二十一話 司と遥香と悠
今回の話は遥香が悠にいじられる話です、以前までは遥香は単に悪い人に描いてますが今回は年相応かつ新たな一面を見せる感じにしてます
宴会も終わって時間が出来ると屋敷の外に出た。
「どうしたの?なにかあった?」
呼留が聞いてくる。
「ちょっとね、すぐ戻るから大丈夫だよ」
そう言って僕は屋敷を離れる。
そこでMギアで豊太郎に連絡を取ろうとした。けど画面に出たのはザーザーという白黒のノイズだけだ。
「駄目かぁ」
試しに悠にかけてみるけど結果は同じだった。妨害電波でも出てるのかなぁ。
森を出てみよう、もしかしたら通じるかもしれない。そう思って森の外の方へ行くと遥香ちゃんとクイーンサキュバスに出会った。
「遥香ちゃん…………、こんなとこに何の用かな?」
僕は極めて冷静に話しかける。暗黒ジャグラーズの軍団が現れた矢先にその仲間の二人が出てくるなんて怪しいとしか言いようがないよねえ。あ、僕の顔邪悪になってないかな?
「やだなぁ、そんな顔しないでよ司お兄ちゃん」
なんだ、顔に出てたのか。僕は真顔に戻った。
「やめて、それ逆に恐いから」
じゃあどうしろと。
「で、結局なにしに来たの」
「うん、この里に来てる暗黒ジャグラーズに助太刀しようかなって」
「よし殺そう」
僕はノータイムで魔法天使の変身アイテムを構えていた。
「待って待って、殺さないで!違うの!助太刀に来たのはほんとだけど今すぐじゃないっていうか色々準備もあるっていうか」
遥香ちゃんが慌てて僕を制する。まあ殺すのは遥香ちゃんじゃなくてサキュバスさんの方だけど。
「どうゆうこと?」
今すぐじゃないってどういうことだろ。
「いやー、別に今すぐサキュバスのお姉さんに司くん倒してもらってもいいんだけど一応暗黒ジャグラーズも組織だから。えっと、ほら、面子?とかあるじゃない」
「君小学生なのに難しい言葉知ってるね」
悠との年の差から小学生と見て間違いないと思う。
「まあ向こうじゃなそれなりに刑事ものとか見てたからね」
見た目からして遥香ちゃん小学校高学年くらいかな、それぐらいになると刑事ドラマとか見るんだね。
「まあそれで組織の人に勝手に行動したら怒られるかなーて、特命係じゃないし」
〇棒!遥香ちゃん〇棒見てたんだ!
「ねえ、遥香ちゃん。そろそろ〇棒始まる時期だから今の内に向こうの世界に戻った方がいいよ」
冗談混じりに僕は言ってみる。
「うそ!今いつ?今何月なの?」
遥香ちゃんが慌てて乗り出してくる。これはチャンスかな。
「今8月だから油断してると10月になっちゃうんじゃないかなー」
僕は煽るように言う。
「うっそー!早く戻らないと〇棒始まっちゃうー!」
遥香ちゃんが頭を抱えて叫ぶ。
「よし、じゃあ僕と一緒に人間界帰ろう。悠も待ってるよ」
とどめの一言をかけた、これで決まれば儲けものだけど……………。
「よし、帰ろう。お兄ちゃんどこ?って、言うわけあるかー!」
長いノリツッコミの果てに威勢のいい断りを入れてきた。
「ですよねー」
オタク活動、略してオタ活で簡単に釣れたらそもそもこんなとこ来てないよねー。
「で、なんの話だっけ」
僕は話を戻した。
「あたし達が勝手に動いたら現地の人に怒られるから今から話つけに行くって話!」
「現地のってあの半分こ怪人?」
「半分こ怪人じゃねえ!Wだ!」
「それ言うと某マスクドライダーみたいになるからやめて」
「というわけであたし行くから」
「坊や、今度会った時は倒してあげる。覚悟なさい」
サキュバスさんが言った。
すれ違って森の奥に進むと遥香ちゃんが振り返った。
「あ、ついて来てもいいんだよ?」
「いや、僕他に用あるから」
「あ、そう」
振り返ってまた互いに距離を置く。
「ほんとについてきてもいいんだよー」
遠くから遥香ちゃんの叫び声から届いた。
「いいから行けよー!」
思わず怒り気味に叫び返した。ふう、今度こそ振り返らないだろう。
おっと、ちょうど森を出たみたいだ。ここなら通信が通じるかもしれない。
『司、どうしたこんな時間に』
ビンゴ!闇夜をバッグにした豊太郎が映った。ヴァミラの翼も映ってるからどこか飛んでるのかな。どうやら暗黒ジャグラーズがいないとこだと通じるみたい。
「実は──────」
僕は今日の出来事を報告した。
『マジかよ、大丈夫かよお前ら』
「なんとか。けどまた里を襲ってくるかもしんない」
『なら俺達ももっと急がないとな』
「もっと?じゃあやっぱり」
『ああ、ドラグエンパイアのでかい祝勝イベントも早めに終わらせてもらって今そっちに向かってる。びっくりするやつもいるぜ』
「へー、それは楽しみだね。こっちも面白い人と会ったんだよ、知りたい?」
『え、コル?』
あっさり当てられて出鼻をくじかれた。
「君、馬鹿に見えて勘はいいんだね。からかう面白味がないよ」
『別に面白味はいらねえだろ。あいつ元気だったか?』
「うん、呼留は元気だったけど他の人は何人か怪我したり死んだ人とかいるみたい」
『マジかよ、なら尚更急がねえとな』
「話はそれだけ」
『おう、じゃあな』
通信を切る。みんなと合流するのも時間の問題かな。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「おうおう!お前ら!今帰ったぜ!」
自身の本拠地でアンデッドバーサーカーが部下達に語りかける。
「頭ぁ!今戻られたんですね!」
「ついてったらやつらがいませんが」
基地に残った部下達がアンデッドバーサーカーに声をかける。
「勇者共がでやがったんだ」
「なんと」
「つまり仲間はやつらに…………」
部下達は仲間を襲った悲劇に悲痛な面持ちになった。
「シケたツラしてんじゃねえ!やつらにぶっ飛ばされた仲間が気になるならぶっ飛ばし返して笑いに変えやがれ!」
アンデッドバーサーカーが部下達に激を飛ばす。彼はこのような暗い雰囲気をなによりも嫌うのだ。
『ははっ!』
「よし、お前ら!早速準備だ!行くぜオラァ!」
『オー!』
洞窟内にアンデッド達の太い声が響いた。
「やっほー、バーサーカーさん」
次の襲撃の準備をしていると遥香がクイーンサキュバスと共に現れた。
「てめえ………なんの用だ」
アンデッドバーサーカーは彼女を睨みつける。彼女はピエロッサクラウンに勧誘され、組織のトップである皇帝にも寵愛されている。しかしその実は彼女が勇者同様人間であるため彼女をよく思わないメンバーは多いのだ。
勇者と同じ人間の力は借りない、要はそういうことである。
「やだなー、君のところに勇者達が来るって聞いたから助太刀に来たんだよー」
バーサーカーの目を軽くいなして遥香が言う。
「聞かなかったか?てめえの力は借りねえ、俺達は俺達のやり方でやる。怪我しねえ内に帰りな」
「そうだそうだ!」
「人間はお断りだー!」
アンデッドバーサーカーの言葉に部下達が便乗する。
ガッ、どこかで石が踏まれる音がした。
「誰だ!」
アンデッドバーサーカーが叫ぶ。
悠side
見つかったか。司が屋敷からいなくなってるから探しに行ったら遥香がいて後をつけてみたがまさかその先にアンデッドバーサーカーの基地があったとは。
とはいえ見つかったからには出るしかない。
「おにっ、人間?」
遥香がお兄ちゃんと呼ぼうとして呼び直す。なぜ言い直した?呼び方など勝手にすればいいものを。
「てめえらさっきの、わざわざご苦労なこった。まさかこいつをつけてきたんじゃねえだろうな?」
アンデッドバーサーカーが遥香に目をやりながら言う。
「ま、まさかぁ。たまたまじゃない?」
すまない、遥香。それがつけてきたんだ。
「どっちでも構わねえ、来たなら殺すだけだ」
アンデッドバーサーカーが金属の腕を向けてくる。
「まあまあ、ここはあたしに任せて。君は襲撃の準備があるでしょ?」
「ふん、てめえに借りを作るのはシャクだが仕方ねえ。好きにしな」
「はーい」
そう言うと遥香が俺に近づいてくる。
「じゃ、行こっか。お兄ちゃん」
そして甘えるように俺の耳元で言った。俺はその言い方に違和感を覚えた。やはりこの妹、俺の知ってる遥香じゃない。いや、そもそも俺の知ってる遥香が本当の遥香じゃなかったかもしれないがな。
遥香が歩いていきその後を歩く。
「マスター」
一緒に来ているレオパルドが足元で声をかける。
「大丈夫だ、遥香は俺達をどうこうするつもりはない。今の遥香は知らないが少なくとも今はそうだろう」
「保証は?」
アマツカが言う。
「遥香は恐らく、自分のせいで味方の基地がバレたと思っている。そしてそれがアンデッドバーサーカーに疑わてる以上確信になった時点で真っ先に狙われるのは遥香自身だ。つまり、こうして俺達を連れだすのは自分から目を逸らす役割があり遥香は下手に動くことが出来ないということだ」
「妹が相手だというのによくもまあ冷静でいられるな」
「最初動揺して痛い目を見たからな。あんな失敗は二度としないさ」
「なるほど。で、司はどこにいるんだ?」
「知らん、ここじゃないんだから森のどこかだろう。だが今は敵の基地だからな、少し我慢しろ」
洞窟を抜けて外壁に沿っていくらか歩いたところで遥香が止まる。
「いやー、まさか司お兄ちゃんじゃなくてお兄ちゃんが来るなんて意外だなー」
遥香の言葉に眉を潜める。
「どういうことだ、司と会ったのか」
そう言ったのはアマツカだ。
「うん。さっき森の外の方で」
「あいつ、俺に勝手で………」
アマツカが声を震わす。どうやら司に関しては親友の俺より相棒のこいつのが沸点が低いらしい。
「落ち着けアマツカ。で、司はどこにいるんだ?」
俺はアマツカを御して遥香に聞いた。
「さあ?あたしと反対側に行ったから森の外じゃない?」
「逃げたのか」
レオパルドが言う。
「うわー、それあるかもねー。戦うのが恐くなって逃げ出すとかありえなくもないからねー」
遥香がレオパルドを指差して笑う。
「ふざけるな!司は逃げたりなどしない!」
アマツカが怒りに遥香に襲いかかる。
「おいアマツカ!」
俺は慌てて止めようとしたがその必要はなかった。クイーンサキュバスがアマツカに蹴りを浴びせたのだ。
「く………」
アマツカが痛みに顔を歪める。
「大丈夫かアマツカ。司がいないんだからあまり無理はするなよ」
俺はアマツカに声をかけた。
「分かってる!けど………」
相棒を侮辱されて黙ってはいられないというわけか。
「やれやれ、一人じゃ何も出来ない無能天使のくせに粋がらないでくれるかしら?」
クイーンサキュバスが言う。
「この馬鹿はさておき。お前、人間界に帰らないか?」
「お兄ちゃん聞いてなかったの?それとも洗脳されたショックで忘れちゃった?あたしは、帰らない!ここであたしはあたしの、お兄ちゃんや司お兄ちゃんのための理想郷を作るの!だから帰らない!」
「その俺達を洗脳したのはどこの誰だ?俺達の理想郷を作ると言いながらその俺達を洗脳とは笑わせるな」
「そんな恐い顔しないでよー、洗脳は後で解くつもりだったし大きな成果にはリスクはつきものだよ?」
遥香は俺の言葉など意に返さない。
「それで、そのリスクでお前はなにをした?いや、お前は何が出来る?」
「なにが言いたいの?」
ここで遥香の顔が不機嫌なものになった。
「人間の力は借りない、それがアンデッドバーサーカーとその部下達の総意だったな」
「それがどうしたの?」
「今ので分からないとはただの馬鹿なのかそれとも受けいたくないのか」
遥香の口元がピクピクした。ふふ、妹をなぶることほど楽しいものはないな。
「お前は暗黒ジャグラーズでやりづらい立場にあるんじゃないか?なにしろ、勇者である俺と同じ人間が魔界のモンスター軍団の暗黒ジャグラーズに与するなど疎まれかねんからな」
「そんなことないもん!あたし、暗黒ジャグラーズのアイドルとして人気博してるもん!」
遥香が腕を振って言い張る。
「あれでか?」
俺は小馬鹿にするよう笑ってやった。
「もー!馬鹿にしてー!」
遥香が顔を真っ赤にして怒る。ああ、愉快愉快、楽しくて堪らないなぁ。
「見ろ!」
その時、レオパルドが指差した。そこではマシーンアンデッドの大軍が洞窟を出ていくのが見えた。
「な、いつの間に…………」
迂闊だった、遥香と喋り過ぎたか。
「はっはー!かかったわねお兄ちゃん!あたしが洞窟を離れたのはこのためだったのよ!これで時間は稼げた、もうここにいる必要は…………」
俺達は勝ち誇る遥香を尻目に走りだした。
「って、話は最後まで聞きなさいよー!」
俺に向かって遥香が叫ぶ。
「バーカ、そんな時間あるかよ」
そしてニヤリと笑って言ってやった。
「俺のおかげで味方に殺されなくてよかったな」
それを聞いた遥香の声が赤くなった。それはもうりんごのような赤さだ。
「お兄ちゃんの…………バカー!」
「はっはっはー!」
背中に浴びる妹の叫び声が小気味よかった。
「悠………」
「最悪だ、この男最悪だ………」
レオパルドやアマツカが俺の遥香への態度に恐れおののいた。
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