商業街ロイジェロ
二人は隣町、ロイジェロにいた。
ロイジェロは、多種多様な出店で賑わう商業街で有名である
しだれは武器や道具を買いにこの街には頻繁にくる
愛銃の弾丸や雨に当たらずとも一時的に青眼になれる特殊な酒…レインワインを買い求めるのだがまだ齢20に満たない少女であるしぐれを連れてくることは自粛していた
同年代の子供はまだランドセルを背負っているというのに彼女は血に濡れた道を歩み始めている
せめて獲物や殺しの為の道具から離れた生活をしてほしいと武器などは極力にぎらせない様にしているのだが今回はやむを得なかった
『お…おー…』
初めて見たロイジェロの活発な出店はとても珍しく、そして心を躍らす素敵な者に見えたのだろう
思わず口から零れた歓声と輝く瞳がそれを物語っている
だが二人は楽しいショッピングをしに隣町に出向いたのでは無い。
情報屋らしき男の話によるとレイターを探す子供がこのロイジェロにいるらしい
レイターの存在は普通の人間にとってはとても珍しいものである。
常人とはかけ離れた身体能力を持つので科学者達はらその謎の究明のために大金を積んでレイターの臓器や筋肉などを買収し日夜研究に励んでいるという噂をよく耳にするが
触らぬ神に祟りなし
一般人達はその超人的な身体能力が故に容易く犯罪に手を染めることの出来るレイターに好んで近寄るものは少なかった
しだれに手を引かれ歩いているしぐれの目は色々な”新しい”に目移りし輝いていた
彼らは決して楽しいショッピングに来たのでは無い…だが、しだれは珍しく楽しそうにしているしぐれを見かねて声をかけた
『情報収集がてら…その…観光でも…するか?』
しぐれはその言葉に年相応のとびきりの笑顔を咲かせ賛成した
普段見ない珍しい店に興奮したしぐれはしだれを引っ張りながら商店街を縦横無尽に駆け巡った
色々な珍しいものを見て満足顔のしぐれと珍しく興奮したしぐれに手を引かれ半ば引きずられていたしだれは一通りの観光が終わった…もとい、しぐれの気が済んだようなので2人でベンチに座っていた
楽しそうに上半身を小さく左右に揺するしぐれに対してしぐれについていくのに必死だったしだれは肩を細かいリズムで上下に動かしてしきりに汗をぬぐっていた
『シグ…いきなり…走り…すぎ…』
『…だって楽しかったんだもーん』
いつもの冷淡な口調だが声の抑揚などからかなり上機嫌なのがわかる
まぁ楽しそうだしいいかと笑顔のしぐれにつられてしだれも笑った
『…ん、雨降ってきた』
ベンチに座っているしぐれが呟く
ポタ…ポタ…と雨の雫が二人の肩を濡らす
しだれは左目を手で隠した
『人が多い、騒ぎになると厄介だ』
しぐれは青眼を髪で隠しているので動き回らなければ青眼が露わになることは無いが、しだれは一々隠さなければいけないことに難儀していた
以前エマが外出する際にかけている【青眼を隠すメガネ】を借りたことがあるのだが
『慣れないものだな…どうかな?』
『アハハハハッ…しだれ様…っ…すみま…プハッハハハハッ』
『…フフ…よく似合ってるじゃない…』
『なっ…うるせぇ!どーせ俺にはメガネなんか似あわねぇよ!』
ということがありそれ以来しだれはメガネの事を毛嫌いしていた
『…とりあえず雨宿りしよう』
二人はベンチを後にして雨の降る街へ踏み出した
しぐれとしだれの区別がつきづらいので次回から
しぐれ→時雨
しだれ→枝垂
という風に変えさせていただきます