二十九話 ピエロッサクラウンとの再開
パチッ、パチッ。手と手の重なる乾いた音が響いた。
「はっはっは、これは愉快愉快。負け犬ごときに感情移入するモンスターがいるなんて、これは傑作ですよ」
「君は………!」
「お前は………」
そのピエロのような姿を見た時、僕は息を飲んだ。
「ピエロッサクラウン…………」
悠が低い声で睨む。遥香ちゃんを暗黒ジャグラーズに誘拐いや、勧誘した張本人にして僕達が人間界で敗北した相手!
「はーい、あたし達もいるよ!」
「遥香ちゃん!」
絵里香ちゃんがその名を呼ぶ。手を振りながら遥香ちゃんがサキュバスさん共に現れたんだ。
「今さら何の用だ?まさかアンデッドバーサーカーが恐くて隠れたんじゃないだろうな」
悠がなじるように言う。
「ううっ!」
なんで分かったの?と言いたげに遥香ちゃんが後ずさりする。
「な、なんで分かったの?」
「いや、分かりやす過ぎだろ!」
豊太郎が叫んだ。
「よく分かんないけど、別働隊でわたし達を襲いに来たってこと?」
さなえが首を傾げながら言った。
「そういう、ことです。暗黒ジャグラーズには人間である遥香に非協力的な者もいますからね。こうしてわたし共々様子を見に来たわけです」
ピエロッサクラウンが答える。
「なら話は早い、レオパルド、アマツカ、アンジュリアン、ヴァミラ、ガルム、構えろ!」
悠が指示を出す。僕達に指示がないのは敵の力が普通じゃないからだ。
『分身の術!』
アマツカ達が分身を出してピエロッサクラウンに襲いかかる。攻撃をかわすピエロッサクラウン、けど数の猛攻にかなわず集中砲火を浴びてしまう。
「やったか!?」
悠が言う。
「悠、それフラグ」
バトルもののアニメとか見て思うけどそれ言ったら逆にまだ倒してないパターンが多いじゃないかな。
爆発が止むとそこにいたのはピエロッサクラウン、ではなく彼に似たぬいぐるみだった。
「ピエロッサクラウンじゃない?!」
「なんじゃありゃ?」
それを見て悠と豊太郎が声を上げる。
「ぬいぐるみですね」
「なんかダサい」
エミリアとさなえが言う。
「やっぱり倒せてないんだー、フラグだったんだあれー」
僕は頭を抱えた。まさかバトルアニメでよくあるテンプレートがここで起こるなんて思わなかった。
「ぶさ可愛い?」
絵里香ちゃんがぬいぐるみを見て言う。
「いや、そこはただダサいだけ。センスがないだけ」
さなえが反論する。
「いやいやそのセンスの無さがいいんだって」
「センスがないのを正当化しようとしても無駄、ダサいものはダサい」
「いやそういうんじゃなくてね、ダサさの中にも愛着というか愛らしさを覚えるというか独特のセンスがあるんだよ」
「ならその美的センスそのものがダサい」
「ひどい!」
「あの、二人とも?今戦ってる途中だけど?」
僕は状況に構わず美的センスを争う二人に驚いた。
「探せ!やつは必ず近くにいるはずだ!」
悠が指示を出してアマツカ達が周りを見渡すけどピエロッサクラウンらしき人物はいない。
「ここですよ」
「なに、うわっ!」
「ぐっ!」
「きゃー!」
声がしたのも束の間、ピエロッサクラウンは姿を消して翻弄しながら次々とアマツカ達に攻撃を加えていく。分身は消えてみんな地面に倒れることとになった。
「わたしが見たこともない技を覚えたようですがまだ甘いです、技を増やしたところでわたしに勝とうなど百万公演早いですよ」
ピエロッサクラウンが言う。百万公演てなに?普通単位は年じゃない?公演てサーカスでもやるの?
「ならば………」
アマツカ達が手を握ると指の間から葉っぱの形をしたクナイが出来る、シノビマジンが僕達を逃がすために使ったのと同じクナイだ。投げれば手裏剣だけど見た目的にはクナイかな。
「はあっ!」
アマツカを筆頭にクナイを投げていく。
「無駄ですよ」
けど難なくそれはかわされてしまう。
「アマツカ、後ろ!」
僕はピエロッサクラウンの姿を捕捉すると叫んだ。
「遅いですよ!」
ピエロッサクラウンの膝蹴りが入る、すると倒れたアマツカが丸田に変化した。
「なっ?」
ピエロッサクラウンは意表を突かれて声を漏らした。
「ぐあぁぁっ!」
その隙にアマツカ達の集中砲火をに受けて吹っ飛んでしまう。
「まさか、変わり身の術とは。これはわたしも一本取られましたよ」
立ち上がりながらピエロッサクラウンが言う。まだ余裕がありそうだ。
「サキュバスさん?」
ピエロッサクラウンが先ほどから戦いを見ていたサキュバスさんに呼びかける。
「いいわよ、あたしも行きましょう」
サキュバスさんはアマツカに拳をぶつける。腕を交差して守るアマツカ、さらにサキュバスさんはアンジュリアンさんにビーム弾を発射する。
「効きません!」
アンジュリアンさんはバリアでビームを防ぐ。
「でーもっ、後ろがガラ空きよ」
「きゃあっ!」
後ろにハートマークがつきそうな色っぽい声でサキュバスさんがアンジュリアンさんの背後に回り、打撃を与えた。
「アンジュちゃん!」
パートナーの絵里香ちゃんが叫ぶ。
「貴様あっ!」
アマツカが剣を構えてサキュバスさんに突っ込む。
「バットインパルス!」
サキュバスさんがコウモリの姿をした小さなビームを音波状にして大量に飛ばした。
「ぐあぁぁっ!」
「アマツカっ!」
アマツカがビームを受けて吹っ飛ぶ。
ヴァミラは刀を出してピエロッサクラウンに挑み、相手は西洋風の小型ナイフで応戦している。ギンギンギン!金属の擦れる音が幾重にも響く。
弾かれてるけどヴァミラの動きはシノビマジンから教わった動きに倣っていてキレのいいものだった。
『グオォォッ!』
ピエロッサクラウンがヴァミラに夢中になってる間にレオパルドとガルムが飛びかかった。
「なるほど挟み撃ちですか、考えましたね」
ピエロッサクラウンが言うけど実際そこまで考えてない、血気盛んなヴァミラが先に攻撃したから二体はそれを利用しただけだ。
「です、が」
ピエロッサクラウンはヴァミラの攻撃をいなしながら落ち着いて喋り、なおかつ後ろに向けてバリアを発生させるという高難度なことをやってのけた。
「なにっ!」
「バリアか!忌々しい!」
攻撃を防がれた二体は驚いたり歯噛みをしたりした。
「ガルム!レオパルド!」
ヴァミラが二体を呼ぶ。
「はあっ!」
その隙にピエロッサクラウンがヴァミラの刀を弾き飛ばす。
「ああっ……………」
自分の手から離れた刀を見るヴァミラ。
「ふん!」
そしてピエロッサクラウンに拳を入れられ吹っ飛ぶ。
「さあいかがしますか?続けますか?それとも降参ですか?」
ピエロッサクラウンが僕達に言う。
「そんな、シノビマジンの力でも敵わないの?」
「くっそー!」
悔しさに僕は身体の横で、豊太郎は手を前に出して拳を握った。
「勇者様………」
エミリアが僕達を心配そうに見る。
「ふん、勇者のくせに及び腰とは情けない」
耕太郎さんが言う。
「出来ないやつは黙っていろ、やつはそもそもの自力がレオパルド達とは違うんだ」
悠が言う。
「それはどうかな」
僕はMギアの金色の部分を指で示した。
「ああ、そういうことか」
悠はすぐに意図を察して笑みを浮かべた。
「なるほどな、あれなら行けるぜ!」
豊太郎もパシンと拳と手のひらを合わせる。
「なんのこと?なにをするの?」
さなえが首を傾げる。
「ほら、あれだよあれ!」
それを聞いて絵里香ちゃんが言う。
「だからなに?」
あれじゃ相手は分かんないからちゃんと固有名詞伝えないとね。
「えっと、なんだっけ。ほら、みんなが魔界に来る前使った………」
どうやら絵里香ちゃんも忘れてるようだ。
「ギアーズアクトだよ」
僕は二人に教えてあげた。
「そうそう!ギアーズアクトだよ!」
「分かった、あれだね」
二人も思い出したみたいだ。
「ギアーズアクト?」
ピエロッサクラウンが知らない名前に首を傾げる。
「行くぞ!」
悠が言うとみんなで前を向いてMギアを構える。
『ギアーズ………』
「うわ!」
僕達はMギアの新たな力を使おうとしたらピエロッサクラウンのトランプが飛んできた。そのせいでMギアが後ろに吹っ飛んでしまった。ピエロッサクラウンがトランプを構えて僕達を睨む。
「なんだか知りませんがその自信からしてそれを使わすのは危険と見ました。無論、拾うのも許しません」
ピエロッサクラウンが重い口調で言う。
「アマツカ!ピエロッサクラウンの足止めして!」
「無駄ですよ、我々はその気になればあなた方を倒せるほどの力を持っています。倒すどころかわたしを足止めすることすら不可能ですよ」
僕は叫ぶけどピエロッサクラウンに言われアマツカの足が止まった。
「僕が行っても………同じだよね?」
僕は恐る恐る悠に確認した。
「ああ」
「くっ、Mギアがなけれりゃなんも出来ねえじゃねえか!どうすりゃいいんだ…………」
豊太郎がMギアの無くなった手を見る。
「なにも出来ない」
「あたし達の冒険、終わったね………」
さなえと絵里香ちゃんが言う。
「さあ、そろそろ終わりですよ」
ピエロッサクラウンがそう言うとヒヒーンという鳴き声が響いた。
「馬?」
ピエロッサクラウンが思わず音の場所を辿ろうとキョロキョロする。すると暴風が起きて彼に襲いかかった!
「な、なんですこれは?!」
「と、飛ばされるー」
遥香ちゃんが風に飛んだところをサキュバスさんに抱きとめられる。
「サキュバスさん」
「なんとか間に合ったわね」
あんまし飛ぶと合流するのが大変になるからね。
「なにこれ?どっから来てるの?」
僕は言った。
「わからない。周囲が見えない以上後ろか上空という可能性があるが」
悠が言う。
僕達もちゃんと踏ん張らないと前に飛ばされそうだ。
「これ以上の戦闘は不可能です!引きましょう!」
ピエロッサクラウンが言う。
「そうね、そうしましょう!」
ピエロッサクラウンは紙吹雪と共に、遥香ちゃんを抱いたサキュバスさんはコウモリ型のオーラと共に姿を消していった。
すると暴風を起こした犯人らしき人?というか羽根の生えた馬が目の前に現れた。ここはペガサスと呼ぶべきかな。ゲームやアニメではよく見るけどその体毛も羽根も白さは真近で見ると神秘的に映ってつい見とれしまう。
「ヒヒン」
ペガサスが軽くいななく。
「あなたが、わたし達を助けてくれたのですね」
エミリアがペガサスに近づく。
「ちょっと危ないよエミリアちゃん!」
絵里香ちゃんが注意する。
「大丈夫です絵里香さん。この方はわたし達を助けてくれたのです、危害を加えることなんてありませんよ」
そう言うとエミリアはペガサスの頭を撫でた。ペガサスが気持ちよさそうに唸ってエミリアの顔を舐めた。
「あっ、くすぐったいです。やめてください、ああっ」
エミリアが赤面するように顔を歪める。なんだろうこれは、色っぽいというか王女様の見てはいけないものを見てる背徳的な感じを覚えてしまった。
「なあ、司。あれ、興奮するな」
「うん」
どうやら豊太郎も同じ気持ちだったみたいだ。流石は同じ男子。
ペガサスは飽きたのかエミリアを舐めるのをやめて身体の向きを変えて歩く。
「もう、行くのですか?」
ペガサスはその言葉を理解してるのか頷いた。ペガサスは翼のはためかせると空に飛び去っていった。
「なんだったんだあれは」
悠はこう言ったけど僕は細かいことは気にしなかった。
「さあ?なんでもいいじゃん、助かったんだし」
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