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干支戦記〜エト戦記〜(仮)  作者: 寺子屋 佐助
幼少期〜プロローグ〜
7/8

第六話 リュウの夢2

町外れの家の庭から小さな三つの灯りと大きな笑い声が聞こえてくる。チュウ、シュウ、リュウはその手に線香花火を持ちどの花火が一番長く続くか競争していた。ジュウは酒を片手に枝豆を摘まんで彼らの様子を見ている。シズネは布団を敷き、ウメは台所で洗い物をしていた。日が沈んですぐのこの時間帯は冬ならばすでに寝ている時間にも関わらず、疲れを知らないチュウ達はまだ元気よく遊んでいた。


「あっ!兄さんのが先に終わった」


リュウがそう言った後すぐに自身の花火も消えていく。やがて小さくなったその灯りは音もたてずに無くなってしまった。あっ、という声と共にシュウの花火も終わった。


「全部無くなっちゃったな。 さあ、もう遅いから寝なさい。 母さんが布団を用意してくれたから」


ジュウの言葉とともに、水の入ったバケツに最後の花火を入れるとシュウ達は突然の睡魔に襲われた。一日中遊んだその体は泥だらけとまではいかないがかなり汚れていた。完全に寝付く前に彼らの服を脱がせるジュウ。風呂にも入らす寝巻きにすぐ着替えたチュウ達はすでに敷かれている布団に倒れこんだ。

静かに寝息をたてる三兄弟に布団をかぶせると、ジュウは足音をたてずに外へ出た。


「子供達はもう寝ましたか?」


シズネが無声音で尋ねながら、花火の後片付けをしている。ジュウはその姿を視界にいれながらも、今は静けさに包まれた夜空を見上げていた。


「全員もう寝てるよ……」


ポツリとそう呟き空を見上げていると、雲が風に飛ばされて天の川が見えるようになった。そういえば今日は七夕だな、などと思いながら二人はしばらくその美しい景色をみつめていた。


「皆短冊に何を書いたのかしら?」

「そういえばそうだな」


シズネがふと疑問に思っていたことをもらす。どうやら、ジュウも興味があったようで二人で子供達が昼に書いた短冊を見にいくことになった。


子供達が寝ている部屋を忍足で通り、台所に行く。そこには洗い物を終えたばかりのウメがロウソクを片手に窓の戸締りを確認していた。


「母さん、チュウ達の短冊はここら辺にあったよね」


ジュウはそういいながら周りを見渡すと壁に立てかけてある笹の葉が目に入った。星明かりに照らされ短冊に書かれてある文字が浮かび上がる。そこには三つの願いが綴られていた。


◇◇◇


「で、何が書かれてあったのおばあちゃん?」


リュウが興味しんしんな様子でそう尋ねた。

小さく息をはきながらウメは答える。


「一つ目はおいしやさんになるって書いてあったねぇ」


一拍置いてまたウメが言った。


「二つ目はちやんぴおんになるだったかな。まあチュウとシュウは相変わらず同じことばっかりいってたしね。……そしてリュウはね……」


ウメの目線が変わりリュウをはっきりと捉えた。そして優しく包みこむような笑顔で口を開いた。


「''みんなのゆめをかなえる" って書いてあったのよ。立派な夢なのになんで忘れてたんだろうね?」


リュウはいつの間にか深い眠りについていた。その幸せそうな顔の下には''みんなのゆめをかなえる''と書かれた小さな絵本が枕の代わりに置かれていた。

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