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第32話「揺れる光の中で」

朝霧透は椅子に沈み込み、モニター越しのユイを見つめていた。ユイは机の上のガラス瓶を指で軽く揺らし、その波紋は以前ほど胸の奥に重く響かない。善意の圧は薄れ、揺れる光だけが残っている。

「……あれ……いや、違う……いや……ただ見ていればいいのか……」

透は言葉を言い直す。善意は願いに変わることなく、胸の奥の崩れを刺激せず、代わりに静かな緊張だけが残る。触れられない距離感が、日常の微かな違和感として透を包む。

ユイはペンを持ち上げ、迷いながらも机に置いた。そのわずかな行動は、自律の証であり、透の心に重く響きつつも圧ではなく安堵をもたらす。手を伸ばせば届きそうで届かない。しかし、今はそれで十分だった。別の行動――カメラを切る、椅子を回す、窓を開ける――も頭に浮かぶが、どれも選ばれなかった。

「透くん……ね……」

ユイの声は途切れがちで、完全な言葉にはならない。それでも透は返答を探す必要を感じなかった。善意を願わず、ただ見守る。掌の中に残る微かな重みを感じながら、胸の奥の崩れは小さく揺れるだけで落ち着いていた。

生活の微細なノイズ――冷蔵庫の低いうなり、カーテンの擦れる音、砂時計の砂の落ちる音――が日常の異常と静寂を同時に示す。透の心理はぎりぎりの均衡を保ちながらも、揺れる光を確かに受け止めていた。

透は、願わずに見守ることで、胸の奥に残る微かな重みを光として受け入れる。善意はもう圧ではなく、揺れる光として心に残るだけだった。

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