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魔導奏者りりかさん魔界編  作者: 兵郎
二章 不思議な夢と狐流忍者の里
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二十五話 シノビマジンの試練、後編




身代わりの術の練習を終えると今度は分身の術の練習をすることになった。分身と言っても身代わりの術と同じで速く動くことで相手を翻弄してたくさんいるかのように錯覚させるものだった。


忍者の人以外で文字通り分身を作ったのは魔法で同じ技が使えるエミリアと天使の力で分身を作った僕とアリエルちゃんだけだった。アリエルちゃんの場合実体のない分身を動かすので手一杯で僕は魔法天使の力で出来るようになったけど。天使って魔法使いと違ってそんなに万能じゃないんだね。


そんな中、分身の術を会得した僕を見て豊太郎が羨むように言った。


「いいよなぁ、お前は。魔法で分身の術使えてさぁ」


「じゃあ使う?」


「はあ?お前じゃなくても使えんのかよ」


「今使ってるのじゃなくてこれだけど」


僕は円い形の機械を出した。


「てこれ李梨花さんのじゃねえか!」


それを見て豊太郎が叫ぶ。李梨花さんというのは人間界での怪物退治の仲間で魔法使いをやってるんだ。人間界でもよく怪物が出ててそれで怪物退治するために魔法使いの組織があったり魔法使いに変身するためのアイテムがあったりするんだ。変身アイテムには魔導システムって名前がついててこの円いのは初期型でパワーアップしたやつとかもあるんだ。


「お前、あの時借りてそのままだったのか………」


悠が呆れた目で僕を見る。この円いのは魔法使いの変身アイテムなんだけど一回だけ使ってないのを李梨花から借りてそのままになったやつなんだ。


「司くん、サイテーです」


アリエルちゃんにゴミを見るような目で見られた。ゴミっていうかアンデッドを見てた時の目?


「人のものはちゃんと返さないと」


「パートナーとして恥ずかしいぞ」


さなえとアマツカが言った。


「ごめん、ほんとごめん…………」


あまりの責められように僕は平謝りした。


「あの、ところでこれはいったいどういうものなのです?」


僕はエミリアに魔導システムの説明をした。


「あら、人間界にはそのような技術があるんですね。でもなぜ司さんだけ持ってるのです?」


「まああんま流行ると悪用する人もいて物騒だからね」


「はあ…………」


「で、どうする豊太郎?使う?使わない?」


僕は李梨花さんの魔導システムを持って豊太郎に言った。


「でもこれ、使ったら女装にならねえか?」


前に李梨花さんが使ってた時はスカートになったんだ。


「大丈夫、僕が一回使った時はちゃんとズボンになったよ」


別に決まった衣装てわけじゃなくて男女別に変化する仕様なんだ。


「じゃあ、やってみるか」


豊太郎が魔導システムを受け取る。


「えっと………どうすんだこれ」


豊太郎が操作に困って固まる。


「ここ押すんだよ」


僕がボタンを示して豊太郎がそれを押す。すると豊太郎の身体が魔法陣を通って派手なマントとシャツの衣装になる。


「しゃっ!これで魔法使いに、てあれ………」


豊太郎が喜んだのも束の間、豊太郎が元の姿に戻ったんだ。


「どういうことだよ!これ壊れてんじゃねえの!?」


豊太郎がわけが分からない、というように言う。


「あー、これ初期型だから使える人と使えない人いるんだったー」


僕は苦笑いしながら言った。


「そういうのは先言えよー!」


「ごめんごめん、悪かったよ」


豊太郎が僕の肩をガックンガックン揺らす。


「それで、使える人間と使えない人間はどういう基準があるんだ?」


悠が言う。


「さあ?僕も分かんない」


「さあって………」


豊太郎が頭を抱える。よっぽど使いたかったんだな。


「貸してみろ」


悠が豊太郎から魔導システムを取り上げると変身用のボタンを押した。魔法陣が現れて姿が変わるけどすぐに元に戻ってしまう。


「どうやら俺は違うらしい。委員長、使ってみろ」


「あ、うん。って、あたしもう持ってるんだけど」


悠が絵里香ちゃんに魔導システムを渡す。絵里香ちゃんは学級委員長みたいな性格だからクラスで委員長と呼ばれてるみたいなんだ。僕はそうは見えないけど学校では委員長みたいに振舞ってるのかな。


絵里香ちゃんがリュックから同じ形だけど悠から受け取ったのとは違う色のを取り出す。僕が持ってたのは青色、絵里香ちゃんのはピンクで作った人も別物なんだ。


「ねえ、あたし達が変身して忍術会得したら反則じゃない?こういうのは自分の力でやらないと駄目だよ」


「えー、僕もう使ってるんだけど」


今さら言われてもちょっと困る。ていうか今まで委員長ぽくなかったのに急に委員長ぶらないでよ。


「いや、司くんはもう最初から羽根生やせるじゃん」


「まあそうだけど………」


「けど、あたしは元々そういうのないから魔法使いの力も使わない」


こういう根が真面目なとこが委員長なのかな。


「じゃあわたしが使う」


絵里香ちゃんの手からさなえが李梨花さんの魔導システムを取り上げた。ボタンを押して衣装を変える。


「もどら、ないな」


豊太郎がさなえを見る。


今のさなえは派手なマントとシャツ、そして学生服にありそうな段々になったスカートだった。


「ぐっ。あたし、使える」


さなえが自分でぐっと言いながらガッツポーズを取る。使えるというのはさなえ自身が何かに使えるんじゃなくてさなえが魔導システムを使えるてこと。因みに変身アイテムは服にくっついてる仕様。


「使えるけどだーめ、ちゃんと自分の力でやるの!」


絵里香ちゃんがさなえから変身アイテムを奪うとさなえの変身が解けてしまう。普通にしてれば取れないけど直接掴んで引っ張ると取れちゃうんだよね。


「ひどい………」


さなえが口を尖らせて絵里香ちゃんを見る。


「我はなにを使おうと構わん、要は出来ればいいのだからな」


シノビマジンが言う。


「なに言ってるの!あなた神様なんでしょ?!偉い人なんでしょ?!なのにそんないい加減なやり方でいいの?!」


絵里香ちゃんがビシッと指を突きつけてシノビマジンに言う。


「わ、分かった。好きにしろ」


シノビマジンの声もタジタジだ。


「てなわけでこれは司くんに返すね」


「あ、うん」


絵里香ちゃんから李梨花さんの変身アイテムを受け取る。



分身の術の後は水団の術の修行、靴に円い器具を付けて水の上を歩くあの技だね。周りもさっきまで武道場みたいになってたけど幅の広い川に変わっていた。


「よっ、はっ、とっ」


ちょっとよろめくけどやれないことはない。


「行けるじゃんこれー」


ススイーと水面を進んでいく。


「ふっ、甘いな」


豊太郎が回転しながら進んでいく。


「嘘でしょ?!」


僕は豊太郎の特異な動きに驚いて声を上げた。


「ちょっと!あんまり調子に乗らないの!」


「へーい」


けど委員長モードの絵里香ちゃんにすぐ止められた。僕も真似しようとしたけどやらない方がいいかな。



水団の術の練習が終わると周りの空間が最初にシノビマジンと会った森に戻っていた。


「これにて我の試練は終わりとする!」


シノビマジンが言った。


「え、終わり?」


「いいのかよ」


僕達は意外な終わりに首を傾げた。本当にこれでいいのか、終わっていいのか。僕達はそんな風に思えた。


「正直に言おう。どうせ習わせたところでまともに使えないのだからそこまでやる必要などない!」


「ぶっちゃけたー!」


「いいのかそれで!?」


あまりに呆れた理由に頭を抱えた。神様なのにこんな態度でいいのか。ああ、頭が痛い。


「だがお前達は今回の試練で強き心を得られた。刀や手裏剣の型を覚えることでな、ものを覚えるとはそういうことだ」


「要は技の修行じゃなくて心の修行をしてたってこと?」


「そういうことだ」


「修行もとい、試練を受けたお前達には力をやろう」


「わたしもですか?エンマジン様からはいただきませんでしたが…………」


エミリアが言う。


「ほう、エンマジンはお前には与えなかったか」


なんだろう、シノビマジンがこころなしか笑ってる気がする。口は見えないけどニヤッとしたような。


「やつには生憎だが我はエンマジンとは違う。勇者ではないお前達にも力を分け与えよう!」


シノビマジンがバッと手を広げて言った。今の彼絶対ドヤ顔してるよねて思いがちな声とポーズだった。


「これがマジンの力………」


「わたしもこれで忍者ってわけですね、やりました!」


エミリアやアリエルちゃん達の体が緑色に光る。


気がつくとポケットのMギアも光っていた。以前の赤とは違う緑の光だ。


「さあ、疾くと行けい!里を再び焼かれる前に敵陣に攻め込むのだ!」


シノビマジンが言うと僕達は火事の逢った里に戻っていた。


そこにはアンデッドバーサーカーもおらず火消しがされたばかりの家々があった。





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