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第7話:卓上の神①

 「おぉ痛ぇ……くっそ、少しは加減とかそういうのをしろよ……ったく」

 先刻握り締められた(より妥当な表現をするなら握り潰された)左手を擦りながら、愚痴のように呟く。


「手加減はしてやったよ。左手でやったんだから」

両手を腰にあて、なんとも偉そうに上から目線で(俺が今しゃがんでるから口調だけでなく実際の構図的にも)話すジズ。


 ……左手……つまり利き手とは反対を使ったってことか。にしたってこの馬鹿力……なんなんだよ全く。


「って、それはお前の右手に火傷があっからだろッ!? つーかそもそも利き手云々の問題じゃねぇーよ!」


「ははっ、悪い悪い……でもな、お前自分のこと棚にあげるなよ。最初に喧嘩売ってきたみたく人のこと馬鹿にしてきたのはそっちだろ」


「あ? 俺馬鹿になんてしてないんだけど」

なに言ってんだコイツ。

「というか話脱線したままなんだけど! ほら! 次々! 魔法について他に話すことは!?」


「他にはそうだな……属性ごとの魔法の特徴とか? ────でもそれは実演出来る環境で説明するか、実際に見た方が手っ取り早そうだな……。……魔法については今話せる範囲で粗方話したよ、とりあえずおしまい」


 ありゃ、魔法についてはおしまいかよ。拍子抜けだなぁ……俺としては雷以外の魔法も使いたいから練習法とかも聞きたいんだけどなぁ。……まぁそういうのは後で話すつもりなのか? 今話せる範囲って言ったし。じゃあまぁ、魔法についてはこのくらいでいいか。


「うーんと……、じゃあアレだ! 世界情勢?とか、文明度合いみたいなの。何でも良いから具体例とか挙げて、教えてくれ。俺の世界にあったものとかと比較しながら大体の検討つけっから」


 そう言いつつも、丸っきり違う文明の進化のしかただったらどうしよう……とか、そういう懸念が頭をよぎる。

コイツもどんな風に説明すればいいのか話し倦ねているらしく、頭を下げたまま中々話し出そうとしない。


「……そうは言われてもなぁ、何から話せばいいやら。……逆にどんなのが聞きたいとか、言ってくれた方が早いと思うんだけど」


 なるほど質問で返してきたか。


「聞きたいこと、ねぇ……それじゃまずは…………そうだ、年号! そうだよ! 今暦の上で何年なのか把握すりゃ、大体の検討つくじゃん! 俺あったまイー!」

 ホント冴えちゃってるね!

自分の頭の回転の良さに惚れ惚れとしながらジズに目を向ける。


「年号? えーと、それは神歴? それとも国の年号?」


「や、そう言われても何を基準にカウントしてるのかが解んないからなんとも言えないんだけど……」


「ああ、神歴は神様……主神様がこの世界を創られたって言われてる年を元年に定めてる歴で、国の年号は王様の気まぐれで50年に1度くらいのペースで変わる奴」


「王様の気まぐれで変わるやつなんか教えられても検討なんてつくわけねぇだろ! 神歴とやらだ、神歴!」


「OKOK、神歴ね。俺の記憶に間違いがなけりゃ、確か今年で861年」


「──ッ!? 861年……!?」

 酷く顔を歪ませながら驚愕する俺。座って話を聞いていたが、驚きのあまり立ち上がり掛ける。


「……なんだよ、そんな驚くことか?」


「……」

体勢を整えて座り直してから、改めてジズに向き合い聞きたいことを尋ねる。

「えー……っと、大前提として確認したいことが二つばかしあったわ。まず時間の単位。1日の長さ……なんて一緒かどうか解らんけど、極端に長かったり短かったりはしないだろ。────だからそこは置いとくとして、……一年って何日?」


「ん? ────あぁ、なるほど。検討つけるにしてもそっちの世界とこっちの世界とで何日で一年、みたいな基準が違ったら検討つかないもんな。基本的に365日で一年、4年に一度366日の年がある。……って習ったけどよくわからんかったな」


 ユリウス歴と丸っきり同じ……だと……。

……いや別に、ユリウス歴と全く同じだからと言っても、それ自体は驚くに値しない。グレゴリオ歴となれば話は別だが、ユリウス歴が成立したのは紀元前40年とか其処ら辺りだったはずだ。800年も経ってるなら別に成立していても不思議ではない……が……。

「…………」


「……なぁ、どうしたんだよ。さっきから」


 腑に落ちない顔で不審げにこちらを見据えるジズを無視し、俺は質問を続ける。


「……えっと……、じゃあ神様が世界を創った年から~……とか言ってたけどさ、それは何かしら証明するものとかがあったりするのか?」


「ずいぶんな質問攻めだな、まぁいいけど。────証明するものか、無いよ。そんなもんは皆無。……というか、紀元前っつー単位で【主神様がこの世界を造るよりも前の年】を表したり、その紀元前の出来事が記された書物とかもあるくらいの適当さだよ。神話の中では【それまであった世界は一度滅び、主神様によって造り直された】とか書かれてるけど、俺からしてみれば話をでっち上げたようにしか思えないな。……って、主神様が実在するんならそれが事実とも限らないけど」


「……マジかよ」

信じらんねぇ……。


「何だよ? 何にそんなに驚いてんだ?」


 尚も不思議そうな顔でこちらを見つめるジズ。……仕方ない、説明するか……。


「……表現するとしたら、お前達……というか、この世界の人達の、頭の良さに驚いてる」


「?」


「861年しか経ってないんだろ? じゃああの建物はなんだよ。この舗装された道は? こんな見るからに廃れてるっぽい村の建物が、こんなに立派なのは?」


「お、おいどうしたよ」


「────俺が居た世界じゃ、この程度の文明レベルに達するまでに大体その倍は掛かってんだよ。こんな中世感丸出しでたった800年? 成長のレベルが半端じゃないな、すげぇよ」


「……よくわからんけど、紀元前のことまで含めりゃ、倍の1600年くらいはこの世界だって……」


「いいや。紀元前のことはカウントしなくていい」


「────? そりゃどうして?」


「いいか、お前はたった今から王様やら他権力を持ってる人から【今までの世界は消滅しました、新しく造り直してくれたのは主神様でーす】とか言われて、信じるか?」


「……そりゃ権力振りかざされたら有無を言わず首を縦に振るしかないけど……心の内では信じるわけないな」


「だろ? じゃあお前は何故そんなに自分に信仰心が欠けているのか、自分自身で考えたことはあるか?」


「……いやぁ、言われてみりゃ信仰心は無いけども、そこまで深く考えたことはなかったなぁ……」


「俺の居た世界じゃ、人の信仰心がどこから来るのかとか、神話や宗教がどうやって成立したのかだとか、そういうのを専門に研究する学問もあったんだ。そしてそこでの定説に【神様を信じなきゃやってらんないくらいシンドイ生活をしてたから、信仰心が生まれた】ってのがある」


「……おう」


「裏を返せば、お前に信仰心が欠けてる理由に【文明が発達して暮らしが楽になったせいで神頼みとかそういうのに触れる機会がなかった、だから熱心に信仰する必要もなかった】ってのが挙げられる」


「……なるほど」


「─────つまりは確実に、861年前にはそのくらい過酷な生活環境があったってことになるんだよ。そんな過酷な生活環境から、たった800年でこのレベル……。普通じゃありえねぇよ、ホント。あり得ない。これも魔法のお陰ってか? ────比較するまでもなく、科学文明とか糞だな」


「……ん? お前の世界、魔法はなくても科学はあるのか?」


「えっ? いやそりゃもちろん……ってか、俺の世界についてはさっき話したろ。電気で大抵のことを賄って、エネルギー消費がかさむ代わりに利便性を追及した科学製品が溢れる未来社会だって」


「いや科学製品とかのところはかなり省かれてたし、そんなことは全然……」


「ありゃ? そうだったっけか? ……まぁいいや、そんなのはどうでもいいだろ。ってか何だよ、その言い草だとこっちの世界にも科学とかあるわけ?」


「もちろんあるよ。デンキとか言うのじゃなく魔法がエネルギー源だけど、王都の生活レベルはここの比じゃないよ。兵器類にしたって、数十年後には剣に取って代わるって言われてる機関銃ってのが……」


「き、機関銃!?」

思わずすっとんきょうな声を上げてしまった俺。まさかそんなワードが飛び出るとは思わなかった────。いやいや、800年にしちゃ高過ぎだろ、この世界の文明度合い。

「────も、もういいや、大体の察しはついた。もう文明についちゃ充分だよ……」


 というかなんだよ、機関銃って。全く別方向の発展どころか丸っきり同じだと? 度合いの察しはつくものの、流石に早すぎるだろ。スゲーな。予想してた文明レベルよりも相当高そうだ、これは。


 ……なにも俺も、なんの考えもなしに転生だとかのワードを教会前で口走っていたわけじゃない。

 何せ俺は紛れもなく、この世界における主神に殺されてやって来た転生者なんだ。

 情報機関の発達していない、文明度の低い世界────って、あの若い巨人は言ってたから……てっきりもっと生活レベルの低い、過酷な環境で暮らしているのかと思ったらこの様だ。空から落ちてきたことや、せっかく貰ったチート能力である雷をうまく利用すれば、崇め奉られて神の申し子的な位置を確立出来ると踏んで、そういうアピールをしてたのに……。

 こりゃそういう方面からのアプローチじゃ成り上がれそうにないな。些か文明レベルが高過ぎて、ちょっとやそっとの奇跡じゃ主神様がどうたらの話も信じてもらえそうにない。

 ……コイツがコロッと信じたのは雷魔法があったからってのが大きいだろうが、アレ疲れるし。第一、この能力を見世物みたく使うのはなんか嫌だ。そこら辺は流石に秘密主義的な何かが発動する。正義の味方が仲間内に自分の正体を明かさず無意味に隠し通す的な。


 ……まぁ、とりあえず俺の計画その1、文明の低さを利用して神様関連アピールをし、成り上がる……と言うのはボツと。……となると、前に読んだ成り上がりチーレム小説を参考にするならば次の案は────。


 無難なところで冒険家成り上がりとかか?


「なぁなぁ、この世界の職業って、一番優遇されてるの何?」


「随分アバウトな質問だなぁ……」


「あー、じゃあ、武勇を立てるとかそういう肉体労働的な、戦闘方面の職で優遇されてるやつ」


「……そりゃ考えるまでもなく兵士職だろうな。この世界って言うよりこの国って言った方が正しいけど。前世の俺の話はしただろ? あれくらいの実績があれば英雄だとか大将だとか、国を動かせるくらいの地位や金、権力は手に出来る」


 あー……ピンポイントでスッ飛ばしてたところだなソコ。……てかそうか、言われてみりゃジズって英雄だったんだよな。成る程、成り上がるのに前世のコイツを手本にするってのもありか。


「……でもあれ? よくよく考えてみたら、俺この国とか帝国とか言われてたけど、全然何が何やらわかってないぞ?」


「────あぁ、そりゃそうだろうな。話してなかった、悪い。……じゃあ手短に戦争のこととかについて説明するか……」


「おう、よろしく頼む」






 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄






 「────ってわけだ、……大体わかったか?」


「うーん……まぁ、大体……」

 物凄く微妙な顔をして俯く俺。


「しょうがないな……もっかい噛み砕いて話すか?」


 納得しきれていない様子の俺に合わせてくれているのか、ジズがそう提案してくる。


「────いや、大丈夫……あ、でもな……じゃあちょっと俺の解釈で合ってるか確認だけさせてくれ」


「あぁ、おう」


「えーっと、まずイブリース王国とアスモデウス王国ってのがあって」


「アスモデウス()()な」


「あーそう、それそれ!」


「適当だなぁ……お前ちゃんと俺の話聞いてたのか?」


「聞いてたよ! 聞いてた! まぁいいや。ともかくそのイブリース王国ってのがここで、で、この村はイブリース北東にあるウパロ村ってところ、と」


 合ってる合ってる────と言うように、頭を縦に振るジズ。


「──とはいっても英雄だった頃からウパロ村のことを知ってた訳じゃないからな、具体的に地図のどの辺にあるのかも知らん。北東にあるってのは村の人達から聞いた話で、どのくらい東でどのくらい北にあるのかまでは────」


「んな細けぇことは別に良いよ、北東だろうが南東だろうが気にしないし」


「いやそこは気にしろよ」


「なんで?」


「いや……常識的に見てもそこは気にして欲しいところだし、何より北東と南東じゃ全然違う。てかやっぱお前聞き流してただろ、俺の話」


「そ、そんなことねぇって!」

図星だ。


「イブリース王国の北に、アスモデウス帝国があるんだよ。つまり北東と南東とじゃ、魔物の脅威に晒される危険性やら、戦火の被害に遭う確率やらが全然違う」


「ふーん……あれ、アスモデウス帝国ってのが悪魔の住む国だっけ?」


「そう、そして魔物を自然界に解き放ったのもアイツら。だから北に行けば行くほど危険で、魔物避けの印が付いた門が、北の国境付近の村には必ず設けられてる」


「じゃあこの村にもあんの? その印が付いた門ってやつ」


「それがなきゃ普通に魔物に襲われるからな」


「へぇ……」


「おい、ここら辺も二回目の説明なんだけど」


えっ、マジで?

「えっ、マジで?」

──声に出てた。


「……」

凄まじいジト目で睨み付けてくるジズ。


「い、いやその……えと……聞き流してましたスミマセン」


「素直でよろしい。……アスモデウス帝国の悪魔達は、古の魔神を復活させるために魔素を大量に集めてる。空気中の魔素が枯渇しかけている主な要因はソレだ」


「えっ、魔素って枯渇しかけてるの?」


「昔と比べると魔素を溜め切るまでの時間が倍くらいに伸びてる。文明の発展と共にただでさえ消費する量が増えてるって言うのに、悪魔達のせいで魔素不足に拍車が掛かってるんだよ」


「あー、こっちの世界にもエネルギー問題はあったから大体の察しはつくわ……」


「一刻も早く魔神の復活を喰い止めるために、イブリース王国は他国との繋がりを一時的に破棄してまでアスモデウス帝国と戦争してるってわけだ」


「……? なんで繋がりを破棄してるんだ?」


「あのさ、他の国はイブリース王国ほど文明が発展してないんだぜ? そんな状況でアスモデウス帝国の連中と戦争しても、死者をイタズラに増やすだけだろ。魔素を集められて復活が早まったらアウトなんだぞ? 死者を増やさないためにも、帝国の連中に目をつけられないよう一旦関係を切って、半鎖国状態を維持。香辛料だとかこの国じゃ手に入らない特産物だけ献上してもらうって状況が続いてるの。戦争が始まったのが300年近く前だから、そのくらいの期間、ロクな国家間の繋がりはないよ」


「さ、300年……」

 …………やっぱスゲーな、この世界の文明の発展力。スゲェよ。尋常じゃない。

ほぼ鎖国している、ということは隣国の文化や技術が一切入ってこず、自国独自の文化だけでこのレベルにまで達したということだ。その技術面での発展のしにくさは日本を見れば解る。ほぼ文化だけの発展になるのだ、普通であれば。

 なのに独自の文化や知識、技術力だけでここまでの文明を築き上げているというのは……驚く他ない。戦争をしているから発展に拍車が掛かってるにしたって異常なレベルだ。


「……あれ? でもそんな長い期間戦争し続けてたら、人も大量に死ぬだろ? 復活するには充分すぎる魔素が、もう集まってんじゃねぇの?」


「いいや、どうにも悪魔が死ぬとその場にある魔素が汚れるらしいんだ。純度の高い、穢れのない魔素じゃないと魔神は完全復活しないらしいから、戦場で悪魔どもと共倒れて相殺する……ってのが、今までの精一杯の抵抗だった」


「……なぜに過去形?」


「そりゃお前、英雄【漆黒のジズ】の登場があったからに決まってんだろ。悪魔相手に無双し続けて撃退を繰り返し、ついには均衡していた情勢を押し切ったんだから」


「……どうでもいいけどその中2ネームなんとかなんねぇのかよ」


「チューニネーム?」


「その漆黒の~とか言う痛いネーミングセンスだよ!」


「あぁ、黒髪黒眼で珍しかったからな、前世の俺。イタイっていうニュアンスがよくわからないけど、誉め言葉か?」


「……あぁもうどうでもいいや……。」

 ここに来てジェネレーションギャップならぬカルチャーギャップを感じるぞ……あぁ、眼が、耳が痛い……。

「えーっと……じゃあもうアスモデウス帝国の奴等は相当な瀕死状態ってこと?」

とりあえず無理矢理話題転換。中二真っ盛りとか俺の目の前でやめてくれ! 特に黒とか闇関係。魔法でそれっぽいのならまだしも、二つ名でとか……あぁ、嫌な記憶が……。


「瀕死状態ねぇ……、虫の息だったのは事実だけど、もう八年も経ってるからなぁ。流石にある程度は勢いを吹き返してると思うよ。でもまぁあと少しで戦争に決着がつく、その手前までは行ったのは確かだ」


「へぇ……つまりそんだけ前世のお前は強かったと」


「俺だけじゃなく俺のパーティ……魔神の本体を叩くっていう任務に就いてからは、大群同士がぶつかり合う戦場を離れて少数精鋭部隊を結成したんだけど、その俺を含めた4人全員がとんでもなく強かった」


「……それが四大将ってやつ?」


「ん? 違う違う、四大将は戦場で指揮を執るのが務め。俺も大将ではあったけど、他の三人のおっさん達は基本的に国に留まるのも仕事の内なの。それとは別に組まれた若者の精鋭が俺のパーティ、敵知らずの英雄パーティってわけ」


「あ、さっきの三人の名前ってもしや……」


「そう。俺と一緒に行方不明になってる他の三人の名前に、心当たりがないかをさっき聞いたの。お前も転生者ならアイツらを知ってる、もしくはアイツら本人だって可能性もあったろ?」


「なーるほど……なんか悪かったな、ソイツらじゃなくて」


「変なところで謝んな。気にしちゃいねぇし勘違いしたのはこっちの方─────」


「ああっ! エルくんこんなところにいた!」


 幼げな少女の声が背後から聞こえたかと思うと、教会でジズと一緒に居たあの美少女が立っていた。おぉ、土手の上に立ってるお陰で、この位置からだともう少しでスカートの中が────。


 ゴンッ─── ───。


「痛っ!」


 俺の視線に気づいたのかジズが俺の頭を拳でぶん殴る。

ちっ……ジズてめぇ……と、今はエルスって呼んだ方が良いのか。


「どうしたよセルファ。何か用か?」


「シスターさん怒ってたよぉ? おじさんの所に呼ばれてるっていってたのに二人ともいないし。で? そっちの変な子は?」


 えー、俺変な子呼ばわりかよ……。


「あぁ────コイツはユーキって言って……と、ヤバいな忘れてた」


 しまった、という顔で小声で呟くジズ。


「? 忘れてたって何を?」


「根回し」


「……?」


「もう夕暮れだな! 早く帰んないと村長が心配するぞセルファ!」

そう言いながら土手を駆け上がって村の中心の方へ走っていく。──俺は放置かよ!


「おい待てジ……じゃなかった、エルス!」


「……全くもう……! 二人とも待ってよ! ちゃんとシスターさんのところに行かないと!」


 背後から、呆れながらも我が子を思う母のような声が聞こえたが、ジズの足が速すぎて追い掛けるのに夢中だったために、俺はそれを無視した────。


一日に二度の更新で、貴重な前半を説明だけで使ってしまった……。しかも目安5000字のところを3000字オーバー……orz

次回からはストーリーがサクサク……進むかどうかはわかりませんが、とりあえず少しは進展させます。

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