コーラと馬と変態と。
「あぁ、オレンジうめぇ」
てめぇ、こんな所に居やがったのか。
ご主人を追いかけて、やっとこさ辿り着いたのは小さな居酒屋だった。
一体どういう事だ。誰か教えてくれ。
……余談までにだが、この居酒屋、明るい内は食堂、暗くなってからは居酒屋に切り替えれるという何とも良心的な店だ。だから日中なんかは割りと学生なんかも居たりする。
まぁ、そんな事は置いておこう。今は全く関係ない。
「何でこんな所に居るんだよ。マリアを探しに行ったんじゃなかったのか?」
「だって電話はつながらないし。家の方に行ってもマックス君しか居なかったんだもん」
……三十越えのオッサンがだもんとか言っても可愛くなくってよ。
「だって……だってだって!どこにも居ないんだもん!!うぅ……マリアぁ……うぅっ」
そう言ってご主人はぐずり始める。
酒なんか入ってないくせに酔っぱらいの様に泣くわ、喚くわ。
あぁ、この人は本当にいつまで経っても手のかかるご主人だ。
――――その時だった。
「コーラうめぇぇええ!ふぅうう!!」
コーラに対する熱いシャウトが聞こえたのは。
最初は絶望のあまりご主人が狂ったのかと思ったがどうやら違うみたいだ。
確かにご主人は、かなり……少しばかりおかしな行動を取るときもあるが、コーラに対して熱いシャウトを発したりしない。決して。
なんてったってご主人はオレンジジュース派だもの。
「やっぱりコーラは文明です!べりべりーあめいじんぐです!!」
再び愛あるシャウトが聞こえたので後ろを振り向く。
そこにはコーラを片手に目を輝かせ、何やら興奮気味の小太りのブサイク……なんてもんじゃない。
そんなものとは比べ物にならない位、超絶なイケメンが居た。
成程、あれが巷で噂の残念なイケメンってやつか。
「……ねぇねぇタイタニック。あの人……」
「……可哀想だから、これ以上は何も言うなよ」
「……分かった」
今回は流石に空気クラッシャーであるご主人も空気を読んだようだ。……あああ、
それにしても。
あのイケメン、すごいイケメンなだけにとても残念だ。
見た目からして大学生くらい、か?
ふわっふわの天然パーマに、整いに整った顔立ち。センスの良い私服。なのに残念。
可哀想に。
きっと神は君を素敵な容姿に産み落としたかわりに、「残念な子」というステータスをお与えになられたんだ。
人間とは平等であるとは、本当のことだったのか。
「あなた達もコーラがお好きなんですか!?」
…………………………
………………
…………まさかの事態です。