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怪談

工事写真

作者: 猫野沙子
掲載日:2026/06/24

工事写真を撮っていたら、撮れてしまった――

 工事写真って分かるかな?

 まあ、名前通りそのままなんだけど。工事を進める過程でこんな風にやってますよ、とか、ちゃんと基準通りにやってますよって写真を撮って、整理して、提出するんだ。

 最近はデジカメだし、パソコン上で整理して専用ソフトでアルバムと呼ばれる、提出用の形態にするんだ。

 工事写真を撮るときは、看板と呼ばれる緑色の黒板を一緒に写す。まあ、入れないこともあるんだけど、それは置いておく。最近はコンパクトな手持ちのものや専用ソフトを使った電子黒板を使うことが多いんだけど。


 今より少し前の話。


 大きい黒板に工事名や工種なんかを書いて、誰かに持ってもらったり地面に置いて撮るんだけど、その日は地面に置いて撮ってた。何か所も、何枚も撮った。デジカメだからその場である程度整理も出来るんだけど、僕はそういうタイプじゃなかった。撮れるだけ撮って、後でいいのを選ぼうってタイプ。


 夕方、写真の整理に取り掛かった。こればかりはちゃんとやってた。前にためすぎてひどい目にあったからね。


 パソコンに写真を取り込んで、いまいちな写真を削除していた。とある工事写真で、僕は手を止めた。


「なあ、これ見て見ろよ?」


ちょうど仕事に飽きていたらしい新人に声をかけた。

「先輩、どうしたんですか?」

「見ろよ」

 パソコンの画面には僕が撮った何の変哲もない工事写真、なんだけど……。


「えっ?これ、人の指じゃないですか?!」


人が少なくなった事務所に、新人の声がやけに響いた。

「やっぱり、そう見える?」

少し青くなった新人が無言で頷いた。黒板の上に人の指が黒板を押さえるように掛かっていた。


 僕が無言で画面を拡大すると、新人が悲鳴を上げた。その悲鳴で、僕の席の周りは残ってる人たちが集まってきてしまった。口々に、怖いとか、不気味とかいろいろ言っててうるさかった。そうやって騒いでいると、現場の所長までやってきた。


「なんだ、画像いじって遊んでたのか?」


 所長は怖かったのか、軽くそう言ってみんなを見回した。けど、みんな顔を横に振った。みんなそれなりに仕事を抱えていて、遊ぶほど余裕はない。所長は渋い顔をして、

「消せ消せ、そんな写真」

「でも、これしかないんですよ」

「先輩、いつもいっぱい撮ってるじゃないですか?」


「だって……他の、もっとヤバいんだ」


 他の写真を見たみんなが絶叫した。


 これ以外は髪の長い男か女かよくわからない不気味な顔が地面に置いた黒板の脇に写っていて、人の指が写っている写真が一番マシな写真だったんだ。


読んでいただき、ありがとうございます。


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