第18話「縛られた微笑み」
朝霧透は、椅子に深く沈み込みながら、モニター越しのユイを見つめていた。ユイは、机の上の小さなガラス瓶を指で揺らし、水面に波紋を作る。その小さな動きが、胸の奥に鋭い圧迫を残す。
「……あれ……いや、違う……いや、どうしよう……」
透は言い直す。善意は知らず、ユイの自由を削り、胸の奥の圧迫感を増幅させる。触れられない距離感が、日常の微細な違和感として残る。
ユイは、指先を止め、机の端のペンを持ち上げた。微かな選択――どちらに置くか迷うその動作が、透の胸に小さな衝撃として届く。手を伸ばせば届きそうな距離、しかし届かない。別の行動――カメラを切る、椅子を回す、窓を少し開ける――も頭をよぎるが、どれも選ばれなかった。
「透くん……あの……」
ユイの声はかすれ、途切れる。返そうとする透の口はもつれ、胸の奥の崩れが疼く。生活ノイズが意識に押し寄せる――冷蔵庫の低いうなり、カーテンの擦れる音、砂時計の砂の落ちる音。
「……願わないで……見てるだけ……かな……いや……」
言葉は揺れ、胸の奥の崩れと善意の圧が交錯する。ユイの存在は可愛らしくも、不安定さを孕み、透の胸に静かに圧をかけ続ける。
ユイは視線を少し逸らし、小さく息を吐いた。そのわずかな動作は、希望でも絶望でもなく、揺れる光として透の胸に残る。触れられない距離感は、掌の中でじわじわと重くなり、善意の圧は確かに変化を生んでいた。
生活の微かなノイズが、日常の異常を際立たせる。善意の重みは、静かにユイの選択を縛り、透の胸に圧として残り続ける。




