3話 酒場にて
『この本もダメ…全く役に立たない…』
銀髪の少女が表情を崩さずそっと呟く
『本なんてアテにならねぇよ、ちまちま読み漁るくらいなら酒場に聞き込みに行こうぜ』
赤髪の少年はケラケラと笑いながらそう言った
『本をバカにすると痛い目見るよ…しだれ…それに』
少女は言葉を言い終わるより早く文章の一片を指差す
『おいシグ、なにが言いたいんだよ』
口を引きつらせ今にも怒り出しそうな表情
しだれが一触即発の険悪な雰囲気なのに見向きもせず冷徹な少女は火種を放り投げる
『ここに書いてある…未成年飲酒ダメ…』
『俺は成人だ!』
しだれは机を叩きつけシグに向かい叫び出す
『私より小さいくせに…あと私のことは”しぐれ”とよびなさい…』
『それは言うなよな!…全くラチがあかないぜ』
不機嫌そうなしだれは頭を掻きながら気持ちを落ち着かせると
『シグ!聞き込みに行くぞ!』
どうやら彼は酒場に聞き込みに行くらしい
『…しぐれ…』
少女はため息をつきながら自分の名前を冷静に訂正していた
洋風な街並み、レンガの壁を雨が照らす中を二人は聞き込みをしていた
【二人は特異な体質をしている】
見た目こそ変哲も無い子供だが、雨にあたると片目の色が変わる
しぐれは薄青色に、しだれは蒼色に。
この摩訶不思議な目は何もただ色が変わるだけのチャチなものじゃない
身体能力を底上げするのだ
それも人間離れした段階まで
人々はこの目を持つ者達を【通り雨の同行者】
と呼んでいた
『ホントに酒場に行くの…?』
しぐれが心配そうに問うがしだれは自信満々にそうだと肯定した
歩を進めると二人は酒場についた
中から酔っ払い共の声が響いてくるところから栄えてるとうかがえる
ビールジョッキを型どったネオンが目を焼く
扉を押し開けるとアルコールの匂いに襲われ酒慣れしていないしぐれはむせ返ってしまっていた
その場にいるだけで酔ってしまいそうな空気の中しだれは店内をぐるりと見回す
『おっさん!ちょっといいか?』
しだれは一人の男に的を絞るといたって陽気に話しかけた
酒場で子供に話しかけられるとは思っていなかったらしく目を丸くしていたがしばらくすると下品に笑いだし
『ここはガキの遊び場じゃないぞ』
と背中を叩かれてしまった
誰がガキだと毒づいているしだれを尻目にしぐれは淡々と情報収集をこなす
しばらくしても情報がイマイチ集まらなかったので帰ろうとしていた時だった
『いい情報持ってるぜ』
背後から聞こえた男の声に足を止められた