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ベター・パートナー!  作者: 鷲野高山
第二章 シュラハト・フェスタ編
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二十話 げに懐かしきは

 ラストスパート、二章最後にして最大の見せ場のスタートです!


 今回、一万文字は越えていませんが、ちょっと長めです。

 今回の話の内容に関して、後書きが少しあります。では、どうぞ。

「学園に戻ったら、今度こそ一騎打ちよっ、黒星!」


 結果としていうならば、黒星堅一と鳴瀬雨音の実力はほとんど互角であった。

 一戦目は、堅一の勝利。二戦目は偶然にも両者が同時に20体目のドールを撃破し、引き分け。続く三戦目は、雨音の勝利で終わった。

 残存体力も加味すれば堅一の全敗だが、今回のルールにおける勝敗条件は、撃破タイムのみ。


 計三戦、互いに一勝一敗一分となんともきりのいい数字。

 だが、これはあくまで<撃滅>という競技におけるスコアにおいてである。一騎打ちなどの他の競技となると、話はまた別。


 それゆえ、なのだろう。

 雨音は、三戦が終わって戦意が鳴りを潜めるどころか、むしろより意気軒昂として。

 歩きつつ、ビシッ! と堅一に指を突き付ける。


「こらこら、雨音。そのへんに……」


 そんな雨音を諭すように、やれやれとした様子の舞。

 もう一人の上級生である南雲はというと、我関せずというか、まるで面倒に関わりたくないかのように、わざとらしくそっぽを向きながら二人の後方を歩いている。


「まあ、いいですけど」


 そして舞と雨音の横に並ぶように、堅一と姫華。

 堅一は、雨音に比べれば格段に覇気がないものの、それでも了承を返し。

 姫華はそのやり取りに苦笑を浮かべつつ、黙って見守っている。


 そんな、騒がしいといえば騒がしい一行は今、シュラフェス会場内にあるスタジアム状の建物――特設のバトルフィールドへと向かっていた。


 目的は、イベントの目玉の一つたる、プロ同士による試合(シュラハト)。昨夜、縣恭介とルアンナ・ブラフィルドに告げられた、彼らの試合である。


 舞達上級生三人とは、流れというか、そのまま同行することとなった。

 それをちょっぴり残念に思わなくもなかった姫華だったが、同じジェネラルである舞がいるのは色々とためになるのも事実。堅一も、自身に異様に突っかかってくる雨音に眉を顰めていたが、拒否はしなかった。


「…………」


 これは、気のせい、或いは姫華の希望的観測かもしれないが。雨音は勝負前と比べ堅一に対するキツさが少々抜けたような気がしないでもない。……もっとも、相も変わらず突っかかってはいるが。

 そんなことを思いつつ、彼らを横目に姫華は数瞬考え込む。


 堅一の勝利であった一戦目の後。つまり残りの二戦と、姫華は雨音を観察する機会があった。

 しかし結局雨音の二つ目の特殊能力は分からず。そして舞もまた、姫華に教えることはなかった。


 まあ、自身のソルジャーの情報を簡単に漏らさないというのはあるだろう。もし、彼らと直接戦うことになったとしたら、知っているか知らないかで大きく戦況を左右される。それとも、答えを教えず姫華に気付かせようとしているのか。

 今後姫華が自力で見つけることができるかは分からないが、とりあえず、今分からないことは考えても仕方がない。

 それより、と姫華は顔を上げ、舞をチラと見やった。

 堅一にはまだ言っていないが、二人が勝負をしていた時、舞は確かにこう呟いたのだ。


「――いや、盲点だった。システムの不具合かとも思ったが、やはりそうではなかったか。まさか、そのような――」


 姫華が雨音を注視していたように、舞もまた堅一を注視して。

 彼女が何かに気付いたのは確実。ただ、堅一が身体強化を発動しているのは、その並ではない身体能力を見れば割と容易く予想はつくだろう。

 と、なると。言葉から察するに――堅一の呪い(天能)の発動条件。


 ふと、舞と目が合う。

 邪な考えをしていたわけではないが、咄嗟に姫華は視線を逸らし、誤魔化すように前を向いて歩いた。



 やがて一行の目に映り込んできた、白塗りの大きな建造物。曲線を描くように建築されたそれは、目的地であるスタジアムの一角だ。


 時刻はちょうどよく、試合のおよそ三十分前といったところ。

 ただまあ、早すぎず遅すぎずは、特別招待券のある姫華達にとってはである。一般の入場者の場合は、いい席を確保するにはもう少し早く来なければならず、今も席の確保のためスタジアムには続々と人が入っていた。


「特別席も、入場口は変わらないようだ」


 舞の言葉により、一行も入場口に並ぶ。

 その間、列となって順々にスタジアムへと入場するのだが。

 同じようにスタジアムへの入場を待つ観客達は、この回に出てくるプロは誰であるか、という予想を口々に話し、期待している。


 とはいえ、姫華と堅一とて片方――つまり恭介とルアンナしか知らない。だが、彼らの口ぶりからするに、個人戦ではない。あくまで予想だが、ソルジャー2対2に双方ジェネラルを加えたタッグ戦。

 どんな相手か、どんな試合内容になるのか。既に出場選手の片方こそ知ってはいるものの、心は躍る。

 堅一も、そこまで面には出していないが、仏頂面ではなくどことなく表情が緩んでいる。昔の仲間のシュラハト(戦い)だ。直接見るのを、やはり楽しみに思っているのかもしれない。


 数分待ち、流れに沿ってスタジアム内へと入るための階段を昇る。


「わあ……」


 瞬間、姫華は感嘆の声を零した。

 ガヤガヤと、観衆の多く入ったスタジアム内。客席はドーナツ状となって円形に広がり、上を見ても下を見てもかなり埋まってきている。

 客席最後列の更に上の段には、大型ヴィジョン。今は時刻とシュラハトフェスタのロゴが表示されているのみだが、試合が開始されれば選手名や選手の体力バー、シーンのハイライトなどが映されるだろう。

 そしてなにより目を惹くのが。四方八方より見下される、スタジアムの中心たる特設のバトルフィールド。


 姫華が試合の開催されるスタジアムに来たのは、これが初めてではない。それに規模は小さいが、造り的には学園の闘技場も似たようなもの。

 だが、その時とは異なり、姫華は今違う視点を持っている。

 それは、ジェネラルとしての視点。以前に来た時は、自身がジェネラルとは分かっていたものの、それだけだった。

 自分が、バトルフィールドに立っている状況。それを想像しなかったわけではないが、パートナーたるソルジャーの顔には靄がかかっていたのだ。

 しかし今は、堅一というパートナーがいる。自分と、堅一があのフィールドに立ち、戦っている。姫華はそれを想像しただけで心が震え、興奮と緊張を覚えた。


「さて、特別席は、と……」


 そんな彼女の隣には、スタジアム内に入っても特に何も思っておらず、きょろきょろと特別席を探す堅一。

 姫華の思いをぶち壊すような行動だが、無論当人はそんなことは知る由もない。


「あそこじゃないの?」

「ん? ああ、そうみたいですね。……おーい、姫華?」


 雨音の指差した方向に、見晴らしがよいにも関わらず空席が目立つ客席。そのエリアへ入るための階段の前に係員が立っているから、恐らくあそこだろう。

 姫華を除いて歩き出す四人だったが、立ち止まったままバトルフィールドを見つめる姫華を訝しんで堅一が声をかける。

 それにハッと我に返った姫華は、すみません、と彼らに駆け寄った。


 当然というか、シュラフェスに来た弐条学園の生徒は堅一達だけでなく。また、プロの試合を見ようとスタジアムにやってきたのも彼らだけではなかった。

 特別席までのそこまで長くない道のりの中、客席に纏まって座る制服のグループもあれば、スタジアム内を歩く生徒達の姿がチラホラと見られた。


 無論、その中に堅一の知り合いはいない。というより、学園での堅一の少しでも仲のいい知り合いなど、姫華達を加えても両手の指で事足りる。

 が、そんなのは積極的に周囲と関わろうとしていなかった堅一だけ。

 上級生三人の知り合いは彼らに話しかけてきたし、また一方的に知っているであろう生徒も近くにきた。姫華のところにも、何人か話しかけにきていた。

 おかしいのは堅一の方であって、彼らではないのだ。そして決まって、少しの立ち話を終えた彼らは、同行するこちらをチラッと見てくる。

 舞達の知り合いであれば、堅一と姫華を。姫華の知り合いであれば、堅一と上級生三人を。


 一人ぼっちに疎外感を覚えたわけではないが、げんなりするのを禁じ得なかった堅一。

 そんな彼であったから、係員に特別招待券を見せ、ようやっと特別席に座った時に、思わずホッと一息吐いた。


 横一列の五席。端から、南雲、雨音、舞、姫華、堅一の順。

 これで、後は試合まで座っていればいい。そう考えていた堅一であったが。


「それじゃあ堅一さん、行きましょうか?」

「…………」


 姫華の言葉で、否応なく思い出させられた。昨夜、試合開始前に選手控室に来いと、二人のプロに言われていたことを。


「おや、どこに行くんだい?」


 姫華の隣に座っていた舞が、それを聞いて二人の方へ顔を向けて訊ねてくる。


「えっと……選手控室です」


 舞達にはこの時間の試合を見るという予定しか言っていないため、彼らは次の組み合わせを一人として知らない。

 ゆえに、姫華は少し迷ったが。ここまで来ればどの道後少しで判明するので、別に隠す必要もなく、告げる。

 それだけで舞は察し、フッと笑った。


「なるほど、だからこの回の試合か。……では、我々は試合開始までスタジアム内でも歩いて見ていようか?」


 そうして彼女は、自らのソルジャーである雨音と南雲に問いかける。


「私は、別にそれでもいいわよ」

「行ってらっはーい」


 席を立つ雨音。

 反対に、座ったまま間延びした声で南雲。


「まぁ、そういうわけだ。行ってらっしゃい」


 それを見た舞は、苦笑しつつ姫華達に言う。

 同じく苦笑して席を立つ姫華と、渋々といったように席を立つ堅一。


「……なんで、アンタはいつもそうなの!?」

「いいじゃん、面倒臭い」


 歩く二人の背後から聞こえてくる、雨音と南雲の言い争い。


「……俺も面倒臭い。姫華、行ってきてくれないか?」

「駄目です! ほら、行きますよ!」

「お、おい、ちょっ……」


 南雲に毒され、嫌々として言う堅一。

 姫華は、そんな彼の腕を抱え込むようにして歩いた。

 堅一が驚いたような声を上げるが、気に留めず引っ張る。

 試合前に絶対来て、とルアンナが言っていた。時間ぎりぎりならまだしも、面倒臭いなど、理由にはならない。この時姫華の胸中を占めていたのは、妙な責任感であった。


 選手控室はそう離れておらず、大まかな構造的に特別席の階下にあたる場所にあった。

 関係者以外立ち入り禁止の柵の前に立つ警備員に特別招待券を提示し、中に入れてもらう。やってきた係員に問われ、誰に会うかを伝えれば。既に話は通っていたのか、確認されることもなく、姫華と堅一はゲートから一番近い扉の前へと案内された。


 扉に貼られていた紙には、(恭介)ブラフィルド(ルアンナ)、そして彼らのジェネラル四十川プロの文字。

 姫華は係員に礼を言い、堅一の腕を持つのとは逆の手で扉をノック。


「あら、姫華ちゃん。堅ちゃんを連れてきてくれたのね、ありがとう」


 数秒と経たず扉が開かれ、現れたのはルアンナ。

 促されるまま入れば、中にいた恭介と四十川がこちらを見た。


「おっ、来たな!」


 にこやかに片手を振り上げる、恭介。四十川もその隣でにこやかに笑みを浮かべている。

 堅一は、姫華に抱え込まれた腕を照れ隠しのように少々乱暴に振りほどくと、恭介と四十川の側に近づいていく。


「おいおい、なかなかどうして、いい雰囲気じゃねぇかよ」

「……うるさい」

「そのへんにしときなよ、恭介。やぁ、黒星君、調子はどうだい?」

「ぼちぼちですかね」


 そんな男連中をよそに、ルアンナが姫華に声をかけてくる。


「いい感じね、姫華ちゃん。すっかり、らしくなってきたわ」

「ほ、本当ですか? 嬉しいですっ!」


 ルアンナの評価に、花の咲いたような笑みを零す姫華。


「ええ、本当に。……ちょっと羨ましいぐらい」


 そんな彼女に、悪戯っぽくルアンナが笑う。

 と、次いで彼女は姫華に顔を寄せ、耳元で囁いた。


「今日は、難しく考えないで試合を見ているだけでいいからね。あと、解説役も、そっちに送るからっ」

「解説、ですか?」


 きょとんとする姫華に、ルアンナは意味ありげにウインクだけすると、


「堅ちゃーん!」

「うわっ!? おいっ!」


 堅一の背に走り寄り、そのまま覆いかぶさった。



 その後は、雑談程度の会話を軽く交わし、まったりと。

 試合開始時刻も近づいてきたので、姫華と堅一は席に戻ろうとする。


「悪いな、嬢ちゃん。ちょいと、一人で先に席へ戻っててくれ」


 が、恭介の一声によって、姫華だけ先に控室を出ることとなった。

 話か、何かあるのだろう。不満などないので一も二もなく了承し、控室を出た姫華は席へと戻った。


「ああ、お帰り。……おや、黒星君はどうしたんだい?」


 と、既に席に戻っていた舞が、姫華に声をかけてくる。

 間もなく来るんじゃないでしょうか、と返答し、姫華も席に座る。

 それより、数分。


『――シュラハト・フェスタへお越しの皆様、本日はご来場、誠にありがとうございます! 大変長らくお待たせいたしました、それではこれより、ここ、特設バトルフィールドにおける14時の試合(シュラハト)の詳細を発表致します!』


 スタジアム内を、朗々とした男性のアナウンスが響き渡った。

 わあっ、と歓声が上がり、盛り上がる客席。

 しかしそんな中、姫華は困り顔となって舞とは反対の席へ視線をやる。


「堅一さん、どうしたんでしょうか……?」


 そこにあるのは、空席。選手控室に残った堅一は、まだ帰ってきていない。

 間もなく、試合が始まってしまう。トラブルに巻き込まれた、とは考え難いが。

 一瞬探しに行こうかと思ったものの、姫華はすぐさま頭を振る。余計な行動をとってすれ違いになったら、何の意味もないからだ。


「案外、迷ってるとかだったりして?」

「いやいや、流石にそれはないっしょ」


 雨音、次いで南雲の言。


「まあ、待つしかないだろうな」


 舞も、姫華と同じ結論のようだ。

 若干不安な面持ちとなりつつも、姫華は眼下のバトルフィールドへと視線を戻した。


『ルールは、タッグ戦。互いのジェネラルはもちろん、それぞれのチーム二人ずつ、計4人のソルジャーが同バトルフィールド上にて激しい戦いを繰り広げます!』


 無論その間にも、アナウンスは止まることなく、響く。

 ルールは姫華の予想通り、ソルジャーが二対二のタッグ戦。

 姫華はまだ堅一としか契約していないので、実質今の姫華達では参加することすらできない競技だ。


 だが、二年に進級すれば、と姫華はチラと隣にいる舞を見やった。

 彼女のように、複数のソルジャーと契約する可能性は出てくる。


 ならばルアンナの手助けとは、この先のことを見据えてのことか。

 そう考える姫華の隣の席を、誰かが座る気配があった。

 堅一が戻ってきた。そう思い、ホッとして姫華は隣を見るのだが。


「お帰りなさい、堅一さ――」


 その目が大きく見開かれ、出迎えの声は途中で止まる。

 何故なら、そこにあったのは堅一の姿ではなかったからだ。


 頭には灰色のハンチングキャップを乗せ、顔には黒いサングラスと白いマスク。

 それだけならまだ、堅一の可能性もゼロではないのだが。彼よりも大柄な体躯が、堅一でないことを証明している。


「……あ、あの、すみません、その席は――」


 明らかに、不審者の様相。むしろ狙っているんじゃないかと思わせるほどだ。

 びっくりしながらも、おずおずとその人物に向けて声をかける姫華だったが。


「――ああいや、すまん俺だ、嬢ちゃん。縣だ」

「……え?」


 返ってきた声。マスクでくぐもってはいたものの、それは確かに出番を控えているであろう縣恭介のものであった。

 更に彼は、僅かに腰元を晒し、姫華に瓢箪を見せつける。間違いなくそれは、彼の物。そう言われてみれば、背格好も一致する。

 ――などと納得している場合ではない。


『まず、一組目は! (ツヴァイ)リーグ所属。プロの中では珍しい、彼ら全員が血縁関係にあるという、三人兄弟! 次男の山形景二(けいじ)選手をジェネラルとし、ソルジャーは長男の山形一臣(かずおみ)選手に、三男、山形三造(さんぞう)選手。2リーグの実力者、通称、山形三兄弟の入場ですっ!!』


 2リーグ所属とはいえ、プロはプロ。バトルフィールドに現れた三人の男――山形三兄弟を、喝采が包む。

 そんな彼らとは以前、ここにいる四人は遭遇している。それも、あまり印象がよかったとはいえず、むしろ悪い。

 殊更、彼らの言動に一番の憤りを抱いていた雨音は、憤慨しそうなものであるが。

 しかしそんな雨音を含めた四人は今、バトルフィールドすら視線に入らず、絶句していた。


「え、な……ど、どうしてここにいるんですかっ!?」


 特に姫華はそれが顕著で、すっかり気が動転して驚愕の声を上げる。

 何故なら姫華は、恭介が選手として出場するのを知っている。

 それなのに、次に名を呼ばれ眼下のバトルフィールドに登場するはずの彼が、なぜか観客席に、それも怪しい恰好でいる。驚かないわけがなかった。

 そんな姫華に、恭介はマスクの上から口に手を当て、静かに、というジェスチャーをして。


『続いて、二組目の発表です!! こちらは、1リーグ所属の……え? しょ、少々お待ちください』


 会場を更に盛り上げようと声を張り上げるアナウンスであったが、しかしそれは慌てたような声に変わって途切れてしまった。突然の事態に、何かあったのだろうかと大勢の観客がざわめき、囁き合う。


 さて、その何かに、まさに相対している姫華。


「……あー、黙ってて悪かったな、嬢ちゃん」


 コホン、とわざとらしく恭介が咳払いを一つ。

 

『えー、ご来場の皆様、誠に申し訳ございません。本来であれば、この後二組目として、1リーグ所属の縣恭介選手、ルアンナ・ブラフィルド選手の両ソルジャーに、ジェネラルである四十川(すぐる)選手が登場するはずでした。しかし、つい先程縣プロが突如体調を崩されたそうで、出場が難しくなってしまったとのことです』


 アナウンスにより、一層のざわめきが広がる。客席のところどころからは、その報せに不満、残念そうな声や溜め息も聞こえるほどだ。


 が、姫華達四人からはそれがない。当然だ。何故なら彼は、ピンピンして目の前にいるのだから。

 実際、姫華がついさっき会った時にも、そんな素振りは見られなかった。

 一体どういうことか。

 それを知りたいのは姫華だけでなく、残りの三人も同じ。


「――俺がどうしてここにいるかっていうと、だ」


 そしてその理由を、恭介はバツが悪そうな口調で。


『ですがご心配なく、試合を中止とは致しません! 本来、公式な大会やリーグであればルール違反となりますが、このシュラフェスにおける試合は公式戦ではありません。よって縣選手の体調不良を受け、急遽、縣選手の弟子の方が代役として出場されるそうです! これは、縣選手だけでなく、ルアンナ選手、四十川選手、そしてイベント運営からも承認された、正式な代役となります』


 そのアナウンスにハッとした姫華は、反射的に恭介から視線を外し、バトルフィールドを見た。

 弟子、というのが少し引っかかるが、恭介の代役。その恭介が体調不良と偽ってこの場にいること。そしてなにより、戻ってこない堅一。

 姫華の頭の中で、それぞれが次々と繋がっていく。


「俺の代わりにあそこに立つのは――」


 しかし同時に、恭介は懐かしむような色合いを含んだ口調で。


『それでは、ご紹介致しましょう! 1リーグ所属のトッププレイヤー。甘いマスクと若さでありながらも、その腕は確かなジェネラル、四十川優選手! トップリーグに所属するソルジャーである一方、その美貌にてモデルとしても活躍する美しき女戦士、ルアンナ・ブラフィルド選手!』


 四十川とルアンナの名が上がり、熱気を取り戻す会場。

 流石、1リーグ所属というのは伊達ではない。やはりというべきか、山形三兄弟に比べて大きく歓声が上がり、万雷の拍手が鳴り響く。

 姫華が思わず生唾を飲み込んだ、そんな状況の中で。

 アナウンスより告げられる、最後の名は。


『そして、数々の選手を輩出してきた名門、弐条学園の生徒にして、なんとなんと縣恭介選手の弟子! 今回、不慮の出来事によって特別に参戦し、ルアンナ選手と組んで戦う――』


 アナウンスと、恭介の声が、重なる。


『――ソルジャー、黒星堅一選手の登場です!』

「――ソルジャー、黒星堅一だ」


 刹那、四十川、ルアンナに続いて。

 眼下のバトルフィールドに、学園の制服を纏った堅一がその姿を現した。

 はい、では解説というか、説明というか、です。


 今回の話で、契約しているのとは違うジェネラルと共に戦えるのか、という疑問があった方がいらっしゃると思います。

 もうすでに話に出ていますが、可能です。


 今までの話にもヒントもどきがありましたが、最大の理由というのは、上記――つまり『契約を交わしたジェネラル以外のジェネラルと共に戦うことが不可能である』という文が文中にないことです。

 以下、この展開のヒント、過去の内容+解説です。


 一章二十二話より、舞の台詞。

「ああ、どうやらゴーストは独自にバトルフィールドを展開できるようだ。そしてそれは、君も知っているバトルフィールドに限りなく近い」

 ――あくまで、限りなく近い、つまり同一ではないです。

 姫華と仮契約をした堅一のみうんたらなど、このゴーストとの戦闘前後の表現で、というかそもそもの前提で、契約したジェネラル以外とは不可、と認識されている方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。


 二章十四話 恭介とルアンナの台詞

「――いやいや、やっぱそれはマズイどころの話じゃねえよ」

「大丈夫! だって、私と堅ちゃんよ?」

「単純に、お前がそうしたいってだけじゃ……それに、あっちから何言われるか分かったもんじゃない」

「でもこれは、堅ちゃんにも、姫華ちゃんのためにもなることなのよ?」

「にしたって、別の方法が――」

 ――今話の最後の展開を踏まえてみれば、そうっぽく聞こえるのでは?

 肝心の手助け、ためにもなる内容は、次話以降で。


 二章十七文中より

余談となるが、ほとんどの公式な大会、それと学園であれば試験の一部などでは、仮契約のパートナーに参加資格は与えられない。これは、正規の契約でなければ真のパートナーではない、と判断されるが故。

 ――正規の契約でないと、ほとんどの公式戦や学園の一部試験に参加資格がない。ここには、正規契約と仮契約しか触れていませんが。まあ大まかにすると、真のパートナーでないと認められないから、そのため公式なものに出られないから、というのが正規契約の理由です。そもそも、正規契約を結んだ以外の相手と試合に出る意味もメリットもあまりないですからね。練習や遊びの範疇でならば、他ジェネラルと組むのも不可能ではない、と。


 改めてですが、最大の理由は不可能と文中にないことです。

 もしかしたら矛盾してる記述の見落としなどあるかもしれませんが、一応この展開と設定は初期段階からのものでした。


 何か疑問や矛盾などありましたら、感想などでいただけると嬉しいです。

 では、また次話にて。

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