二十三話 暴走のアリエルとシノビマジン!
今回は狐流忍者編のボスが本気を出す回です
「激滅だオラァ!」
天使の羽と輪っかを生やしたアリエルちゃんは乱暴な口調と共に人の大きさくらいの光の槍を投げつけた。マシーンアンデッドは右往左往するけど槍自体が大きいし地面に激突した時余波のエネルギーが出たから巻き添えを食らった個体のがほとんどだ。
「粉、砕!」
今度は指から雷を発射して全体に食らわしていく。
アリエルちゃんによってあれだけいたと思われるマシーンアンデッドの大軍はあっという間に減少していった。
「おうおう、お前ら上手くやってるかぁ?て、なんじゃこりゃー!なんなんだよいったい、なんなんだよ!」
様子を見に来たアンデッドバーサーカーが阿鼻叫喚な部下達に悲鳴を上げた。
「遅いよ馬鹿ぁ!もう君の場はゼロだよ!手札もゼロ!山伏もゼロ!ライフもゼロ!全てがゼロになるだよ!」
僕は思わず敵相手に登場が遅いことを説教をぶつけてしまった。
「場と手札と山伏は分かるけどライフってなんだよ!?賭け金かよ?!」
それに対しアンデッドバーサーカーが返す。異世界にカードゲームていうとトランプしかないから分からないんだ。
「ああ?まだいたの、ゴミ虫が」
アリエルちゃんがアンデッドバーサーカーを睨む。おかしい、相手は異世界を揺るがすモンスター軍団の幹部なのにアリエルちゃんが言葉通りゴキブリとかを見る目になってる。
「てめえか、俺の部下を殺ったやつは」
アンデッドバーサーカーがアリエルちゃんに言う。けどその時にはもうアリエルちゃんは彼の目の前に移動していた。拳にエネルギーを溜めて彼に向かって突き出す。
「予告なしか!」
とっさに腕で防御するアンデッドバーサーカー。不意打ち同然なのに意外と反応が早い。
「ゴミは喋らないでくれます?」
アリエルちゃんが冷徹に言う。
「なに言ってやがる。ゴミは、てめえの方だろうがー!」
「ぐっ!」
アンデッドバーサーカーが空いてる方の拳でアリエルちゃんのお腹にパンチを食らわした。
「大丈夫かアリエル」
アマツカが吹っ飛んできたアリエルちゃんを抱きとめる。
「ごめんなさい先輩、あのゴミ他のよりしぶといです」
アリエルちゃんがすまなそうに言う。
「謝る必要はない、ここからは俺達の仕事だ」
アマツカが言う。
「てめえらでも構わねえ、昼間と今回の借りをまとめて返してやるぜ」
アンデッドバーサーカーはそう言うと脇を締めた。
「うおぉぉぉぉぉ!」
彼は雄叫びを上げると彼の背中からすごいことが起きた。
「腕が生えたー?!」
なんと腕が左右三本ずつ追加で出てきたんだ。しかもご丁寧に片方は全部生身、もう片方は機械の腕と別れた状態で。
「腕が増えたからなんだ。俺達にはエンマジンの力がある、地面がむき出しの土のここなら周辺への被害を気にする必要はないぞ」
アマツカが強気に言う。
「エンマジン?昼間も使っていたがなんだそれは」
そんな悠にさなえが説明した。
「ドラグエンパイアでもらった力、エンマジンていう神様の試練をクリアすると貰える。わたしも一応持ってるけど不合格だから使ったら危ないらしい」
「なるほど、この世界にも神はいないわけではないのか」
「エンマジンの力なら俺も王都に行く途中でゲットしたぜ」
「豊太郎も?!」
驚いた、いつの間にそんなことを。
「ああ、結構キツかったぜあれは」
熱いこたつの中で熱い鍋、ダブルの熱さが思い出されるよ。まだ記憶に新しいだけに思い出すだけで体が熱くなる。
「なら、」
「そうだな」
僕と豊太郎は互いに頷き合う。
『エンマジンの力よ!我が天使(龍)の力となれ!』
そしてMギアをかざして叫んだ。僕達の体温の上昇と共にアマツカとヴァミラの足元から炎が出て二人を包む。
『はっ!』
炎が止み手足に炎をまとった二人が構えを取る。
『はー!』
龍と天使は勇敢にもその恐ろしさを増した左右四本ら計八本のも腕を生やした怪物に挑んでいく。
同時に繰り出される炎の拳と爪、怪物はそれを難なく防ぐが、炎が腐った皮膚と金属を焦がす。
「受け止めた?!」
「こいつ、強い!」
アマツカとヴァミラが攻撃を止められたことに驚く。
「いやいや効いてる、効いてるぜぇ」
怪物が勝ち誇った笑みを浮かべる。これで効いてるんだ、とてもそういう顔には見えないけど。
「けど、オレサマをヤルにはもう一押し足らねえってナァッ!」
二人を防御してる方じゃない余ってる方の怪物の腕が動く。
「危ない!」
「かわせヴァミラ!」
僕と豊太郎は慌てて注意を促すけどもう遅かった。
「オラオラオラオラ!」
ガガガガガ!アンデッドバーサーカーの拳が息もつかせぬ高速の動きで二人にヒットする。拳に継ぐ拳、受け止める隙もかわす隙もまるでない、無敵のパンチだ!
「う、ぐ………」
パンチが止みアマツカがよろめく。
「ヴァーミリオン………」
ヴァミラは負けじと口に炎を溜めて発射しようとする。
「やらせねえ!」
アンデッドバーサーカーのパンチ、今度のは一撃を強くしたものでヴァミラが後方に下げられる。
「ヴァミラ!」
アマツカが叫ぶ。
「てめえもだ!」
「ぐあ!」
アマツカも強力なパンチを浴びてこっちに飛んでくる。
「大丈夫?アマツカ」
僕はアマツカに駆け寄る。
「まさかあいつがあんな隠し玉を持ってたなんてな………」
アマツカの頬にはエンマジンの力の副作用とは別の汗が流れていた。
「レオパルド!」
悠が叫ぶとレオパルドがたてがみからバルカンを発射する。
「おいおい、こんな攻撃で俺様を倒そうってか?」
それをアンデッドバーサーカーは意に返さないように防いでみせた。
「それはどうかな」
「フリージングブレス!」
さなえが言うとガルムが冷気を飛ばす。当たれば相手を凍りつかせる絶対零度の技だ。
「ああ?なにかしたか?」
けどアンデッドバーサーカーには効かなかった。機械の腕をバリア発生装置に変化させて防いでいたんだ。
「そんな………」
パートナーの技を防がれてさなえが悔しがる。
「まだだよ!まだアンジュちゃんがいるもん!」
絵里香ちゃんが言う。アンジュというのはパートナーとなる天使の名前、アンジュリアンを略した言い方だ。
「エンジェリックアロー!」
アンジュリアンさんがアマツカと同じ光の矢を複数並べた状態でアンデッドバーサーカーを狙う。
ガシ!けどそれも彼の前には防がれてしまう。彼は腕を器用に使って光の矢を全てキャッチしたんだ。結構な速さで飛んだはずなのに全部捕まえるなんてなんて超人だ。人じゃなくてアンデッドだけど。
「こうなったら俺達も!」
「待て!あれは普通の敵じゃない、お前達が行ったところで敵う相手じゃない」
耕太郎さん達狐流忍者が敵に挑もうとするのを悠が止める。
「けどこのままじゃやられるでござる………」
「ええ、策はあるのですか策は」
秀信さんが拳で悔しがり伝助さんが眼鏡をクイッと掛け直し急かす。
「今考えてる!」
悠の声にも焦りが見える。
「おいおい、もう終わりかよ。じゃあ遠慮なく行かせてもらうぜぇ」
アンデッドバーサーカーがこっちに近づいてくる。こちらの動きが止まり大きな隙が出来たせいだ、どうする、どうすればいい?
「うお!」
アンデッドバーサーカーが声を上げる。ギャギャギャギャン!高い音が幾重にも重なって防御に回した金属の腕に無数の葉が刺さる。
「な、なんじゃこりゃー!は、葉っぱ?」
彼は腕を動かして攻撃の正体を確認すると改めて驚きの声を上げた。いきなり葉っぱが飛んで来たらそりゃあ驚くでしょ。
「なにこれ、忍術?」
Mギア使いのモンスターに葉っぱを使うものはいない。てことは狐流忍者の人がやったの?そう思ってその三人を見るけどみんな首を横に振るだけだ。
ヒューゥゥ。その時木枯らしのような風が巻き起こった。それは僕達を包み込み、そのままどこかへ運んで行くような感覚を覚えた。
気がつくとそこは狐流忍者の里ではなく森でもどこか別の場所に来ていた。目の前にいるのは……………………。僕は息を飲んだ、だってそれは昨日夢で見た謎の忍者そのものだったからだ。闇夜にあってここだけは明るさを少し保っていてその中で口元が金属で覆われた緑の忍者が瞳を光らせていた。
「人間の子供達よ」
緑の忍者が口を開く。口は見えないけれどその声はここにいる他の誰でもないので彼が口を開いたと分かった。その声は静かな上にどこか厳かに感じた。まるで人が出すものとは違うような。
「は、はい!」
僕達はその声に思わず返事を返した。
「お前達ではあの異物には敵わない」
忍者が言う。
「てめえ、いきなり出てきてなに抜かしやがる!」
豊太郎が彼に言い返す。
「お前達の戦い、見ていたぞ」
「だからなんだ!俺達は魔界を救う勇者なんだ、今は負けたけど今度は勝つ!」
図星を突かれたのにも関わらず豊太郎は怯まない。
「ていうかアンデッドバーサーカーはどうなったの?あのままほっといたら里の人が襲われない?」
僕も緑の忍者に意見した。
「その心配は不要だ。我が彼の撤退を確認した」
「本当に?」
「ああ」
「嘘だったら承知せんぞ」
里の忍者である耕太郎さんが言う。
「嘘はない、それにこの空間は特殊ゆえ不要に時が過ぎることはなくお前達が里に戻る時でも襲撃に遭うということもない」
「なにを言っている」
悠の言う通り僕達には彼の言うことが分からない。そんな空間作ってなんの得が、いやそれよりも彼はいったい…………。
「人間の子供達、そしてそれに仕える者達よ、お前達は我が呼んだ」
僕達はその言葉に目を見開いた。そこで僕は一つの答えが出た。
「まさか………」
「そうだ、お前の夢は我が見せた。結果、お前達はここに現れ、かの狂戦士と戦いその本気を引き出した。だがそれでは足りない、エンマジンの力だけでは足りんのだ」
詳しくことは分からないけどだいたいの事情は分かった。僕達はたまたま狐流忍者の里に来たんじゃない、彼が意図を持って呼んだんだ。
「どうしてそんなことを?」
僕は聞いた。
「先日この森にそこの獅子使いと龍使いが現れたのを見た、二人はすぐにここを離れたがここがいずれ暗黒ジャグラーズの手に落ちることは遠見の力で読めていた。だからボーンキングを倒した直後にお前達に夢を見せたのだ」
「他人に夢を見せるなんて、ありえません!」
「離れた対象にそんな技をやるなど不可能です!」
伝助さんやエミリアがが驚く。
「どういうことです?」
「忍術であっても相手に夢や幻を見せることは可能です。あるいは離れた相手に思念を送るという呪術もあります。しかし夢というあやふやなものを遠くに送るなど不可能です!」
「魔法も同じです。そんな高度な術、センカさんでも出来ません!」
伝助さんとエミリアが言う。センカというのは王都で重宝されてるすごい占い師のことだ。異世界の占い師ならそういうことも出来ると思ったけどそうじゃないみたい。つまり僕が見た夢はこの世界でも普通に出来ることじゃない。
「じゃああなたは………」
あなたは誰なんだと言うように僕達は緑の忍者に顔を向けた。
「我はエンマジンと同じくマジンに名を連ねる者、シノビマジン!」
「シノビ、」
「マジン」
彼の名乗りに僕達は繰り返した。シノビマジン、つまり漢字に直すと忍魔神、忍者の魔神?エンマジンはこの世界の神様だけど自分の土地を守る役目から世界そのものの救済は自分で行わないと言っていた。けど彼は僕達勇者に力を与えることで間接的に世界の救済に力を貸してくれた。シノビマジンはそのエンマジンの仲間だったんだ。
「そうだ、だからお前達に夢を見せることができた」
ヒトじゃなくて神様なら離れた人に夢を見せることが出来るというのも頷ける。
「でもあたし達そんな夢見てないけど?」
「というか司しか見てない」
絵里香ちゃん達が首をかしげた。
「恐らく我の夢は感度の高い者にしか届かぬのだろう、だからお前達は見ていなかった」
「じゃあ僕はその感度が高いってこと?」
夢に対する感度てのは分からないけど実際僕はそういう夢をよく見るから間違いないんだろう。
「エンマジンの仲間てことは………」
「違う、仲間とは言っていない。同じくマジンに名を連ねる者と言ったのだ」
さなえの言葉を遮ってシノビマジンが言う。その声は少し苛立ってるように聞こえた。
「仲間じゃない?」
さなえが首を傾げる。
「同じマジンなのは認めるが我々は協力関係にあるわけでも同盟を結んでいるわけではない。単に立ち位置と役割が同じだけだ」
「同じ職場にいるのにバラバラで仕事してる?」
「そう思ってくれて構わない」
今度はさなえの言葉を肯定した。マジンにも色々あるんだな。
「だがマジンである以上お前達に課せられることは分かるな?」
シノビマジンが言う。
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