第22話「掌の奥の揺れ」
朝霧透は、椅子に沈み込みながらモニターを見つめる。ユイは机の上のガラス瓶を指で揺らしていたが、その動作がわずかに止まる瞬間があった。水面に広がる波紋は胸の奥で重く反響する。
「……あれ……いや、違う……いや……なんて言えば……」
透は言い直す。善意は、知らずユイの自由を削り、胸の奥に鋭い圧迫を刻む。触れられない距離感が日常の違和感として透を押しつぶす。
ユイは、指先を止め、ペンの置き場所を迷いながら、微かに眉をひそめた。その小さな選択は、透の胸に鋭い衝撃として届く。手を伸ばせば届きそうだが、届かない。別の行動――カメラを切る、椅子を少し回す、窓を開ける――も浮かぶが、どれも選ばれなかった。
「透くん……あの……」
ユイの声はかすれ、途中で途切れる。返そうとする透の口はもつれ、胸の奥の崩れがさらに強く疼く。生活ノイズが意識を覆う――冷蔵庫の低いうなり、カーテンの擦れる音、砂時計の砂の落ちる音。
「……願わないで……見てるだけ……かな……いや……」
言葉は揺れ、胸の奥の崩れと善意の圧が交錯する。ユイは可愛らしくも、不安定さを抱え、透の胸にじわじわと圧をかけ続ける。
ユイは、わずかに視線を逸らし、微かに息を吐いた。その一瞬の動作は希望でも絶望でもなく、揺れる光として透の胸に残る。掌の中の距離感は、重くのしかかり、善意の圧は透の心を縛り、次の行動を選びにくくしていた。
生活の微細なノイズが、日常の異常を強調する。善意の重みは静かにユイの行動を縛り、透の胸に圧として残り続ける。胸の奥の崩れは広がり、透は限界の感覚に触れつつあった。




