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魔導奏者りりかさん魔界編  作者: 兵郎
一章 龍の国 ドラグエンパイアとデッドボーン軍
18/60

十八話 司の洗脳、魔界にて集う勇者達




勝利の余韻に浸かるのも束の間、ガタン、ガタンと遠くから金属が地面に触れる男がした。


「あれはなんでしょう?」


ジルドレイさんが指をさす。前を見ると黒いライオンが人を乗せていた。


「もしかして、悠?!」


「知り合い?」


「知り合いもなにも、もう一人の勇者ですよ!」


「勇者ってえー!?つうか今さらかよ、もうボーンキング倒しちまったぜ?」


ユーリさんの言葉はもっともだ、もっと早くくれば楽にボーンキング倒せたんだけどな。


「おーい!」


僕は悠に手を振った。けど彼の対応は予期してないものだった。


「うわ!」


いきなりレオパルドがエネルギー弾を撃ってきたんだ。直撃した人はいないけどかなり危ない。


「ちょっと悠!やめてよ!」


僕は悠に抗議する。


「司、お前は遥香のために死んでもらう」


レオパルドから悠が降りて言った。


「遥香ちゃん?なに言ってんの君」


遥香ちゃんて悠の妹さんの名前だけどそれがどうしたって言うんだろう?なんで僕が死ぬことに繋がるの?


「司、なんかあいつ変じゃない?」


さなえが言う。


「死んでもらうって言ってますよ、味方じゃないんですか?!」


ジルドレイさんが驚いて言う、それはこっちも知りたいよ。


「いけ」


悠が命令するとレオパルドが走ってくる。


「に、逃げろー!」


誰かが叫んで散り散りになる。


「なんで僕だけ狙われるのー!」


レオパルドは僕に向かってたてがみについたバルカン砲を撃ってくる。少しでも油断したら当たっちゃうよ。


「グォォオッ!」


接近して腕を振ってきた。


「ぐ、ぎぎぎぎ……………」


歯を食いしばって腕や顎を抑えつけるけど少しでも力を抜いたら大怪我しそうだ。


「司ー!」


「え?」


近くからどこか見知った声がしてレオパルドが消えた。


その主、赤いドラゴンはレオパルドを足で掴んでいて高い所から落とした。


「豊太郎!」


僕は赤いドラゴン、ヴァーミリオンドラゴン、略してヴァミラに乗った友達の名前を呼んだ。ヴァミラはフレアドラゴンよりも大きな姿をしていて格闘戦が得意な体型で装甲が付いたりしているんだ。


ヴァミラと豊太郎が僕達の元に飛んでくる。


「豊太郎!来てくれたんだね!」


「ギリ及第点」


「新しい勇者様じゃないんですか!立派な龍をお持ちでー」


豊太郎の登場に僕達は歓喜した。


「話は後!まずはやつだ」


ヴァミラから降りた豊太郎が悠を見る。


「ねえ、あいつどうしたの?僕のこと殺すって言ってるけど」


「妹に洗脳されてるんだよ、だから俺達を殺しにかかってる」


豊太郎の言葉に場が凍りついた。悠が、洗脳されてる?遥香ちゃんに?でもなんで…………。僕は混乱で前が見えなくなった。


「わりぃ、お前に会う前にあいつを正気に戻せればよかったんだけどな」


すまなそうにする豊太郎を見て思わず笑ってしまう。


「なんだよ、俺変なこと言ったか?」


「別に。悠のこと、倒せばいいんでしょ?」


「いいのかよ、親友なんだろ?」


「司には荷が重い」


僕は悠とは昔からの知り合いだから豊太郎とさなえに心配されてしまう。


「余計なお世話だよ、実際倒すのはレオパルドだしね」


「正気かお前」


アマツカが少し引いた目で僕を見る。


「あー、仲間同士戦うってのは一緒だしそこは一蓮托生てことで」


「ヴァミラ!今度こそやつを止めるぞ!」


「おお!」


ヴァミラが構える、豊太郎の口ぶりから一度倒し損ねてるだけにやる気満々だ。


「行くよガルム」


「ライオンより狼のが強いことを思いしらせてやる」


ガルムはアマツカだけじゃなくてレオパルドのことも嫌いみたいな言い方をしている。


「アマツカ、みんなと一緒にレオパルドの足止めをお願い。僕はその間に悠を説得してみる」


「任せろ。行くぞお前達」


「おお!」


「天使ごときが命令するな!」


アマツカがヴァミラとガルムに呼びかけレオパルドに接近する。ノリノリなヴァミラに対してガルムは反抗的だけど。


「我々も…………」


「おっと、騎士のみなさんは下がっててもらいますよ!」


僕は前に出ようとしたジルドレイさん達を止めた。


「しかし…………」


「これは僕達の問題です。それに、これで怪我人が増えたら勝利の余韻が台無しでしょ?ここは同じ勇者のモンスターに任せてください」


僕はニヒルに笑っていった。


「分かった、だが無理はしないでくれ」


レオパルドとアマツカ達がやり合ってる中僕は空から悠に近づく。


「聞いて、悠!君は遥香ちゃんに何かされたみたいだけどこんなの間違ってる!友達同士殺し合うなんておかしいよ!遥香ちゃんはこんなこと望まないよ!」


「それはお前の勝手な言い分であって遥香本人の意思じゃない。俺は遥香の意思を聞いた、だからお前達を殺す」


話にならない、どうすれば、どうすれば元に戻せるんだろう。とりあえず殴っていいかな。僕は拳を握りしめて悠の眼前にぶつようとした。


ガシ!


「え?」


悠に拳が届く前にいつの間にか横から現れた黒い手に自分の腕が掴まれていた。その主を確認すると露出度の高い黒いレオタードを着て背中から黒い翼を生やした青い肌をしたお姉さんだった。


「困るわねえ、勝手なことされちゃ」


「うわ!」


お姉さんに投げられて吹っ飛ぶ。


「司!」


アマツカが僕を呼ぶ。


「こっちは大丈夫!君達はレオパルドに集中して!」


僕も目の前に現れたお姉さんに集中するともう一人女の子がいたことに気づいた、いつの間に。しかもこの子どこかで会った気が…………。


「久しぶりだね、司お兄ちゃん」


女の子が僕を呼ぶ。


「久しぶりってまさか…………」


僕はその子と悠を見比べる。まさか、まさかまさか…………。


「そう、あたしが遥香だよ」


遥香ちゃんが妖艶に笑った。


「なんだってー!」


「そんな!?」


声を上げたのは豊太郎とヴァミラだ。いや、真っ先に驚くの目の前にいる僕なんだけど。


向こうの世界で暗黒ジャグラーズの一人のピエロッサクラウンてやつに誘拐されて悠が手がかりを探していたその遥香ちゃん。悠や遥香ちゃんとは昔からの親友だけどこんな性格だったかなー、もっと泣き虫だったような…………。


でもあの顔はいつかの夢で見たのと同じだと直感が告げていた、もう夢の内容なんて忘れてたけど。


「やっぱり君が悠を操っていたんだね」


僕は遥香ちゃんに言う。


「違うよ、あたしは命令しただけ。やったのはこのクイーンサキュバスさんだよ」


サキュバスて婬魔て言われたり崔婬てのをやるあのサキュバスかな、それなら悠達が洗脳されたのも分かる。


「じゃあそのお姉さんを倒せば万事解決てことだね」


僕は双剣を構える。


「あら、勇者でもない天使がわたしを倒そうっていうの?」


サキュバスのお姉さんが言う。


「違うね。勇者で、天使なんだよ!」


言うと同時に僕はサキュバスさんに斬りかかった。サキュバスさんは腕輪を使って器用に攻撃を防いでいく。


「はあっ!」


「ぐっ」


それどころか反撃に回し蹴りを受けてしまった。彼女の攻撃はそれで終わらない、飛び上がって僕のお腹に連続で蹴りを入れてきたんだ。衝撃で後退した後痛みに膝をついてお腹を抑えた。


「あら、もう終わりかしら?」


サキュバスさんが僕を見下ろす。


「いいや、まだまだ!」


僕は双剣で何度も斬りかかるけどやっぱり弾き返されてしまう。このままじゃ埒が開かない。一旦距離を置いてダダダッと助走して一気に斬りかかる。


「ちょ、ちょっと!」


サキュバスさんが驚いて声を上げる。ドサッと音がして僕は倒れる、攻撃失敗?いや、それよりも唇に感覚が、なにかくっついて……………目の前のサキュバスさんと目が遭った。状況の把握に数秒、なんだろう、さなえにすごい形相で睨まてる気が……………。


あー!サキュバスさんの唇と僕の唇が重なってるんだ!それに気づいた僕は慌てて体勢を起こす、見つめ合う視線。


「て、いい加減離れなさいよ!」


一瞬顔を赤くしたサキュバスさんが怒って僕を蹴り飛ばした。


「ちょっとどういうつもりよ!よりにもよって、わたしにキキキキキスを………………座りなさい!」


「は、はい!」


顔を真っ赤にしたサキュバスさんに怒られて思わず正座してしまう。


「そう、そのままよ。顎を上げなさい」


「こ、こうですか?」


言われた通りにするとサキュバスさんが顔を近づけてくる。え、なにこれ?キスして怒られてるのに今度は向こうからキスしてくるの?おしおきとかじゃなくてもうご褒美じゃない?


チュ、サキュバスさんの唇が僕の唇に触れる。あれ、なんか意識が朦朧としてきたんだけど。


「フフフ、これでもうあなたはわたしの虜」


サキュバスさんが妖艶に笑う。


「あ、あの女…………殺す。ガルム、あの女殺して!」


「いいのか?」


「いいからやって!」


さなえがサキュバスさんを指して言う、怒ってるみたいだけどなんで怒ってるのかさっぱり分からない。


さなえの命令でガルムがお姉さんに向かう。


「坊や、ちょっとあの狼退治してくれないかしら?」


「あいあいさー」


サキュバスさんのお願いに僕は敬礼で答える。なんでかわかんないけどこの人の言うことを聞かないといけない気がするんだ。


「ばーん」


僕は双剣を合体させた弓矢でガルムを狙う。あれ、上手く当たんないや。


「なにしてる司!味方だぞ!」


アマツカが怒って言う。


「なに、文句あるなら君も撃つよ?」


弓矢を向けるとアマツカが信じられないという顔をした。え、なんでそんな顔するの?わからないよ。


「どうしたんだよ司ー」


「まるで悠みたいに………」


ヴァミラと豊太郎も僕を見て驚く。


「もしかしてあの女がキスで…………」


さなえはなぜかサキュバスさんを睨んで離さない。


「貴様ぁ」


アマツカもサキュバスさんを睨む。


「だからなに?坊や、二人ともやってちょうだい」


サキュバスさんに言われて僕はガルムとアマツカを狙う。


「天使ごときが忌々しい真似を!」


発車してくる冷気をかわすと怒りにガルムが叫んだ。


「やめろ司!お前とは戦いたくない!」


僕の矢を避けながらアマツカが言う。ええ、いいじゃん戦ってもー。


「うっ」


矢がかすってアマツカが顔を歪める、僕の矢ってMギアのモンスターにも効くんだー。


「いいわ、そのままやってしまいなさい」


「いえーい」


サキュバスさんに言われてさらに矢を連発する。


「ぐわぁぁぁ!」


攻撃をかわさずどんどん矢が当たってアマツカがボロボロになっていく。


「キャハハハ!なによこれ、仲間同士でどんどん殺し合いとか楽しすぎるじゃなーい。楽に敵が減っていいわ」


その光景を見て女の子が笑う、誰だっけこの子。


「くそ、レオパルドだけでも厄介なのに司まで洗脳されるとか冗談だろ…………」


「あの女さえ倒せれば………」


豊太郎とさなえが悔しがる。サキュバスさんは倒させないんだなー。


「ホーリーサンシャイン!」


声と共にどこかから光が出てきて周りを包み込んだ。


「うっ、なによこれ、気持ち悪い」


サキュバスさんは眩しさに目庇う。


けど僕にはその光が暖かくて優しい光に見えて目が離せなかった。


「遥香、逃げるわよ!」


「え、なんで?」


「いいから早く!」


「う、うん!」


なぜか急いで逃げるサキュバスさんと遥香ちゃん。


あれ、僕なにしてたんだっけ。なんでアマツカに矢なんて向けてるんだろ。


「あれ、アマツカなんでボロボロなの?もしかして撃っちゃった?」


僕はアマツカの姿を見て言った。


「ふん、お前の知ったことじゃない。それよりも、もう大丈夫なのか?」


「うん、何がかは知らないけど多分」


そう言うとアマツカが軽く笑った。


「ならいい」


「俺は今までなにを…………」


「マスター、ご無事ですか!」


悠とレオパルドが口を開いた、というかレオパルドが口を聞いた!さっきまで唸り声だけだったのに。豊太郎達も悠の元へ向かう。


「もしかして、悠…………」


僕は悠に話しかける。


「司、いたのか。ここは………どこだ?」


「あは、あはは………」


『はははははは!』


悠の状況がわからないという言葉に思わず笑ってしまう。僕だけじゃない、みんなも釣られて笑った。


「なんにせよこれで僕達Mギアチルドレンいや、魔界の勇者の揃い踏みだよ!暗黒ジャグラーズなんて目じゃない!」


僕はガッツポーズをして言った。


「ああ、そうだな」


悠が言う、


「俺達」


豊太郎が言う、


「四人と四人で」


とさなえ、


『力を合わせよう!』


八人で腕を前に出して声を揃えた。


「ちょっとー、あたしを置いてかないでよー」


後ろからちょっと騒がしい見知った声がした。見るとピンクの女の子が一人と露出度の高い天使と緑の服を着たお姉さんがいた。さっきの声は女の子が出したものなんだ。


「あれは、新しい勇者様!?」


「なんだあの天使、すげーエロいぞ」


ジルドレイさんが女の子達に注目する。


女の子の名前は佐橋絵里香、悠とは学校も部活も同じで人懐っこい性格の子なんだ。僕達と同じ勇者って呼べる人なんだけどそもそも次元の穴でバラバラになるどころかこっちの世界に行く寸前に自分の家に帰っちゃった人なんだよね。正直ハナからいないと思ってたよ。


「で、なに?」


そんな人だから返事も不機嫌なものになってしまう。


「ひどいなー、せっかくあたしのパートナーがみんなを救ったのに」


「どういうこと?」


「皆さんが仲間割れしてるところにわたしが浄化の光を放ち邪悪な念を払ったのです」


絵里香ちゃんのパートナー、アンジュリアンさんが言う。数日ぶりに見たけどこの人さっきのサキュバスさんばりに露出度高い、神の使いの天使なのにご禁制極まりないよ。偉人が出る某ゲームのスケバンファッションの女武将が突っ込むところじゃないかな。


「邪悪な念………」


アンジュリアンさんの言葉を復唱する、サキュバスさんの崔婬て邪悪な念だったんだ。


「どうやら間に合ったみたいだな」


緑のお姉さんが言った。この人はリリィフィア・アルレイド先生、そう先生なんだ。悠と絵里香ちゃんの部活の顧問なんだけどこっちの世界についても色々知ってて何度かアドバイス受けてるんだよね。


その人がここにいるってことは…………


「もしかして………」


「そう、わたしが連れてきたんだ」


アルレイド先生が答える。


「どうもありがとうございます。あのしょーもない子のためにありがとうございます!」


僕は感動にアルレイド先生にお礼を言った。


「礼には及ばなさいさ、この世界のためだからね」


アルレイド先生がウインクをする。美人のウインクほどときめくものはない。


「あなたも勇者なのですか?」


ジルドレイさんがアルレイド先生に言う。


「いや、わたしは勇者じゃないさ。元よりこの世界の住人でね。悪いがわたしは他にやることがあるからな、行かせてもらうよ」


「アルレイド先生?」


「君達、色々あると思うがせいぜい頑張りたまえよ」


チャッと頭の上で二本指を振ると後ろを向いて歩きだした。


「お、おい」


豊太郎が呼び止めるもアルレイド先生は姿を消してしまった。


「勇者様、あの人はいったい………」


「さあ?僕達もわかんない」


「さあって………」


ゴローさんに聞かれるけど本当に答えようがない、だって知らないんだもん。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



『かんぱーい!』


豊太郎達とグラスを合わせる。あれからお城に戻って勇者一行と王様達、ジルドレイさんの隊のみんなでボーンキングの祝賀パーティーを開いたんだ。


「つうかいいのかよ、後から来た俺らが混じってもさ」


豊太郎が言う。


「構いませんよー。あなたも勇者方も勇者様のおひとりです、喜んで歓迎しましょう」


王様が豊太郎に答えた。


「マジか。じゃあ派手に楽しんじゃいますか」


豊太郎が同じく後から来た悠や絵里香ちゃんを指して言う。


「いえーい!」


絵里香ちゃんも盛り上がるけど悠はうつむいたままだ。


「どうした、悠?」


それを見て豊太郎が声かける。多分遥香ちゃんのことじゃないかな。


「あー、つもる話とか悩みとか色々あると思うけどとりあえずここはパーっと楽しんだら?何かあったらまた悩むし楽しめるなら今の内に楽しんどかないと」


僕は悠に言った。


「ああ、そうだな」


そう言うと悠はごく、ごくとジュースを飲み干した。


「おい、おかわり寄越せ」


「はっ、ただいま」


言われて給仕の人がグラスにジュースを足す、やけ酒ならぬやけジュースだね。


「いやあ、この度は本当にありがとうございますおかげで我が国も安泰です。感謝しても感謝しきれません」


王様が僕達に言う。


「いえいえ、僕達は自分の役目をやっただけですから」


「それでも十分感謝しております。つきましては国を上げての祝賀パーティーを催したいのですが」


「お、いいなそれ。もっと盛り上がろうぜ」


「やろうやろう」


「あまり騒ぐのはちょっといや」


盛り上がる豊太郎と絵里香ちゃんに比べさなえは拒否反応を示していた。そんな中悠は真剣な顔をしたままだ。


「悠?」


「だめだ、それは出来ない」


「はあ、なんだよそれ」


「なによ、やっちゃだめなの?」


悠の態度に豊太郎と絵里香ちゃんが喧嘩越しに言う。


「そもそも暗黒ジャグラーズはこの国で倒したやつらだけじゃない、他にも勢力はいるはずだ。なのにこんなところでいつまでも遊んでるわけにはいかない。それに、俺にはやるべきことがある」


悠の言葉にみんな黙ってしまう、みんなこの世界の実状を分かって反論出来ないんだ。やるべきことというのは遥香ちゃんのことだね。


「では、さなえはもう行ってしまうんですね」


エミリアが寂しそうに言う。


「ごめんなさい」


さなえは謝ることしかできない。短い間とはいえ二人は友達だったんだ、別れが辛くないと言ったら嘘になる。


「ならお前はここに残れ、俺は一人でも勝手に行く」


二人を見て悠が冷たく言う。


「悠てめえ、そんな言い方ねえだろ!」


豊太郎がバン!とテーブルを叩いて言う。


「あんな後ろ髪引かれた状態で来られても迷惑だと言ってるんだ、馴れ合いがしたければいつまでも馴れ合ってろ」


「ふざけやがって…………」


豊太郎が身を乗り出して悠の襟を掴む。そこテーブルだから!豊太郎さんあなたの膝テーブル乗ってるから!


「俺達、仲間じゃねえのかよ」


豊太郎が悠を睨んで言う。


「ま、まあ豊太郎落ち着こうよ。悠も悪気があって言ったわけじゃないと思うよ?」


僕は慌てて豊太郎を止めた。


「ふん」


鼻を鳴らして席に戻る豊太郎、あれはかなり怒ってるね。そこで僕は一つ提案することにした。


「じゃあさ、豊太郎と絵里香ちゃんはさなえについて祝賀パーティーの拡大版でもやってきてよ。それくらいあればお別れするのに十分でしょ?」


「いいの?」


さなえが言う。


「友達は大事にしないとね」


僕は軽くウインクした。


「司はどうすんだよ」


豊太郎が言う。


「僕は悠と一緒に先に進むからみんなは後から合流してよ」


「いいのかよ、ついてくのあいつだぜ?」


豊太郎が悠を揶揄して言う。


「大丈夫、僕達親友だしね。ね、悠」


「ああ。それよりもお前こそいいのか?この国に名残り惜しい人間とかいないのか?」


「さなえじゃあるまいし余計なお世話だよー。大丈夫、僕にはそういう人いないから」


人間て言ってたけどこの国竜人しかいないんだよね。


「本当か?俺に気を使わなくてもいいんだぞ?」


「いないって!ほんと心配性だな君はー」


念を押されて僕は声を荒らげた。


「てめえらほんと仲いいな、もうくっつけよ」


豊太郎がすごい勢いで睨んできた。


「そんなんじゃないってもー、勘違いしないでよね?」


僕は頭を抱えた。


「ふん、そういうのも悪くない」


悠が腕を組みながら言う。


「ちょっとー、君も顔赤くして言わないでよー。勘違いされるからねそれ」


だめだ、胃まで痛くなってきた、さなえとかジルドレイさんやエミリアとだけの時は大丈夫だったんだけどこいつらがいるとほんと疲れる。




パーティーを終え自分の部屋でくつろいでると悠が入ってきて言った。


「さっきは助かった、正直俺一人で遥香で助けに行くつもりだったからな」


「馬鹿だねえ、そんなことしたらサキュバスさんにまた洗脳されちゃうよ」


「なぜ唇を触る」


悠が嫌そうな顔をする。触ってるのは僕で自分の唇だけどね。


「僕もちょっとやられちゃったからね、操られてる間の記憶はないけど寸前にくちづけされたから多分それが原因じゃない?」


「やめとけ、それこそまた洗脳されるぞ」


悠に忠告されてしまい、僕はペロっと舌を出す。またあの人にキスされたいけど洗脳されちゃうんじゃ無理がある。


「次、洗脳されたら本気で殺すぞ」


アマツカに睨まれてしまった。


「はーいでも美人だよねーあの人」


僕は言った。


「好みなのか」


「好みっていうか歳上のお姉さんはみんな綺麗だよねー、おっぱいも大きいし」


「そういえばセンカとかいう女も巨乳だったな」


アマツカが言う。


「歳上の女が貧乳だったらどうする?」


「それはものによるね、顔とかスタイルとか」


「貧乳な上に顔もスタイルも悪かったら………」


アマツカが重い顔で言う。


「やめておけ、女にそういう視線を投げるのはよくない」


悠が言う、さっきはさなえに乱暴な口聞いたくせによく言うよ。ま、あれでも気遣ったんだろうけど。


「で、これからどうする?目的地とかある?」


僕は話題を変えた。


「あてはない、とりあえず歩きながら考える」

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