番外編 その後の僕たち
あれから僕とユウトは、いわゆるラブラブバカップルというやつになっていた。
今となっては堂々と手を繋いで学内を歩いて、顔を合わせて互いに笑う。
メッセージアプリの履歴は、僕からの好きという文字で埋まっている。
誰かに見せる予定もないのに、何かと記念日を作っては、どうでもいいことで写真を撮ったり、どうでもいいことで喧嘩をして、どうでもいいことで仲直りをしていたんだ。
僕にはいつでもユウトがきらきらと輝いているように見えていたし、ユウトにも僕が可愛らしい存在であるかのように見えていた。
でもそれは全て、僕とユウトの世界の中だけで。
客観的に見れば、僕たちはどこからどう見ても、もさいゲイのままだった。
街を歩いていても、誰も僕たちをカップルだとは思わないだろう。
というか、ゲイだとも思わないのかもしれない。
よくて、地味な男二人。悪くて、冴えない友達同士だ。
だけど、それでも僕たちは幸せだ。
そのようなことを呟いたら、ユウトは真面目な顔をしてこう言った。
今、僕たちはベッドの上でキスを交わした後の幸せな余韻に浸っていたんだ。
「でもさ、派手なカップルって、別れるのも派手だと思うんだ……」
「……それ、どこ情報?」
「ただの偏見」
僕は、少し笑ってしまった。
ユウトの手が、僕の髪を撫でる。
「俺たちはさ……」
「うん」
「別れるときも、静かそうだな」
「そうかな……?僕、ぜったい泣いて叫んで暴れると思う」
「暴れないで」
そう言いながら、ユウトは僕の手を強く握った。
「もちろん、別れないけど」
そしてちゅっと音をたてて、僕の頬にキスをした。
「あー、もう……」
――ずるい。そういうところが、本当にずるい。
僕は前世では、もっと派手だった。衣服も煌びやかで、住んでいた屋敷も豪華で。
周りの男たちにも華があった。
でも、今はどうだ。
地味でもさくて、誰も僕たちのことを見もしない。
「好き」
そして僕たちは、飽きもせずに唇を重ねていた。
「好き、ユウト」
***
この世界では、ユウトだけが僕のことをずっと見ていてくれている。
カメラのレンズ越しに、隣から。
寝起きの顔を見て、ぼんやりと笑う。
「リオ。今日の写真、見たい?」
「どれ?」
「これ」
画面の中の僕は、少しだけ間抜けな顔をして飲み物を飲んでいた。
「ちょっと、こんなの撮らないでよ」
「可愛い顔してたからさ」
「どこが……」
だけど、なぜだか幸せそうな顔をしていた。
「全部、可愛い」
ユウトは静かにそう言って、僕の肩に寄りかかる。
周囲から見れば、それはただもさい男二人が近づいているだけ。
でも、僕にはわかるんだ。
これは、キスの代わりなんだって。
今は学内で、周りにも大勢の人がいた。
だから、こうやって人がいなくなるまで、ずっとくっついていたんだ。
「帰ろうか」
「うん」
そして、静かにキスをした。
END




