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我儘王女は目下逃亡中につき  作者: 春賀 天(はるか てん)
第一章 【青天の霹靂】
29/78

回想

【5】




ヘンドリックと母様(かあさま)会話(かいわ)をしている(あいだ)(わたし)はふと“あの(とき)”のことを(おも)()して表情(ひょうじょう)(くも)らせていると、それに()()いたヘンドリックが私の(かお)(のぞ)()んでくる。



王女(おうじょ)(さま)?」



「………ヘンドリック、母様同様(どうよう)、私の(こと)理想(りそう)(くだ)くようで(わる)いのだけれど、私は貴方(あなた)()素直(すなお)(やさ)しくて可愛(かわい)らしいなんて言葉(ことば)()てはまらないわよ? (たし)かに両親(りょうしん)(おも)いという言葉だけは、私はお父様(とうさま)も母様も大切(たいせつ)大好(だいす)きだから、その言葉だけは()()っておくけれど。


私の(うわさ)は貴方も()いているでしょう? 自分(じぶん)勝手(かって)傲慢(ごうまん)父親(ちちおや)溺愛(できあい)をいいことに(なん)でも()しい(もの)()()れ、さらには他国(たこく)王太子(おうたいし)までも(かれ)にはすでに婚約者(こんやくしゃ)がいたにも(かか)わらず、父親の権力(けんりょく)使(つか)ってその王太子を手に入れたという我儘(わがまま)第四(だいよん)王女というのは(すべ)本当(ほんとう)の事よ? この母様が呆れるほどに手の付けられないね?」



そう言って(はは)視線(しせん)()けると、母は何とも言えないというような複雑(ふくざつ)表情(ひょうじょう)をしていた。



「ーーええっと、それでもこの()(いま)では成長(せいちょう)して大人(おとな)になって、(むかし)(くら)べたら大分(だいぶ)、いや、すごくマシにはなったのよ? (ひと)(はなし)も聞くようになったし他人(たにん)の事も気にするようになったし我儘を言うのも半分(はんぶん)くらいにはなったしーーー」



母様、一応(いちおう)フォロー、ありがとう。



「もしかしたら、私は()まれた時から王族(おうぞく)だったから、お父様である国王(こくおう)(あま)やかされて(そだ)った(ぶん)(もと)市井(いちい)出身(しゅっしん)の母様なんか()じゃないくらいに性格(せいかく)の悪い王女なのかもしれないわ。(くち)だって悪いしーーこれは母様のせいもあるけれど。


だから私は何でも(おも)(どお)りになるとずっと思って(うたが)わなかったわ。だってそれが私にとっての()たり(まえ)だったから。そんな私は自分が気に入らない貴族(きぞく)令嬢(れいじょう)(たち)には散々(さんざん)意地悪(いじわる)もしてきたし、それでも気に入らない相手(あいて)にはお父様にお(ねが)いして私の()(とど)くことのない(とお)くにやってもらったこともあった。だけどそれが悪い事だなんて微塵(みじん)にも思っていなかった。


母様はそんな私の所業(しょぎょう)注意(ちゅうい)してきたけれど、そんなものは口煩(くちうるさ)小言(こごと)ですぐにお父様の(ほう)()げていたの。 そうすればお父様が私の(かべ)になって母様の小言を(ふせ)いでくれるから。


私にはお父様がなんでもしてくれる。私の願いならなんでも(かな)えてくれる。それがどういう事になるのかも()らずに何も(かん)えずに甘えていた。


結果(けっか)…………私は過去(かこ)沢山(たくさん)の人達の人生(じんせい)滅茶苦茶(めちゃくちゃ)(こわ)してしまったのよ。もう今ではその事を(あやま)ることも(つぐな)うことも出来(でき)ないーーー


私がこんな事を考えるきっかけになったのは、ある人が(おし)えてくれたの。その人は私に人生を壊されてしまったのに私が子供(こども)だから責任(せきにん)はないと全ては父の責任だと言って、私を(おこ)ることも(そし)ることも()めることもなく、(ぎゃく)に私の将来(しょうらい)を心配してくれていた。


それなのに私は謝罪(しゃざい)するどころか、その人から逃げて、結局(けっきょく)(くに)(はな)れたその人とはそれ以来(いらい)()うこともなく、私は(あやま)機会(きかい)(うしな)ってしまい、(いま)現在(げんざい)、こうして国を()われた私にはその人とはもうこの(さき)一生(いっしょう)会うことは()いでしょうね」



「リルディア…………」

「王女」

「…………王女様」



私の話を聞いて(みな)は私から視線を(はず)して(うつむ)いてしまう。ほんの(すこ)しの沈黙(ちんもく)(つづ)いた(あと)、私は話を続けた。



「だから、私達の今までの悪行(あくぎょう)数々(かずかず)神様(かみさま)がとうとう怒って天罰(てんばつ)(くだ)されたんだわ。母様は神様なんて(しん)じないと(おっしゃ)るけれど、私にはやっぱりこれは天罰だと思う。


お父様は今まで味方(みかた)だった人達に裏切(うらぎ)られて(ころ)され、私は最愛(さいあい)の父を失い、母様だって自分(じぶん)を今まで(まも)ってくれていたーー()(きら)いは(べつ)としても(おっと)を失い、私達親子(おやこ)は今(つか)まったら殺されるかもしれない不安(ふあん)(かか)えて、周囲(しゅうい)が全て(てき)(まわ)った(なか)を逃げなければならなくなった。母様の言葉で言うならこれも全ては『自業自得(じごうじとく)


だから貴方達二人(ふたり)以外(いがい)(だれ)一人(ひとり)として私達を(たす)けに()てくれる人もいない。私達は世間(せけん)ではどうしようもない(きら)われ(もの)なのよ。(とく)に私はその父の()()性悪(しょうわる)の我儘王女。私は(にく)まれこそすれ誰かに優しいだの好きだの言ってもらえる資格(しかく)なんてない。


けれどーーヘンドリック。貴方がたとえ(かん)(ちが)いからでも、さっきの大好きだと言ってくれた言葉はちょっと(うれ)しかったわーーーありがと…………」



最後(さいご)の言葉は何というか、少し()ずかしくなって、言葉(すぼ)みに小さくお(れい)を言う。そうーーこれも私が(まな)んだ一つ。


(はは)最低限(さいていげん)礼儀(れいぎ)作法(さほう)には(うるさ)い人だ。人から(もの)(もら)ったり、何かをして貰ったり()められたりした時は感謝(かんしゃ)()(あらわ)すこと。逆に自分に()があって相手を(きず)つけたり誰が見ても悪い事をしたと少しでも感じたら素直(すなお)反省(はんせい)の意を表すこと。


昔の子供の私なら『どうして私がお礼を言わなければならないの? 私に(おく)(もの)をしてくるのは相手の勝手じゃない。別に私がしてくれと(たの)んだわけじゃないわ。欲しい物ならお父様にお願いすればいいんだし』ーーとか、『私が綺麗(きれい)で可愛いのは一目瞭然(いちもくりょうぜん)でしょう? 本当の事を言われているのに、何故(なぜ)私がお礼を言わなければならないの?』ーーと言っていた。


でもまだその(へん)渋々(しぶしぶ)ながらもお礼は言えていたからまだ()い。けれど非とか反省という言葉は私の辞書(じしょ)には()く、何をしても何を言っても父から(ゆる)されていた私は、


『お父様がお怒りになられないのに、私は何も悪くはないでしょう?』ーーとか、貴族の令嬢達に意地悪をしていた時も『だってあの人達が嫌いなんだもの。そもそも私に嫌われるような事をするからよ? 向こうが全て悪いんじゃない』ーーだ。


しかも父からは、『王女であるお前は誰にも頭を下げる必要(ひつよう)はない』ーーと決定打(けっていだ)な言葉を貰っていただけに、生まれながらにして王女である私がどうして下々(しもじも)の者に頭を下げなければならないのよ。という概念(がいねん)があったこともあって、あの当時(とうじ)記憶(きおく)にある(かぎ)り謝ることなど一切(いっさい)した事がない。


それを考えれば今の私はあの当時に比べれば本当に信じられないくらいに成長したのだと言える。今ではありがとうも、ごめんなさいもなんの抵抗(ていこう)もなく言葉に出来るし、ただ時々、使(つか)場面(ばめん)によっては()れくさくなったり恥ずかしくなったりする事もあるが…………



「……………」



私の話が(おわ)ると、また(しばら)くの沈黙(ちんもく)。ーー(おも)い話になって皆が気まずい思いをしている。きっとなんと(こえ)()けていいのか、誰が口火(くちび)()るのか()(はか)っているのかもしれない。



ーーこんな時にする話ではなかった。話の(なが)れの必要性(ひつようせい)から、つい私の過去(かこ)の我儘所業の昔話をしてしまった。でもこれで私がどういう王女なのか()かってもらえたと思う。母と同様に(へん)美化(びか)されて間違った認識(にんしき)()たれても(こま)るし、どうせ幻滅(げんめつ)されて嫌われるなら(はや)く分かってもらえた方が私の(こころ)に受ける傷は浅い。



「…………エルヴィラ様」



「な、なによ?」



この沈黙を最初(さいしょ)(やぶ)ったのはヘンドリックで、それも何故か母に話し掛けた。母は何の脈略(みゃくりゃく)も無しに突然(とつぜん)自分に声が掛かったので、少し声が上擦(うわず)っている。



「…………王女様を()きしめてもいいでしょうか?」



「「はあっ!?」」



(ふた)び母と隊長(たいちょう)の声が同じタイミングで重なった。やっぱり(いき)()っている。ーーじゃなかった。そんなことよりも今はヘンドリックの発言(はつげん)の方が問題(もんだい)だ。


私を抱きしめてもいいかって?? 何故に??



「…………可愛い。王女様がすっごく可愛い。しかも素直で健気(けなげ)保護欲(ほごよく)、滅茶苦茶(くすぐ)るんですけどーーー


ああ、抱きしめたい!! ギュってしたい!! ううっ、この可愛いさはヤバいですよ。俺、今すぐ抱きしめてお(なぐさ)めしたい!!」



そう言ってヘンドリックの手が私に()びる前に、母が私を彼から引き離すようにして後ろへと()()り、がっしりと私の(からだ)()(かか)えてガードをする。そしてその前をヴァンデル隊長が壁になり彼がそれ以上、私に近付かないように阻止(そし)している。



「ちょ、冗談(じょうだん)じゃないわっ!! 勝手に(わたし)(むすめ)(さわ)らないで頂戴(ちょうだい)!!」



「ええっ!? 勝手にじゃないですよ? だからお(うかが)い立()てたでしょう? 抱きしめてもいいですか? って」



駄目(だめ)絶対(ぜったい)に駄目よっ!! 貴方に触れられたら娘の体が(けが)れるわ!!」



「あ、俺、綺麗好きだから大丈夫(だいじょうぶ)です。体は毎日(まいにち)(あら)ってますよ?」



「そういう問題じゃないっ!! まだ(よめ)()り前の大事(だいじ)な娘を“(かく)(おおかみ)”の貴方に触れられたら、触れられただけで妊娠(にんしん)するわっ!!」



か、母様! に、妊娠って………



「………ホントに(ひど)(いら)(ぐさ)だな。隠れ狼って、俺、そこまで信用(しんよう)ないかなぁ? これでもお(いえ)騒動(そうどう)になるようなことは気をつけてるって言ってるのに………


ーー昔と違って今は綺麗なものですよ? 以前(いぜん)みたいに“手当(てあ)たり次第(しだい)”ってことはないし、しかも俺、そういうの卒業(そつぎょう)しましたから。ーーでも、そうだな、触っただけで妊娠するなら、俺もうすでに王女様を触っているから、そうなると俺の子供を妊娠させてしまったってことになるな。


あ、でも安心(あんしん)して下さい。俺、ちゃんと責任取りますからーーって(いた)っっ!!」



………あれ? 何だか彼の雰囲気(ふんいき)が………()わった? それに話し方も………(さわ)やか少年(しょうねん)からいきなり大人の青年(せいねん)に変わったような………?



「いい加減(かげん)にしろっ!! ここは騎士団(きしだん)(たい)宿舎(しゅくしゃ)じゃないんだぞ!? 王女の前でそんな不埒(ふらち)会話(かいわ)を聞かせるな!!」



ヴァンデル隊長はヘンドリックの頭をガツンと(たた)き、あの強面(こわもて)(こわ)(かお)でギリッと(にら)みながら彼の(みみ)を引っ張る。



………その顔です………やっぱり強面怖い。



「痛っ!! ちょ、隊長、引っ張っ、んないでっ!!」



「ふん、とうとう正体(しょうたい)(あらわ)したわね!? この“隠れ狼”!! その(うち)尻尾(しっぽ)()すと思っていたのよ。なにせ私の娘は美人(びじん)ですごく可愛いから」



「そ、それ、って、痛っ! ご自分の事を自慢(じまん)しているのと、(おな)じって、っつ、い、たたっ、(おや)バカーー」



「うるさいっ! さあ、グレッグ? このエロ狼な不埒者にはもっとお仕置(しお)きが必要よ? ガッツリと指導(しどう)をして、その天才(てんさい)(あたま)から煩悩(ぼんのう)全部(ぜんぶ)()き取っておやりなさいな」



「ちょ、ちょっと、ホントにこの人、口が悪いなっ! それに隊長!! そもそも最初にその不埒な会話を()ってきたのはエルヴィラ様なんですよっ! 母親のクセに妊娠とか言って、そっちの方に問題があるでしょ! どう考えても!!」



「…………一理(いちり)ある」



そう言うとヴァンデル隊長は先ほどから引っ張っていたヘンドリックの耳から手を離すと、今度は眉間(みけん)(しわ)()せたままの表情で母に向き(なお)った。



「ーーエルヴィラ、貴女もそのなんだ。母親なのだから、そのような不適切(ふてきせつ)な言葉は淑女(しゅくじょ)教育(きょういく)を受けている王女の教育上、使うのは良いことではないと思う。それにいくら我々(われわれ)が相手でも、一応、異性(いせい)の前で女性(じょせい)がそういう会話をするのは世間的にも(この)ましいものではないから(つつし)んだ方がいい」



至極(しごく)真面目(まじめ)な顔でそれでも言葉を(えら)んでヴァンデル隊長は母に(さと)すが、母はそんな隊長をキッと睨む。



「どうせ私は母親らしくないし慎みだってないわよ。だけどその程度(ていど)知識(ちしき)くらいリルディアだって知っているから別に問題ないわ。


それに貴方は不適切と言うけれど、市井出の娘である私から言わせてもらえばあの貴族子女(しじょ)の淑女教育も()()しだと思うわよ? 確かに知性(ちせい)品格(ひんかく)(そだ)てるのは良いことだけれど、でも大部分(だいぶぶん)(おとこ)にとって都合(つごう)のいい(おんな)を作る教育じゃないの。


男の貴方達が知っているかは分からないけれど、淑女教育では子供は神様がお(あた)えになると言って、どうやったら出来るかまでは教えていないのよ? 全く冗談じゃないわよ。そんな知識もなくて、もし男に(おそ)われでもしたら()くのは女じゃない。


だから私はリルディアには自分の()(まも)れるように、きちんと本当の知識を教えているの。この子は将来確実(かくじつ)に男で苦労(くろう)するのは目に見えているもの」



母の言葉にヴァンデル隊長は思うところもあったらしく、グッと言葉に()まる。



思い(かえ)してみればーーあれは14(さい)の頃、私は淑女教育で異性に関しての教育を受けた。家族(かぞく)以外の異性とは挨拶(あいさつ)やダンスをする時以外は体への接触(せっしょく)は絶対にしてはならない。もしそれを破れば、触れたところから(くさ)っていって病気(びょうき)になるのだそうだ………怖いな、それ。


そして結婚(けっこん)した時は、全て夫の言う通りに(したが)うのが良い(つま)(つと)めだと(おそ)わり、さらには子供も神様がその良い妻だけにお与えになるものだから、神様の代弁者(だいべんしゃ)である夫に全て(まか)せていれば大丈夫だとのことだ。


その時の私は何が何だかさっぱり理解(りかい)できなかったが、年長(ねんちょう)(おんな)教師(きょうし)は、「今は分からずとも御結婚なされば分かりますよ」と言って、ホホホ、と(わら)うばかりだ。


そこで私がその事を母に報告(ほうこく)すると母が激怒(げきど)した。そしてそれは(うそ)だと言って、母は私に本当の知識を教え込んだ。特に私の場合は自分の身を守る為に必要なのだと言って。おかげで私は間違った認識を持たずに()んだがーー確かに今思えば、淑女教育には良し悪しだ。



だけど、やはり母様ーーいくら知識があれど、異性の前では言葉にするのは慎んで(いただ)きたいです。私、まだ嫁入り前なので…………



さすがに私も()たたまれないので俯いていると、やはりヘンドリックが空気(くうき)()んで機転(きてん)()かす。



「エルヴィラ様はやはり良いお母上(ははうえ)ですよ! 淑女教育がどんなものかは、俺も(くわ)しくは知りませんが、貴族のご婦人(ふじん)方を見ていても、あの男の顔色(かおいろ)ばかりを伺っている所はちょっとなーとか思いますし、やはり間違った知識は本人の為にも良くはないですしね。


いや~俺も本当にそれで若い頃は苦労したもんな~王女様は淑女教育も市井教育もどちらも受けられて幸せだな~ ーーって、隊長、そろそろ行かないと不味(まず)くないですか? こんなに呑気(のんき)にしていたら、(たの)んでいた宿屋(やどや)のご亭主(ていしゅ)が待ちくたびれてません?」



「あ、ああ、そうだな。全く元はと言えばお前がーーー」



ヴァンデル隊長がヘンドリックを睨むが、彼は全く気にしていない。



「まあまあ、あ、御者(ぎょしゃ)は俺やりますんで、ほら、エルヴィラ様も行きますよ?」



「え?  ええ、そうね?」



「王女様、もうちょっとの辛抱(しんぼう)ですからね~あと少し(はし)ればすぐに国境(こっきょう)(まち)ですよ。あ、それでもやっぱり(つら)いなら遠慮なく言って下さいね? 俺、本当に王女様の椅子(いす)にーーー」



再びヘンドリックの頭に隊長の鉄槌(てっつい)がーーー


…………やっぱり、痛そう。何だか見ている自分も痛い? 気がする?



それで私も思わず自分の頭を触っているとヘンドリックと視線が合った。すると彼はやはり爽やかな人好きのする笑顔(えがお)で私にニコッと微笑(ほほえ)む。



ああ、やっぱり彼は空気を()むのが上手(うま)い人だ。こんなに軽薄(けいはく)にも見えるのに(まわ)りにさりげなく気を(つか)う。さっきの会話にしたって私の様子(ようす)に気付いて話題(わだい)()えてくれたに違いない。道化師(どうけし)みたいな人だけど本当に優しい人。



ーーでも、さっきのヘンドリックのちらりと見えた大人の顔には驚いた。彼には色々と驚かされるばかりだ。



ーー彼の本当の()はどっちなのだろう?





【5ー終】









































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