十五話 悠と豊太郎の異世界転移、悠の奇襲
数日ぶりの更新
悠side
「はっ」
俺は次元の穴から出て着地する。
「無事か悠」
腰のMギアから相棒モンスターのレオパルドに言われ自分の体を確かめる。
「問題ない」
ホルスターからMギアを外してレオパルドに言う。
仲間がいない以上完全に無事、というわけではないが服に損傷がない以上俺自身は無事と言ってもいい。
五体の無事を確認し、前を首を向けた俺は驚愕に目を見開いた。その人物は異世界の森の中にいて俺同様人間世界の異質な衣装に身を包んだ少女だった。
驚いたのは少女の格好じゃない、その顔だ。そいつは向こうの世界でこちらの世界の怪人に誘拐されていた俺の妹だったのだ。
「なんで、こんなところで…………」
「どうした悠?」
俺の声にレオパルドが反応する。レオパルドの入っているMギアはホルスターに全体が覆われているため音声以外の情報が入って来ないのだ。
「遥香だ、遥香がいたんだ」
俺はレオパルドの声で冷静さを取り戻して妹の名前を言った。
「あれ、お兄ちゃん?」
向こうも俺に気づいたようで話しかけてくる。
「遥香!探したんだぞ!今までどこ行ってたんだ!だいたい、お前無事なのか…………、ピエロの怪人の誘拐されたはずだろ?」
ここぞとばかりに俺は遥香に話しかけた。だが誘拐されたはずの彼女がなぜ無事なのか不思議でならなかった。
「どうやってこの世界に来たか知らないけど、お兄ちゃん何か勘違いしてるんじゃない?」
「どういう意味だ?」
俺は遥香の言っていることが分からない。
「あたしは誘拐なんかされてないよ、自分の意思でここに来たの。この世界で理想郷を作るために」
「理想郷?なんだそれは」
「ピエロッサクラウンて人に言われてたの、暗黒ジャグラーズとこの世界を支配しちゃえば自分の理想となる世界が作れるって。だからね、あたしも作るんだ。誰も死なない、誰も傷つかない、悲しまない理想の世界を」
遥香が歩きながら語り両手を上にあげた。
「理想、卿…………」
俺は彼女の言葉を反芻する。俺の妹は、何かすごいことをやろうとしてるのではと思えて言葉を奪われた。
「気をつけろ、悠。そいつは恐らく暗黒ジャグラーズ側の人間だ!なにをするか分からないぞ」
暗黒ジャグラーズという言葉を聞いてレオパルドが声を出す。暗黒ジャグラーズ、この世界を危機に陥れようとしていると言われる黒幕。けど、俺は妹から目を離せないでいた。異世界を探しても一人しかいない俺の妹遥香、それを敵と見るには無理があった。
「その機械…………ふーん、そういうこと」
遥香がMギアを見て何かを察したように言う。
「あたし知ってるよ、その機械を持ってる人はモンスターを連れてあたし達を倒しにやってくるって。けどあたし、負けないから」
この言い方だとまるで俺が遥香を殺そうとしてるみたいじゃないか。
「は?なに言ってんだよ、俺はお前を連れ戻しに………」
俺は最後まで言えなかった。
「悠、上だ!」
レオパルドに言われ上を見ると黒だか薄青の物体が近づいてくる。俺は急いでバックステップで距離を取った。
物体の攻撃をかわした後その正体を伺う。それは青い肌に紫の口紅をして黒いレオタードの衣装に身を包み黒い翼を生やした女の怪物だった。
「悠、俺を出せ!でないとやられるぞ!」
レオパルドが叫ぶ。
「分かってる!」
俺はMギアを構えて叫ぶ。
「召喚!」
先ほどまで小型の猫のような姿をした黒い生物が人より大きなサイズの獅子となり俺の目の前に現れる。
「へえ、その子がお兄ちゃんのパートナーってわけ。紹介するね、このボンッキュッボンなお姉さんがクイーンサキュバス、あたしの護衛だよ」
遥香が女のモンスターを紹介すると後ろに自身は下がる。
「逃げるのか遥香!」
俺は叫ぶ。
「逃げないよ、逃げないからそのお姉さんと戦ってよ」
遥香が言う。あの女をどかさない限り遥香を連れ戻せないということか。
俺もレオパルドから距離を置いた。
「行け、レオパルド!」
「イエス、マスター!」
レオパルドが駆けクイーンサキュバスを狙う。
「あらあら、猛々しいこと」
クイーンサキュバスが色っぽい声を出しレオパルドの攻撃を腕の装甲で受ける。こいつサキュバスだからか露出が酷いな、鎖骨どころか胸も腹も見せている状態たである。
「けーど」
サキュバスがレオパルドが弾き返す。
「消えた?!」
次の瞬間にはサキュバスの姿が消えていた。俺は周りを探すがそこにもいない。
「どこだ!」
「ここよ」
叫ぶと俺の目の前にサキュバスが現れる。
「マスター!」
レオパルドの叫び声を聞きながら俺はサキュバスの妖艶な唇が迫っていくのを感じた。
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豊太郎side
「うわー!」
ドサッと音がして次元の穴から落下する。
「大丈夫?ホータロー」
Mギアから相棒のヴァミラが話しかけてくる。ヴァーミリオンドラゴン、略してヴァミラ。モンスターにもライオンだの狼だの天使だのいるがやっぱ男のロマンと言えばドラゴンだろ。
「なんじゃこりゃー!」
「どうしたのホータロー」
俺は驚いて声を上げた。ヴァミラも俺の声に驚いて声を上げる。
「なんで森が逆さまになってんだ」
俺は目の前の風景について呟く。いや、おかしいおかしい、なんだよこれ、こんな異世界転移あるかよ馬鹿野郎!いったいぜんたいどういう……………。
「あ」
そこで自分の首の向きに気づいた。
「俺が逆さになってんじゃん」
首を正常な位置に戻すと木の枝が見えた、つまり俺はそこに落下してきて寝転がっているということになる。………………どっちにしろひでえ異世界転移だ、どうやって降りんだよ。そう思って上体を起こすと尻でバキっと音がした。
「え?」
呆気に取られるのも束の間、俺は他の枝を巻き込んで真っ逆さまだ。ズドン!これまた盛大な音を立てて落下した。
「いってえ、マジいってえ……………」
俺は尻をさすりながら立ち上がる。
「だ、大丈夫?!ホータロー」
ヴァミラの声にも慌てた様子が伝わる。
「大丈夫じゃねえよバーロー!尻がいてえよ、つうか腕もいてえ、こんなんなら長袖着てくんだった………」
俺はヴァミラに悲鳴にも似た怒号を浴びせた。血は出てないけど露出してる部分はところどころ赤く腫れている。塗り薬あったかなー、俺はバッグの中をまさぐる。あったあった、わきのポケットに入ってたよ。これを塗ってと、ひとまずは大丈夫か。
後はジャケットを取り出して、っと。それをばっと広げて着る!これで大丈夫だな。ちっと暑いが怪我するよりマシだ。
「じゃあ行くぞ」
「おう!」
ヴァミラもMギアから出てきた。
手近な太い長い木の棒を拾い杖代わりに歩く。
「なんもねえ、なんもねえじゃねえか!」
俺は叫ぶ、森の中をしばらく歩いたが周りには木と草しかない、人っこ一人いない。
「ここ、人があんまり来ないのかな」
ヴァミラが言う。
「それはやばいな」
異世界来て早々くじけそう。
そう思った時、俺は向こうに見知った顔を見つけた。
「悠、悠じゃないか!」
「レオパルドもいるよ!」
五十嵐悠とレオパルド、この世界に一緒に来ていた俺の仲間にしてダチだ。こっちの世界に来る時はバラバラになっちまったけど早々に合流出来るなんざこんないいことはねえ。
俺とヴァミラは悠達の元に走る。
「二宮、豊太郎………」
「グルル………」
こっちに気づいて顔を向けた二人を見た時俺達は足を止めた。
「悠?」
やつらの目は血走っているのか虚ろなのか分からない状態をしていてまともじゃない。
「お前を、殺す」
「グルゥァッ!」
悠がMギアをかざすとレオパルドが俺達に向かってくる。
「わっと!」
「うわあ!」
なんとか横に転がってやり過ごす。
「あいつ、どうなってやがるんだ!」
「多分センノーされてるんだよ!」
ヴァミラが言う。
「魔界に来て早々何やってんだよあいつ」
俺は憤慨するがここでキレてもしょうがない、戦わなきゃ俺達が死ぬだけだ。
「召喚!」
俺が叫ぶとMギアから発した光と連動しヴァミラが小竜から俺を超える大きさに変化する。
「ヴァミラ、レオパルドを頼む!あとここは森だから………」
「火は出すな!だろ?」
「ああ!」
俺はヴァミラの邪魔にならないよう遠回りをしてから悠に近づく。
「おい悠!お前いきなり襲いかかるなんてどういう了見だ、誰にやられたんだ?!」
俺は悠に問い詰める、洗脳されてるとはいえ聞かずにはいられなかった。
「俺は遥香のためにお前達Mギア使いを殺す、俺達の理想郷のためにお前達は邪魔だ」
「遥香って確かお前の妹の名前だったよな、会ったのか」
「ああ、妹はこの世界で理想郷を作ると言っていた。お前達はその理想郷の障害になるそうだ」
「どういう意味だ?」
「お前のような馬鹿にも分かりやすく言うと妹は暗黒ジャグラーズの人間だということだ、だからお前を殺す」
「な…………」
俺は言葉を失った。
「お前まさか、妹のために仲間を、司を殺すってのか!?」
「ああそうだ、遥香のためなら俺は親友ですら殺す」
俺は完全にキレた、洗脳されてるからといって言っていいことと悪いことがある。
「てんめぇ………」
こいつだけは許せない、そう思った時近くで大きな音がした。煙に顔を覆う、ヴァミラは無事か。
なぎ倒された木々の先に満身創痍のヴァミラがいた。
「おい、大丈夫か!」
俺はヴァミラに駆け寄った。
「ホータロー、こいつ強い」
「だろうな。同じMギア使い同士のモンスターだ、普通に勝てるなんて思う時点で間違ってた」
俺はヴァミラの硬い装甲の傷を見て迷いを吹っ切った。
「ぶっぱなせヴァミラ、たとえ炎であっても確実に当てれば森には燃え移らない」
「わかった!」
俺はMギアをかざしエネルギーを込める。
「いけー!」
「ヴァーミリオンフレイム!」
ヴァミラの口から灼熱の炎が放たれる。
「レオパルドガンナー」
悠もMギアを使って指示を飛ばす。
「グォォォ!」
レオパルドの口からもビームの弾が出る。今のレオパルドは技名など叫ばない、ただ主の命令に従うだけの獰猛な獣だ。
炎とビームがぶつかり爆発となって俺を巻き込む。
「うわっ!」
俺は爆風に飲まれ飛ばされてしまう。
「ホータロー!うわっ!」
俺を呼ぶヴァミラも悲鳴を上げる、たぶんやつの追撃を受けたんだろう。
俺の記憶はそこで一旦途切れた。
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