二十四 シノビマジンの試練、前編
「課せられる、こと…………」
僕は固唾を飲んで彼の言葉を待った。
「お前達に課せられること、それは忍の訓練である!」
シノビマジンが宣言した。忍者の里だから忍の訓練てまんまじゃん。
バッと僕達の前に前合わせの和服が現れる。え、これってつまり…………。
「それを着るがいい」
やっぱり。別に着替えろってわけじゃないから今着てる服の上から忍者装飾をまとう。え、女の子達はどうするって?僕達の後ろで着替えてたよ。ちょっと気になって豊太郎と見ようとしたんだけど…………。
「ちょっと変態!見ないでよ!」
「ぐへっ!」
肌とか下着とか女の子の神秘を目には出来たけど代わりにMギアが飛んできて目を回すことになったんだ。あー、やましいことはするもんじゃないな。ははは、おでこが痛い…………。
そして着替えが終わる。
「では試練を始める!」
シノビマジンが手をバッと広げると周りの空間が武道場のようなところに変わった。目の前には刀が置いてある。目の前にシノビマジンがいて正座している。改めて目の前で見ると、デカい。巨人、なんて言ったら誇張だけど普通の人よりかなり大きいサイズだ。
「それは木刀だ、刃に触れたところで血が出ることはない」
彼の言う通り抜いてみると本物の刀ではなく鞘の中には木刀が入っていた。
「まずは刀の振り方から始める」
『なんだってー!』
シノビマジンの言葉に叫んだのは狐流忍者の三人だ。
「待ってくれ!俺達は現役の忍者だ、今さら刀の型なんて出来ない!」
「そうだ、付き合ってられん!」
「帰らしてもらうでござる!」
三人がそれぞれ立ち上がって抗議した。
「だがお前達が基本を覚えたのは相当昔、今となっては忘れてるかもしれないが?」
こう言われると三人も納得することになった。
「いいだろう。その程度のこと、児戯に等しいからな」
「わたくしが失敗するとでも?」
「オイラ達が失敗するなんてありえないでござる!ガハハー」
そしてシノビマジンをお手本に型の練習が始まった。 剣道のすり足とはちょっと違うし刀の抜き方も違うけど決まった動きをするという意味では一緒だ。実際やってみると日本文化の真髄を学んでる感じかな。テレビ東京の木曜夜の番組でやってそう。剣道や柔道、空手の道場は日本でもよくある気がするけど忍術道場の話はあまり見かけないね。
豊太郎の実家が神社で昔から一緒に武道を教わったりしてたから豊太郎はもちろん、豊太郎の幼馴染である僕やさなえは難なくこなせた。
逆に武道の経験がない悠や絵里香ちゃんはちょっと苦戦していた。エミリアは意外と手馴れてるのかすんなりマスターしてた。アリエルちゃんは運動自体あまりしないのかすごい苦戦してた。現役忍者の耕太郎さんと伝助さんは当然のようにこなしていたけど秀信さんだけは苦戦していた。やっぱり基本はいつか忘れるんだね。アマツカは意外とセンスがよくて上手くやっていた。それ以外のモンスターはそもそも刀を持つサイズじゃないからやってない。
「よし、合格だ!刀の振り方は速さではなく型通り腕や足を動かすことが大事なのだ。忍者ではない者は刀を振るう必要などないが型通りの動きをすることで心が鍛えられたはずだ」
シノビマジンはこう言うけどよく分からない。刀を振る以外の効果てつまりものを覚えるのが上手くなるってこと?
今度はお盆が現れそのの上に手裏剣が置かれている。遠くには同心円状の木の的がある。
「これは、手裏剣?」
「そうだ。忍者と言えば手裏剣、手裏剣こそが忍者の基本。刀も大事だが遠距離から攻撃できる手裏剣は非常にっ、すぐーれたっ、武器なのだ!」
シノビマジンが歌舞伎役者のように膝を折って手のひらを前後に向けた派手なポーズを取った。
『いえーい!』
僕や豊太郎達は思わず拍手で返した。忍者と言えば手裏剣というのは僕達も思っていたことだ。手裏剣がないと忍者って言えないよね。
「あなた、意外とノリノリですね………」
アリエルちゃんが苦笑いしながら言った。
「ふっ、なにを隠そう。我はシノビマジン、忍の力を宿したマジンなのだよ」
シノビマジンが腰に手を当てて言う。
「いや、名前で分かるし自慢することでもないだろう」
悠が突っ込んだ。
「んっん、とにかく我が手本を見せる」
それを気にしてか咳払いをしてシノビマジンが言う。指で手裏剣をつまむと腕を伸ばして肘を立てた状態で構えた。それを一気に振る!
『おー!』
するとシノビマジンの手裏剣は的の真ん中にヒットして僕達は歓声を上げた。
「よし、じゃあ僕も!」
「待て!まだ投げるな!」
自分の目の前にある手裏剣を取ろうとしたらシノビマジンに止められた。
「まずは型を練習をしてからだ、さもなくば投げることは許さん」
また型だ。うわ、忍者てめんどくさい。
それから僕達は手裏剣を持たず投げる動作だけ何度もやらされた。手裏剣投げるなんて初めてだから出来るようになるまで何度も怒られたよ。
「そろそろいいだろう。実際に手裏剣を投げてみるがいい」
「やったー!」
「やっと投げられる」
うう、今までの腕を振るだけの時間、辛かった。
「よっと」
試しに投げてみるとシュルシュルッ!と飛んで的のど真ん中に刺さった。
「う、そ…………」
正直ここまで正確に行くとは思わなくて言葉が出なかった。
「マジかよ………」
「すごいな司」
豊太郎達も驚いて僕を見る。
「お前は無意識に先ほど覚えた手裏剣の型を使った、だから的に正確に当たったのだ。ものの数十分でつく代物ではあるまい」
シノビマジンが言う。僕達そんなに手裏剣の型やったんだ。道理で精神的に辛くなるはずだ。けどこれで手裏剣が出来るようになるならわけないや。
「じゃあせっかくだし、もう一発」
僕は残ってる手裏剣を取って投げた。
「俺もやるぜ!」
豊太郎達も手裏剣を手に的に当てていく。
「お前達は一つと言わず三つ同時に投げてもよいのだぞ、別々の的にな」
シノビマジンが狐流忍者の人達に言った。
「ええ?」
「そんなこと出来るのかよ」
僕達は彼の言葉に驚きを隠せない。
「ふん、俺達を誰だと思っている。狐流忍者として一線で活躍してる現役忍者だぞ?やってやるさ」
耕太郎さんがそう言って手裏剣を三つ持つ。
「マジかよ、ほんとにやるのか………」
豊太郎が言う。
耕太郎さんの手が動く、一個ずつじゃなくてほんとに三個同時に手裏剣が手から離れた。そんなの無理でしょ、そう思ったけど手裏剣は見事的の中心に全てが刺さった。
『おー!』
現役忍者の類まれな技に僕達は拍手を送った。
「じゃあ僕も三つ同時にっと」
「それは無理」
自分も耕太郎さんのように出来るのではと僕は自分の足元から手裏剣を三つ取ったけどシノビマジンに止められた。
「今日手裏剣を投げられるようになった素人が三つ同時に当てられるわけないだろう」
「それはごもっともで…………」
我ながら単純過ぎたかな、ははは。
手裏剣の修行も終わり今度は身代わりの術をやると言われた。
『身代わりの術?!』
僕達は声を揃えた。
「身代わりの術とか出来んのかよ、俺達人間界のやつだぜ?」
豊太郎が言う。身代わりの術てアニメとか漫画でたまに見るけど実際に出来るものなのか、出来たとして人間界の人間である僕達が出来るのか気になった。
「まずは丸太を投げることを始める」
シノビマジンの言葉で僕達の目の前に丸太が出てくる。
「手裏剣が飛んできた際、この丸太を投げ身代わりにすることで相手を惑わすのだ」
「いや、無理があるでしょ。身代わりにはなるけど惑わすには無理だよ」
僕は思わずシノビマジンに突っ込みを入れた。
「そうかな。お前、身代わりの術は出来るな」
「当然だ」
シノビマジンが耕太郎さんを指名する。
「使ってみろ」
シノビマジンがクナイを構えた。
「いいだろう」
その耕太郎さんの言葉を合図にシノビマジンが耕太郎さん目掛けクナイを投げた。当たるかと思った時耕太郎さんはいなくて代わりに丸太にクナイが刺さっていた。
「これで満足か?」
そして離れたところから耕太郎さんが出現した。彼が移動する瞬間は見えていない、そもそも時間的に絶対ありえない場所から出てきてるんだけど。技っていうかもう魔法と言ってもいいやつだよね?
『おー!』
巻き起こる何度目かの拍手。
「て、出来るかー!おかしいよあれ!プロなら出来るけど絶対僕達素人には無理があるよ!」
僕は猛烈に抗議した。流石に素人だと出来ること出来ないことに大幅な差がある。
「うむ、出来ないだろうな。日頃から忍術の元となるチャクラや魔力を生成するのすら四、五ヶ月はかかる。しかもお前達はこの世界の人間ではないゆえ素養がなく高度な忍術を使えるという保証はない」
「喧嘩売ってんの君」
シノビマジンの言葉に思わず僕は喧嘩腰になってしまう。出来る保証がないことやらすとかひどくない?
「よって、あくまで形のみやることにする」
「じゃあさっきのくだりいらないよねぇ?ねえ?」
「落ち着け司」
「お前ちょっとおかしいぞ」
シノビマジンに詰め寄った僕を豊太郎とアマツカが止めた。ちょっと血が昇ってたみたいだ。
「全員丸太を自分の前で抱えろ!」
シノビマジンの言葉に僕達は丸太を持つ。ちょうど胴体を覆うくらいの大きさだ。
「これより、手裏剣を投げる。お前達は手裏剣が来た瞬間に丸太を前に投げ、その隙に移動しろ」
どうやら最初の案で行くらしい。
「行くぞ!」
「と、来たぁ!」
手裏剣が刺さった後だけど丸太を投げ捨てその場から退避した。
「あぶねっ!」
豊太郎も丸太で手裏剣を受けるけど完全に受けきってから移動しててちょっと遅い。
「ふん!っと」
悠はむしろ早く丸太を投げてしまってしゃがんで手裏剣を避ける羽目になっていた。
「はっ」
「えい!」
エミリアとアリエルちゃんは気がつくとその場から消えていた。
「へ?」
「えー!?」
僕達は忍者でもないのに姿を消した二人を見て声を上げた。
「ほう、本物の身代わりを会得したか。まさかいきなり成功させるとはな」
シノビマジンが感心したように言う。
「身代わりの術、成功です!」
「ま、天使にかかればこんなもんかな」
まるでイリュージョンかのように二人がさっきとは全く違う場所にいた。
「え、なんで?!なんで二人とも出来んの?!忍者じゃなくても出来るの?!」
僕は混乱のあまり二人に近づいた。
「いえ、忍術も魔法も結果出来れば同じかなーっと」
エミリアが言う。
「それで出来るものなの?」
「変わり身用の丸太はもうあるので消えてまた出るイメージが出来上がればかろうじて」
「はあ…………」
魔法って、すごいなーてつくづく感心した。
「で、アリエルちゃんは…………」
「自分の体を光にして、一旦再構成するっていう技。司くんも天使だから出来るよ?」
「そうなの?」
僕も出来ると言われて食いつきそうになった。
「うん、まず天使モードになってみてください」
言われて羽根と輪っかを出してみる。忍者装飾のまま出したから後ろがどうなってるのか気になるけど今はそれどころじゃない。
「で、自分の体を光で包みます」
エネルギーを体の表面に出すってことかな、やってみる。シュワッて音がした気がした。て、あれ?ここどこ?何も見えないんだけど。そう思うとシュゥッと音がしてさっきとは別の場所にいた。
『おー!』
周りから拍手から巻き起こった。
「やれば出来るじゃないですかー、にひひ………」
アリエルちゃんが僕の肩を抱いてサムズアップする。て、当たってる当たってる!アリエルちゃんの大きいおっぱいが当たってるよ!
あれ、アマツカが睨んでる気がしたけど気のせいかな。
それから僕やアリエルちゃん、エミリアは特別な力で姿を消しながら身代わりの練習をすることになった。
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