理不尽な色
初めて書く小説です。
本当に拙い文章ではありますが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
気が向きましたら、どうぞお付き合い下さいませ。
梅雨の間はあまり降らなかったというのに、文月に入ってから思い出したように雨が続いている。
しとしとと、恵みの雨が窓ガラスを濡らしているのを、ぼんやりと眺める少年がいた。
その部屋は、年頃の少年が住む部屋にしては、かなり殺風景だった。必要最低限の家具だけが、かろうじて揃っている。壁紙も、カーテンも、まるで病棟のような白。生気のない空間だった。
「…やまないなぁ」
少年の唇が紡いだ音を、誰もいない空間が呑み込んで沈黙を返した。
その沈黙に満足して、少年は小さく笑う。彼の濡れたような黒髪が、白い部屋に映える。
まだ20歳にもとどかない、その少年の名は岩木とま。少し伸ばした漆黒の髪に縁どられた容貌は、取り立てて美しい訳でも、醜い訳でもない。端正ではあるが、凡人の域を出ないのだった。つまりは、彼はごく普通の少年である。ある一点の、異端を除いては。
窓ガラスを伝う水滴を見つめる彼の眼は、蒼い。比喩ではなく、ほんとうに蒼いのだ。
白人のような、美しい色ではない、蒼。彼曰く、「凝った憎悪の色」である。
彼は純日本人。この異端の眼は、彼にとって理不尽に降りかかった災害だった。