十九話 不思議な夢と狐流忍者の里
ボーンキングを倒した日の夜、僕は夢を見ていた。夢だと分かったのはそこが見たことない森だったからだ。そこには、竹の生えた広葉樹林が広がっていた。どこだか分からないけどここは魔界のどこかなんだろう。
そこを進んで行くと誰かがいた。人なのか、モンスターなのか分からない。もしかしたら暗黒ジャグラーズの仲間かもしれない。ただ言えるのはそれは忍者の格好をしていたということだ、暗がりで色は分からないけど紐で止める前合わせの服にだぼだぼのズボン足元は布が巻かれて草履を履いていて腕には手甲があって背中に大きな手裏剣があってその全てが彼が忍者だということを示していた。
さらに進むとその頭が見えた。頭は緩やかな三角になったヘルメットをつけて口元が覆われていた、目元は目があるのは見えるのに目の周りはよく見えない。俯いていたその頭がこっちを向いて目が光った気がした。
目が覚める。カーテンの向こうからは太陽が指していた。
「うーん」
背伸びをして着替える。ボーンキングを倒して次の日の朝だ。確か悠と一緒にドラグエンパイアを出るんだっけ。
あの夢はなんだったろう、そういう気持ちもあるけど今は朝ごはんの時間だ。早く食堂に行かないとね、このお城広いから部屋から食堂までが遠いんだよ。
おっと、アマツカや悠達も起こさないと。僕は隣のベッドや部屋に向かった。
「アマギ様とイガラシ様はこれからどちらへ向かうのでしょう?」
朝食を食べながら王様が聞いてきた。アマギが天城て書いて僕の苗字、イガラシてのは五十嵐、悠の苗字ね。
「そうだな………」
悠が顎に手を当てて考える。
「お前、急いでる割に行く当てねえのかよ。ダサっ」
それを見て豊太郎がウィンナーを箸でつまみながら言った。
「もたもたするよりはマシだろう」
「司はなにか当てあるの?」
さなえが納豆を混ぜながら聞いてくる。
「え、僕?」
さっきまで今朝の夢を思い出していた僕は急に当てられてびっくりした。
「司はどこか行こうと思ってる場所あるの?」
「森?竹のある、忍者のいそうな」
僕は夢で見た風景を出してみた。
「なにそれ?偉くピンポイントだね、てかこの世界に忍者とかいるの?」
絵里香ちゃんが首を傾げる。まあ、異世界だからね。忍者なんて普通いないよ。
「忍者ならいるぞ、俺も昨日まで忍者の屋敷にいたからな」
『ええっ!?』
豊太郎が言うと絵里香ちゃん達が声を上げた。いるんだ、忍者。ていうか豊太郎忍者の屋敷にいたんだ。
「はい、この国にも狐流という狐の特徴を持つ獣人の一族がいてスパイ活動をしています。漢字?という字を使うらしくて流派を現す狐の字はキツネの意味でもあるとか」
「そうそう、それそれ」
エミリアが説明すると豊太郎が肯定した。またこの世界で初めて聞く名前が出てきたな。
「忍者とか獣人がいるのは置いとくとして、漢字あるんだこの世界」
僕はエミリアに聞き返した。
「はい、忍者はどうも漢字の部族らしいので」
異世界にも漢字て、すごいな。食事やボーンキングの鎧といい魔界って案外日本に近いのかも。
「けどなんで忍者の里なんて思い浮かべたんだよ」
豊太郎が聞いてきた。
「夢で見た気がするんだ」
「夢?」
「夢って確か司がたまに見る変な夢?」
さなえが言う。
「変なっていうほど変じゃないと思うけど………」
「なんだそれは、そういう体質でもあるのか」
悠も聞いてきた。
「いや、君達も経験あるでしょ」
「あ」
「そういえば」
「まさか」
僕に言われて豊太郎達が考える。
「あれか」
豊太郎が指を出した。
「うん、それ」
「なんです?」
エミリアが聞いてきたので僕は説明した。
実は僕達Mギアチルドレンはよく変な夢を見るんだ。それは過去の話だったり未来の話だったりそこにはいない相手と会話出来るものだったり色々だけど。
「けどさあ、それ言ったら司が一番変な夢見てね?今日だってお前だけ見てたし」
豊太郎が言う。
「まあ、それはそうだね」
「で、今日はその狐流とやらの忍者の里に行くのでいいのか」
悠が言う。
「うん、夢だしそこが狐流て忍者の里かは分からないけど行ってみる価値はあると思うんだ」
かくして僕とアマツカ、悠とレオパルドは狐流忍者の里に行くことになった。移動手段はフレアドラゴンに引っ張られた小屋みたいな馬車ならぬ竜車、どういう原理かわかんないけど小屋みたいな重いものを真っ直ぐに引っ張ってるんだよね。最初こそ斜めになってたけどある程度飛べば真っ直ぐになるみたい。
「ふぁーあ」
隣で悠が大きな欠伸をした。
「なに?寝不足?ふかふかなベッドにふかふかな枕なのに寝れないとか大丈夫?」
「ふん、お前と違ってこっち来てからずっとあの女に洗脳されてたんだ。疲れも残るに決まっている」
悪態をつくように言われてしまった。
「レオパルド、今朝の悠はどんな感じだったの?起きるのちょっと遅かったけど」
「うなされていたよ。どうやら遥香の夢を見ていたらしい」
「言うなと言っただろ」
悠がレオパルドに言う。
「なんだ、君も見てたんじゃん。それともあれかい?こっちに来て遥香ちゃんへの不安が一層増えたとか?」
「ふん」
悠は鼻を鳴らすだけで眠りについてしまった。前の座席を見ると疲れてるのかレオパルドも眠っていた。
「まあいいけどね。僕達も昨日ボーンキング倒して疲れてるし、目的地に着くまでね…………」
ふとアマツカを見ると既に彼は寝ていて思わず言葉を失った。
「君もかい」
なんだかんだで僕は最後に寝ることになってしまった。
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魔界のどこかにある暗黒ジャグラーズの本拠地、そこにはピエロッサクラウンと玉座にいる何者かと遥香、その護衛のクイーンサキュバスがいた。
「それで、皇帝さんはみんなを集めてなんの用なの?」
遥香が玉座の主に向かって言う。集めて、と言ったが正確にはこの場に実際にいるのはわずかな個体だけでありそれ以外は魔力で姿を投影しているのにすぎない。
「ボーンキングが死んだ」
皇帝と呼ばれた者が口を開くと
「なんだって!」
「どういうことだ?」
「まさかやつが」
「何者がやつを」
などと皇帝の前に投影された影達が叫んだ。遥香とサキュバス、クラウンだけは既にその状況を知っており動じる様子はない。
「案ずるな。勇者だ、異界から現れた勇者があの男を倒したのだ」
皇帝が言う。
「まさか伝説の」
「実在したのか!」
「そういうことだ。だろう?ピエロッサクラウン、五十嵐遥香殿?」
『はっ』
皇帝の前に二人がかしずく。遥香はまだ年端もいかぬ子供だが、場合によっては皇帝の前にひざまずく思慮深さはあった。いや、そうせざるを得ない迫力が皇帝にはあった。そういう威圧感と恐怖を皇帝はまとっているのだ。
「クラウン、君は以前あちらの世界で勇者達と戦ったことがあるらしいね。彼らの強さをどう思う?」
皇帝の問いにクラウンが答える。
「はっ、僭越ながら申し上げます!やつらの戦闘力は並のモンスターを超えています、しかし我らの足元には及ばぬ限りだと」
「遥香殿は?」
「えっと、サキュバスさんが直接戦ったのは兄のレオパルドと司っていう天使の二人だけですけど勇者と言っても結局は人間?なので弱点を突こうと思えばいくらでも突けると思います」
「だそうだ、なにも恐れる必要はないよ。自分達の役目に徹したまえ」
皇帝が投影された影達に言った。
「けどよお、自分の足下でハエがこうウロチョロそれたら堪ったもんじゃねえぜ」
影の一つが言った。
「確か君の侵略領域はドラグエンパイアの領土だったね」
「ああ、だから次ヤツらが来るのは俺んとこだ。俺の邪魔をするのは確実だぜ」
「そういうことなら好きにしたまえ、君なら難無く彼らを倒せるだろう」
「ありがとよ、皇帝陛下」
「会議はこれで終わりだ、後のことは彼に任せよう」
『はっ!』
皇帝が言うと影達は姿を消した。
「面白くなってきたじゃん」
遥香が何かを企むようにニヤリと笑った。
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