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魔導奏者りりかさん魔界編  作者: 兵郎
三章 アンダーグラウンド、悪魔の国
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三十三話 アンダーグラウンドの教会




肩と腰の調子が戻ってきて改めて周りを見渡す。ここは…………正面には建物があまりない、枠に囲まれた草と家畜の動物ばかりだ。どうやらここは街外れの農園のようだ。


「は?」


僕は声を漏らす。その視線の先にあったのは月だ、いつの間にか夜になってるのはいい。さなえも地球の裏側と言っていたし次元を移動してるんだから時間が逆の場所に来ても違和感はない。


問題は!問題は!


「はーーーーーーーー?!」


僕は盛大に叫び声を上げた。その問題は!月が!三つあることなんだ!


「ねえ、おかしくない?月が三つておかしくない?!魔界の月て普通僕達の世界と同じ一個でしょ?!なんで三つもあんの?変だよ!絶対変だよ!」


あまりの混乱に僕はまくしたてるようにみんなに話した。


「るせーよ、さっき言ったろ」


「あまちゃんちょっと騒ぎすぎ」


豊太郎達が僕の大きな声に耳を塞いだ。


「いや、でも………」


だめだ、まだ興奮が収まらない。


「月が三つ、ということはアンダーグラウンドかもしれませんね」


エミリアが言う。


「アンダーグラウンド、魔界でも下層にあると言われる悪魔の巣窟か」


アマツカがそれに続く。


「うぇ、てことはここ敵の本拠地じゃないですか!」


アリエルちゃんが声を上げる。


「なに言ってんの、暗黒ジャグラーズは骸骨とかアンデッド、あとピエロにサキュバス系のモンスターが多くて悪魔なんて一人もいないけど?」


僕にはアリエルちゃんの言ってることが分からない。


「だって悪魔ですよ?!悪魔って言ったらわたし達天使の天敵ですよ!?絶対呪われますよ!」


今度はアリエルちゃんがまくしたてるように言う。


「君、同僚が悪魔だけど?」


そう言うとアリエルちゃんは叫ぶと共に地面を転び始めた。


「あー!」


アリエルちゃんは僕と同じ魔法使いの組織にいるんだけどアリエルちゃんとは部所が違ってるんだけどそこの同僚が魔界から来た悪魔なんだ。


「で、下層てなんだよ」


豊太郎が言う。


「確か…………天界が一番上にあって一番下がアンダーグラウンドでその間が地上だった気がする。上と下もっとあるけどとりあえずこの三つだけ覚えてればいいかな。そもそも天界もアンダーグラウンドも普通の方法じゃ行けないらしいんだよね、だから実質三つ。てマカイターミナルにあった」


「普通の方法じゃ行けないてなんだよ、同じ世界なのに違う世界みたいじゃねえか」


「その通りだ、来れないこともないが三つの階層はそれぞれ存在する空間が別物になっているため特殊な方法でしか行き来できない」


今度は悠が説明する。


「特殊な方法てなんだよ」


豊太郎の言葉に悠が顎で僕達が出てきた穴を示した。


「他にも、こういう場所があるってことか………」


豊太郎が苦笑いで穴を見る。僕もその穴を見る。


「これ、もしかして井戸?」


それは西洋風のたくさんの石が接着されて出来た井戸だった。


「うん、井戸」


さなえが頷く。


「これ、頭ぶったりしませんかね?」


エミリアが言う。


「もしかして、あたし達実はここに来た途端頭ぶってたとか?」


絵里香ちゃんが不安そうな顔をする。井戸と言ったら元々は桶を入れてそこに水を入れるのが本来の使い方だ、穴だけの空っぽの井戸なんてありえない。


そこに下から勢いよく飛んでくれば井戸に降りてる桶に頭をぶってもおかしくはない。


「いえ、桶はありませんね。どうやらこの井戸は使われてないようです」


アンジュリアンさんが言われて井戸の周りを見る、確かに桶はないみたいだ。


「なるほど、井戸を作ったはいいものの水が出なくなったから使われなくなったのか」


ガルムが言う。


「ていうかここ寒くね?どっか中入ろうぜ」


豊太郎に言われて自分の感覚を確かめる。そういえば今いるここは狐流忍者の森よりも寒いみたいだ。手がちょっとかじかんでる。


「もしかして、あなた達井戸から来たの?」


後ろから声がして振り返ると黒いワンピースを来た女の人がいた。シンプルなデザインで肩や胸の辺りまで白い襟?が覆っていて頭もフードで覆われている。顔を見ると肌が白くブロンドに青い瞳を持っていた。


「そうですけど………」


後ろには教会、もしかして……………。


「尼さん?」


「はい、最近ではシスターと呼ばれてます。ささ、ここにいては冷えてしまいます。どうぞ中へ」


尼さん、教会だからやっぱりシスターかな。シスターは僕達を教会の中に案内した。。


「しゃあっ、これであったまれるぜ!」


豊太郎がガッツポーズを取るとさなえが言う。


「豊太郎は別に外にいたままでも大丈夫」


「なんでだよ!風邪引くだろ!」


「なんとかは風邪引かない」


「馬鹿じゃねえし!俺が馬鹿だって言うのかよ」


「その態度が既に馬鹿」


「お前なぁ………」


「馬鹿はどっちだっての」


僕は小声で呟いた。普通の人は馬鹿にわざわざ反応しないんだけどなぁ、これじゃあさなえも馬鹿になっちゃうよ。まあいいけど、ほっとこ。


「あの井戸は昔からなぜか水が出ないらしいのですがあそこからは時折、狐の耳としっぽを付けた人が出てくるんです。でも、耳が横についた人達や獣の方がたくさん来るのは初めてです」


シスターが言うと悠が聞いた。


「もしや、それは全員子供か?」


「はい。狐流忍者の里というところから来たらしくて、みんな一同に肝試しをしていたと言っていました。あなた達も肝試しでこちらへ?」


「違う、俺たちはここに繋がってる向こう側の井戸がどこかに繋がってると判断してここまで来た」


「わざわざそれを確かめるために井戸を落ちてきたんですか?」


シスターがこんな人いるのかという顔で僕達を見る。


「もし暗黒ジャグラーズがどこへでも現れるならいかなる場所でも行く必要があるからな」


え、そんなこと一言も言ってたっけ?そもそも悠があの井戸は異界に繋がってるかもしれないから行ってくるて言ったからついてきただけで暗黒ジャグラーズとはなんの関係もない。


センカさんが勇者の異界があると言ったのと勇者の導きと言ったのは別の占いだからそれも暗黒ジャグラーズとは関係ないと思うけど。


「もしかして、あの井戸の先も暗黒ジャグラーズに襲われてるんですか?」


「それは倒してきました」


僕がシスターに言った。


「倒した、それはすごいです!この近くの街も暗黒ジャグラーズに襲われててこの教会に避難してくる人もいるんです!どうにか出来ませんか?」


「任せろ!なんたって俺達は伝説の勇者だからな!」


豊太郎が言う。


「勇者様!それはぜひ、お願いします!勇者様がいれば街の人も安心出来ます!」


シスターが豊太郎の手を掴んで叫んだ。


「お、おう………」


急に手を掴まれて豊太郎が戸惑ってしまう。


教会だから長椅子がたくさんあるけどそこに人はいない、いるのは奥の暖炉で暖まってる人達だけだ。その中に見覚えのある形の耳としっぽをつけている人達がいた。それもついさっき滞在していた場所に住む人達と同じ。まさかね……………。


だめだ、もっと近づくと服装まで分かって笑えてきた。


「どうしましたか?」


シスターが僕を見る。


「いや、ほんとに井戸に落ちる馬鹿がいるなんて思わなくて……………」


「なんだよ、そういうお前達だって落ちてきたんだろ!笑うなよ!」


笑われてることに気づいた前合わせの服を来た狐の獣人の男の子が言った。


「いやー、僕達間違って落ちたんじゃなくてわざと落っこちてきたから君たちとは違うのよー」


「わざ………と?なんでだよ」


男の子がわけが分からないという風に言う。


「俺達は、近くの街を救いに来た勇者一行だからな!」


そこで豊太郎が親指で自分を指して言う。


「勇者?!それは本当か?!」


「本当に街を救ってくれるの?!」


それを聞いて街から避難してきたとおぼしき大人達が反応した。この人達には竜人みたいな角と羽があるんだけど竜人とどう違うのか分からない。強いて言うならこっちの人達のが肌が白かったりブロンドや青い瞳の人が多いくらい?


「本当だ、俺達は暗黒ジャグラーズの幹部を二人倒してきた」


「俺達、って言ってるけど豊太郎くんは一人しか倒してないよね」


絵里香ちゃんが指摘する。


「こまけえことはいいんだよこまけえことは」


一人は僕のアマツカが倒したんだけどね。


「やった。俺達、やっと救われるぞ!」


「もう、教会に避難する必要ないのね!」


僕達の到着を待ちわびたかのように人々が言う。


「うっそだー、勇者なんて伝説だろー」


「本当は勇者じゃないんだろ」


しかし子供たちは信じない。


「嘘じゃねえし!ほんとだよ!」


豊太郎が対抗する。


「だったら証拠見せてみろよー」


「上等だっ!見せてやるよ!」


豊太郎がMギアを取り出す。


「召喚!」


「グォオォォ!」


叫ぶとヴァミラが雄叫びと共に大きくなる。


「お、おお………」


「これが、勇者の力…………」


大人達がヴァミラに驚く。


「すげー!」


「でっけー!」


「ドラゴンだー!」


一方、子供たちは大はしゃぎだ。ていうかこの子供たち、一部おっきいの混じってない?しかも服も大人よりだし、年取って和服が着れなくなった?


「あの、シスターさん。もしかして井戸から来た人てずっと残ってたりします?」


僕は気になって聞いてみる。


「ええ、何人かはいつの間にかいなくなってるんですけどほとは残ってますね」


「ねえ、みんな。君たち、お家に帰りたくない?」


僕は狐耳の子供たちに聞いた。


「帰る?」


「帰れるのか、俺達?」


子供たちの顔に希望が見えた。やっぱり、帰れるとは思ってなかったんだ。


「向こうから来てこっちに出たんだから、その逆もあり。だよね、悠?」


僕は悠に聞いた。


「その可能性は、ある。なにしろ、向こうにはこっちの服を着て戻った連中が何人もいるんだからな」


「どうする?あの井戸に行けば帰れるけど?」


「でも、今さら戻っても………」


「俺達、みんなこっち来てから何年も経ってるから………」


狐耳の子達が迷うような顔を見せる。


「気まずくて戻れない、か。家が恋しくはないのかい?」


「ぜんっぜん!あたし、家なんて恋しくない!ずっとここにいてもいいって思ってるんだから!」


その中の女の子が一人、怒って飛び出してしまった。


「おいレナ!」


男の子が女の子を呼んで追いかけた。


「どうしたの?君たち、男の子ばっかなのに女の子て珍しいね」


僕はあの子について尋ねた。


「あいつ、なんか親と揉めたらしくてさ。女はどんなに忍術頑張っても家で家事ばっかで潜入部隊にはなれないから嫌だとか」


「ふーん」


実際、狐流忍者の里に残ってたのは女の人と子供、おじいちゃんくらいだったから多分人間界の中世の時みたいに男女の役割が別れてるんだろうな。


ま、人間界だと最近じゃ痴漢冤罪が流行って男の人が社会的に不利になってるみたいだけど。こっちはまだまだ男社会みたいだね。


「で、その子は自分の将来に嫌気が差して家出ってわけ」


「うん」


「俺からも言う。お前達は帰れ、お前達は本来いるべき場所に戻るんだ」


悠が狐耳の子供たちに言った。


「嫌だ、俺達もここに残る」


けど他の子達も説得に応じない。


「なぜだ、お前達はあの女ほど自分の家を嫌悪してるわけじゃないだろう?」


「俺達がいなくなったらシスターや牧師が困っちゃうだろ」


「どういう意味?」


さなえが聞いた。


「だって、ここには街から避難してきた人がたくさんいるじゃないか。これからだって避難してくる人がいるかもしれない。その人達のお世話をするのに俺達の力が必要なんだ。いや、俺達が教会や街の人の力になりたいんだ」


そう言った男の子をシスターが見詰める。


「元太くん………」


「大丈夫だ、お前達が無理をする必要はなくなる。俺達が悪いやつらを倒すからな」


アマツカが元太くんの手を握る。


「お前はなんか頼りない」


「うあ………」


元太くんの言葉にアマツカが凍りつく。普段のアマツカは大分ちっちゃいからなー、同じ子供でもアマツカより大きい人のがたくさんいるんだよね。


「みなさん、今日はもう遅いですからここに泊まっていきませんか?」


シスターが言う。


「いいんですか?」


「はい、特別なおもてなしは出来ませんが精一杯おもてなしさせていただきます」


「ねえ、エミリアは?」


さなえに言われて周りを見渡とエミリアの姿がない。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



教会の裏手にてレナが体育座りをしている。


「お前、ほんとに帰らなくていいのかよ」


そこへ少年が駆け寄り体育座りをする。


「帰らない、帰ったってどうせ潜入部隊には入れないしー」


「お前なー」


少年ははぁーとため息をつく。


「帰んなくてもいいけど、帰んなかったら忍者でもなくなるぞ」


「え……………、それは…………やだ」


レナは迷うような表情を見せてから言った。


「だろ。だったら、せめて俺達狐流忍者の里に帰らないとな」


「わたしも、そう思います」


少年にエミリアが付け加えた。


「勇者様………」


少年がエミリアを見上げる。エミリアもレナの横に体育座りした。


「正確には、違うんですけどね」


エミリアが訂正する。


「じゃあなんなの」


レナが言う。


「ドラグエンパイアの王女、エミリアと申します」


エミリアが派手さを抑えながらも雅さを兼ね備えたドレスの端を摘む。格好こそ王女のそれとは違うがその仕草たるや王女を思わせるものだった。


「お、王女様……………!」


「ど、どうして王女様がここに?!」


ドラグエンパイアの領土に住む 二人が驚く。


「一国の王女として、勇者様と共に世界に救いに来ました」


エミリアがニコリと笑って言う。


「王女様は勇者様じゃないんだろ、勇者様と違っておっきくなるバケモノもいないのにどうやって戦うんだよ」


少年が言う。


「将は倒せませんがザコのお掃除くらいならこなせます」


杖を持ちながらそう言うエミリアはとても一国の王女には見えなかった。


「すげえな、俺にはまだそんななの無理だぜ。ていうか里じゃねえから修行とか自主練しかやってねえし」


「自主練習も鍛錬の内です、続けられるのはいいことです」


「でもあたしはいくら鍛えても実戦部隊には入れないし、意味ないよ」


レナが自嘲気味に言う。


「人には、それぞれの役割というものがあります」


「役割?」


エミリアが話し始める。


「わたしには勇者様のようにモンスターを使って強い敵を倒すことは出来ません。しかしながら、戦闘兵を倒すという露払いの役目は出来ます」


「レナさんと言いましたか。あなたの将来求められる役目はあなたの望んだものではありません。しかし、なりたい役目に相応しいあなたになることも出来ます」


「え?」


そこでレナがエミリアを見る。


「里に帰りなさい、家族の元で己を鍛えるのです。女でも、里を守るためには鍛える必要がありますから。それに、潜入部隊の留守に里を守るのも、忍者の役目ですよ」


「やっぱり、そうですよね。鍛えないと、忍者なんてやってらんないですよね。あたし、家に戻ります。家に戻って、鍛え直します。潜入部隊に入るのはそれから考えます」


レナが納得したように言う。




僕達は教会の裏でエミリアがさっきの女の子と男の子と一緒にいるのを見つけた。


「エミリア、こんなとこにいたんだ。シスターが僕達のとこ泊めてくれるってさ」


「それは素晴らしいです!これで野宿は回避できますね」


「そうだね」


野宿か、まだしたことないけどやったら大変だろうなー。

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