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『人』という字は『〇』で出来ている

作者: 明智

締め方がかなり下手かもしれません。それでも大丈夫という方は、よろしくお願いします。

「ショータロウ! 質問じゃ! 正直に答えよ!」

 この俺、井坂正太郎はちみっこお姫様専属の家庭教師である。

 元々、日本のニートだったはず俺は、気付けばこの世界にいた。

 そして、なぜか異世界の文化を、このお姫様に伝授する事態に陥っていた。

 元の世界に帰る術はない。また、行く当てもない俺にとって、正直この環境は本当に有難かった。しかし、問題は――

「ええ、いいでしょう。何でも訊いて下さい(うおぉぉぉっ! バレたか!? ついにバレたのか!? 今まで教えてきた日本の文化は八割が嘘だって! やべぇ! やべえよ! どうしよう!)。」

 ――この環境がいつ終わってもおかしくない事だろう。


「以前、お主に教えてもらったこの文字の由来を聞かせよ!」

 おお、どうやら俺の勘違いだったらしい。

 とはいえ、姫に渡されたその紙を見て、俺は困惑する。

「『人』……の由来(知るか、そんなもん! 考えた事もねえよ! バーカ、バーカ、俺のバーカ!)ですか?」

「そう、この文字の由来じゃ。ああ、もちろん読み方は覚えておるぞ。確か『ニン』『ジン』『ひと』じゃろ!」

「ええ、その通り。さすがです、殿下」

「ふふ~ん! まあ、当然じゃな!」

 腰に手を当て、平らな胸を張る姿が本当に可愛らしい。

 いや、そんな事はどうでもいいだろう!

 今はこの状況をどうにかしなければ。

「で、ショータロウ。この文字の由来はなんじゃ?」

 その質問に俺は意を決してアドリブで答える事にした。

「そうですね……。例えば、この前、この漢字の読み方を教えましたよね」

『意』

「ああ、確か『イ』『こころ』『おもう』じゃろう?」

「はい。では、この漢字の音読みをこの紙にカタカナでお願いします」

「ふむ」

 姫は頷き、『イ』と紙に記していく。

「どうじゃ?」

「正解です。では、この字、どこか見覚えがありませんか?」

「ん? ……ああ、少し角度は異なるが、『人』の字に似ておるぞ!」

 こちらの質問に対し、姫ははしゃぎながらそう答える。

「ええ、その通りです。 一説によると「イ」とは『意』を表し、また『意』は『心』を表しているそうです。つまり『イ』とは真っ直ぐ芯の通った『心』を表しているのです」

「ふむ」

「更に『イ』を五十音順に並べた時、二番目に来るでしょう? それは『心』が二番目に生まれたからだと言われています」

「では『イ』よりも前の『ア』は何を表しておるのじゃ?」

「それはおそらく生物の肉体ですね」

「ほー」

「昔の人間は心よりも、身体が先に誕生すると信じていたのか、赤ん坊を文字で表現したのです。ほら『フ』の部分がどことなく、頭に見えるでしょう?」

「……? ふむ、言われてみればどことなく赤ん坊の頭に見えるぞ! そう考えると、この『ノ』は胴体を表しておるのじゃな?」

「お見事。さすがです、殿下」

「ふふ~ん」

 再び、得意げに胸を張って喜ぶ姫に、俺はキュンとする。

 ああ、ヤバい。この仕種を見ているだけで、頬ずりをしたくなる。

 俺、ロリコンじゃないけど、ああヤバイ。

「では話を戻します。人、それは薄汚れた存在。『(こころ)(イ)』の捻じれた未完成な生命体。つまり、『人』という字は『心』が捻じ曲がって産まれた漢字という事です」

「お、おお!」

 俺はいつボロが出るかも分からぬような状況で、どうにか最後までアドリブ芸を押しとおせたらしい。

 願わくば、これ以上、厄介な質問はありませんように。


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