2話 雨降る街にて
【冷たい雨降る街には悪魔が住む】
数年前に起きた誘拐事件。犯人、目的など一切の事を闇に隠してしまったその一大事件は人々の噂でさえも耳にすることはなくなった
親族を連れ去られた者達は、悲しみに目を濡らした。
もう戻ることはない者達の事を想い絶望した
二人の少年少女を除いて…だが。
『おじさん…この本ください…』
見渡せば埃塗れの本に蜘蛛の巣だらけの本棚
閑古鳥でさえ鳴くのを躊躇い逃げていきそうな古本屋で大人しい少女の声が通る
『いつもありがとうねぇ…500円だよ』
この店の唯一の店員兼店長は消え入るような声で少女に返した。
無言でお金を渡すと少女はその店を後にした
『一雨降りそうだねぇ…』
客のいない店で一人呟いた。
『ただいま…』
無表情の少女が雨で濡れた袋を大事そうに抱え部屋に入る
突然の通り雨に捕まってしまい全身を雨で濡らしてしまったので、買った本を机の上に置いてシャワーを浴びようと脱衣所に入る。
服を脱ごうと服の裾に手をかけた時に前髪で隠れていた右目が露になる
鏡に映ったその目は、綺麗な薄青色をしていた。
『シグ帰ってたのか』
少女がシャワーを浴び終え、タオルを首から下げ脱衣所から出ると明るく高めな少年の様な声が出迎えた。
声の主は見た目こそ幼子の”それ”だが中身は成人を迎えた歴とした紳士だ。
声が高いのもその身長が故である。
シグと呼ばれた少女は口を開くことなく頷くと、古本屋で買った本を手に取り彼女には大きすぎるソファにゆっくりと腰掛けた。
物静かな少女と背丈の低い少年
この二人は”例の事件”で奪われた人々の中で数少ない復讐の心を携える者である。