表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我儘王女は目下逃亡中につき  作者: 春賀 天(はるか てん)
【小話】~サイドストーリー
54/80

【小話②我が国の王太子と我儘?な婚約者】

【小話②】




「ーー王子、やはり馬車の方にお乗り下さい。万が一、という事もあります」


「アイザック、大丈夫だよ。そんなに心配せずとも、それは君の取り越し苦労にしか過ぎないから」


「ロイズ……お前は少し気が抜け過ぎだ。ここはまだブランノアなんだぞ? 王子の護衛として常に“万が一”を頭に入れておかねば、もし何かあってからでは遅いんだ」


「それはそうだけどさ、ブランノアと我が国とは友好国だし、何より王子はブランノア国第四王女リルディア姫の婚約者なんだよ? 毎回言っているけれど、それって絶対、万が一なんてあり得ないと思うけどな」



ブランノア城を後に南方にある国境に続く街道を下ってセルリア国の王太子一行の華やかな騎馬と馬車の列が続いている。


その中央辺りには濃紺と金糸の縁取りの白い軍服と濃紺のマントを纏ったセルリアの騎士達に囲まれながら、そんな騎士達と同じような白い軍服ではあるが、こちらは濃紫と銀糸の縁取りで濃紫のマントを纏った銀髪の美しい王太子が、馬車には乗らずに馬に騎乗したまま、ブランノアの国民達の見送りに笑顔で手を振りながら応えている。


本来ならば王家や貴族のような高貴な身分にある者は、御身の安全の為に馬車で移動するものなのだが、王子は自分達を見送りしてくれている民達に応えたいと言うので、護衛の騎士達と同じように馬での移動に相成った。


そしてセルリア一行の列の先頭と末尾の方にブランノアの騎士達がセルリア王太子の護衛の為に現在付いている。


そのように国賓である他国の王族に対してその国の護衛が付くのは、どこの国でも当然の行為で、もし、自分の国内で他国の王族の身に何かあれば、それは国の威信の失墜にも繋がるので、国内の安全保障として国賓が国外へ出るまでの間、その国の騎士達が護衛をするのが一国の習わしでもある。


しかしアイザックの表情はずっと険しいままで、その緊張は解ける事がない。


いくら友好国とはいえ、ここは諸国から最も恐れられている野心家の国王の支配下にあるブランノアの領地内。


その国王は非常に好戦的で日常的に侵略行為を続けている暴君で、しかも大変気まぐれな性分らしく、そんな国王の気分次第によっては、いつセルリアが侵略対象になってもおかしくはない。


だからこそ、その“万が一”であるこのブランノアの騎士達が敵に回り、我が国の唯一の王太子であるユーリウス王子を人質に捕られてしまったらセルリアは終わりだというのに、この自分と同じく王子の筆頭側近である相棒は、それを分かっているのかいないのか、まるで緊張感が感じられない。


しかも当の本人であるユーリウス王子までもがブランノアに対して全くと言ってよいほど警戒心が無いので、臣下としとは本当に心配が尽きないのだ。


それに関しては、ユーリウス王子は温厚で誰に対しても丁寧で優しい性格なので、仕方のない事ではあるのだが、それでも「少しは警戒心を持って下さい」といくら言っても、王子は「分かりました」と言って微笑むばかりなので、相棒同様に本当に分かってもらえたのか疑わしいところだ。


今回のブランノア国の訪問にしても王子はブランノアの国王の親書を見るなり、すぐにでもブランノアに行くと言い、一人でも行きかねない様子だったので、城中大急ぎで出立準備に取り掛かった。


なんでもその親書には第四王女の体調が悪いのでブランノアの国王から王子に「見舞いに来て欲しい」という内容だったらしいが、これは「お願い」というよりも王子への『来訪要請』である事は明らかだ。


我が国が友好国であるのは表向きで実質的にブランノアの支配下にあるセルリアはその要請には必ず応えなくてはならない。


王子は現在、次期国王としての様々な勉学や職務で多忙を極め予定もぎっしりと詰まっているので、この要請に応える為には、全ての予定を組み直さなければならなかった。


だから臣下達が「訪問予定を改めて決めましょう」と言っても、王子はすぐにでもブランノアに発つ言うし、それについてはセルリアの国王も二つ返事で同意してしまったので、王子の教育係達は今頃必死で予定を組み直していることだろう。


しかも王子は要請というよりも自分自身がブランノアの第四王女の様子を確認したかったらしく、いつもは穏やかで落ち着いている王子が珍しく落ち着かないその様子に皆が一同に驚いた。


ブランノア国の第四王女であるリルディア姫は御歳12歳のユーリウス王子の婚約者である。しかし我が国の者達はそのリルディア姫に対して、決して口には出さないが、良い印象を持っているとは言えない。


それというのもブランノア国の第四王女の世間での評判は我儘で傲慢な王女として有名で、しかもその我儘姫は今から約一年前に我が国の王子を見初めてしまったらしく王子には既に幼馴染みである侯爵令嬢という婚約者があったのに、第四王女は父王の持つ絶対的な権力を行使して、王子を自分の婚約者にしてしまったのだ。


第四王女の母親は市井出身のブランノアの国王の愛妾である。本来ならばいくら王族とはいえ、身分の低い市井出の母親を持つ王女がセルリア王家の正統な血統の世継ぎの王子の妃になどとあり得ないことだが、


今やこの世で事実上、最強の覇者であるブランノアの国王に逆らえる国など無いに等しい。セルリアも同様にブランノアの国王の申し出には逆らえるはずもなく、間を置かずしてセルリアの王太子とブランノアの第四王女との婚約が正式に両国で契約成立されることになった。


これにはいくら王家に次ぐ上位貴族の侯爵家とはいえど、無論、ブランノアという大国に逆らう事は出来ない。強制的に身を引かされる事になった侯爵令嬢は心痛のあまり屋敷に籠ってしまい、セルリア王家はその代償にと良縁の相手をいくら用意しても侯爵令嬢は首を縦に振ることはなく、やはりまだ王子を諦められずにいる様だった。


それも無理はない。我が国のユーリウス王子は容姿端麗、眉目秀麗なこの世で最も美しい王子として世間からから称されている。しかも性格も温厚で女性に対しても紳士的で優しく、そんな世の女性達が憧れてやまない美しい王子の婚約者という地位から侯爵令嬢は突然引きずり下ろされたのだから、王子の幼馴染みであっただけに受けたショックは相当なものだろう。


しかし政略結婚とはそういうものだ。こればかりは貴族であるが故に受け入れなくてはならない。たとえその相手がどんな相手であったとしても『権力』という力の差の前では逆らうことなど出来ない。


だからユーリウス王子も王家に生まれた者の義務として第四王女を受け入れた。これはあくまで国の為に仕方のない事だと、セルリアの為に王子は自らを犠牲にして意に染まぬ結婚であっても、自分の課せられた責務として受け入れられているのだと思っていた。


そんなユーリウス王子とリルディア姫は7歳の歳の差があり、19歳の王子から見れば12歳の姫はまだまだ子供である。しかしリルディア姫は『傾国の|美女』と呼ばれて名高い母親に瓜二つで、数少ない希少な流れるような艶やかに真っ直ぐに伸びた美しい黒髪と、その色とは対象的に若く張りのある美しい白い肌に少し切れ長の大きな黒い瞳の非常に存在感と雰囲気のある、それこそ我が国の王子の美貌に匹敵するほどの子供ながらにも大変美しい容姿の姫君だ。


しかも『夜光の歌姫』と呼ばれている母親と同様に世にも美しい歌声を持っていて、母娘共にブランノアが誇る『至宝』とも言われている。


しかしその姫は世間で噂される通りの我儘王女で、まだ子供であるにも関わらず、その容姿も然る事ながら大人同様の言葉使いや態度で、実年齢からはとても考えられないほど大変大人びていて、


しかも怖いもの知らずなのか、それが許されているのを分かっているからなのか、どんな相手だろうと物怖じもせず、身分や立場など関係無しに自分の思うままに態度や言葉に表したりするので、さすがはあの暴君と名高いい恐れ知らずのブランノアの国王の娘だと実感する。


それではいくら容姿が美しくとも、どんなに素晴らしい特技があろうとも中身の性格が悪ければ全てが最悪だ。そんな第四王女がセルリアの未来の王妃になるのだとは、ある意味、ブランノアの侵略行為であるとしか思えない。


皆が内心、そう思っていた。この第四王女は我が国を不幸にする存在だと。そんな王女を妻にしなくてはならない王子があまりにも不憫だと。


しかしそんな周囲の心配も他所に当の王子本人からはそんな不満を全く感じるどころか、逆にまだ数回しか会ってはいないリルディア姫を王子が大事にしているのが、その態度や言葉から感じ取れ、とても無理矢理婚約者にされたようには思えないほど姫とは親しくしている様だった。


それでも優しい王子の事なので、婚約者である姫を大事にするのも王族の義務としての責務を果たしているだけなのだと思っていたが、今回のこの第四王女の容態の一件で、普段の王子からはとても考えられない取るものも手につかない様な落ち着かないその様子に皆が驚いたのだ。


もしかすると王子はリルディア姫の事を義務や責務などではなく本当に特別な存在に思っている? そしてそれはこの目と耳で実感する事になった。


王子はリルディア姫の為に姫の母君に密かに相談をして、城の温室に栽培してあったセリアの花を全て姫へのお見舞いとして自分のところの庭師を連れてブランノアへ持参すると、セリアの花の庭園を作らせて姫を驚かせる計画まで立てていた。


これには普段の王子を知っているだけに、まさか王子がそんな行動を取る事自体が信じられずに王子に何度も聞き直してしまったほどだ。どうやら姫がそういう突然のサプライズを大変好んでいるという。だから王子は姫を喜ばせて元気づけたいという理由から行動を起こしたようだ。


同じ様に伏せっているであろう元婚約者であった幼馴染みの侯爵令嬢には、面会する事は(はばか)られるという理由から定期的に王室からお見舞いの品は送ってはいるものの、王子自らがここまで行動を起こしたのはリルディア姫が初めてである。


そしてブランノア城に着いてからも、王子はずっとリルディア姫の体調を心配し、母君しか受け付けないという姫が自分と面会してくれるであろうか?とも心配をしていた。


しかし、そんな王子とは違い自分の第四王女への見解は違っていて、どうせまたいつもの我儘姫の気まぐれで王子に会いたいが為に父王に頼んで、何だかんだ理由を付けて呼び付けただけだろうと思っていた。


しかし実際に母君と共に現れたリルディア姫は、以前見た時とは大分印象が変わっていて、本当に体調が悪かったのか見るからに痩せてやつれていて、その表情も強張ったまま憂いを帯びて以前までの我儘姫の威勢は無く王子がいくら話し掛けても全く視線を合わせようとはしない。


そんな姫の母君や姫本人は体調は全く問題ないとは言ってはいるが、見ている側にしてみれば姫の普段の高慢とも言える態度や言葉もなく、しかも俯いたまま言葉数自体も少なくて、こうしている今にも倒れてしまうのではないかと思うほどに弱々しい印象を受け、姫の我儘で王子を呼び付けたなどと思い込んでいたことにズキリと心が痛んだ。


そういえば以前王子がリルディア姫は決して嘘をつく事がないと言っていたのを思い出す。だから世間からは姫は我儘だとは言われているが、それは姫が自分に正直で真っ直ぐな性分だからそう思われてしまうだけだとも言われていた。


自分の中では嘘をつかない人間などいるものか。まして貴族|社会は裏表のある社会だ。自分の利の為ならば嘘などいくらでもつけるし、中でも特に女性は男性以上に嘘をつくのが上手だ。だから優しい王子はリルディア姫の事を過大評価しているに過ぎないと思っていたのだがーーー


こうして公の場ではないプライベートな時間で、リルディア姫と接したのは今回は初めてだったが、


世間で噂されている暴君と呼ばれ恐れられている一国の国王を(たぶら)かし、自分の言いなりにしているという、まさに『傾国の美女』と言われている愛妾の母君や、その父王の溺愛を良いことに我儘で傲慢で自分の思い通りに何でもやりたい放題の我儘王女と言われている母娘の印象が、実際に二人と話してみると受ける印象がかなり違う。


姫の母君は市井出身ではあるものの礼儀作法はきちんとしているし、確かに生粋の貴族のご婦人達とは違い上品とは言えない態度や言葉使いもあるが、決して嫌な感じではなく逆に何というか、女性に対してこんな事を思うのは大変失礼だとも思うが、女性というよりは男性を相手にしているような親近感があり、まるで友人とでも話をしているような気安さがある。


そしてリルディア姫は生まれながらに淑女教育を受けているのでその振る舞いは完璧ではあるものの、やはり母君が市井出身というのもあって、貴族と市井の言葉使いが入り交じって出てくる傾向があるようだ。


しかし確かに我儘で高慢な態度は公の場ではよく見掛けたが、こうして姫を目の当たりにすると王子の言われるように姫は嘘を付かない分、自分の思った事が態度や言葉に出てしまうのだと思うと、リルディア姫に今まで感じていた悪い印象が薄らいでくる。


そもそも姫は母君が言われる通り、まだまだほんの子供なのだ。しかも精神的には実年齢よりももっと幼いのではないかとも思う。だから善悪関係なく自分の思った事を口にしてしまうのだろうし、そんな幼い子供が自分の欲求に対して我儘なのは姫に限った事ではなく、ごく普通の事なのだ。


確かに実年齢の方が間違っているのではないかというくらい、姫の外見も言葉使いや知識も大人とさほど変わらないので、姫の人となりが周囲からは厳しめに判断されやすいが、


実際にこうして見ていると、大人びた知識があるかと思えば逆に子供でも分かるような認識が無かったり、高慢とも呼べる姫の態度も恥ずかしさからくるものだと分かると、悟られまいとして必死になっているその姿を見て、あまりの愛らしさに思わず笑いが込み上げてくるのを堪えるのが大変だったほどだ。


そして母君も指摘していたように姫はまだ幼く人の心の機微が理解出来ないので、尚更、恋愛感情などというものは分からないのだろう。


だから今回の事で、王子の態度や言動から王子がリルディア姫に対して少なからず“恋愛感情”があることは周囲の大人達には一目瞭然ではあったのだが、当のリルディア姫本人には王子のそんな気持ちなど全く通じてはいない上に、更には追い打ちを掛けるように「兄が出来た」と喜ばれてしまっていたのには、同じ男として同情を感じてはいる反面、


王子自身や我が国の為を考えるとリルディア姫は不安要素だらけで、やはり王子の相手には相応しくないと考えている。それは姫の印象が変わった今でも、その考えは変わらない。そしてそれは国の政治を扱う臣下達も同じ考えだ。


その一つにはリルディア姫はブランノアの国王が溺愛している第四王女ではあるが、その母君は市井の人間で姫はいわば正統な血筋の王族ではないという事。


本来ならば、王家の血統を守る為に世継ぎの王子には、血筋の確かな家柄の姫君や貴族のご令嬢がその伴侶として選ばれる。それは国の政治的にも大変重要な事で王家といえども各家の後ろ盾の強さが必要なのだ。


正統な血統の王族や貴族ならば、その子供の両親の家柄が高貴な血筋であればあるほど政治での立場が有利になり、それが他国の王族同士ともなると、婚姻による国同士の同盟の強固により他国からの侵略行為を防ぐ手立てにもなり、そのもたらす利に国が豊かになる。


また国内の財力のある裕福な貴族の子供ならばたとえ王家の財政が苦しくなったとしても、その婚姻関係により相手の家から援助を受ける事が出来るという利もあるからだ。だからこそ貴族社会では政略結婚が主流な理由もそこにあるわけだが、そのリルディア姫には母方側の後ろ楯が全く無い。


それでもこうして王子とリルディア姫の全く異例の婚姻契約が結ばれたのは、姫の父であるブランノアの国王がこの世界で最も最強の覇王であるからに他ならない。


しかし、もし万が一、そのブランノアの国王に何かあれば、母方の後ろ楯のない姫には政治的価値が全く無くなってしまう。そうなってしまえば、姫の立場も危うくなり、命を狙われる|危険すら出てくるだろう。


そして更なる不安要素はリルディア姫のその類い希な美貌にある。姫の母君も実の母親でありながらも自分の娘であるリルディア姫が王子を不幸にする存在になるかもしれないと忠告していたのは、姫の性分が父親譲りというのもあるが、もう一つには自分にそっくりなその容姿があるからだろう。


我が国のユーリウス王子もこの世で最も美しい王子と称されている見目麗しい美貌の王子ではあるが、貴族の女性達の間で王子の愛情を得るための競い合いはあっても、それは小規模のもので、男の美貌によって国全体を巻き込むような争いになった事例は過去にも聞いた事はないが、それが女ならば話は別だ。


『傾国の美女』という言葉があるように類い希な美貌を持つ美しい容姿の女は常に争いの『原因』になる。それはどんなに優れた賢王でさえも、そんな美女の采配次第では愚王にも変貌するのだという。しかも異性を奪い合う争いというのは今も昔も変わらないが、それが男同士の争いになると、その規模は女同士の争いよりも大きくなる。


それが上流階級であればあるほど争いも激しくなり、王族同士ともなると、国を巻き込んでの戦になることも過去に及んでも珍しくはない。


だからこそ類い稀な美女の事を『傾国の美女』と表向きは賛美を込めて呼ぶ敬称だが、裏を返せば男を(たぶら)かして国すらも傾ける『悪女』という意味もある。


リルディア姫にはその要素が十分にあり、姫が『傾国の美女』と称されている母君と並んで立っているのを見れば、その美貌の成長過程が一目で分かる。それは男としての“直感”でリルディア姫は“危険”だと本能が警鐘を鳴らしている。


リルディア姫はあと数年、いや、もっと早くに母君同様にその美貌は更に美しく成長するだろう。しかもこれも“直感”からだが、姫は容姿は母君にそっくりでも多分、母君以上の『傾国の美女』になる予感がするのだ。


それというのも姫の母君を目の当たりにしたからこそ言えることだが、確かに姫の母君はあのブランノアの国王が病的と言われるほどに寵愛して離さないという、類い稀な美貌を持つ絶世の美女だが、その性分は男性的であるせいか、その美貌に惑うような感じは無い。


しかしリルディア姫にはまだ子供であるのに、その大人びた容貌のせいか、母君からは全く感じられなかった女性的な“色香”がある。もしこれで姫が大人であったならば、自覚があっても、無くても姫の色香に惑う男達が続出するかもしれない。子供である今でさえ大人である王子を惹き付けている姫君だ。これが更に成長すると思うと逆に恐ろしくもなる。


その時、王子は今のまま変わらずにいられるのだろうか? もしかすると、王子が姫に変わらない様望むよりも、王子の方に変わらない様望まなければならないのでは?


穏やかで優しい王子が愚王になるなどとは想像すら難しい事だが、どんな賢王であっても美女が王を堕落させる話は昔から存在する。だからこそリルディア姫がそうならないとも限らない。何よりリルディア姫にはそう思わせるだけの美貌と魅力が備わっている。



……正直、自分では理性的であるとは思ってはいるが……王子には決して言えない事だが、リルディア姫への心象が変わったせいなのか王子が姫の事を「初めて会った時から気になっていた」と言っていたように、姫の事を気になっている自分がいる。


だからと言って王子のように“恋愛感情”というものでは決してないが、既に気になっている時点で“危険”なものであるのには違いない。姫がまだ子供でよかったと内心ホッとする。もし姫が大人であったなら、姫の魅力に惑わないと言い切れるだけの自信がない……事実、気になってしまっている時点で自分の理性が信じられなくなった。


けれど間違っても主の婚約者に懸想するなどあってはならない。やはり自分はこうして王子付きの筆頭側近の騎士ではあるが、まだ25歳の若輩者なので、まだまだ精神的にも未熟者なのだと改めて実感している。


国に帰ったら即刻、もっと厳しく鍛練を積まなければならない。これから先もリルディア姫とは王子付きの側近である以上、顔を会わせる機会は多くなる。


だから上司にもっと厳しく精神面を鍛えてもらって、どんな事があっても理性を保てるようにならなくては王家を守護する騎士としても失格だ。


そう自分を戒めながらも王子を挟んだその右隣で平行しているもう一人の王子の筆頭側近である同い歳の相棒のロイズに視線を向ける。


王子の護衛として自分と一緒に同席し、間近でリルディア姫と対面したロイズは姫の事をどう思っただろうか? 姫に対して心象が変わったのは自分だけなのだろうか?






【②ー続】






















































































































































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ