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我儘王女は目下逃亡中につき  作者: 春賀 天(はるか てん)
【小話】~サイドストーリー
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【小話③リルディアの秘密】

【小話③】




ーー私には、父母しか知らない『秘密』がある。


それは父の血統からの遺伝であるらしく私の見た目からでは全く分からないが、私には普通では考えられない常識外れともいえる『握力』が備わっている。


それというのも、どうやら私の腕の筋肉は生まれつき非常に発達しているらしく一見は普通の腕にしか見えないが、それがひとたび腕に力を込めるだけで林檎などは一瞬で粉々に潰れてしまう。


私は“それ”が他から見れば、“異常”な事なのだとは全く思いもせずに、初めて林檎を潰せると分かった時はすごく面白くて、密かに一人で練習を重ねた後、


まず一番初めに父母の前で“それ”を披露して見せると、それを見た途端、声を失い驚愕する二人の顔は今でも忘れてはいないーー


そして普段は全く意見の合わない二人がこの時ばかりは初めて意見が一致した。



*****



グシャリと潰れてすでに林檎の形ですらない果肉の一部を左手で握り締めたまま(私は“左利き”である)キョトンと首を傾げる私の目の前では、父母が開いた口が塞がらないまま固まり二人は大きく目を見開いたまま、こちらを凝視している。


私はどうして父母がそのような顔をしているのか分からなかったが、子供心にそんな事はどうでもよく、最近新しく発見したその楽しい遊びを一番最初に父母に見てもらいたくてウズウズしていた。



「ね?見た見た? 林檎がね、グシャってなっちゃうの。すごく面白いでしょう? まだ林檎あるからもう一回見る?」



無邪気に笑いながら握り締めていた果肉を急いで食べてしまうと、ドレスのポケットからハンカチと林檎を取り出して、取り敢えず潰した林檎の果汁や果肉でベタベタになった左手を拭こうとすると、その横から母にひょいっと持っていた林檎を取られた。



「ど、どうなっているの? 何か仕掛けでもあるの?」



母は何やら訝しげにその林檎を触りまくって自分の両手で力一杯握り締めたりもしたが、何故だろうか? 母がやると自分の時の様には林檎は全く潰れない。


すると今度は父が母から林檎を受け取ると、その林檎を軽く触って確認してから私の前に差し出してきた。



「リルディア? もう一度、やって見せてくれないか?」



その言葉に私は嬉しくなって、父から林檎を受け取るとニッコリと笑って頷く。



「うん!あのね? こっちの方、えっと右? だと上手く出来ないから、また左手でやって見るね? 見てて? ーーせ~のぉ~でっ!」



グシャッ!!!



「ええええっっーー!!?」


「!!?」



その瞬間、母の悲鳴似た叫び声が部屋中に響き、父の方は声こそは上げなかったものの、やはり驚愕した様子で私の左手の中で先ほどと同じ状態になった林檎の成れの果てを見つめていた。



「やったあ!また上手に出来た!お父様、母様!見て見て? また林檎がグシャッって!!ねえ? すごい? リルってすごい?」



握り締めた左手を父に見せながら、その場をピョンピョンと跳び跳ねて喜ぶ私を父は優しく抱き寄せると、自分のハンカチを取り出して、私のベタベタになった左手を丁寧に拭いてくれる。



「ああ、すごいぞ!リルディア。父様も母様も本当に驚いた。いつの間に覚えたんだ?」



まるで壊れ物を扱うかのように優しく私の左手を拭いながら笑顔で問いかけてくる父の大きな広い胸の中で私は得意気になってそれに答える。



「ふふっ、あのね? この前、調理場を覗いたら林檎を貰ったの。だからお庭で食べようと思って歩いていたら、ちょうど子馬がお散歩をしていたから見に行ったの。そうしたら貰った林檎を子馬に食べられそうになったから、林檎をギュッとしたらね? グシャッと潰れちゃった。


すごく面白いから一人で何度も練習したのよ? 初めは綺麗に潰れなかったの。でも左手なら綺麗に潰せるようになったから、一番初めにお父様と母様に見てもらいたかったの。でもそれで林檎を沢山食べていたからその分、お菓子が食べられなくて困っちゃった」



私が事の経緯を話すと、父はそんな私の頭を撫でながら目を細めて笑う。



「そうかそうか。リルディア、偉いぞ? 私達に見せる為に一生懸命練習して頑張ってくれたのだな。しかも練習した林檎も捨てずに自分で食して片付けるとは、なんと可愛い我が娘なのだ。本当に偉いぞ!リルディア!」



父に沢山誉められもっと嬉しくなって、そんな父に抱き付いて犬のようにじゃれついていると、そんな私達の目の前に眉間に深い皺を寄せ困惑した表情を浮かべながら覗き込む母の顔があった。



「ちょっと!!何事も無かったように娘と親子団欒(だんらん)しないでよ!!リルディアが何か悪い病気だったらどうするの!? この子はまだ“8歳”なのよ? しかもこんなに小さな体であんな大人でも出来ない林檎を容易に潰すだなんて、常識的にもおかしいじゃないの!!直ぐに医者に診せて徹底的に調べてもらってよ!!


ーーああ、どうしよう。『怪力』の病気なんて生まれてこのかた聞いた事がないわ!新種の病? 治療方法なんてあるの??」



明らかに動揺している母に父は宥めるように穏やかに声をかける。


「エルヴィラ、落ち着け。リルディアは大丈夫だからそう心配するな」



そんな父の言葉に母は怖い表情で睨みつけながら叫ぶ。



「何を悠長な事を言っているの!? そんな事を言っている間にもリルディアが不治の病に侵されていたらどうするのよっ!!あんな『怪力』病気以外に考えられないじゃない!!


ーーああ、もういいわ!!私が今すぐ医者を呼んでくるから。あんたはリルディアをベッドに寝かせておいて!」



そう言うなり母は急いで部屋から出て行こうとすると、父にすかさず腕を掴まれて止められる。



「ーーちょっ!!何!?」


「だから落ち着け。これは私の|血統の“遺伝”なのだ。悪い病気でも何でもない。だから安心しろ」


「はあ? “遺伝”ですって??」



父は訝しげな表情の母の腕を引き寄せると自分の隣に座らせる。



「ああ、そうだ。これはブランノアの王家の血統者に現れる“特有”なものでな。私もそうなのだが、先代も先々代も生まれつき体の筋肉が非常に発達していて、それも特に体の“左半分”に顕著に現れる。


だから私も“左利き”なのだ。リルディアが“左利き”なのはそのせいもある。リルディアのその握力も走るのが格別に速いのも、全ては“遺伝”からきているものだな。


だがそれは元来、ブランノアの王家の血が最も濃い男の血統者にしか現れぬと聞いてはいたのだがーーまさか女であるリルディアがとは私も正直驚きだ。上の娘達は無論だが、私の弟達ですらその“遺伝”は受け継いではいないのにな。


リルディアは外見はお前に瓜二つで私には全く似てはいないが、リルディアの中に流れている血は私の血が特に濃いと言う事だ。リルディアの性分も私からきているものだし」



「やめてよ。リルディアは外見も性分も母親似なのよ。あんたのような非常識な暴君になど似てたまるものですか!」


「ははは、まあ、お前がそう言うならそう言う事にしておこう。しかし人間の持って生まれた性分はそうそう変わらんぞ? リルディアのそういう所は覚悟しておけ?」


「ふん、私がそんな風に育てないから大丈夫だわ。ーーねえ、そんな事よりも事情は分かったけれど、でもやっぱり心配なのよ。


この子は普通の同い歳の子供達よりも小柄で小さい方だし体だってあまり丈夫な方ではないわ。それなのにあの『怪力』はこの子の体への負担が大き過ぎるのではない?


しかも男ならともかくこの子は女の子なのよ? それなのに筋肉の発達だなんて、こんな小さな体なのに、将来あんたのような筋肉隆々になったら、可哀想で目も当てられないわ」



母の心配する声に父も私の頭を撫で続けながらもジッと私を見つめている。



「……そうだな。今まで女に遺伝した例がないからはっきりとした事は言えないが、そもそも男と女では体の作りが違う。


だから多少の筋肉は付いても、リルディアが私の体のようになるとも思えんが、確かに筋肉を鍛え過ぎると、たとえ女であっても女戦士のような体になる可能性もある。あれはもう『女』とは呼べん。


ーーよし、分かった。リルディアには握力も筋力も必要以上には使わせないし、勿論、鍛える事もさせない。リルディアの『力』は私達の間で『封印』する。


まあ、他人がリルディアの人並み外れた『力』を見たところで誰も偶然だと信じて疑わん。……が、ただ、この林檎を潰す事は取り敢えず止めさせないとな……」


「……ええ、今直ぐによ? こんな『馬鹿力』私だって“遺伝”だと言われてもまだ、“病気”の方を疑ってしまうわ」



母に疑惑の視線を向けられ、父が珍しく苦笑いをしている。



「ーーああ、言いたい事は分かった。リルディアは念の為に医者に診せる。私もその方が安心だ。しかし折角、練習までしたのに可哀想ではあるが、全てはリルディアの将来の為。リルディアには他の遊びで我慢してもらうとしよう」



するとそんな母も珍しく父にニッコリと微笑む。



「ええ、是非そうして頂戴。ーーあら? そう言えば、初めてあんたと意見が合ったわね? 一生、合う事など無いと思っていただけに驚きだわ」


「フッ、そうだな。でーーどうなんだ? そろそろ私に惚れたのではないのか?」



父はニヤリと笑うと、母はまるで子供のように舌を出す。



「は? 冗談でしょ? 寝言は寝てから言うものよ? 私はあんたなんか“大っ嫌い”よ!それに私は“面食い”なの。男は“若い方”が断然良いに決まってるじゃない!だからあんたみたいな“ジジイ”なんてお呼びじゃないのよ。


あんたの方こそいい加減、私を諦めたらどう? 何も私でなくともあんたに侍りたい女なんて周りに沢山いるじゃないの。それに、そろそろ私にも飽きてきたんじゃない?


ーーああ、そう言えばこの間、新たな愛妾候補があんたに引き合わせられたと聞いたわよ? 何でも家柄の良い多産な血統の若くて器量良しの美しい娘だというじゃない。


よかったわね? その娘を愛妾にでもして今度こそ世継ぎを作りなさいよ。あんたなんてもうジジイなんだから早くしないと作れるものも作れなくなるわよ?」



母は「ふん、」とそっぽを向いて父の傍から立ち上がろうとした途端、父にドレスを引っ張られて当然、バランスを崩した母が父の方に倒れてくると、母の体をしっかりと抱えた父は私を自分の胸の中に抱えた状態で母の唇をそのまま奪っていた。



「!?ーーっ ……ん……んんっ!!」



父と母の体に挟まれて二人の顔は全く見えないが、父に唇を奪われた母が何だか苦しそうに暴れている。私は心配になって父の服を引っ張ると父はようやく母の体を離した。



「……こ、こ、この馬鹿男っっ!!あ、あんたね!!よりにもよって自分の子供の前で何て事をしてくれてんのよっ!!非常識にもほどがあるわっ!信じらんないっつ!!この馬鹿っ!!くそジジイィ!!」



母は顔を真っ赤にして激怒し、父をボカスカと殴るも、父はいかにも楽しそうに母の拳を平然と受けている。



「なんだ? 今更恥ずかしいのか? キスくらい子供の前でも別に良いだろう? 私達は夫婦なのだから」


「良いわけあるかっ!!このっ!!このっ!!非常識っ!!馬鹿ぁっ!!」


「わははははっーーああ、こら、気を付けろ。ーーリルディアに当たる」



しかし母は父を殴るのを一向に止めないので私に見られたことがそんなに恥ずかしかったのかと慌てて母に声を掛ける。



「母様、母様? 大丈夫よ? リル、お父様と母様に挟まれて全然見えなかったから、恥ずかしくなんてないよ? だからお父様を殴らないで? お父様が可哀想……」


「くっ……リルディア……」



母は私の言葉を聞いて、父を殴っていた手を下ろすも、それでも怖い顔でこちらを睨んでいる。その視線の先にいた私は母のその怒りの表情が怖くて思わず父の体にしがみつく。



「お父様、母様が怖いよ~。リル、何かしたの? 母様、リルの事怒ってる?」



そんな私の様子に母は慌てて表情を緩めてニッコリと微笑む。



「リルディア、違うわよ~? リルディアは何も悪い事をしてはいないもの。それなのにあんたの事を怒るわけがないでしょう? 私はそこにいるあんたのお父様を怒っていたのよ? だから誤解しないで?」



私は恐る恐る母の顔を見ると、もう先ほどの怖い顔ではなく笑顔で私の事を見ていて、それを見てホッとする。



「本当? リルじゃないの? お父様なの?」


「ええ、そうなの。だからリルディアが気にする事はないのよ? ああ、ほら、リルディア、こちらにいらっしゃい? 髪飾りのリボンがほどけ掛かっているから直してあげるわ」



母が優しい声で私を手招きして呼ぶも私は少し考えてから首を横に振ると母が小首を傾げる。



「リルディア? どうしたの? 私は本当にあんたを怒ってなどいないわよ?」


「うん。……だけど……お父様の事は怒っているんでしょう? リルがお父様から離れたら母様はまたお父様を殴るでしょう? だからリル、お父様と一緒にいる」



すると父の顔が忽ち破顔し、そんな私をギュッと抱き締める。



「ああ、我が娘はどうしてこんなに可愛いのだろうな? エルヴィラもそう思うだろう? リルディアは本当に親思いの優しい子だ。


ーーリルディア? 確かに母様は父様を怒ってはいたが違うんだ。父様が先ほど母様にいきなりキスをしたから母様はびっくりして恥ずかしくて怒っただけなんだ。だから本気で怒ってはいないのだぞ?」



私は父の顔を見上げる。



「本当? でもさっきの母様の顔はすごく怖かった」


「よしよし、でもそれも違うんだ。母様はすごく綺麗な顔をしているだろう? だから大して怒ってなどいなくても美人の顔というものは普通の顔よりも怖く見えてしまうものなんだ。だから今は母様も笑っているだろう?」



私はもう一度母の方を見ると、母は笑顔で私に手を振る。



「うん。母様、怒っていないみたい。じゃあ、リルがお父様から離れてももう、大丈夫? 母様はお父様を殴ったりしない?」



心配そうな私に父は限りなく穏やかな優しい声で、私の頬をその両手でそっと包む。



「ああ、心配しなくとも大丈夫だよ。私の可愛いリルディア。母様は父様を本気で怒っているわけではないのだよ。あれは母様の怒っているフリで叩かれても全然痛くはないんだぞ~? あれなら羽虫に刺された方がずっと痛いくらいだ」


「ええっ~? お父様は羽虫なんかが怖いの?? あんな小さな虫なんて刺されても痛くないし、ちょっと赤くなるだけよ? それじゃあ、母様のは全然痛くはないのね? そう言えばお父様笑ってた」



私がホッとして笑顔を向けると父の笑顔が返ってくる。



「ははは、そうなんだ。ーーさあて、リルディアの誤解も解けたことだから母様にリボンを直して貰おうな? さすがに父様にはそれを直してはやれない」



そう言って父は私を抱き抱えながら立ち上がった。そして母の側に私を下ろすと私の目線に合わせて腰を落とし私の左手を取ると、その大きな両手で優しく握る。



「リルディア、あのな? 父様と母様からリルディアにお願いがあるんだが聞いてくれるか?」


「うん!なあに?」



私は父の顔を見て笑顔で頷く。



「父様も母様もリルディアが林檎を潰せるのを見た時は本当に驚いた。実は父様もな? 今のリルディアと同じくらいの歳から林檎を潰せるようになったのだ。


勿論、林檎だけではなく左手に持てるものは石みたいな固いもの以外なら何でも握るだけで壊せるし、重いものでも一人で|簡単に持ち上げられる。リルディアはどうだ?」



「ええっとね。潰せるのは林檎と柑橘でしょ、それから~あと、馬鈴薯!!」



「ええっ!?? あんたまさか馬鈴薯も左手で潰せるの!!?」



母の驚いた問い掛けの声にも私は笑顔で答えた。



「うん? 潰せるよ? やってみたら出来た。えっとね? 馬鈴薯の方が林檎より小さいから持ちやすいんだけどね? でも馬鈴薯は潰してもそのままじゃ食べられないし手も泥だらけになって、ちょっとヌルヌルしていて臭いし、


リルね、野菜はあんまり好きじゃないから潰すなら果物の方が良いかな? 果物なら食べられるし美味しいもん。あと、重たい物はまだ持った事ないからリル、それは分かんない」



それを聞いた母は難しい顔で父の顔を見つめる。



「……ねえ、分かっているだろうけれど……追加して」


「ああ、分かっている。私に任せろ……」



父と母が喧嘩もせずに、こうして会話をしているのを見るのは本当に大変珍しい光景いだ。それを見ていると何だかすごく嬉しくなる。



「ーーそうか。リルディア、あのな? これから父様の言うことはリルディアには少し難しいかもしれないが聞いて欲しい。


リルディアが“力持ち”なのは、それはリルディアが父様の子供だからだ。リルディアは見た目は母様にそっくりなんだが、実はお前は父様の方にそっくりなのだよ?」



「お父様に?」


「ああ、そうだ。だからリルディアが父様と同じように林檎や馬鈴薯を左手で簡単に潰せてしまうのは何も不思議な事じゃない。しかも面白いし、すごく楽しいよな?」



私はそれを肯定するようにその場をピョンピョンと跳び跳ねる。



「うん!すっごく楽しい!」



「ははは、すごく分かるぞ~! だから父様もそれが楽しくてな? 毎日、林檎や馬鈴薯を潰す練習をしていた。すると練習をすればするだけ上手にはなるのだが、それと一緒に体もどんどん鍛えられて大きくなっていって、今の父様のこの体が出来たのだ。


だからリルディアが父様と同じ事をしているとその内、リルディアも父様のような大きな体になってしまう。


お前が“男の子”ならそれでも構わんのだが、。リルディアは可愛い“女の子”だろう? しかもお前は母様にそっくりだから、将来大きくなったら母様と同じ、すごい美人になるんだぞ?


ーーだがな? もしお前がこのまま林檎や馬鈴薯を潰し続けていると、リルディアは将来、今の母様の顔に父様のこの体がくっついている姿になる」



それを聞いた母の柳眉がピクリと動き、すごく嫌そうな顔で父の顔を見る。



「……ちょっと。想像しちゃうじゃない。気持ち悪いからやめてよ」


「例えだ、例え。ーーしかもお前が気にしてどうする……」



父はそんな母の言葉を片手で制止すると、再び私に向き直る。



「父様は可愛いリルディアがそんな姿になってしまうのを見るのはすごく嫌だな。リルディアはどうだ? そんな姿になりたいか?」



父の問いに私は何度も首を横に振って否定をする。



「やだっ!やだっ!!絶対にいやっ!!リルは女の子だもん、顔も体もどっちも母様がいい!!」



尚も首を横に振り続ける私を止めるように父の両手が私の頬に触れる。


「そうだよな? だからリルディアの体が父様のようにならない為にもこれからはもう林檎や馬鈴薯のような固い物を潰すのは絶対に止めるんだぞ? ーー出来るか?」



私は今度はコクコクと首を縦に振って頷く。



「うん!リル、もう絶対に林檎も馬鈴薯もなんにも潰さない!」



そんな私の頭を父は笑顔で何度も撫でる。



「よしよし、いい子だ。父様と母様に『約束』出来るな?」


「うん!『約束』する!」



私が父に抱きつきながら約束の言葉を誓うと、母が隣で胸を押さえて安堵するように大きく息を吐く。そして一言、父に向けて呟いた。



「………お見事」



すると父は私を抱き上げて小さく笑みを浮かべながらそんな母に答える。



「フッ、……まあな」




【③ー終】



































































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