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6 迷子時に攻略キャラに遭遇は定番でしょ。


 ……。


ユ「まじですか……」


 先刻の保健室の出来事から少し後。



 当然の如く、私は道に迷っていた。


 いや〜錯乱しながら飛び出した後に迷子ですか、定番過ぎて笑えます。


 ここに攻略キャラが来たらなお、笑えますね。


 なんて私は呑気に笑いながら広い廊下を歩く。


 攻略キャラの来る気配はない。ついでに人がいない、何でだ?



 ちなみに、ここまでのゲームの内容ですが。


 実際ならまだ保健室にいます、そしてエロス保険医からの執拗な名前呼びに耐えている筈です。


 エロボイス耐性のない私は、名前を教えなくてもこのザマです。


 無理なものは無理です。耐えられません。


 よってシナリオが変わりました。頑張ったライターさんすみません、不甲斐ない私を許して下さい。

 ……。



 さて、謝罪はほどほどにしておいて。道探しましょう、道。



 はい、ここは何処でしょうか?

 うーん、右側は……教室

左側は……窓。


 これはどっちに行くか選択肢が出ますね!


 はいはい出ませんよ、分かってますよ。


 そうでもしないとやってられませんって。



 さて、左の窓に行ってみましょう。


 はい、磨かれたきれいな窓ですね、というのはどうでも良くて。


 ここからは……中庭が見えますね、ってことは南校舎でしょうか? 私がいた保健室は北校舎なので……真逆ですね。


 そんなに錯乱してたのか、すごいな私。


 とりあえず保健室に戻ろうと歩きだす。シスコン兄上ことシルバ兄と合流しなければならない。


 いなくなったと騒がれたらたまらないし。



――――




ユ「うがー! 何故だ!? 何故なんだ!?」


 北校舎目指して歩き始めた私。

 ――現在地、森。


 見渡す限りの森。現実では地図があればどうにかなっていた。不確かだが、脳内地図があるのに私は迷子。


 これはきっとアレだ。不幸体質のせいだ。



 うーん地味にキツいな方向音痴って。


 もう、随分お日様が傾いてきてしまった。


 今日は野宿……しなきゃならない?


 足が棒を通り越してすでに幹だよ。寮生活一日目にして何故か野宿……新しいな。



 頭の中はぐるぐると回っている。足は黙々と歩みを止めない。


 何か考えて歩いてないともう二度と動けない気がする。




 カサ……。



 しばらく歩いていると、恐ろしいことに何かの気配を感じる。


ユ「……」

「……」


 駄目だ耐えきれない。ふざけてしまおう。



ユ「鬼さん、こちら、手の鳴る方へ」


 怖い気持ちをなだめる為に手を打つ。


 いや、出てこないで下さいね、お願いします。強がってみますが、心はチキンハートです。



「……誰だ? お前」



 辺りに響く低めのボイス。ゆっくり振り返ると木のそばに紫色の髪の人。


 出てきてしまいました、鬼さん。



 もとい、ゼインさん。


 紫色の髪がツンツンしている不良っぽいこの人は実は殺し屋さん。実家が暗殺業をしていて、その筋では名門なのだ。



 この人には会いたくなかった。


 この人はこのゲームの危険度をあげることになった主人公を狙う殺し屋さんなのだ。


 ゼインさんルートでうっかり殺し屋商売をしているのを見るとその後は死亡フラグが乱立する。


 まぁ、知らないとハッピーエンドにはならないという、鬼畜的なルートだ。今はもうすでに殺し屋をしている事を知っているから、ボロを出さない為にも会いたくなかった。


ユ「……はぁ……出てきちゃいましたか、鬼さん」


 全くため息が出てしまう。


ゼイン「オニサンとはなんだ」



 眉をしかめながら不思議そうに聞く殺し屋さん。


 そう言えば、鬼という名称は存在しませんでしたね、うっかりしてました。


ユ「えーと……人を傷つけたり、物を奪ったりする、悪者だけど……心優しいのもいたりする種族?」


 首を捻りながら説明してみる。途中で有名な優しい鬼のことを思い出して説明がおかしくなってしまった。


 てか、紫色の髪のゼインさんがなんか苛立ちの表情をしている。


ゼ「オレを悪者だと、そう言うのか? 女」



 殺気がやばい!


 確かに初対面で悪者っていう種族に間違えられるのは嫌だよね。姿見えない時だったけど!


 一応、心優しいって言ったけど付け加えみたいな感じだったし。いや、私は鬼好きだけど!


 作った乙女ゲームで鬼の種族いるし。


 と、そんな事は置いといて。


 この殺気を消してくれ。私死んでしまう。


ユ「ち、違います。

私の国では追いかける役の鬼を作り、鬼は追いかけて他の子に触るとその子が鬼役となって……追いかけあいをするという遊びがありまして……」



 ……私の国、って言ったが設定上の出身国ってここだったわ。


 そして遊びの説明って思いの外難しい。


ユ「その遊びの時に、鬼役に挑発の意味合いであれは使いまして……」




ゼ「挑発……か?」



 また、殺気が増える。


 やばいよ、もう日が暮れちまったし、夜の森で殺し屋さんを怒らすとか。


 ……あれ? かなり死亡フラグ?



ユ「……っ……という訳なんで、迷子になって困ってます。助けてください!」


 目をさ迷わせながら言った後、ガバッと頭を下げる私。


 いや、どういう訳だよ。話の前後関係のが迷子だよ。


 だけどこのまま押しきってしまおう。



ユ「寮に連れていってください!」


 くらえ、だめ押しの一言!



ゼ「……はぁ、意味が分かんない」


 ため息をつく紫髪の殺し屋さん。あ、口調が柔らかくなってる。


 効果は抜群か? 良かったのか? この意味の分からない話の反らし方で。



ゼ「来い。連れていってやるよ、鬼女」



 そう言って紫髪の殺し屋、ゼインさんは歩きだす。


 ……いやいや、おかしい何よ、鬼女って?


 かなり嫌だな。鬼奴的な部類だろうか?


 ゼインさんもそんな嫌だったか、鬼とか言われたの。



 うん、自分を励ます時でも独り言に気を付けよう。


 寮に帰りながらそう思った。





[おまけの帰宅後]




シルバス「どこ行ってたんだ! ユウ!」


 ガバッと抱き付くシルバ兄。


 心配してくれたのですか、ありがたいです。


 そしてごめんなさい。


 私からもそっと腕を回す。



ユ「ごめんなさい、兄上」


 泣けるわ〜何だろ、この感動の再会。


ディノス「ほんとだよ、心配したんだよ」


 うっすら頬が腫れてる金髪のエロス保険医。シスコン兄上に殴られたか?


 ってか、心配したとか。お前のせいだから、お前の。


 金髪の元凶を睨む。



ゼイン「……届けましたので」



 そう言って逃げようとする紫髪の殺し屋さん。



シ「待て」



 シルバス兄上はゼインを引き留め、私からゆっくり離れた。




シ「さて、三人とも。

――話を聞かせてくれるよね」





 笑っている筈の兄上の目が笑っていませんでした。



私は小さい頃、迷子になって野宿を覚悟した事があります


周りのおばちゃんが全て同じ人に見えました(笑)


さて、次は殺し屋のゼインさん視点です



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