二十二話 狐流忍者と合流する仲間達
今回から狐流忍者の里の地元の戦士が登場します
司side
豊太郎との通信を終え森を引き返して進んでいると何かの気配を感じた。人?モンスターじゃない、けど複数だ。
「魔導演奏!」
僕は魔法天使に変身する。気配の本体が近づいてきた、森の中を高速で動き回っている。もしかして、狐流忍者の人?
来た!クナイ片手に飛んでくる!
僕は双剣で受け止める、相手の動きが止まってその全貌が見えた。狐耳に和服、手甲に脚の布……………
「やっぱり狐流忍者!」
「俺達を知っているか。天使が俺達の里に何用だ」
僕の双剣にクナイをぶつけてる彼が言う。歳は20歳ぐらいかな、若さゆえの熱血さてのがありそうな顔で好青年なジルドレイさんとはまた違ったイメージ。
「何用って、僕ここ歩いてただけなんだけど」
「なにを言う、先ほど怪しげな道具で何か話していたではないか!あれはなんだ!」
「なにって、通信用の水晶ぐらいこの世界じゃ普通でしょ?!」
僕には彼がなぜ怒ってるのか分からない。
「にしては小さすぎるだろう!さてはお前、連絡にあった暗黒ジャグラーズの仲間だな!」
「違うって!むしろ逆だよ!この辺りで里の人に助け求められたから暗黒ジャグラーズを追っ払ったの!偉い人に聞けば分かるから!」
とんだ勘違いをした忍者さんに事情を説明した。
「あのドレスを見るでござる、王都で聞いた勇者のもう一つの姿じゃないか!?」
木の枝に立っている、忍者さんの一人が言った。僕って結構有名人になってたのね。
「それはまことか?!」
僕の目の前の忍者さんが言う。
「ええ、あの双剣がなによりの証拠です」
さっきのとは別の忍者が言う。この剣て石が埋まってたり刃に色がついてたり普通のゲームでも目立つデザインだからね。
「む、これは確かに。勇者様とは知らず、このような真似を。御無礼、お許しいただきたい」
目の前の忍者さんが頭を下げる。
「いいんですよ、分かってくれれば」
僕じゃなかったら死んでたかもしんないけどね。改めて目の前の忍者さんを見る。彼は長い髪を後ろで結んでいて白い忍者装飾をまとっていた。
「白?!」
僕は思わず声を上げた。
「どうしたのです?拙者の身なりが何か?」
「呼留と同じ!もしかして………」
「妹をご存知でしたか。はい、呼留は拙者の妹にございます。拙者、第一潜入部隊が隊長、耕太郎と申す。以後、お見知り置きを」
耕太郎さんが丁寧に頭を下げる。白い毛の人は屋敷でもあまり見なかったから言ってみたら正解らしい。第一てことは結構位が高いのかな、ジルドレイさんは第五って言ってた気がするけど。
「これはどうも。僕、天城司って言います。よろしくお願いします」
僕も同じように頭を下げる。他の忍者の人達も自己紹介していく。
「オイラは秀信と申すでこざる。耕太郎殿の部下をやっております」
赤っぽい衣装と毛のごつい体をした人が両手を出してくる。忍者てござるて語尾につけるイメージあるよね。
「どうも」
僕も同じように両手を出すとグッと握られた。分厚い皮膚に覆われた手にあったかみを感じた。
しかし色と秀て字が気になる、まさかな…………。
「わたくしは伝助という者にございます。先ほどは内の耕太郎が失礼しました、重ねて謝罪申し上げます」
青い毛と服の人が頭を下げる。ゲームのないこの世界に眼鏡という珍しい出で立ちだ。眼鏡はシルバーフレームの角型でシャープな顔立ち、経理とか事務が合いそうだ。忍者だから戦術書や古典読んでたのかな。
「い、いえそんなかしこまらないでください。僕もそんな気に止めてませんから」
かしこまった態度に僕も恥ずかしくなってしまう。
「しかしこちらの不手際であなたは危うく怪我をするところでした、十分謝罪に値します」
「は、はあ………」
かなりの堅物なのかなぁ。
「勇者様、我々は里が暗黒ジャグラーズに襲われたとの文を受け取り急ぎ馳せ参じました。先ほどあなたは暗黒ジャグラーズを追い払ったとおっしゃいましたが里の様子はどのようなものだったでしょうか」
ここに来た事情を説明する耕太郎さんが苦虫を噛み潰したような顔をしている。もしかして、こういう喋り方苦手?
文って日本の古い言い方が忍者て感じがするね。
「言いにくいんですけど、怪我人とか死んだ人とかいくらか出てますね」
知らせる僕の顔も気まずいものになる。
「そうですか………」
「オイラ達がもっと早く来てれば………」
耕太郎さんと秀信さんが俯く。というか朝、里が襲われて王都から夜帰って来るって生身なのに足速すぎでしょ、僕達は竜舎に乗ってきたのに。
「悩んでいても仕方ない、ますは一刻も早く里に戻ることを考えろ」
伝助さんがクールに言う。
「そうだな、行こう!」
「おー!」
そして里が見えるところに到着。
「なんじゃこりゃー!」
僕は頭を抱えた、なんたって里の家々が燃えていたんだからね。そりゃびっくりたまげたよ。
「なんてことだ、誰がこんな真似を」
耕太郎さんが言う。
「馬鹿言わないでください、暗黒ジャグラーズに決まってるでしょう!」
伝助さんが言う。
「おのれ暗黒ジャグラーズ、許さんでござる!」
秀信さんが握り拳を作って怒りを表す。
さらに近づくとマシーンアンデッド達が腕の火炎放射器で家に直接火を当てていた。下手したら森ごと火事になりそうな勢いだ。
「あれが暗黒ジャグラーズのモンスター………」
「まるで死者か機械人形か何かですね」
耕太郎さんと伝助さんがマシーンアンデッドを見た感想を言う。
「うおー!オイラ達の家もよくも、お縄につくでござる!」
秀信さんが背中から出した斧を振り回して突進する。忍者なのに斧使うてどんなだろう。
「待て秀信、一人で行くな!」
伝助の制止などお構い無しだ。
マシーンアンデッド達が振り返り秀信さんを見るが時既に遅し、斧の重い一撃を受ける。
「どうだ!参ったか!」
秀信さんがマシーンアンデッドに言う。斧が当たったのは生身の体、それじゃ駄目なんだよね。
「それで勝ったつもりか?」
斧のくい込んだマシーンアンデッドが笑う。
「なに?!」
死んだと思った相手の口が動き秀信さんが驚く。
「狐流忍者の戦闘部隊か、今さら来ても遅いわ。かかれー!」
『おー!』
一人の号令で他のマシーンアンデッド達が一斉に秀信さんに襲いかかる。
「秀信さん!」
僕達は駆け出していた。
「行くなと言ったろうにこれだ!」
「なんであいつはいつも一人で突っ込むんだ!」
伝助さんと耕太郎さんが苛立つよう言う。どうやらいつもこんな調子みたいだ。あれでよく第一部隊になれたね、チームの功績として昇進したのかな。
マシーンアンデッド達がバルカンを浴びて爆発していく。
「司!今までなにをしていた!司?いつからそんなに巨体になった?」
黒い鋼鉄のライオン、レオパルドに乗った悠が秀信さんに言う。
「オイラは司さんではないでござるよ?」
秀信さんが言う。
「司!どこ行ってたんだ!心配してたんだぞ!」
悠と一緒にレオパルドに乗ってたアマツカが僕に真っ直ぐに駆け寄る。
「ごめんごめん、豊太郎と連絡取ってたんだ」
僕はアマツカを抱きとめて言う。
「豊太郎と?」
「森の外まで行かないと通信が繋がらなかったから大変だったよ」
「俺に内緒でそんなことしていたのか」
「ごめん………」
頬を膨らますアマツカに僕は罪悪感を覚えた。今のアマツカは子供のサイズだからその罪悪感は強いものだった。
「誰だが知らんがこのモンスターは体を完全に切断するか機械の部分を破壊しなければ倒せない。それが出来ないなら下がっていろ」
悠が言う。
「舐めるなでござる!オイラ達は狐流忍者の第一潜入部隊でござる!あんなへなちょこモンスター共には負けないでござるよ!」
秀信さんが言い返す。
「ならせいぜい死なないようにするんだな、次はないぞ」
「言われなくとも!」
再びマシーンアンデッド達に挑む秀信さん。
「レオパルド、頼むぞ」
悠がレオパルドから降りて言う。
「イエス、マスター!」
レオパルドが駆け大きな爪でマシーンアンデッドを攻撃していく。
「司、俺も」
「うん!」
僕はアマツカに頷く。
「召喚!」
Mギアを構えて叫ぶとアマツカが大人サイズになってマシーンアンデッドに光の矢を撃っていく。
「あれが勇者の操る魔法」
耕太郎さんが召喚に見とれる。
「あれは研究のしがいがありますね」
伝助が眼鏡を直す。この里って科学技術でもあるの?
「勇者様!我々は家の中の人達の避難を!」
耕太郎さんが言う。
「いえ、その必要はありません」
伝助さんが僕より先に言葉を紡ぐ。
「どういうことだ?」
「ご覧なさい」
彼がある家を指さした。
「人がいないが、それがどうした?」
耕太郎さんが言うと伝助さんが馬鹿にしたような顔をした。
「分からないのですか?逃げる人がいないということは元からあの家に人はいない。いくら燃えたところで死人は出ないんですよ。つまり逃げ遅れた住民の避難を心配する必要はないんです」
伝助さんの言葉は理詰めでよく状況を観察していた。
「なるほど、もしや勇者様が?」
耕太郎さんが僕に言う。
「はい、ちょうどみんな離れた屋敷に避難してたので悠がそこからなるべく離れないよう言ったんです」
「流石勇者様、と言いたいところだが元の避難体制が整っていたおかげですね」
「そうとも言いますね、はは」
もしかして耕太郎さんは勇者のことが嫌いなのかな。
僕も戦線に加わるべく双剣を弓矢形態に合体させて光の矢をマシーンアンデッドに当てていく。
「光の矢か。俺達も行くぞ!」
「ええ」
耕太郎さんが腰の剣を抜いてマシーンアンデッドの体を切断していく。
「へ、爆弾?」
伝助さんはというと、どこからともなく爆弾を取り出していた。丸い形で導火線のある昔ながらの爆弾だ。きっちり火もついていてジジジと鳴っている。
「火遁の術!」
技名を叫んで爆弾を投げる。ボン!という音がして爆発が起きる。爆風が終わったころにはバラバラになったマシーンアンデッドが何体も転がっていた。うわ、ぐろっ。モンスターと言っても死体を見るのはまだ慣れないな。この爆弾、もしかしてかなり威力高かったりしてる?
僕達は協力してマシーンアンデッドを倒していく。けど、燃えてる家を消化するまでは手が回らない。そんな時冷気が家を襲った。その冷気は凄まじく、炎なんてあっという間に消えてしまった。
さらに竜巻が発生したり水流が飛んで次々家を消化していく。
「豊太郎!みんな!」
振り返るとヴァミラに乗った豊太郎、ガルムに乗ったさなえとエミリアにアリエル、アンジュリアンさんに抱きかかえられた絵里香ちゃんがいた。はい、ここで二人この里にいゃちゃいけない人とそもそもこの世界だと初見の人がいますね。
「て、なんでエミリアとアリエルちゃんがいるのさ!」
エミリアはドラグエンパイアの王女様だから王都から離れた場所である狐流忍者の里にわざわざ来るなんてありえないよね、ついて来ちゃったのかな。
アリエルちゃんはそもそも人間界にいたはずだしなんでいるの?
「細かい話は後、まずはこの火事を消すのが先」
さなえが言う。
「分かった」
僕にも何か出来ることはないだろうか。そうだ!今の僕には魔法が使える、これを使おう!僕は弓矢を上に向ける。
「水よ!我が願いを聞き、その癒しで持って荒れ狂う炎を鎮めたまえ!」
魔力が青い弾丸になり矢の先に貯まりトリガーを引く。すると大量の水となって家に落下して炎を鎮火した。魔法天使は名の通り魔法も使えるからこういう便利なことも出来るんだ。
「おのれー、よくもまた我々の企みを邪魔してくれたなー!」
「一度ならずも二度も、ぜってぇ許さねえ!」
マシーンアンデッド達が口々に言う。
「許さないのはこっちでござる!よくもオイラ達の家を!死んだ人もたくさんいるのに!」
秀信さんが言う。そうか、この人はさっきの伝助さんの話聞いてなかったんだ。
「死んだやつがいるのはこっちだって一緒なんだ!てめえらだけに文句は…………ぐぇ!」
そのマシーンアンデッドは言葉を最後まで言えなかった、アリエルちゃんが光のムチで彼を縛り付けたからだ。
「ふん!」
『うわー!』
アリエルちゃんがムチを振るうとマシーンアンデッドが振り回され他の個体ごと吹き飛ばした。
「うすらアンデッドごときが神聖なお狐様の親族に触れないでくれます?」
アリエルちゃんがモンスター達を見下ろす。なんだ、これは。僕の知ってるアリエルちゃんはぶりっ子体質なアマツカの可愛い後輩だと思ってたのになんか違うんだけど。違和感しかねえ、こんなのアリエルちゃんじゃねえ。
あ、今言ったけどアリエルちゃんは元は人間界にいたんじゃなくてアマツカみたいに天界から来て人間界に滞在してたんだよね。性格はさっき言ったみたいな感じ見た目は紫ツインテールのロリ巨乳の子って感じかな。
「ねえアマツカ、もしかして狐や狐の獣人って天界じゃ神様の使いだったりする?」
僕はおそるおそるアマツカに聞いた。
「ああ、天界じゃ神社の狛犬とかと同レベルで下手に傷つけたら晒し者レベルの罰を受けると言われている。恐くて知り合いじゃやったやつなど誰もいないがな」
そう言うアマツカの声も震えている。てかレベルて言葉好きなの?ところで狛犬って犬って字にあるけど実際の犬じゃなくて架空の犬だよね。天界の文化て必要以上聞いたことないけど改めて聞くと恐いものもあるんだね。
「逆にアンデッドのような邪悪な生物は始末すべき害獣として扱われ万が一目の前に現れたら真っ先に処理するよう言われている」
つけ加えるアマツカの言葉が辛辣だ。まるで街や農村に現れて畑を荒らす熊や猪より扱いがひどいじゃないか。
「その割にアマツカは普通の反応だったけど?」
アマツカもアリエルちゃんと同じ天界出身だからあいつら見た途端怒っても違和感ないけど……………。
「俺は勇者の天使としての使命のが大事だからな」
ある意味真面目だ。アリエルちゃんも天界での教えをちゃんと守ってるて意味で真面目だけど。
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