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魔導奏者りりかさん魔界編  作者: 兵郎
二章 不思議な夢と狐流忍者の里
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二十八話 アンデッドバーサーカーの最後




また別の部屋に行くとあるものを見つけた。それは………。


「これは…………壺だな」


悠が部屋の奥に置かれた壺を見る。


「壺だね」


大人の半分くらいの高さの円錐形をした赤茶色の入れ物、それはまさしく壺というにふさわしいものだった。


「なぜこんなところに壺があるんだ?」


悠が言うと僕はこう答えた。


「水か油でも入ってんじゃない?」


壺を覗き込む悠が首を傾げた。


「いや、違うな。なにか器械がある」


「器械?」


マシーンアンデッドが使う何かかな。


「壺ならやることは一つだろ」


「ちょっと豊太郎くん?」


豊太郎が壺の一つ手にし絵里香ちゃんが声をあげる。まさか、まさかまさか……………


バリーン!案の定壺が地面にぶつけられ、その破片を散らせた。そう、RPGと言えばミミックもあるけど壺もある。RPGで壺と言えばそう、割る!ダンジョンだろうと人の家だろうと壺があれば割る、さらに中身のお金や薬草を奪う、それが勇者の努めだ。勇者という特権の名の元に器物破損やら窃盗やらを容赦なくやるのだ。


で、肝心のここで割った壺の中身だけど……………。


「金の方位磁針、これって…………」


方位磁針て言うには正しくないけど手のひらのりちょっと大きい黄金の円盤上に銀色の針があるから似ているという意味では方位磁針の姿をしていた。


「ああ、さっきのミミックの言っていたものと一致する」


悠が言う。


「ミミックじゃなくて壺に返しに来てたんだ!」


絵里香ちゃんが方位磁針を見て声を上げた。


「多分ミミックに返すのが嫌だったんでしょうね、なにしろあの牙が並んだ口の中に物を入れるわけですし」


アリエルちゃんが言う。うん、僕も嫌だ。だってあれ噛まれそうな上に食べられそうだし。


「この方位磁針、光ってますね」


エミリアが方位磁針を拾って針を触る。針を動かすも元の位置に戻った。僕はリュックから方位磁針を出してみるけどエミリアの持つものとは指す向きが違った。この方位磁針も揺らしたりして向きを変えると元の位置に戻った。


「この世界にも北極とかあるんだ」


さなえが言う。方位磁針ていうのはそもそも北極のある方に向くからね。


「ねえねえ、見て見てー!こっちにもあったよー!」


ヴァミラの方を見たらさっきのと同じ方位磁針を四つ持っていた。


「エミリアの持ってるのと合わせて五つ………」


「まさか人数分あるとはな」


悠が言う。


「これ、結局なんなの?普通の方位磁針とは違うみたいだけど」


「こいつが指す方に行けば分かるさ」




悠の言う通り金の方位磁針の指す方に進むと目的の人物に予定していたよりも早く会ってしまった。


「アンデッドバーサーカー!」


僕達は金の方位磁針を確かめる、それは確かにアンデッドバーサーカーの方を指していた。


「げ、お前ら!」


アンデッドバーサーカーが声を上げる。


「どういうことだ?」


悠が金の方位磁針を見て言う。


「分かんないけどこれ、強力な悪いモンスターを示すように出来てるんじゃないかな」


「ふっ、強力というだけで反応するならレオパルドにも反応するはずだからな」


「まさか今度はお前らの方から攻めてくるなんてなぁ。野郎共、かかれー!」


アンデッドバーサーカーの号令で配下のマシーンアンデッド達がたくさんの別れ道から出てくる。僕達が部屋であれだけ騒いでも出てこないのに通路でリーダーが呼んだだけで一瞬で集まるなんて、統率力がいいのか感度が鈍いのかどっちだろう。


「うおー!」


アンデッドバーサーカーは叫ぶと自分の腕を増やした。里で僕達を追い詰めた本気モードだ。


「どうしようこれ」


これは困ったな………。


「これでは八方塞がりです!」


エミリアが叫ぶ。八方ていうか前後と部屋への別れ道のほとんどで出口に通じてるのは一個だけで実質行き止まりだ。


「関係ねえ、正面突破あるのみだ!」


「おお!」


豊太郎とヴァミラが拳と手のひらをぶつける。


「待て!いくらシノビマジンからの力があるからと言ってもこの状況で戦うのは危険だ!」


そんな二人を悠が止めた。


「じゃあどうすんだよ!」


叫ぶ豊太郎。


「決まってる、逃げるんだよ!」


『えー!?』


まさかの後ろ向き発言に僕達は声を上げた。


「レオパルド、道を開けろ!」


「イエス、マスター!」


悠が言うとレオパルドが後ろのマシーンアンデッド達に体当たりをしていく。バルカン砲を使うと爆発に巻き込まれるかもしれないからね。


「早くしろ!置いてくぞ!」


「う、うん!」


ちょっと納得いかないけどここは言う通りにするしかない。ランランラン、僕達はゆっくり歩いてきた道を走って戻っていく。


「ちょ、待てお前ら!俺と戦うんじゃねえのか!?」


アンデッドバーサーカーもこれには意表を突かれていた。


「悔しかったから追いかけてくるんだな!」


悠が下まぶたを引っ張り舌を出してあっかんべーをする。


「ちょっと悠!そんなことしていいの?!」


「相手のこと怒らせちゃうよ?!」


僕達は悠の態度に困惑した。これっていわゆる挑発ってやつじゃないかな。


「てめえ、馬鹿にしんのかー!」


アンデッドバーサーカーが叫ぶ。


「ほらやっぱりー!」


うわー、この先追いつかれてボコボコにされる未来まで秒読みだよー。


「いいんだよこれで。ただし、死ぬ気で走れ。追いつかれるぞ」


最悪だこの勇者ー!性格悪すぎー!


「大丈夫エミリア?疲れてない?」


さなえが言う。


「わたしは大丈夫です、これでも鍛えてますから」


「王女様って、運動とか苦手だと思ってたけど違うんだな」


「豊太郎!王女様相手にそれはやばいって!」


僕は豊太郎の位の高い人相手に失礼とも取れる態度に眉を潜めた。


「構いませんよ。わたしの国は王族といえどもその立場に甘えず幼い頃から心身とも鍛えるよう言われてますから身体はそれなりに鍛えてるんです」


エミリアが言う。どうやら普通の王女様とは少しイメージが違うみたいだ。


「あの!そこの、王女様、よりも、可愛い可愛い、こうは、いの、心配を、してくれ、ませんかね?!」


アリエルちゃんが切れ切れに言う。息が切れている証拠だ。里でマシーンアンデッドの大軍相手にあれだけ大暴れしたのにこんなとこで息切れするんだ。


「あいにくだが今の俺は子供と大差ない身長だからな。お前を背負うのは無理だ、諦めろ」


アマツカが言う。


「先輩の馬鹿ー!可愛いのは見た目だけで十分ですよ!うわーん!」


やだこの子、めんどくさい。


「しょうがないでござるな」


「ひゃっ」


秀信さんはそう言うとアリエルちゃんをひょいと持ち上げお姫様抱っこをした。


「モブ顔小太りおじさんにお姫様抱っこされるなんてやですー!どうせならイケメンな王子様にしてくださいー!」


アリエルちゃんが悲鳴のように言う。


「オイラはモブ顔でもおじさんでもないでござるよ!?」


あ、小太りなのは認めるんだ。そんなに太ってるようには見えないけど。




やがて洞窟の外に出ることになった。そこで悠がズザーと靴でブレーキを掛けて僕達も足を止める。


「はあ、はあ、ここまで来れば、もう十分だ…………」


「ちょっと悠、大丈夫?息切れてるよ?」


「余計なお世話だ」


「追いかけっこは終わりかぁ?」


アンデッドバーサーカーが言う。


「ああ、終わりだ。行くぞお前達!」


『おう!』


僕達Mギア使いはそれぞれモンスターを召喚させ大きな姿に変える。僕も変身アイテムを使って魔法天使になる。


「言っとくけど、あたしは戦いませんからね。逃げるのに体力使いましたから」


アリエルちゃんが言う。


「ふん、お前など元より戦力など入っていないがな」


悠が言い返した。


「うわ、サイテーです」


「言ってろ」


僕達はまたMギアを構えた。相手は最初から本気なんだ、出し惜しみなんてしないよ。


『シノビマジンの力よ、我がモンスターに力を!』


『はぁー!』


するとアマツカ達が気合いと共に木の葉を身体の周りに巻き上げた。


木の葉が止んで緑のオーラをまとったアマツカ達を見るとアンデッドバーサーカーが言った。


「ほう、今度のは前と違うのか。見せてみろよ、新しい力を!」


それを合図にしたかのようにマシーンアンデッド達が僕らに飛びかかった。


『分身の術!』


大軍でかかってくる相手に対してアマツカ達も分身を出すことで大軍で対抗する。忍者ではないアマツカや僕もシノビマジンの力を使うことで忍法が使えるようになったんだ。


基地だけあってかなりの大軍が出てきてる、けど自力はこっちのが上だった。ヴァミラの上空からの火炎弾、ガルムの冷気、レオパルドのバルカン、アマツカの光の剣、アンジュリアンさんの光の矢、その全てが分身で五倍の量に増えていた。


「兵隊はわたし達におまかせを!」


「勇者様の従者殿達は敵将の相手を!」


エミリアと耕太郎さんが言う。


「いいのか?」


アマツカが言う。


「現役忍者が三人、王族が一人、魔法使いが一人、五人で行けるか?」


悠が僕達を見回して言う。


「愚問だな、俺達忍者を見くびるなよ」


「王族も中々やりますよ」


耕太郎さんとエミリアが言う。


「僕の実力は、言わなくても分かるよね?」


最後に僕が言った。


「そうだな、任せるぞ」


『おお!』


それを合図にアマツカ達がアンデッドバーサーカーの方へ、僕やエミリア、耕太郎さん達は非戦闘員を庇うように移動、近づいてきた敵を迎撃したり遠距離から攻撃することにした。


僕は双剣を合体させた弓矢から光の矢を撃ってマシーンアンデッド達に当てていく。


「風よ、切り裂け!」


エミリアが杖をかざすと緑の風が飛んでマシーンアンデッドを切り裂く。


「きぇー!」


マシーンアンデッドが奇声と共に飛び上がる。


「しまった、上からだと!」


悠が叫ぶ。僕がいる方とは正反対の方から来るから迎撃がしづらい。


「させません!」


伝助さんが飛び上がって上にいるマシーンアンデッドに近づく。するとバリバリー!と青い電撃が走った。ドシャー!と倒れるマシーンアンデッド、伝助さんがシュタッと着地した。


「忍法、雷遁の術です」


伝助さんが幅のある棒のようなものを見せる。あれは…………


「スタンガン!?」


意外なものを見て僕は声を上げた。


「あまり使いませんがね。電気はまだ貴重品ですから」


伝助さんが言う。電気、この世界にも一応あるんだ。普及はしてないけど。


「へっ、人数を増やそうが無駄だ。やられはしねえよ」


アマツカ達がアンデッドバーサーカーに接近し取り囲む。


「それはどうかな」


アマツカが言う。


「オレたち全員の力………」


「受けてみるがいい!」


ヴァミラとレオパルドの声が引き金になってアマツカ達とその分身が光の矢や火炎弾、エネルギー弾、冷気を一斉発射した。アンデッドバーサーカーはそれを機械の腕からバリアを発生させて防ぐ。


「へっ、効かねえって言って…………る、だろ?」


攻撃を受けてる最初は余裕のあったアンデッドバーサーカーに驚きが混じる。バリアの耐久度を超えて攻撃を受け続けたせいでバリアが壊れ始めたんだ。


バリィィィン!


「ぎゃぁー!」


ガラスの割れたような音でバリアが割れて集中砲火を直に浴びるアンデッドバーサーカー、こうなってはもう助からない。


かしらっ!」


「そんな、頭がやられるなんて!」


アンデッドバーサーカーの様子を見て配下のモンスター達が声を上げる。


「冷たい熱い冷たい熱いつめたいあつい、ああああー!」


後半はもう冷気と炎への抗議が断末魔になっていた。ボン!最後に派手な爆発が起きた。


爆発の煙が止むと黒焦げになったアンデッドバーサーカーがいた。


「頭っ!」


マシーンアンデッド達が一目散にアンデッドバーサーカーの元に向かう。


「オマエ、達…………」


アンデッドバーサーカーがゆっくり手を一つ伸ばす。


「頭っ!」


「頭っ!」


マシーンアンデッド達がその手を握る、とはいえ人数的に一つの手に収まらないのでアンデッドバーサーカーの何本もある手を握っていく。


シュウゥゥという音を立てアンデッドバーサーカーが消失した。


「頭ー!」


「うおー!」


マシーンアンデッド達が悲しみの雄叫びを上げた。


「お前ら、よくも俺達の頭を!」


「許さねえ! 」


マシーンアンデッド達がアマツカ達を睨む。主の仇を討ちたいと思うのは部下としては当然の考えだ。その顔には涙が垂れていた。人間のそれよりテカリがあってデローってしている。人間の涙には水分があるけど彼らの涙は多分栄養となる油で出来てるんだ。


「やめておけ、お前達では俺達には敵わない。挑めば死ぬぞ」


アマツカが言う。それでもしばらくアマツカを睨むマシーンアンデッド達。


「行くぞ、お前達」


やがて一人が言う。


「いいのかよ?」


「逃げるんじゃない、この場は一旦引くだけだ。今度会った時は必ず倒してやる」


「分かった、そうしよう」


もう一人が撤退を言い出した一人に同意した。


「おい、お前も逃げるって言うのかよ」


また別の一人が言う。


「死にたいやつだけここに残れ、俺達は一旦引く」


その一言で残ったマシーンアンデッド達はこの場から立ち去った。


「いいの?」


僕は悠に聞いた。


「あんな雑魚気にしたらキリがない。それよりも、早く里を復旧して警備を固めるのが先じゃないか?」


悠が耕太郎さん達を見て言う。


「勇者殿に言われなくともそのつもりです」


耕太郎さんは嫌味っぽく言った。


「モンスターにも、仲間や上司を想う気持ちはあるのでしょうか」


エミリアが言った。


「かもね」


僕は彼らの涙を思い出しながら言った。


「あいつ、いいやつだったんだな」


豊太郎が言う。


「馬鹿言うな、そういう風に振舞ってるのは仲間内に対してだけだ。それが仲間以外になれば道徳観や倫理観など容易く吹き飛ぶ。あれはそういう生き物だ、だろ?」


悠が最後にアリエルちゃんを見ながら言った。


「そう、ですね………」


アリエルちゃんは少し自嘲気味に返した。マシーンアンデッド達をアンデッドというだけで嫌悪して攻撃したアリエルちゃんにも彼らの気持ちは理解出来ただろうか。

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