルドが言う。


「天使の助けなどなくとも敵を蹂躙してくれる」


ガルムが言う。


「ちっ、分かった。精々上手くやれよ」


そう言うアマツカ顔もとても辛いものだった。


みんなはシノビマジンの力を発動してモンスター達が分身の術を使う。ガルムは家々を周りながら冷気を発射して火事の鎮火を、ヴァミラやアンジュリアンさんは飛行能力を活かして空から攻撃、レオパルドは地上からバルカンでマシンワイバーン達の動きを止めて体当たりで一気に仕留めるという戦法を取る。


僕とアマツカはアリエルちゃんやエミリア、教会にいた子供たちと一緒に避難誘導だ。


「あれ、アマツカは戦わないの?」


アマツカが戦わないのを不思議に思った子が聞いた。


「あ、ああ。俺は少し調子が悪くてな」


アマツカが答える。


「勇者の使い魔のくせに調子崩すとかダッセェ」


「言ってろ。お前こそ無茶して死ぬんじゃないぞ」


「分かってるよ」


「ギャオォォン!」


その時、マシンワイバーンが一体アマツカの方に向かった。


「アマツカ!」


僕はそれに気づいて走るけどこの距離じゃ間に合わない。マシンワイバーンの胸のハッチが開く。まずい、そう思った時エミリアが動いた。


「させません!」


エミリアは杖を振ってマシンワイバーンのバルカンを弾いた。バリアを使う単純なものじゃない、杖を高速で発射されるバルカンに合わせて動かす高度な技だ。


「はっ!」


エミリアの手からクナイが飛んでマシンワイバーンの空いたハッチに刺さった、するとそこからバチバチとスパークが発生してマシンワイバーンの胴体が爆発した。


「大丈夫ですか、アマツカさん」


「あ、ああ」


エミリアがアマツカに振り向く。


「く、敵の数が多い上に守りながらだとやりづらいな」


悠が歯ぎしりする。


「ふっふっふー、お困りのようだねぇ」


すると絵里香ちゃんが指を振った。


「なんのことだ?」


悠がそう言うと絵里香ちゃんは丸い機械を取り出した。


「おい」


「それって………」


豊太郎が絵里香ちゃんの持つものを指した。


「魔法演奏!」


絵里香ちゃんが機械のボタンを押して叫ぶと魔法陣が現れて絵里香ちゃんの姿を変えた。


絵里香ちゃんは胸や腰の後ろに大きなリボンを付けてフリフリのスカートやレース、オシャレなステッキを持った姿になっていた。絵里香ちゃんもまた、魔法使いの変身アイテムを持っていたんだ。


「そういえば、絵里香も魔導システム持ってたな」


豊太郎が言う。


「委員長、まさかお前、出し惜しみしてたわけじゃないだろうな?」


悠が絵里香ちゃんに確認を取る。


「まさかー、今までは必要ないから使わなかっただーけっ」


絵里香ちゃんはそう言うと走りだしてマシンワイバーンの腕から飛んできたミサイルを蹴り飛ばした。蹴り飛ばされたミサイルはミサイルを飛ばしたマシンワイバーンに直撃して怯んだ。


「はぁー!」


その隙に絵里香ちゃんは足の連打を叩き込んで吹っ飛ばすとステッキを構えた。


「いっけー!」


ステッキからビームが飛んでマシンワイバーンを撃ち抜いた。


「すっげー!」


「エリカさんて戦えたのかよ!」


着地する絵里香ちゃんに子供たちから歓声が起こる。


「ここはあたしに任せて、みんなは街の人の避難に集中してよ!」


『うん!』


子供たちは絵里香ちゃんの言葉に頷いた。


「司、わたしも戦う。あれ貸して」


さなえが言う。


「あれってなに?」


代名詞だけいきなり出されて何のことか分からない。


「李梨花さんから借りてるやつ」


李梨花さんから借りてるやつと言ったら魔法使いの変身アイテムしかない。僕は家の影に隠れてリュックの中をまさぐった。


「あった、これだ。さなえ、受け取って!」


僕は目的のものをさなえに投げた。


「ありがと」


李梨花さんの変身アイテムを受け取ったさなえは魔法使いに変身した。学生服のようなシャツにリボン、スカートを少し派手にしたような出で立ちにマントを羽織った姿になった。


「どうやって、戦うんだろ」


自分の格好を見回すさなえに僕は戦い方を教えた。


「腰の鉄砲使ってー!とりあえずそれで行けるからー!」


「分かった!」


さなえが腰の特殊銃を取ってマシンワイバーンに向ける。そしてトリガーを引くと青いビームが飛んでマシンワイバーンを怯ませた。


「これ使えるかも!」


調子が乗ったさなえはビームを乱射していく。


そんな戦いが続いた時だった。

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