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お食事会

「はい、ということで。今回の功労者であるミミ帝様にはこちら、カーバンクルの炭焼きでございます。火入れにこだわり、この辺で今も現役の活火山のマグマを使用。桜岩塩の豊潤で奥深く旨味がその辺の塩より馬鹿みたいに深い。食材と塩と炭以外は何もこだわってない。ただただシェフが自分の腕を自慢するためだけに作ったようなテクニカルステーキですボナペティ!」

「朕は皇帝ぞ? 貴様に宮廷料理人が超えられるかな……美味い。なんだこれは、火入れが完璧じゃないか」

「趣味は料理です。他のふたりはシェフの気まぐれ海鮮丼。シーランタンラプラスとライスパールの貝柱、つよマグロをふんだんにあしらってソイソースをかけた逸品。こちらの海苔はノリで焼きました」

「美味しいです」

「美味しい……!」


 皆美味しそうに食べてくれてありがたい。アイスブレイクに必要なのは自己紹介でもなく殺し合いでもない。同じ土釜の飯を食うことだ。

 ちなみに今この瞬間も、裏では俺を殺そうと魔族の連中が動き回っている訳だが、良い。


「勇者に一太刀与えるとは、快挙だぞ。なにせ、前回は親父以外傷一つ付けることが敵わなかった。魔王軍の正式な軍事方針が、魔王が来るまで各戦線死ぬ気で遅延しろというものになったほどだ」

「その功労者は、うぬの治癒でちょちょっと治せぬのか?」

「俺の見た未来で再生レベルで他人を治癒できる魔法は存在しなかった物でね。起きたらあいつにも海鮮丼を食わせるさ。勝手に出て行ったことじゃない、引き際を弁えなかったことだ」

「命令違反で余は奴を殺したいがの。さて、大体わかったぞ、うぬの言う聖剣。そして聖杯。さらには神託が何か」

「ほう。聞かせてほしい物だな」

「聖剣と聖杯は恐らくセットじゃ。本来魔王など存在せず、人の王は聖杯と聖剣を持つ唯一の存在だった。それが、魔王が聖杯を盗んだものだから陣営が別れた。聖杯が尋常じゃないように、聖剣も普通じゃない。まるで世界が勇者を勝たせるために都合よく動いている」

「千年眠っていた割には頭が冴えてる」

「余にとっては死んで一瞬後に蘇ったからな。まあ歴史書は読むさ。世界がどうあったか知りたい。というより、うぬの親父はどうやって聖杯を盗んだ」

「厳密にいうと親父は闇市に流れた聖杯を目ざとく見つけただけだ。実際に盗んだ奴は別だろうよ」

「なるほど。まあ、その辺を知ってそうな修道女はいるし、あとで調べえばよい。神託だが、恐らく聖杯や聖剣と同じ魔法を出力する装置だろう。基本的に固有魔法は一人二つ。魔法がどういう扱いかは知らぬが、昔、まあ余の時代で言うところの最新魔法使いはイメージと魔力の書き込みで魔法を作っていたが、人一人の中に書き込める量は決まってるそうじゃ」

「1000年経ってもその原則は変わっちゃいない」

「なら間違いない。神託とやらを使う人間が多すぎてうぬらが勝てなかったのも頷ける」


 いやはや、世界というものは時代に一人傑物を生み出すものだ。

 まあ……なんの偶然か、大体そう言う天才は勇者軍側に生まれるわけだが。

 俺たち魔王軍は聖杯という三回だけ訳の分からない力を発揮する装備を持つだけ。


「今ここに集合したのは、俺が勝てるように呼ばれてるはずだ。今は食え。勝ちはするが、全員で勝てるとも限らん」

「その事ですが、私はある程度作戦に付き合いますが、興味のないことはしません」

「ふん。好きにせえ。どのみち従うさ」

「意外だな。皇帝陛下は逆らうもの皆首を斬ると文献に書いてあったが」

「時代が変わったんじゃ。余も積極的に変わるべきだろう。一度負けた、朕は国家にあらず。ならば、うぬらをどうこうする資格もない」


 物分かりの良い皇帝様だことだ。

 俺たちはあまりに簡単で何の躊躇もなく、世界への反逆を始めてしまった。

 魔王が現れ、勇者が討つ。人が文明を築いて以降、存在するルールにケチをつけた。

 まあ、いいよな。


「魔王が勝つ世界戦があっても、誰も文句は言うまい」

「余は誰が勝っても文句は言わん。事実、余の歴史は勝者によって曲げられておる」

「私は神に会えれば何でも」

「う、ウチも、魔法が無くなれば、なんでも……」

「では始めよう、諸君。好きに動け、暴れろ、この世界の物語を変えてやれ」

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