二十六話 いざ、アンデッドバーサーカーのアジトへ!
今回は二人目のボスを倒しにアジトの洞窟に行く回です
「どうする?敵陣に攻め込むのだってあの人言ってたけど」
僕はみんなに聞いた。
「そんなこと言われても俺達敵の基地の場所なんて知らないぜ?」
豊太郎が言う。
「困りました、基地の場所が分からなければ攻めようがありませんねぇ」
伝助さんが言う。
「どうしましょう…………」
エミリアが困ったように言う。僕達も考えるだけで何も出ない。
すると悠がスッと手を上げた。
「すまん、俺アンデッドバーサーカーの基地知ってるんだが」
『はぁっ?!』
衝撃の言葉に僕達は声を上げた。
「どこで?いつ知ったの?そんな暇あった?」
僕は悠に詰め寄った。
「お前が屋敷にいないから探しに行ったら遥香がいたから後をつけたらそこがアンデッドバーサーカーの基地だっただけだ」
「さっきのか!さっき?さっきていうのかな」
正確には豊太郎と連絡取るために森を出て里に戻った時かな。
「シノビマジンは時間を止めていたらしいからな、その面ではさっきと言っても問題ない」
困惑する僕に悠が言う。そういう問題かなぁ。
「どうする?敵陣に攻め込むか?準備があるならやった方がいいが」
悠がみんなに聞いた。
「わたしは構いません、行きましょう」
伝助さんが言った。
「右に同じく」
耕太郎さんが言う。
「ちょっと待って、みんなシノビマジンの試練受けて疲れてないの?休まなくていいの?」
絵里香ちゃんが言う。それに対して僕達はこう答えた。
「いや、そんなことはないけど………」
「むしろシノビマジンから力貰ってみなぎってるぜ!」
シノビマジンの試練は時間もかかったし疲れも溜まったはずだ。けど、あそこは時間の流れが止まってるらしいから時間が経たないみたいなんだけどその上疲れも出ないみたいなんだ。
「言われてみれば確かに………」
絵里香ちゃんが拳を握ったり開いたり感覚を確かめて他の人も同じようにする。
そんなわけで悠を先頭にアンデッドバーサーカーの基地に向かうことになった。時間は僕が豊太郎と連絡を取るために森の外に出たのと同じくらい。
「ここが、暗黒ジャグラーズの基地………」
緊張で喉を鳴らしてそれを見渡す、滝の近くの山にあった洞窟が目的地みたいで見るからにゲームとかにありそうなダンジョンを思わせていた。
「さあて、行くか」
「おー!」
豊太郎が拳を手のひらにぶつけてヴァミラと前に進む。
「ちょっと待ってよ、二人だけで行ったら危ないよ」
けど絵里香ちゃんに言われてその足を止めた。
「なんだよ、せっかくいいとこだったのによぉ」
「そうだそうだ!邪魔すんなー!」
二人がすごい嫌そうな顔で言った。この二人遠足とか体育祭の時はりきっていつもより早く学校行くタイプだからね。
「いい?敵の基地に行くんだから何が起こるか分かんないの、それなのに不注意で大怪我なんかしたらどうするの?!これからの旅にも関わるんだからやめてよね?!」
絵里香ちゃんが二人に説教をした。委員長ていうかもう学校の先生とかお母さんだよ。
「分かった分かった、俺が悪かったよ………」
「ごめんよ絵里香ぁ」
せっかちはりきり過ぎな二人もこれにはたじたじだ。
「馬鹿ですね、あの二人」
「うん、かなりの馬鹿」
それを見てアリエルちゃんとさなえがヒソヒソ言う。別に痛い目を見たわかじゃないけどその可能性があることをしたってことは馬鹿ってことになるのかな。
気を取り直して悠を先頭に洞窟を進む。
「なあ、別れ道とかあるぜ?」
豊太郎が言う。
「そこはアンデッドバーサーカーの部屋とは別物だ、入る必要はない」
悠が言った。
「でも敵の基地ってことは誰かいるかもしんないぜ?」
「ふむ、このまま進んで万が一後ろから攻められても面倒だ。先にザコを仕留めるぞ」
「いいの?その間に里がやられたりしない?」
僕は悠に聞いた。
「その辺りは心配ない、なにしろ里が襲われてから時間があまり経ってない上に里を攻めるにも準備があるはずだからな。十分間に合う」
ということなのでアンデッドバーサーカーを倒す前に寄り道することにした。
「ところで、このような場所には警報装置などはないのですか?敵の基地ならばあってしかるべきだと思いますが」
寄り道した道を進みながら伝助さんが言った。
「そういえば遥香をつけた時もその類いは鳴らなかったな、やつらは案外原始的なのかもしれんな」
悠が返した。
「警備の方もおりませんね。もしかして戦の直後で人員の整理が間に合っていないのでしょうか」
エミリアが言う。
「そういう考えもあるが俺が前来た時も警備のモンスターはいなかった、元より攻められることを考慮してないんだろう」
それはここの主が馬鹿なのか、大物なのかどっちだろう。普通戦争をする場所とか悪い人が来そうなとこだと見張りとか警備員の配置ぐらいするのに。
「な、なんだお前達は!?」
広いスペースのある部屋と呼べる場所に着くと部屋の主のマシーンアンデッドが驚いて声を上げる。一人じゃなくて複数のマシーンアンデッドが別の個体の機械の半身を手入れしていた。機械だけに点検は必須らしく一人では難しいらしい。点検されてる方の体は中から関節やバッテリー、基盤などのパーツがあり独特のセクシーさがあった。
「召喚!」
目立たないよう小さくしていたレオパルドを悠が巨大化させた。レオパルドは不意打ちにも等しい形でたてがみからバルカンを発射、モンスター達は悲鳴を上げる間もなく爆発した。
「こ、これはなんというか卑怯な気がするでござるな」
それを見て秀信さんが言いうアリエルちゃんが力説した。
「なにを仰るんですか。アンデッドみたいなゴミ虫に情けなんていりません、容赦なく駆逐していきましょう!」
「そ、そうでござるか………」
苦笑いする秀信さん。彼はこう思ったはず、天使って、恐いなって。普通なら恐いと思うはずのモンスターに対してゴミ虫なんて表現をして扱うなんて信じられないからね。あの腐った死体みたいなのと半分が機械の身体の怪物を恐がらない方が変だよ。
壁を見ると半身に使いそうな機械の部品が大量に入った箱と点検に使う道具が並んでいた。中には彼らの栄養源と思しき油入れもあった。
「どうした司」
アマツカが僕を見て言った。
「いや、僕達とは違うけど彼らも生きてるんだなって」
「ちょっと司くーん、やめてくださいよそういうのー。こいつらはゴキブリみたいに気味の悪いケダモノですよ、生きてるから殺すのはやめようなんて言わないでくださいよー」
アリエルちゃんが言う。
「そうだけど………」
流石にアリエルちゃんの意見には賛同しかねる。
「こいつらはあくまでこの世界の平穏を脅かすモンスター、それだけだ。余計な感傷に浸れば戦いに集中出来なくなるぞ」
悠が言う。
「うん、そうだね………」
僕はそう言うと壁から目を逸らすことにした。それに僕達はこの世界を救う勇者なんだ、敵に情けなんかかけちゃいけない。分かってはいるんだけど目を逸らしたはずの彼らの必要物資が気になって仕方なかった。
「司は優しいんだね」
さなえが言う。
「違うよ、悪いやつに同情とか命があるって感じるのは優しいのとは違う。生々しいのを見たせいで悠の言う通りちょっと感傷に浸っちゃっただけだよ」
「うそ、司なんか辛そうな顔してる。多分心では相手のことを想って泣いてる」
さなえの言葉になんとも言えない気持ちになった。うーん、あまり顔に出したつもりはないんだけどなぁ。なんだろう、さなえはあんまり気持ちを表情に出さないから人の気持ちもちょっと見ただけで分かるのかな。
はあ、なんだろう、恥ずかしやら温かいやら分かんないや。
「ありがとう、その気持ちだけで十分だよ」
僕はとりあえずそう返すことにした。
「おいみんな!宝箱あるぜ宝箱!」
豊太郎が赤い金の枠に覆われたゲームとかでよくある宝箱を示した。
「へえ、こんな豪華な宝箱置くなんてここのモンスターも可愛いとこあるね」
「だから無駄な感情移入はするなと言ってるだろ」
宝箱に関して感想を言ったらまた悠に注意されてしまった。
「なにが入ってるのでしょう?」
エミリアが言う。
「じゃあ開けてみるか」
「いいねー」
豊太郎とヴァミラが言う。
「あ、ちょっと………」
絵里香ちゃんが止めるのも空しくヴァミラが宝箱の蓋に手をかけてしまう。
「ギャー!」
ヴァミラが宝箱に挟まれ悲鳴を上げる。
「離せっ!」
ヴァミラが宝箱に火を吹くと宝箱が開いて吹っ飛んだ。けど宝箱からは中身が飛び出ない、いや、そもそも宝箱の中身は出ない仕様だったんだ。だって、それは、それは…………。
『ミミックー?!』
僕達は一斉に声を上げる。そう、それは宝箱に身体を似せた姿をしたモンスターで有名なミミックだったんだ。昔RPGをやった時宝箱を開けたら実はミミックてことがあって何度虚しい思いをしたか。周りの宝箱全部がミミックなんてこともあってその時はすごい面倒臭かった。
「馬鹿、そんなに騒いだら他の部屋のやつらにバレるだろ」
悠が諌めるように言う。
「なに言ってんだよ、悠だってさっき大声上げてたじゃん」
「説得力がありませんね、マスター」
「く………」
僕とレオパルドに言い返され悠は言葉も出ない。
「こ、これが本物のミミック、図鑑では見たことありますが本物は初めてです!」
エミリアが興奮した声で言う。
「いえいえ、驚いてる場合じゃありませんよ!ミミックですよミミック!下手に近づいたら手が全治一ヶ月の怪我を負うと言われるあのミミックですよ!?」
アリエルちゃんが慌てたように言う。アンデッドはゴミ扱いでこっちは恐怖の対象なんだ。それを聞いて豊太郎がヴァミラに声をかける。
「マジかよ。大丈夫かヴァミラ」
「大丈夫、おっきくなれば治るよ」
「マジか、モンスターすげえな」
多分ヴァミラ達だけじゃないかな。
「おうおうおう!さっきからなんだよ俺様を見て騒ぎやがって、ミミックがそんなに珍しいかよ」
ミミックが言う。彼も見世物にされて気分が悪いのだろう。
「むしろ初めてだよ」
「ほう、てめえらは初めてかよ。俺様はこの洞窟に長くから住むミミックなんだがよ、ここまで驚かれたのはアンデッドだが機械のやつらが来た以来だぜ」
「へえ、マシーンアンデッド達も君には驚いたんだ」
ますますあのアンデッド達が気に入ってきたね。
「ああ、あのマヌケ面には笑わせてもらったぜ。ヒヒヒ」
ミミックが舌を出して笑う。まん丸の瞳と相まって可愛らしく見えるね。
「で、マシーンアンデッド達は君をどうしたの?危ないから放置とか?」
「あの野郎共、体半分が大層な機械のくせに俺様にビビって近づかないんだぜ?笑えるだろ」
「ははっ、確かにね」
ミミックの無邪気な笑いに僕も思わず笑ってしまう。
ヴァミラとガルムがそそーっとミミックに手を近づける。
「おっと!俺様に近づくとガブリだぜ?」
と言われて慌てて手を引っ込めた。君たち犬にちょっかい出す子供なの?馬鹿なの?
「お楽しみのところ悪いがそろそろお前を始末させてもらおう」
悠が言う。
「おいおい、俺様を開けたのはそっちが先だぜ?なのにそれはねえだろ」
「俺達がここを出たところでお前が危害を加えないという保証はないからな」
「ひでえなぁ。俺様がモンスターだからって疑うのかよ。俺様が悪人ならそこのドラゴンの腕はとっくに千切れてるぜ」
モンスターなのに悪人て言うのはどうなんだろ。
「ひえー、オレの手なくなってたかもしれないのー?」
ヴァミラが恐ろしさになくなってたかもしれない手を見つめる。
「冗談だよ、俺様がそんなことするかい。だいたい、俺様は脅かすのは趣味でも殺すのは趣味じゃねえんだ」
「フッ、そんなものは関係ない。貴様が宝箱の形をしてるならば殺して中身の財宝を奪う、それだけだ」
悠が手を握る動作をして悪魔のような笑みを浮かべた。
「絶対そっちが本音だよねそれ………」
危害がどうのて言ってたけどそっちはたてまえで最初から中身の財宝を力づくで奪うのが目的だったんだ。
「あの男、ほんといい性格をしている」
アマツカが皮肉を込めて言った。
「おいおい、冗談だろ?」
ミミックが驚いたように言う。冷や汗なのか宝箱に水滴がついていた。
「これが冗談を言う顔に見えるか?」
悠は笑みを止めない。
「お、俺様を消したところで財宝なんか出ないぜ?なにせ百年も昔に別のやつが取って行ったからな」
ミミックは冷や汗を浮かべながらも殺されまいと口で悠に対抗する。よく見ると宝箱の蓋のとこと中の方と歯が二箇所あるんだけど、どっちがほんとの口なの?
「なら貴様を確かめるまでだ 」
「ひえー、助けてくれよお嬢さん」
ミミックがエミリアの後ろに隠れる。
「よしよし、恐かったですね。もう大丈夫ですよ」
エミリアが優しくミミックの箱を撫でる。ミミックの頭てそこでいいのかな。
「五十嵐さん!いくらモンスターとはいえ恐がる相手にまで敵意を向けるなんてあんまりです!勇者だからって流石にやりすぎです!」
エミリアが悠に抗議する。僕はその迫力に威圧された、王女様でも怒る時は怒るんだ。
「あんたの言い分は関係ない、そいつを出せ」
対して悠は冷徹に言う。
「いやです!出しません!」
エミリアの方も一切怯まない。
「あのさ、悠」
二人が睨み合ってるとこだけど僕は口を挟んだ。
「なんだ、お前も邪魔をするのか」
正直この台詞はあまり言いたくないんだけどどうにも言わないと悠が止まらない気がする。
「ほんとにそいつのこと殺すとか言ったら、嫌いになるよ?」
「それは本当か」
「うん」
悠がふぅーと息を吐いた。
「分かった、そいつを殺すのはやめよう」
納得してくれたみたいだ、よかったー。安心して僕も息を吐いた。
「悠?って言うんだっけ、あの子って司くんの言うことなら聞くんだね」
「あの二人は昔からの知り合いみたいだからね」
アリエルちゃんの言葉に絵里香ちゃんが説明した。
「俺達は他の部屋に用がある、せいぜい邪魔をするなよ」
そう言うと悠は部屋を出て行き耕太郎さん達が続く。
「あばよ、元気でな」
豊太郎がミミックの頭をぽんと叩いて出て行く。
「じゃあねー」
「また会おう」
ヴァミラとガルムがミミックに手を振って続く。
「どうかお怪我のないよう」
「元気でね」
エミリアと僕もミミックに別れを告げた。するとミミックがぺろっと大きな舌で僕達を舐めた。
「うわ!」
「きゅ、急になんです?」
僕達はびっくりして声を上げた。
「俺様を庇ってくれた礼だよ、お前らも元気でな」
ミミックが言う。残った僕達も部屋を後にすることにした。
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