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第17話「揺れる掌の中で」

朝霧透は、モニターの前で手を組みながら、ユイの動きを見つめていた。ユイは、机の上のガラス瓶を軽く触れ、水面に微かな波紋を作る。その小さな動きが、透の胸にじわじわと圧迫を生む。

「……あれ……いや、違う……いや、なんだろう……」

言い直すたび、胸の奥の小さな痛みが波のように広がる。善意は、知らず知らずユイの自由を少しずつ縛り、触れられない距離感を日常に潜ませる。

ユイは、突然指を止めて、目を伏せた。小さな決断がそこに現れた瞬間、透の胸の奥に鋭い圧迫が走る。手を伸ばしたくても届かず、別の行動――カメラを切る、椅子を少し回す、窓を開ける――も思い浮かぶが、どれも選ばれなかった。

「透くん……ね……」

ユイの声はかすれ、途中で途切れる。透は返そうとするが、言葉がもつれ、胸の奥の崩れが微かに疼く。生活ノイズが意識を押しつぶす――冷蔵庫の低いうなり、カーテンの擦れる音、秒針の跳ねる音。

「……願わないで……見てるだけ……かな……いや……」

言葉は揺れ、胸の奥の崩れと善意の圧が交錯する。ユイの存在は可愛らしくも、不安定さを孕み、透の胸に静かに圧をかけ続ける。

ユイは、微かに視線を動かし、何かを考えるように息を吐く。その一瞬の選択は、希望でも絶望でもなく、揺れる光として透の胸に残る。掌の中にあるはずの距離感は、わずかに変化し、善意の重みがじわじわと強まるのを透は感じた。

生活の微かなノイズが、日常の異常を強調する。善意の圧は確かに存在し、静かにユイの行動を縛り、透の胸にじわじわと重くのしかかる。

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